ホビアニ風百合異世界に転生して魔法少女もどきしながらTCGやってます(仮題) 作:朝陽祭
「本当にありがとう翔真君!!お礼になんでもするからね!!」
「いえ……祀璃姉さんの頼みなので。あと、そういうこと他の人に言わない方がいいですよ」
「でも、こういう時はこう付け加えた方がいいって優樹菜ちゃんが……」
「例のあの人ですか……与太話なのであんまり信用しちゃ駄目ですよ」
「うぇぇっ!?」
新入生の部活動が解禁された放課後、僕は幼馴染である祀璃姉さんとアドラ・ステラ委員会の拠点である文化棟に向かっていた。
入学を祝ってくれたかと思えば次の日には半べそをかいていたのでどうしたのかと尋ねてみれば、(ややこしいので部活として話すが)部員が外部の大会で結果を残しすぎて、今年のアドラ・ステラ甲子園に出る人数が足りなくなり、自分がメンバーに抜擢されそうだとのことだった。
昨年に勉強を教わりながら部活の話を聞いていた時に「こんなに凄い人達が居るんだ!!」と目を輝かせ誇らしげに語っていた人なので、事情があるとはいえそんな人達を差し置いて自分なんかが……と考えるのはまぁ仕方のないことだとは思う(祀璃姉さんに変なことを吹き込む「西住優樹菜」という先輩は要注意だと認識したが)。
それはさておき、祀璃姉さんのデッキ調整に付き合う為に僕もアドラ・ステラを始めていたので、頭数を揃えるのでよければということで、入部の意思を伝えに部室へ向かっている、という訳だ。
足を踏み入れようとすると、空気を震わせるような感覚が、僕の身体を突き抜けていく。
今の波動は――居るのか、同類が
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「
「……お見事」
私の周囲に浮かぶSF的なアーマーを纏った少女の攻撃によって、東山先輩が敗北演出の爆発エフェクトに包まれ……私の勝ちが決まった。
事前に北小路先輩から委員会内の事情は聞いていたけれど、この人も出禁枠になるくらい上手い人だということを改めて思い知らされるバトルだった……最後の『ヴェール』に『ディバインズ・ドゥア』が埋まっていなければ、どうなっていたことやら。
「……見えたカードから推測すると、精霊による
「1回のバトルで、よくそこまで見抜けますね……?いや、前者は使うカードがそういうのばかりだったのでまだわかりますけど」
「その分析力を買われて、築地先生にスカウトされたからね。ちなみに優樹菜は爆発力」
――
特に複数の精霊が憑くということになると、それぞれの精霊が持つ
一方、
これにはメリットデメリットがあり、
ちなみに
昨年度甲子園個人戦準優勝者の北小路先輩だけでなく、西住先輩や東山先輩も一芸を持っているとは……姉さんから聞いていた以上に、ここはすごい環境のようだ。無表情に近い状態でダブルピースをする東山先輩を見つつ、私は内心舌を巻く。
「ありゃ、こっちも終わってたか?」
「「築地先生」」
そんなことを考えながらバトルフィールドを降りていると、他の面々を引き連れた築地先生が入ってきた。
「しほちゃ〜ん、おっかれぇぃ!!どうだった?」
「強かったよ、負けちゃった」
「そうなんだ?いやー、私も負けちゃったよ。今年の新人は豊作ですなぁ!!」
「うぅ、ということは私だけなんですね負けたの……」
「まぁまぁるきるき、北小路先輩を『ヴェール』運にまで持ち込むくらい追い込んだのは十分すごいって」
「そうだぞ辰星?私はもう卒業しても後を託せる新星が居ることに安堵して、今年の甲子園はより全力を出し切る気持ちで居るからな」
「それはそれで買いかぶりすぎですよ先輩!?あとまだ新学期始まったばかりなのに卒業のことを考えないでください!?」
……なんか、愉快なことになってるわね。
そういや、辰星は『転霊化』もするし精霊も2人憑いてるのよね?
