ホビアニ風百合異世界に転生して魔法少女もどきしながらTCGやってます(仮題) 作:朝陽祭
桜が風に乗って舞い踊る、4月。
私立流楓高校に入学し、榛名さんとも同じクラスになり、よい感じでスタートダッシュを決めた私。
これから、薔薇色の高校生活を始めようとした私は――
「あ、辰星。悪いが放課後、住良木と生徒指導室に来てくれ」
「ぴぃぃいぃぃぃ!?!?!?!?」
なぜか生徒指導室に、呼ばれました……なんでぇ?
☆★☆★☆★☆★FOCUS:RUKI TATSUBOSHI☆★☆★☆★☆★
「悪いな……勧誘禁止期間中*1で見つかると面倒だから、人払いしつつ会話できる部屋がここくらいしかなかったんだよ。ほれ、お茶は先生の奢りだ」
「あざーっすたっちゃん!!」
「住良木、
「了解です、たっちゃん先生!!」
放課後、生徒指導室。
私はソファーに座りながら、クラス担任の
いやだって高校生活の初っ端から生徒指導室に呼び出されるなんて前世でも経験ないし……あと何より築地先生は『BLUE PLANE』でたまに見かけるし……まさか、『転霊化』のことで秘密を知られたくなければえっちなあれやこれやであわわわわ……
「るきるきの百面相は落ち着くまで待つとして。勧誘禁止期間中でマズいってことは部活絡みってこと?」
「お、察しがいいな。まぁもう少し待ってくれ、まだ呼んでる生徒が……っと、来たな。入っていいぞ」
「はうわっ!?」
「築地先生、話があるとのことでしたが……この子達は?」
妙にリズミカルなノックの音と扉が開く音で背筋が伸びると、日焼けした肌と長い黒髪でミステリアスな雰囲気を放つ生徒が、入室してきた。
リボンの色が赤色なので3年生の人*2みたいだけど……
「わぁ、『流楓の極黒姫』だ。こんなに早く本人と会うとは思ってなかったや」
「榛名ちゃん???????」
なんで初対面の人をそんな呼び方するの!?あとその異名はなに!?
「いやだってるきるき、この人昨年度のアドラ・ステラ甲子園個人部門準優勝者だよ?アドラ・ステラ甲子園目指すなら知らない方が無理あるって」
思った以上にすごい人だった!?
「……なるほど、アドラ・ステラ絡みか。はじめまして、3年の
「1年の住良木榛名で〜すっ♪」
「お、同じく1年の辰星流輝ですっ!?」
北小路先輩が名乗りつつ築地先生の横に座ったので、私も榛名ちゃんの後に会釈しつつ挨拶をする……というか、アドラ・ステラ委員会?
流楓高校でアドラ・ステラ甲子園に出るなら卓上遊戯部のはずじゃ……
「あー、辰星はOGから昔の話聞いてた感じか?色々あって、アドラ・ステラ甲子園出場に関しては生徒会主導になったんだ。それで名目上は委員会って名前がついて、生徒会メンバーが委員長を務める訳だな」
「そ、そうなんですね。じゃあ、お……古典の榊原先生は」
「榊原先生とも面識あんの?あの人は卓上遊戯部が囲碁将棋部に戻っても顧問のままだよ。話終わったら挨拶に行くか」
「はい!!」
――卓上遊戯部というのは、道流さん達が在学中にアドラ・ステラ甲子園に出場する為、廃部寸前だった囲碁将棋部のメンバーと合同で立ち上げた部活だ。
小さい頃には合宿(という名の旅行)に外部コーチだった『BLUE PLANE』店長の連れ、という形でついていったこともあるので、なんだか懐かしさもある。その時、榊原先生はまるで実の孫のように私を可愛がってくれたので、私も「おばあちゃん先生」と呼んだりしてたのだ。もう高校生になったんだし、うっかり昔の呼び方で呼ばないように気をつけないと……
……っと、思考がずれちゃった。それで、本題は?
