二人目の男子はIS学園No.1(最強とは言ってない)   作:塩ようかん

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 皆様の応援もありましてこの物語も今回で無事、100話目に達しました。これからも更新を頑張って行きたいと思いますのでよろしくお願いします。
 それと、後書きに報告があります


100話 会議、冷静なる光の激情

「馬鹿な……いくらなんでもそれは……」

 

「私も……とても……とても事実とは思えませんわ……」

 

 光から告げられた衝撃的な言葉に流石に動揺を隠すことが出来ない様子でラウラが呟き、それに続くセシリアの声も衝撃にうち震えていた

 

「無理もないさ、正直な所……俺も、こんなプログラムがタイラントに仕組まれていた事を研究施設がハッキリと否定さえしてくれていれば、あの音声は何らかのバグやエラーが元で生み出されたものと結論付けようとしていたさ……だがな」 

 

 肩をすくめ、深く重いため息をつきながら光はそう呟いて一旦言葉を区切る。が、すぐに表情を引き締めると、姿勢を正し、再び口を開いた

 

「だが……しかし、俺自身も気になる所ではあるが、今はこんな馬鹿げたプログラムを仕組んだ犯人やその動機を探すより先に何としてもなさねばならない事がある。そうだろう?」

 

「……私達を標的に定めている逃走中のタイラントの撃破……か」

 

 その場にいる全員に問いかけるような光の言葉に、箒が静かに、しかし確信を持った様子で答えた

 

「その通りだ箒。そして……先程から意図せずして、皆には悪い情報ばかりを伝える形になってしまったが……このタイラント撃退についてはいくつか朗報がある」

 

 箒の言葉を肯定すると光は、小さく口元に笑みを浮かべ、携帯端末をいじるとその画面を再びディスプレイに映像を写し出す。写し出されたのは慎吾がタイラントの襲撃を受けた海域一帯と本島の海岸線の一部、そしてM-78社の研究施設を含めたいくつもの島々が散らばる海が描かれた地図であった

 

「確かに先程説明したように、俺と慎吾はタイラントに挑んだものの敗北を許し、奴を逃走させてしまった。が、しかし、奴には相応の深手を追わせている。特に集中して攻撃したエネルギー補給器官などは高く見積もっても姿を見せた当初の30%の力も残っていないだろう……いかにタイラントの燃費や耐久性が優れていてもこの損傷のまま今も逃走し続ける事はまずもって不可能と言えるだろう」

 

 

 そこまで光が言うと画面に映し出されている地図の海上に浮かぶ島々を取り囲むように赤い線で縁取られた枠が出現した

 

「よって奴はそう対した距離は移動できず、まだ外洋には出れていない。戦闘で失ったエネルギーを充填するべくこの諸島のどこかにタイラントは潜伏しているはず……そして、ここからが肝心の朗報だ」

 

 そう言って光はニヤリと笑ってディスプレイに視線を向けた瞬間、諸島を囲むように描かれていた赤線がその形を変え、四つの小さな円形へとなる。四つの円はそれぞれ別々の一つの島を囲んでいた

 

「ついさっき我が社……Mー78社の監視衛星レーダーがタイラントを捕捉した。タイラントの放つジャミングのせいで乱されてピンポイントで当てる事は出来なかったがそれでも、確実にこの四島のどこかにタイラントは潜伏しているはずだ」

 

 と、そこで光はディスプレイに向けていた視線を戻し、一夏達の元へと振り返った

 

「飛行が不安定になり、イヤーの一部が全損するほどの損害を受けたタイラントはエネルギーチャージを終えるのにかなりの時間を消費するはず。奴の正確な潜伏場所を突き止め、入手した攻撃パターンを徹底的に研究するには十分な時間が残されている」

 

 そう言った瞬間、光の口元がつり上がり口元に笑み

が浮かぶ。それは敗北を喫し、怪我を負っても決して勝負を諦めずに勝利を勝ち取らんとする。戦士の力強い笑顔であった

 

 

「さぁ……たったの一機で七機のISを完全破壊など馬鹿げたプログラムが仕組まれたタイラントをここにいる皆で力を合わせて打ち倒そうじゃあないか!」

 

「……いつになく獰猛な台詞だな……芹沢。そんな姿は学園でも私も殆ど見たことが無いぞ」

 

 と、そこで今の今まで静かに光の話を耳にしていた千冬が静かに口を開き、光の言葉に突っ込みを入れるような形でそう言った

 

「ええ、そうでしょうね織斑先生……」

 

 そんな千冬の言葉を特に否定する事も無く、光は受け入れて頷く

 

「実験中、勝手に研究施設に現れて好き放題暴れて、Mー78社自慢のIS二機の破損。……そして何より親友を傷付けられても平静でいられる程、俺は大人ではありませんから」

 

「ひ、光……」

 

 そう形としてはあくまで淡々とした口調で答える光ではあったが、その裏にははっきりとしたタイラントへの怒り。それも、激怒と言えるレベルにまで膨れ上がっている感情がハッキリと見え、慎吾は思わずマリから控えるように言われていたのも忘れてベッドから起き上がりその名を呼んだ

 

「つまり……今回の作戦には光ちゃんは本気も本気。超本気で挑むってわけね。ふふっ……いいじゃない。そう言うの嫌いじゃないわよ」

 

 病室に集まっている多くが静かに、だがその内で激しい怒りを見せている光に思わず圧せられる中、何故だか少し楽しそうにそう言う楯無の声が静まり返った病室に響いていた

 

 

「………………」

 

 慎吾が襲撃を受けたMー78社研究エリアの島、そこから然程離れてはいない一つの孤島。その海岸線近くの岩場でタイラントはヒカリを打ちのめした長い尾を体に巻き付け、胎児にも似た姿勢で体を丸めて休み、大分少なくなった背中のエネルギー補給器官である刺を利用し、失ったエネルギーを全身へと充填していた

 

 と、それと同時に『ゾフィー』と『ヒカリ』の二機によりタイラントにとってら予定外の損耗を受けた事でタイラントは武装の動きの変化も同時に行っていた。研究所で武装した相手とは強さのレベルが数段違った二機の戦闘を参考に、より鋭く、より強力に、より確実に相手を破壊出来るように

 

「sya……」

 

 じっと身じろぎ一つせずエネルギーの充填を続けながら唸るような掠れた電子音声を響かせるタイラント。その声はまるで満全の状態で狩りをすべく体を休め、まだ姿を見ぬ獲物に焦がれて唾液を充満させている肉食獣のうなり声のようにも聞こえていた




 100話を記念して特別話を書こうかと思っています。活動報告にアンケートを設置しますので良ければどうぞ

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