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「私の
「あぁ、このタブレットに管理アプリを入れてるから、すぐ出せるぞ……
それぞれがスパーリングを終えた後、天導さんに
そういえばこっちの世界、前世と微妙にサブカル系の名称とかが違うからフ◯◯ザ様とか通じないんだっけ。
「『ゼノバースペリオル』を『シグナル』にしてから確認してなかったんですけれど、下がったみたいですね」
「「「「「「下がった!?この数値でぇ!?」」」」」」
「アドラ・ステラ始めた当初は計測不能*2でしたし、春休み前まででも一番低くて100万くらいは叩き出してたので……」
あー、なんか新鮮な反応だなぁ。今思うと、道流さん達よく見捨てなかったなぁ私のこと。匙投げてもおかしくないのに。
「『転霊化』と『精霊憑き』の両方を満たす奴は他にも見たことあるけど、それでも1000は超えてなかったぞ……?」
「逆に、爆発力は委員会どころか世界中でもトップクラスかもしれませんね……」
「……なんか、悪かったわね変なこと聞いちゃって」
「るきるき、頑張ったんだねぇ」
「挫けずに、アドラ・ステラを辞めないでくれてありがとう……ありがとう……っ!!」
「めったに泣かないしほちゃんが、感涙してる……」
あれ、なんか変な空気になっちゃってるや。むしろ、道流さん達と一緒に色々デッキ考えるの楽しかったからいい思い出なんだけどなぁ?
あと榛名ちゃんと東山先輩、そんな泣きながら抱きつかれてよしよしされてもちょっと困る、かなぁ?
「こんにちはー!!先生、入会希望者連れてきた……ってあれ?どうしたのみんな?」
「おぉ、蘇枋か。いやちょっと色々あってな……」
すると、新しく教室に入ってきた2年の先輩が私達の様子を見て首を傾げる……リボンの色で2年と判断したけど、背は私達より小さいから、あんまり高校生に見えないかもしれない。
その後ろには、線の細い1年の男子が立っている。あの子が、入会希望者なのかな?でも、なんだろ?なんか肌がゾワゾワするなぁ。
「あ、あなた達が先生の言ってたスカウト組の子達だね!!私は2年の蘇枋祀璃、よろしくね!!それと」
「1年の
「歓迎するぞ赤西、よろしくな」
「翔真君は、幼馴染なんだ~♪あと――」
「優樹菜ちゃんがよく言う、
その瞬間、教室が静寂に包まれた。なお、嫁扱いされた赤西君すら宇宙猫になっている。
「…………え、あの、祀璃、姉さん?」
「だって翔真君、小さい頃約束したでしょ『大きくなったらお嫁さんにしてくれる』って?」
「あ、はい確かにしましたけども?え?」
……これはどう思います、榛名さん?
「ボクの分析によると、『小さい頃の約束だし忘れてるよな』とか思いながら片想いしてたつもりだったら両想いすっ飛ばした状況だったことに嬉しさよりも困惑の方が勝ってるとみたね」
メガネをクイクイさせるジェスチャー付きでありがとうございます。
へぇ……ふぅん?ほぉん?
「あの、なんですかその温かい目は?」
「いえいえ、別にぃ?」
いやー、知り合いの人にガールズラブ系が多かったので、逆に新鮮ですねぇこういうのは!!
「……け」
「「「「「「「け?」」」」」」」
「決闘じゃああああ!!!!!!バトルフィールドにあがりやがれこんちくしょうめぇ!?!?!?!?」
……あ、なんかフリーズしてた西住先輩が壊れた。
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……どうして、こうなった?