「住良木と辰星、お前らアドラ・ステラ甲子園に出たい?」
「もちろん!!!!!!」
「私は……榛名ちゃんと一緒なら、ですかね?」
「おーけーおーけー、話が早くて助かるねぇ?という訳で北小路、事前にスカウトしていた*3ってことで書類は処理しておくから部活動解禁されたらよろしく」
「先生……理由を説明してもらわないと困りますが?そこまでする必要があるんですよね?」
築地先生の軽い言葉に、北小路先輩は額を抑えている。すると、先生も面倒くさそうな顔をしつつ、こっちを見る……あ、先生は知ってるなこれ。私が頷くのを確認すると、先生はおもむろに口を開いた。
「……辰星が他の部活に入った状態で『転霊化』できることや『精霊憑き』だってバレたら、アドラ・ステラにお熱な理事会の方々からお小言をくらうし、絶対引き抜かないといけなくなるから他の顧問とも気まずくなるしでそういう
「あ、たっちゃん先生もあの日見てたんだ?」
「なんなら住良木、公認大会にも出ててお前の『流氷騎士』に轢き潰されたぞ?」
「あー、なんか見覚えあるなって思ってたけどそれでかぁ」
「住良木の方は実力があるのを身を以て体感したし、公式ランキングの出禁枠に該当しないことも確認できたから、辰星のフォロー役も兼ねてって感じだな」
先生の口から出てきたのは、予想はできていたことだった。別にペンデやドランのことは秘密にしてる訳じゃないし、『転霊化』も……まぁ、理由があって春休み中はあの日以来隠してたけど、バトルフィールドでアドラ・ステラをやる機会があれば、いずれはバレる話だ。
とはいえ、理事会……?いや、私立高校だからそういうのはあってもおかしくないけど。ちなみに北小路先輩は頭を抱えてる。
「ここからは辰星と住良木向けの説明だ。なんでアドラ・ステラ委員会ができたかって話にもなる訳だが……うちの理事会はこの学校のOGである『鏑木道流』に脳を焼かれちまって、アドラ・ステラ関連に糸目をつけなくなっちまったんだわ」
「「あぁ……」」
道流さんを野球で例えるなら、将来有望だったエースピッチャーが名門校じゃなくて野球部のない無名の高校に進学したと思ったら、野球部を立ち上げて甲子園3年制覇みたいなことしちゃってる訳だし、猛烈なファンになる人は居るよね、うん。
「『BLUE PLANE』に出入りしてたんなら当人を知ってるだろうからそっちの説明は省くとして。榊原先生から引き継ぐ際に話を聞いた限りじゃ当人の在学中はまだファンクラブみたいなノリだったんだが、卒業した後から『彼女のようなスターをまた我が校から!!』って感じでテコ入れしだすようになってな……委員会と囲碁将棋部に分かれたのも、そういう影響だ」
「……私も中学大会で『転霊化』を披露していたのでな、それでスカウトされてここに入学したんだ。さすがに返済免除の奨学金を貰えるとなるとな……」
北小路さんも再起動して、事情を話してくれる……あ、そういう意味でも私の先輩になるのかこの人。
「ちなみに1年でもう1人『精霊憑き』の入会が決まってるから、とりあえずその3人でチームを組んでもらって団体戦に参加って形だな。その子との顔合わせは部活動解禁されてからにするから、その時は仲良くしてやってくれ」
「えっ、確かに甲子園に出たいとは言ったけど1年ですぐなの!?」
「先生、それはさすがに委員内から反発が出ませんか?」
すると、築地先生がとんでもないことを言い出した。いやさすがに無理ですよ!?私、(公認大会にまったく参加してないから)公式ランキングは下から数えた方が早いくらいなんですよ!?
「北小路には残念なニュースだが、そこは問題ない」
「「「え?」」」
「なぜなら今在籍してる委員のうち、北小路と2年の蘇枋以外全員――この春休みで出禁枠のボーダーぶっちぎりやがったからな。むしろ1年だろうが出さないと出場者が少なすぎて理事会がヤバい」
「…………は?」
あ、北小路先輩が宇宙猫になってる。
いや、えぇ……?そんなこと起きるんですか……?
