ホビアニ風百合異世界に転生して魔法少女もどきしながらTCGやってます(仮題) 作:朝陽祭
〜フェイタルアルトアートとは〜
開発チームが自信を持って皆様にご提供する、特別仕様のイラストで構成されたカードセットです。
背景ストーリーをより楽しめるようテキストにも拘ったデザインや、イラストレーター・他社作品とのコラボレーション等――皆様に、より『
(アドラ・ステラ商品ページより抜粋)
「あぁ……確かに公式放送のCMとかで見たことありますね。あんまり気にしてなかったですけど」
「どちらかといえば金銭に余裕のある大人向けのコレクターズアイテムだからな」
るきるきとみかっちに憑いてる精霊の顔合わせが一旦終わった後、ボク達はスマホでるきるきに商品ページを検索して貰いながら、フェイタルアルトアートの解説をしていた。まぁ、みかっちに憑く精霊の元ネタである「サイバース・ワルキューレ」――『ディバインズ・ドゥア』と、その特殊能力で呼び出せるディフェンダー*1のカードイラストをSF風な『メカ美少女』で統一して、枠とかも通常のとは異なるネオン風なデザインにしたセット――はみかっちの手元にあることからわかるように、既に受注終了してて今はシングル市場でしか手に入らないものだし、仮に『ディバインズ・ドゥア』を主軸にしたデッキを組むにしても、このイラストを必ず使うとも限らないからね。
「『ディバインズ・ドゥア』はフェイタルアルトアートに限らずイラスト違いが多いカードの1つだしね……とはいえ、誕生日プレゼントとして貰ったカード全種が精霊の依代になるとは思わなかったけど。というか、しれっと流してたけどみかっちって私のこと?」
「あ、やめた方がいい?」
「いいえ、あだ名で呼ばれるのは初めてだから嬉しいわ」
……みかっち、割とお嬢様系?というか今、しれっと「カード全種が精霊の依り代に」って言ったね。え、メカ美少女達を従えるお嬢様?なんかもう漫画とかアニメの住人ではそれ?
「ふむ……しかし、他の委員が来る前に顔合わせという形だったのだが、築地先生はリモート会議が長引いてるようだな。時間がもったいないし、どうせなら3人の実力も確認したいところだが――」
「こんちゃーっす!!へっへっへっ、噂の新人ちゃん達を見に来やしたぜ姐御ぉ!!」
……あ、北小路先輩が額を抑えた。
☆★☆★☆★☆★FOCUS:RUKI TATSUBOSHI☆★☆★☆★☆★
「いやー、別嬪さん達でええですのぅ!!あ、私は2年の
「……優樹菜が騒がしくしてごめん。2年の
「よ、よろしくお願い致します……」
眼の前でおちゃらけたことを言った西住先輩が、東山先輩にアイアンクローをされながら持ち上げられている様子を、私達3人は困惑しながら眺めていた。
「いや、済まない。よりにもよって委員の中でも特に濃い漫才コンビが初遭遇になるとはな……これでもアドラ・ステラの腕前はすごいんだこの2人」
「は、はぁ……」
「西住先輩はこの間のラビビットカーニバルで優勝してたよね?ラビビットさん達のSNSに、一緒にピースしてる写真挙げられてたし」
「優樹菜はなんというかこう、昔から煩悩が絡むとプレイスキルが格段に上がる困った子なの。なるべく止めるようにはするけど間に合わなかったらごめんね」
「止める=物理なんですね」
「主に同性にしかやらないからかろうじてスキンシップと言い張れるだけだからな……嫌だったら遠慮なく実力行使に出ていいぞ、西住はもうそういうキャラとして扱われてるから学内では問題にならん。東山は西住と幼馴染らしくてな、よくこういうツッコミをしている。西住、東山、この3人が先んじて入会した1年だ。左側から天導、辰星、住良木だ」
「「「よろしくお願いします」」」
北小路先輩が呆れながら二人の紹介と私達の紹介をしてくれるけど、前世でも昔のおおらかな時代の漫画とかに出てきそうなレベルのツッコミを見るとは思わなかったなぁ……あ、ようやく西住先輩が降ろされた。
「……しかし、ちょうどよく2人来てくれたな。西住、東山、これからこの3人の実力を確かめたいから、スパーリング相手になってくれ」
「はいはーい!!じゃあ私住良木ちゃんとやろっかなぁ!?」
「じゃあ私は、天導さんとしよっか」
そうこうしていると、北小路先輩の指示に従ってスパーリングのマッチアップがテキパキと決まっていく。
あれ、これだと私は昨年の個人戦準優勝者だっていう北小路先輩とマッチアップでは?