祀璃姉さんの衝撃発言から立ち直る間もなく、僕はバトルフィールドの上に立ってアドラ・ステラをやることになってしまっていた。『シグナルデヴァイサー』にシャッフルしたデッキと『シグナル』をセットしつつ、更にバトルフィールドのスロットに装填する。
そうすると、バトルフィールドから給電されたことで『シグナルデヴァイサー』前面にあるLEDパネルが――僕の場合、『シグナル』に対応した赤・緑・紫の3色がグラデーションのようになって――点灯する。
「ところで東山先輩、西住先輩って蘇枋先輩のことLOVEで好きとかそんなあれですか?」
「ううん?祀璃ちゃんが半分マスコット枠で可愛がられてたってのはあるけど、茶化しが7割で後は赤西君のスパーリング相手を買って出たってところかな?」
「あの状況からよくそこまで頭回りますね……」
「まぁ、赤西のプレイングを見れるのはいいことだな……それで蘇枋、赤西はどのくらいの実力なんだ?」
「えっと、いつも私の応援とかデッキ調整には付き合ってくれるけど、そう言えば公認大会に参加したとかは聞いたことない……かも?でも、調整だと結構負けるよ私!!」
「ちなみに蘇枋先輩、赤西君との馴れ初めとか聞いちゃってもいい系ですか〜?」
……なお、
「おーほほほほほほ!!祀璃ちゃんを嫁にしたければ、私を倒すことねぇっ!!」
そしてあなたはどういうテンションなんですか……まぁ、こちらとしても都合がいいんですけど。あ、バトルフィールドの先行判定で僕からになったか。
「ひょ?」
「あなたでしょう?祀璃姉さんに色々変なことを吹き込んでいるのは?今回のあれもある意味それのせいな訳ですし」
「アッ、スーッ……ええい、うるちゃいうるちゃいうるちゃい!!私の『流氷騎士』を越えてからそういう減らず口は言いなさいな!?」
「まぁいいですけど……では、僕の手番から。僕は赤の『エナジー』を貯蓄、そのまま消費し赤のオブジェクト:レガリアカード『レガシーズソウル・エンジンズビート』を『展開』します。特殊能力を起動し、手札を1枚昇華ゾーンへ送り、山札から2枚ドロー。このまま手番終了です」
「あ、ちょっと待ってね今そっちの昇華ゾーン確認するから……うげっ。私の手番、青の『エナジー』を『貯蓄』してそっちに手番を返すよ!!」
バトルフィールドのAR機能を使い、僕の昇華ゾーンを確認した西住先輩は嫌な顔をすると、特にカードを出さず自分の手番を終えてくる。確か、『流氷騎士』が本格的に動きだすのは3ターン目からだっけ?なら、このターンは全然余裕があるな。
「僕の手番です。山札からカードをドロー。緑の『エナジー』を貯蓄し、2つの『エナジー』を消費して緑の呪文『
「私の手番、ドロー!!落ち着け……落ち着け……赤西君のデッキは『シグナル』が3色な以上、必然的にリミテッドカードな『アレ』はデッキから引き当てなければならないし、『ヴェール』に埋まっている可能性だって高い。今の特殊能力で『アレ』を探すのに必要な『コール・ダイヤル』*3がなんかやたら昇華ゾーンに行ったんだ。それなら返しのターンでフィニッシュムーブを決めるのは難しいはず。あのデッキなら受け札は薄いから、手番が回ってこれば私が勝てるんだっ!!紫のエナジーを『貯蓄』して、そのまま消費!!青のモンスターカード『スノウマン・ラヴハート』を『展開』!!特殊能力が起動して、私は3枚までドローして、同じ枚数の手札を山札の上に戻せる!!もちろん、3枚ドローの3枚戻しだぁ!!」
西住先輩が叩きつけるようにカードを出すと、ハートの模様が光っている雪だるまが現れ、そのまま西住先輩は手札を入れ替えていく。一見すると意味があるのかわからない特殊能力だけれど、次に引くカードや何かしらの特殊能力で山札の上にあるカードを『展開』する際にその内容を把握した上で使うことができるので、地味ながらも強力な特殊能力だ。
……まぁ、西住先輩は「露骨に死亡フラグを立てればきっと反転して生存フラグに!!」みたいな考えでわざわざ考えを口に出したのだろう。
祀璃姉さん以外の
「では、僕の手番ですね。カードをドローして『エナジー』を貯蓄。3つの『エナジー』を消費して、『爆走竜エクスドラグーン』を『展開』します。レガリアの『レガシーズソウル』は『エヴォルト』を持つモンスターを上に重ねることができるので、『爆走竜エクスドラグーン』は『エヴォルト』状態で『展開』されます」
僕がカードを使うと、場にトリケラトプスを模したバイクに乗った竜人のモンスターが現れる。
『爆走竜エクスドラグーン』――僕のデッキにおいて、重要なモンスターだ。とは言っても、このカードが戦局を左右する特殊能力を持っている訳ではない。
重要なのは、このカードが『エクスライダー』と『ドラグーン』に属するモンスターだという点だ。
それじゃあ、駆け抜けるとしよう。
☆★☆★☆★☆★FOCUS:HARUNA SUMERAGI☆★☆★☆★☆★
「『爆走竜エクスドラグーン』で攻撃する時、僕は昇華ゾーンにある『
……うわっちゃあ、勝負あったねこれは。
『タキオンズ・ドライブ』。『エクスライダー*4』と呼ばれるモンスター達と共に登場した、「自分モンスターの攻撃時に条件を満たしていれば、そのモンスターを素材として『エヴォルト』状態で手札から出せる*5」というシンプルながら強力な特殊能力なんだ。
何があれって、攻撃時に満たす条件がすこぶる緩いんだよね。『
とはいえ、『時天龍鳳コズミックドラグオン』の怖いところはここからなんだけど……それよりもまず、バトルフィールドに変化があった。
バイクに乗って走る『爆走竜エクスドラグーン』が光に包まれると、赤いカブトムシを模したバイクと鎧に身を包んだ戦士――『
「翔真君!?」
蘇枋先輩の声をよそに、赤西君を包んだ焔は次第に形状を変えていき……鳥のような翼と、龍のような装飾を併せ持つ、赤い変身ヒーローみたいな姿に、変わった。
えっ、赤西君も『転霊化』ぁ!?