☆★☆★☆★☆★FOCUS:HARUNA SUMERAGI☆★☆★☆★☆★
「いや、なかなか今日はハードだったね」
「ほんとですね……」
たっちゃん先生達との話が終わった後(北小路先輩は目眩がするとかであの後すぐ帰ったのだった、南無)。
ボクとるきるきはたっちゃん先生と職員室に行き、『おばあちゃん先生』――
いや、なんか思った以上にパワフルな体格で豪快な先生だったね、榊原先生。ただ、るきるきがうっかり『おばあちゃん先生』って言った時の職員室はすごく微笑ましい空気になってたけど。
「言わないでくださいよもぅ……」
あ、るきるきが顔真っ赤にして照れてら。か〜わぃっ♪
「けれど、思ったより早く甲子園への道が拓けましたね……」
「うん、まぁそこはボクもビックリ」
とはいえなー、実例聞かされると出禁枠入りはちょっと怖いなぁ。道流さん経由でソフィアプロから
「でも、こうして同年代の友達と部活動に取り組むの、初めてなので楽しみです」
「ありゃ、そうなの?」
「小中はアドラ・ステラにお熱で『BLUE PLANE』に入り浸って道流さん達について回ってたので、気がついたら『熱心に習い事へ通う高嶺の華』扱いされてたんですよね……」
なんかるきるきが遠い目してら。まぁ、るきるきはなんか儚げな美人みたいな雰囲気纏うもんね。実際はパニクって黙ってるだけだったりするんだけど。
「まぁ、決まっちゃったからには全力で頑張るしかないね、るきるき!!」
「はいっ!!」
こうして、決意表明と言わんばかりの笑顔で、ボクとるきるきはジュースの入ったグラスで、乾杯をするのだった。
☆★☆★☆★☆★FOCUS:KAZUSA KITAKOUJI☆★☆★☆★☆★
「お久しぶりです皆さん。またこうして元気な姿を見れたことが、先生はとても嬉しく思います」
――辰星さんと住良木さんに関する話を聞いた、翌日の放課後。
文化棟のアドラ・ステラ委員会に用意された部屋では、築地先生の朗らかな声が響いている。
なお、先生の言葉とは裏腹に招集された生徒側には、重苦しい雰囲気が漂っている。
「春休みを経て、皆さんまた一回り大きく成長したようですね。顔付きを見れば、すぐにわかりました。その上で、先生から一言」
「――お前ら、頑張りすぎだってぇ。どうすんのよ甲子園?」
『すいませんでしたぁぁぁぁぁぁ!!!!!!』
「えっ、えっ、えっ?みんな春休みは遠征とか頑張るって言ってたけど……えぇ、もしかしてみんな出禁枠になっちゃったのぉっ!?」
私と後ろの方に座っていた2年の
「いやまぁ、みんなが実力を出しきって実績を積み上げるの自体は嬉しいよ?ヘビィリーグ主体の企業チームで耳の早い所はランキング更新が行われた昨日の今日でそれとなく打診もしてきてるから、3年組はほぼ企業プロ内定だぞよかったな。それはそれとして、元々公認大会には参加してない北小路と春休み中体調崩してたっていう蘇枋以外の全員がどうして出禁枠になるのよ?俺春休み中にも念の為気をつけろって連絡は回したよねぇ!?特に西住ぃ!!お前あの規模の公認大会で優勝はすごいけどやりすぎだってぇ!?」
「しゅいましぇぇぇんんん!!でも、ラビビットカーニバル*4の抽選に受かったからにはしょうがないじゃないですかぁ!?!?あと、優勝した後に記念撮影してサイン入りプレイマットもくれたラビビットさん達のお餅は眼福でした!!」
「そこまで聞いてねぇよ!?で、どういう認識だったんだお前ら」
『入賞した時点でヤバいかも?*5とはよぎりましたが、自分が出禁枠になっても他の人が居るから大丈夫だろって余裕こいてました!!!』
「なんでその返事が一致するんだよ!?裏で打ち合わせしたか!?」
実際学生だけで運用してる通話ツールでは、今日の集まりの前にそういう話が出てた。まぁ築地先生が本気で怒ってる訳ではないというのを私が事前に伝えていたからこそできる、ある種の茶番だな。
いや、遠征として都内のほぼ全域に散らばってやりきるバイタリティ自体はすごいんだが……あと西住、お前は残念な奴だな。
「……コホン。まぁなっちまったものは仕方ない。出禁組は解禁されてからの勧誘、後輩の指導、北小路のサポート等仕事はたくさんあるから例年以上に、積極的に取り組んでくれ。あと公認大会は好きにしろ」