「何を言ってる辰星、元よりそのつもりだぞ?『転霊化』できるプレイヤー同士の対戦における暗黙の了解とかあるからな、早めに教えておいて損はないだろう?」
あ、はい、そうですね。
そういう訳で、バトルフィールドが設置されている教室に移動した後、それぞれのマッチアップで対戦が始まった訳なのだけれど――
「私は黒の呪文『
「……やっぱり、『黒単ダークマター』なんですね」
「私と一番相性がいいからね。以前の住良木の反応を受けて調べてきたのかい?」
「甲子園に出ることが決まっている以上、少なくとも前年度の強豪が使ったデッキタイプを知るのは必要かと思ったので」
「実にいい。うちのメンバー、そこは先生に任せっきりの面々が多くてね……」
なんか北小路先輩は苦労人なんだなと思いつつも、交互に手番を繰り返しながら進んでいく状況に、私はどうしたものかと考えこんでいた。
――アドラ・ステラカードゲームにおいて、前世にあったカードゲームにおける『無色』というような概念は、
これはアドラ・ステラの根幹設定が『光』をモチーフにしているから*2で、黒色は『光なき
初めて知った時には「『無色』でひとまとめにすればいいのになんでそんな変なことを……?」と思ったりもしたけれどそれはともかく。
北小路先輩の使う『黒単ダークマター』を前世の知識も交えて解説するなら、『特殊な無色コスト専用カードを参照する効果と戦術を駆使した、有色カードが一切入っていないデッキ』ということになる。
私の状況は幸いにも『エナジー』増加の効果を持つカードで最低限必要な『エナジー』数は揃ったので、そろそろ動けそうだけれど……
「私は『エナジー』を3つ消費して黒のオブジェクト:レガリア*3カード『イマーシブ・プラネタリウム』を『展開』。私の『エナジー』を1枚、裏向きにして『ダークマター・エナジー』化。私が『貯蓄』している『ダークマター・エナジー』が5枚以上の為、条件を満たした特殊能力が起動。お互いの黒ではない『エナジー』と場にある黒ではないカードは、赤・青・緑・黄・紫の5色を持つものとして扱う。もう1つ特殊能力が起動しているが、現状の盤面には影響しない為説明は省略する。残った『エナジー』3つを消費して黒のモンスター『ゼナオリオ』を『展開』。私が『貯蓄』している『ダークマター・エナジー』が3枚以上の為、条件を満たした特殊能力が起動。山札からカードを2枚引く。1枚『エナジー』が余っているが、これは使わずに私の手番は終了だ」
「ぐぅっ!?」
……悩ましい状況が、発生してしまった。
北小路先輩が『展開』したオブジェクトカードは、
問題は、北小路先輩が
なぜ、今の盤面に影響しないのか。それは単純な話で、エナジーを多く支払う必要があるカードのサポート――前世の知識も踏まえて解説するなら「『ダークマター・エナジー』を用いてコストを支払う場合、通常は1枚につき1コストなところを1枚につき3コスト支払う状態にする」という所にある。そして、黒の高コストモンスターには相手の色や自分の場に居る黒のモンスターを参照して強力な特殊能力を発動するカードがたくさんある。
つまりあのプラネタリウム、色に困らないぞヤッター♪とか呑気に考えてモンスターを並べたりしたら「かかったなバカめ!!」と返しに大型モンスターを出されてボコボコにされる罠なのだ。
幸い、私の手札には『イマーシブ・プラネタリウム』を破壊できるカードは存在するものの……デッキをハイランダー構築にしなければ精霊的なフルパワーを発揮できない私と違って、北小路先輩はカードの枚数を限界まで詰め込むことができるので2枚目以降を出されれば苦しくなるのはこっちだ。
ならば、いっそ――
「――私の手番を開始時。山札のカードを手札に加える代わりに『シグナルデヴァイサー』を展開します。そして、『シグナル』を手札にっ!!そしてそのまま5色、7つの『エナジー』を消費!!新たな竜鳳よ、次元を超えて、その『
「……ほぅ?」
(正直バトル漫画で必殺技を先に撃って凌がれる負けフラグ感すごいけど)変形した『シグナルデヴァイサー』から取り出した『シグナル』をそのまま『展開』し、私は『転霊化』して『
「『展開』した『
掛け声と共に、『シグナルデヴァイサー』から排出された3枚のカードが浮かび上がり、私の手元に来る……このカード達と『エナジー』にしたカードでできる最善策が、頭の中を瞬時に駆け巡る。どうしたって防げない状況はあるにせよ、それでも!!