「『
特撮ヒーロー風になった赤西君が腕を横薙ぎに振るうと鳥の形をした焔が放たれ、『スノウマン・ラヴハート』を焼き尽くし*9、更に西住先輩の『ヴェール』がその余波で全て破壊されて、西住先輩の手札へと加わっていく。
「ぐ、ぐ、ぐぅぅぅぅぅっっっっっ!?!?なにも、なぁぁぁいっっっ!!!!」
セヤロナー。いや、正確に言うと『流氷騎士』デッキに入る受け札だと『時天龍鳳コズミックドラグオン』の「相手のカードによって選ばれた時、相手の手札と『エナジー』を3枚ずつ昇華ゾーンに送る」って特殊能力を回避できないから使うに使えないってだけなんだけど。まぁリミテッド行きも納得する強さだよ。
「では……そのまま、攻撃を続行!!」
「ぐわああああああ!!!!」
こうして、西住先輩は(エフェクトだから本当になる訳じゃないけど)こんがり焼かれてしまったとさ。
「……おいおい、今年は豊作だなぁ。精霊関連のバーゲンセールか?」
「ブフッ!?」
あれ、るきるきなんかたっちゃん先生の言葉に噴き出したけどどうかした?そんなおかしいっけたっちゃん先生の例え?
「いえ、思い出し笑いがたまたま出ちゃっただけなので気にしないでください……でも、彼を見た時にゾワゾワしたのはこれが理由かぁ」
「あー、『フェネクス』モンスターって、全部『フェネクスペリオル』ってモンスターから産まれたってフレーバーテキスト*10だもんね?そういうオカルティックな感応とかあってもおかしくないかぁ」
「しかし蘇枋、どうしてお前も……いや、彼は公認大会に出たことがないって言ってたな。じゃあ、バトルフィールドを使うのを見るのも、これが初めてか」
「はい、驚いたなぁ……」
「リミテッドカードが『転霊化』の対象って、なかなか怖いわね……」
そんな感じの感想で締めくくりつつ、今日の委員会活動は終了となったのでした、まる
☆★☆★☆★☆★FOCUS:RUKI TATSUBOSHI☆★☆★☆★☆★
「いやぁ、今日の風呂はまたいつも以上に心地よいものだったな主よ!!」
「まぁ、確かに疲れた身体を癒すにはちょうどよかったね……」
「お疲れ様です、マスター。マッサージの準備ができているので、こちらに」
委員会活動を終えて、帰宅した後。
ドランと一緒にお風呂に入った私は、そのままペンデに促されるままにリビングに敷かれたタオルシーツの上に寝転がった。すると、上に乗ったペンデが背中のマッサージをしてくれる。心地よさに包まれながら、私は今日のことを思い返す。
色々大変そうだけれど、同年代の子達と一緒に部活動できるというのは、やっぱり楽しい。
なんだかんだホビーアニメっぽい世界なせいか男女問わず遊びの中心がアドラ・ステラだったので、ろくにデッキも回せず、ペンデ達も対応したカードがなくて実体化させれない状況では友人関係がすごく難しかったのだ。
だからこそ、家や中学までの行動範囲から外れた『BLUE PLANE』に通っていたのだ……まぁ、高嶺の華扱いされるのまでは想定外だったけど。
こんな感じで、これから楽しく青春を送れるといいなぁ……