西の王女   作:愚かなるホモサピ

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中途半端に終わります


タッカー家のお手伝いさん

生体錬成の分野に興味を持ったエドワードとアルフォンスはマスタング大佐の計らいで

ある男のもとを訪れていた

「うわーお客さんいっぱい!」

男の一人娘のニーナが扉を開け嬉しそうに言った

「ニーナ、犬は繋いでおかなくちゃ」

アレキサンダーにのしかかられたエドワードを見て男が苦笑を浮かべニーナを諌めた

「ルーシー君、お客さんが来たから紅茶入れてくれるかい‽…ルーシー君‽また資料室だな。」

「客人などあまり来ないのでお口に合わなかったら申し訳ない」

男が紅茶を入れ席に着く 

「改めて、初めましてエドワード君。綴命の錬金術師、ショウ・タッカーです」

 

 

 

 

「わーすっげぇー…」

「資料室だ。自由に見ていいよ。ルーシー君‽いるんだろう、ルーシー君」

タッカーの呼びかけに奥の本棚から手だけがすっと伸びてきてまた引っ込んだ

「うわ⁉」

「あはは、彼女は極度の人見知りでね。恥ずかしいみたいだ。エドワード君達の邪魔はしないからそっとしておいてあげてくれないか」

「別に大丈夫ですけど…じゃあ俺はこっちの棚から」

「じゃあ僕はこっちから」

大佐の言葉にも応じず書物に没頭するエドワード。

「いるんですね、天才ってやつは」

その姿にタッカーはこの家の手伝いを重ねていた

 

 

 

少女の笑い声でエドワードは本を読む手を止めた。気になって見に行くと何故か弟がニーナと遊んでいた

「アル!なにやってんだよ」

「ニーナ遊んでほしそうだったから」

「お前なぁ、何しにここへ…うわぁ!」

エドワードはアレキサンダーにまたのしかかられた

「…いい度胸だ。獅子は兎を狩るのにも全力を出すという。このエドワード・エルリックが全身全霊で相手してくれるわ!」

こん犬ちぃきしょうめぇ!!!

日が暮れその犬畜生に翻弄されへとへとのエドワードとアルフォンスは迎えに来たハボックに連れられ資料室をでた。本棚の奥から緑の瞳がのぞいているとも知らずに。

 

何日もタッカー家を訪れるうちエルリック兄弟にニーナはとてもなついていた

その日アルフォンスはニーナの母親が二年前に家を出ていったことを聞いた

「そっか、こんな広い家にお父さんと…ルーシーさんだけじゃ寂しいね」

「ううん平気。お父さんもルーシーも優しいしアレキサンダーもいるから!」

「そのルーシーって人、どんな人なの‽僕ら一度もあったことがなくて」

少し遠くで本が落ちた音がした

「…ルーシーさん、もしかして」

「うん、きいてる」

声を潜めて二人が話す

「ルーシーはね!えーと、いつも遊んでくれるの!今日はねわたしとおそろいのおさげなんだ。それにね、おっちょこちょいなの!」

「へー。ルーシーさん、会ってみたいな」

さっきより近くで足音がする

「恥ずかしがらずに出てきたらいいのに」

「ねー」

本棚を挟んでニーナのすぐ後ろで足音がとまった

「よお、あんたがルーシーさんか‽」

いつのまにか後ろにきていたエドワードにルーシーは肩を跳ねさせ持っていた本を盛大に落とした

「いってえー」

「兄さん大丈夫‽」

落とした本の一つが当たりたんこぶを作った。その犯人はさっきからずっと目をつむりたんこぶを抑えるエドワードにペコペコと頭を下げている

「あんたな!驚かした俺も悪いけど少しは謝ってくれても…」

「ルーシーはね、声がでないの」

ニーナがエドワードにそういった。ルーシーはさっきよりもっとペコペコと謝っている

「え、あ悪い。もう大丈夫だ」

その声を聴いてルーシーはゆっくりと頭をあげた。八の字に曲がった眉と緑の目が申し訳なさそうにエドワードを見る

赤髪に緑眼はアメストリスには珍しい色だった

「ルーシーさんって外国から来たの‽」

アルフォンスの問いにルーシーはブンブンと首を縦に振る。言葉を使えない代わりにオーバーなリアクションで返しているのだろう。

「ルーシーも一緒に遊ぼう!」

ニーナがルーシーの手を引く。ルーシーは戸惑ったような表情をしたあと満面の笑みをニーナに向けた。この日からルーシーも一緒に遊ぶようになった

 

「ルーシーさんは声が出せるようになりたいからタッカーさんのもとに来たんだね」

アルフォンスの言葉にルーシーは頷いた。

高熱により声が出なくなり声を取り戻すため幼くして旅にでたルーシーはどの医師からも匙を投げられた時、綴命の錬金術師が人語を話すキメラの研究をしていると聞いたそうだ。人にも転用できるのではと思ったルーシーははるばるタッカーのもとに来た。

だがタッカーでもルーシーの声は治せなかった。

旅費も底を着き困っていたところを「妻に逃げられて家が荒れ放題でね、ニーナも私一人では寂しいし、君さえ良ければ」と家のお手伝いさんとして雇ってもらい住み込みで働いていると筆談で教えてくれた。「とても優しい人で錬金術の師でもあるタッカー先生にはとても感謝していんです」とも。