『はーい』
「あ、あの、先生っ!!もし、入会者が居なかったらどうなるんですかぁ?私と北小路先輩だけで甲子園出るんですかぁ?」
築地先生が一旦指示を出すと、震えながら蘇枋が手を挙げる。まぁ、去年は参加枠フルで使って出場したのに今年2名は色んな意味で恐ろしいものな。
「あー、ここからはオフレコで勧誘解禁まで他言無用だが、スカウト組が3人内定してるからそこまで心配はしなくていい。とはいえ、どれだけ出場可能な面々が入会してくれるかは出禁組の勧誘次第だな」
「みんなぁ、頑張ってねお願いだからぁ!?」
「いやぁ、祀璃ちゃんは可哀想で可愛いなぁ。ほら、私の胸に飛び込んでおい――がああぁぁぁぁぁぁ!?!?!?!?!?ギブギブ、しほちゃんギブギブギブ!?!?!?!?」
変なことを宣った西住に対し、ストッパー役の東山によるアームロックが綺麗に決まる。西住、お前は本当に残念な奴だな。
☆★☆★☆★☆★FOCUS:RUKI TATSUBOSHI☆★☆★☆★☆★
――築地先生の打診から土日を挟んだ、週明けの放課後。
新入生の部活動が解禁されたので、私達はアドラ・ステラ委員会の拠点となっている文化棟へと足を運んでいた。
「うわぁ……3階まるごと全部、アドラ・ステラ委員会で使用してるんだって。見て見てるきるき、この教室バトルフィールドが何個もあるよ!?」
「これだけ予算が使われてるとなると、既存メンバーがほぼ甲子園に出られないってなったら確かに築地先生も焦りますね……えっと、この部屋ですね?失礼します、1年の辰星と住良木です」
周囲の様子を観察しながら、築地先生に指定された教室にノックをした上で扉を開けると、そこには教壇側に立つ北小路先輩ともう1人、プラチナブロンドの髪をツインテールにした女の子が席に座っていた。
……初めて会うはずなのに、どことなく雰囲気に見覚えがあるなぁあの子。
「やぁ、よく来てくれたね。そして入会感謝するよ。築地先生はリモート会議中でもう少しかかるから、先に歓談といこうか」
「は~い♪1年B組の、住良木榛名でーす♪よろしく~♪」
「同じく1年B組の、辰星流輝です」
「1年A組の
北小路先輩に促されて、私達は立ち上がった天導さんと握手をしつつ自己紹介をする。天導、そしてこの雰囲気……あっ。
「もしかして、
「うん?なんで姉さんの名前を……いや、姉さんのアルバムで見た覚えがあるわねあなたの顔。夏合宿の奴だったかしら?」
「え、なになにどゆこと?」
「道流さんの2個下の後輩なんですよ、天導さんのお姉さん」
「へぇ、なるほど……」
思わぬ形で、縁が繋がるなぁ……ちなみに一薫さんは、咲耶さんと並ぶくらい道流さんLOVE勢だったりするけれど、それはさておき。
「じゃあ、あなたが『精霊憑き』なのね?姉さんの合宿に来てた時は顕現できてなかったそうだけど、今はどうなの?」
「どうにか、呼べるようにはなりましたよ。出てきてペンデ、ドラン」
天導さんの問いにあわせて私が声をかけると、私の後ろに私服状態のペンデとドランが姿を現す……あ、今日はメイド服じゃなくてちょっと洒落た感じの服装だ、よかった。
「『ペンディウス・ブレイヴァー』と『ドラン・ザ・グレイテスター』とはまた豪華な精霊ね……いや、レジェンディアカード*6の方かしら?」
「御明察の通りです」
「それで、貴様の精霊はどんな奴だ?」
「そうね、私の方も見せるべきね。ただごめんなさい、今日は代表として1体だけにしておくわ……きなさい、『ドゥア』」
「わかりました、おじょうさま」
ドランの言葉に天導さんが指を鳴らすと、天導さんの背後に機械的な関節が目立つ、神々しい雰囲気の女性が現れた。
……あれ、こんなモンスターいたっけ?
「おわぁ、精霊ってそんなこともあり得るんだ……」
「理屈の上ではわからんでもないが、驚きだなこれは」
一方で、榛名さんと北小路先輩は女性の姿を見て、驚きの声をあげていた。榛名さん達は知ってるのこのモンスター?
「天導の後ろに居るのは、モンスターの姿を元にした精霊ではないよ」
「まぁるきるきがピンとこないのも無理ないよ――黄色の呪文カードで有名な、『ディバインズ・ドゥア』のフェイタルアルトアート版のイラストだもん」
……………………えっ?