「捲れたのは『紫煙蛇竜メデュルドラ』、『夢現皇・守護騎竜ペンディウス・ブレイヴァー』、『銀焔武踏姫ドラン・ザ・グレイテスター』の3枚で全て『ドラグネス』!!更に、『夢現皇・守護騎竜ペンディウス・ブレイヴァー』は『紫煙蛇竜メデュルドラ』の上に重ねて、『エヴォルト』状態で『展開』!!我が騎士よ、呼び声に応えよっ!!」
「……さて、どうにも嫌な予感が拭えませんが、道を斬り開く為に全力を尽くしましょう」
「『エヴォルト』の素体となったモンスターも、『展開』時の特殊能力は発動できるので『紫煙蛇竜メデュルドラ』の特殊能力を発動!!お互いに手札を全て昇華ゾーンに送る!!更に『夢現皇・守護騎竜ペンディウス・ブレイヴァー』の特殊能力を起動!!『エヴォルト』状態で『展開』された時または攻撃を行う時、相手のクリーチャーと戦闘できる!!更に、『夢現皇・守護騎竜ペンディウス・ブレイヴァー』は昇華ゾーンにあるカードの枚数分、パワーがプラス5000されるっ!!」
場にモンスターの状態で現れたペンデを紫のオーラが包み込むと、そのオーラは蛇のような形となって私と北小路先輩の手札へと襲いかかり、オーラに包まれた手札は超能力で昇華ゾーンへひとりでに浮かんで捨てられる。更にペンデが剣を振るうと、北小路先輩の場に居た『ゼナオリオ』が飛ぶ斬撃によって一閃され、消滅する。
昇華ゾーンに送られた北小路先輩の手札には2枚目の『イマーシブ・プラネタリウム』があった。なので、1つ目の博打には成功したみたいだ。
「『夢現皇・守護騎竜ペンディウス・ブレイヴァー』が戦闘に勝ったので更に特殊能力が起動!!『エナジー』にしたカードの中から『ドラグネス』モンスターを1体――『絢爛武踏姫ドラン・ザ・グレイテスター』を『展開』!!我が刃よ、舞い踊れっ!!」
「ここまでやってなお、まだ負けの目があるのがな……まぁ、
そう、手札も場も壊滅状態には持ち込んだ。それでも、
「まずは2体の『ドラン・ザ・グレイテスター』で攻撃!!」
「
ドラン達による銀と4色の焔が、北小路先輩の『ヴェール』を焼き尽くす。私が選択したのは、両端を2枚ずつと真ん中の1枚。ここまで北小路先輩は何も動きを見せない……いや、動ける状況じゃないので、お互いに次が正念場。
「『
『
「……さて、2つレクチャーだ。1つ、勝負に全力を注ぐのも重要だが、『転霊化』できるプレイヤー同士の戦いでは、可能な限りお互いが『転霊化』を行える状況を作るのが望ましい。より全力で戦っているとアピールできるからね。とはいえ所詮努力目標なので、今の辰星のように「やらなければ恐らく自分が負ける」と感じたのならそれで構わない」
「もう1つ、プレイヤーにトドメを刺す場合はできるだけ『転霊化』したモンスターで行う方がよい。その方がバトル漫画のように映えるだろう?まぁ、辰星のように『精霊』の依代となるカードでトドメを刺すのも映えるし、『転霊化』したモンスターが持つ特殊能力の都合もあるからこれも努力目標だ」
「ご教示、ありがとう。それで、今回の私のプレイングは何点なのかしら?」
「
――っ!?凌がれたっ!!