文字の読み書きも怪しかったルーシーはここで学び、今では多少のなら使用できると見せてもらった錬金術は見事なものだった

「まあ、俺には及ばないけどな。いいセンスじゃねーの」

兄の素直じゃない褒めにも嬉しそうにしていた

いい子なんだろうなとアルフォンスは思った。ニーナもルーシーを慕っている。

旅は辛かっただろう。自分もしているから分かる。このまま元に戻れないんじゃないかという考えがいつも付きまとう。その旅をたった一人で。

今日も三人と遊んだ。

楽しそうに笑うニーナと息をあげて走るアレキサンダー。そしてそれを見てにこにこと屈託なく笑うルーシー…

 

 

 

 

 

 

 

ある曇りの日、エドワードとアルフォンスは今日もタッカー家を訪れていた

「こんにちはータッカーさん。今日もよろしくお願いします」

返事はなかった

「タッカーさん‽」

「おーい、ニーナ‽」

「ルーシー‽」

「アレキサンダー」

おかしい、いつもなら迎えに来てくれるニーナとアレキサンダーも、家にいるタッカーもルーシーもいない

奥のキメラが大勢いる実験室。そこにタッカーはいた

「タッカーさん‽」

「なんだ、いるじゃないか」

「やあ」

「出来たよ。完成品だ

     ________人語を理解する、キメラだ」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

気付いたエドワードが尋ねる

 

「…タッカーさん、国家資格取ったのって、いつだっけ」

「えーと、二年前だね」

「奥さんいなくなったのは」

「…二年前だね」

「もひとつ質問いいかな」

 

 

 

 

 

「ニーナとアレキサンダーとルーシー、どこ行った‽」

 

「君のような勘のいいガキは嫌いだよ」

瞬間エドワードがタッカーに掴みかかる。怒りがエドワードを支配していた

「二年前はてめえの妻を!そして今度は娘と犬と慕っててくれた弟子使ってキメラを錬成しあがった‼人の命をなんだと思ってんだ!‽」

「人の命がどうとか、君が言うのかい⁉母親を錬成しようとした君が‼」

その言葉にエドワードの顔が悲痛に歪む

「それに彼女は今回使っていないさ!失語症の人間なんて使えば結果に悪影響がでる‼」

次回の査定には使えるかもしれないが、錬金術を使うキメラならいい評価がもらえるかもしれん‼

そう続けたタッカーをアルフォンスが止めに入るまでエドワードは殴り続けた

「…お父さん、いたい‽」そう言ってエドワードの隣に、

「あそぼうよ、あそぼうよ」そうアルフォンスに話しかけ、

変わり果てた姿のニーナ。

蹴り上げた銀時計に這いずって近寄るタッカー。

「何が国家錬金術師だ…何が、」

「くそぉぉぉ‼」

エドワードの叫びがこだました。

 

 

 

 

空は曇りから激しい雨に変わっていた

『困ったな、今日は荷物が多いのにこうも降られたら』

買い物の途中に降りだした雨は予想に反して止むことはなく、雨宿りをしていたルーシーは空を見上げた。雲は分厚くまだまだやみそうにない

『お肉もお魚もないし濡れてすごく困るもない…よし!』

羽織っていたカーディガンを紙袋に巻き付け抱えて大雨のなかルーシーは家を目指して駆けだした

家の表に憲兵の死体があった。

悲鳴など昔に出なくなっていても思はず開いた口を手が抑える。その拍子に抱えていた荷物が落ち買ってきたジャガイモやニンジンが転がって雨に打たれた

ルーシーはなりふり構わず走る。走る。嫌な考えがとまらない

『国家錬金術師殺しの凶悪犯はまだ捕まっていない!あそこに憲兵さんがいたなら、次の狙いはタッカー先生!』

ニーナとお揃いのおさげがほどける、足がもつれても構わず家の中を走る

『ニーナちゃん!無事でいて!』

一つ、雨に濡れた自分以外の足跡がある。それをたどってルーシーは迷わず部屋についた

全力でここまで来たのに間に合わなかった

大柄の額に傷のついた男が手を犬型のキメラにかざし顔だけこちらに向けて私を見ていた。

後ろには、後ろには…

『タッカー先生!』

血を流し倒れるタッカーがルーシーの目に飛び込んできた

『そんな、嘘…』

「この家に住む者か‽」

崩れ落ち項垂れるルーシーに男、スカーが問いかける。悲しみに暮れた目がスカーを捕える

「この男は実の娘と犬を使いキメラを錬成した」

『…は‽』

『なにを、なにを言っているんだこの男は。タッカー先生が‽ニーナちゃんとアレキサンダーを‽ありえない』

「信じられないという様子だな」

ルーシーはキメラを見る

『アレキサンダーみたいな白い体…ニーナちゃんみたいな髪の毛』

タッカーの傍らのキメラは涙を流していた。そしてつぶやく、お父さんと

分かった。男の言っていることが本当だと、理解してしまった

「憐れな魂よ、これではもう元には戻れまい」

男の声ではっとする。うなだれている場合ではない

再び手をかざすスカーを正面に震える脚で立つ

「…どけ、言ったはずだ。もう元には戻らないと。ここで殺しておくのが救いになる」

ルーシーは首を大きく横に振った

『絶対にどかない。元に、元に、戻るはず。必ず方法が』

 

 

 

「…そうか相分かった」

   

 




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