北小路先輩の持つカードから放たれた黒い雷がペンデへと襲いかかり、ペンデは体が痺れたかのように膝をつく。
『ブリッツスタン』……この能力を持つカードを相手に見せることで、相手モンスター1体を攻撃不可にするキーワード。踏んだとしても対処できないことはないけれど、『ヴェール』で加わった手札を減らさずに相手モンスターの攻撃を止めれるので、こういう場面で使われると厄介な効果だ。
「くっ……申し訳ありません、マスター」
「大丈夫よペンデ……私はこれで手番を終了するわ」
「私の手番を開始時、山札のカードを手札に加える代わりに『シグナルデヴァイサー』を展開して『シグナル』を手札に加える」
手番が始まると、北小路先輩は『シグナルデヴァイサー』を変形させてカードを取り出す……恐らくあれが、北小路先輩の『転霊化』するカード。
「複数枚デッキに入れてはいるが、やはり『シグナル』にしておいた方が変身アイテムのようにして使いやすいからね……相手の場の存在するモンスターの、黒・白以外の色数分だけ、このモンスターの『展開時』に必要な『エナジー』を2つ減少させる。更に、私の場にある『イマーシブ・プラネタリウム』の特殊能力で、黒のカードを『展開』する際に通常の『エナジー』3つ分として『ダークマター・エナジー』1つを扱える。よって、本来13個の『エナジー』を支払う必要のあるこのカードは、『ダークマター・エナジー』1つで『展開』することができる」
「では、お見せしよう。これが私の『転霊化』した姿――『極黒神アブザード・ディスペマリア』だ」
その言葉と共に、北小路先輩の身体を漆黒の闇が覆う。服が消え、裸体に全身スーツを纏ったかのような姿に一瞬変化すると、バチバチと弾ける雷光と共に黒いウェディングドレスと金の装飾が施された刺々しい鎧が合わさった衣装へと、闇が変化する。
元のイラスト自体はどちらかというと大理石のような素材の黒い女性型ロボといった印象だったけれど……なるほど、こういった『転霊化』もあるのか。
「『
「っ!!『
「任せろ!!」
『
「……ん?あぁ済まない。つい気が昂ってプレイングミスをしてしまった。本来なら私の場にある黒のカードの数だけ相手の手札を昇華ゾーンに送る特殊能力も起動するんだが、そもそも捨てる手札がないからよしとしよう。『ダークマター・エナジー』4枚を消費して、黒のカード『極黒神帝ディストピア・ホープレス』を『展開』する」
そういうと、『
「このモンスターが場に居る限り、私のモンスターは相手プレイヤーと『ヴェール』を攻撃する場合だけ次元酔いを無視できる。もちろんこれは先に出ている『
『
「『インフィニティ・ブラックホール』の特殊能力、選択した『極黒神』モンスターは、パワーと
総ては、
『
☆★☆★☆★☆★FOCUS:KAZUSA KITAKOUJI☆★☆★☆★☆★
ふむ……連鎖ドラグネス特有の爆発力、デュアライズカード*4でハイランダー構築での豊富な対応力と同系統カード採用による実質的な複数積みの実現で安定性の確保……よくもまぁここまで練り上げたな、驚きだぞ?
「あんな逆転勝利しといてですか……?まぁ、ここまで来るのにいろんな人達の協力がありましたからね。私1人だけの力じゃないです」
対戦後、バトルフィールドの傍で私と辰星は感想戦を行っていた。いや、運が絡んでいたとはいえ辰星のプレイングに文句のつけようはないのだけれどね。
捨てられた手札には『イマーシブ・プラネタリウム』と『極黒神帝ディストピア・ホープレス』があり、あの盤面では使わなかったが『極黒神帝ディストピア・ホープレス』は攻撃時に山札から好きな『極黒神』モンスターを踏み倒す特殊能力も持っている。
もしあそこで『イマーシブ・プラネタリウム』を破壊して自分の展開に繋げていたとしても、仕留めきれなかったり『紫煙蛇竜メデュルドラ』が出てこずに手番を渡してくれるのならばいくらでもやりようはあったのだ。
なので、あそこで危機を察知して行動し『紫煙蛇竜メデュルドラ』まで引き込んできたのは素晴らしかったし、
「おう、お疲れ様。いやー、待たせてしまってすまんな」
「おや、築地先生」
すると、築地先生が西住と住良木を伴って私達の方へ現れた。東山と天導の対戦はまだ続いているようだな。
「西住、住良木はどうだった?」
「いや、いくらさいきょ〜むてきの西住ちゃんでも、『流氷騎士』の最強ムーブは無理ですって。とはいえ、
「これ褒められてるんです……?ボクのプレイングよりデッキが強いって話でしかないんじゃ……」
「いや、褒められてるぞ。そこが上手く馴染めずに甲子園を諦めて公認大会に専念する委員も先輩方には居たからな」
『精霊』とかも絡む関係で、甲子園には「魔物」が本当に居るからな……いわゆる『環境デッキ』という分かりやすい指標を持つデッキで、公認大会でそれなりに実績を積んでるプレイヤーがウソのようにボロ負けするなんてことや、フェザーリーグの動きに適応できてるプレイヤーの方が甲子園でよい成績を出すことも珍しい話じゃない。
「他の委員達も集まってくるだろうし、東山と天導の対戦を見に行くか。ところで西住、東山はお前のストッパーだから置いといて、他の出禁枠と蘇枋は新入生の勧誘に出向いてるみたいなんだが、なんでお前はここに居るんだ?」
「え〜?新人ちゃんを早く見たいなって♡スパーリング相手にもなったんで結果オーライってことで」
「お前ねぇ……」
東山と天導のところへ向かいながら、築地先生と西住の会話を聞いて私は呆れた顔になるのだった。
辰星、住良木、お前達はなるべくこいつを反面教師にしてくれ。