二人目の男子はIS学園No.1(最強とは言ってない) 作:塩ようかん
太陽が水平線の向こう側へとゆっくりと沈んで行き、雲が一つも無く住んだ空には太陽に変わって輝く満月が浮かび、空に一等星の明るい星がまたたき始めた頃、エネルギー充填を続けていたタイラントが静かにもたれた首を上げ、空を見上げる
「sya……」
タイラントの頭部に搭載された超高感度のイヤーが闇を切り裂き、自身に向かって真っ直ぐに近付いてくる一機のISを関知していたのだ。
しかし近付いてくるのが分かってるとは言え、ゾフィーとの交戦により一対の超高感度イヤーその片方を失った事で精度が半減しており相手の大まかな位置しか判断出来ず、やむ無くタイラントは不完全な形でエネルギー充填を止めると、警戒のうなり声を思わせるような低く掠れた電子音声を発して空中高く浮き上がると、一部損失したイヤーの遅れを取り戻そうとしているのか、残った側のイヤーをフル稼動させて索敵を始める
たとえ半損しても確かな効果を持っていたイヤーのお陰で、その結果はすぐに現れ、それから数秒程でタイラントは敵IS。雨月と空裂を構えたまま凄まじい早さで接近してくる紅椿の姿を補足していた
「…………!」
迫る相手が紅椿と判明した瞬間、タイラントは急激に弾かれたようにスタートダッシュを決めると紅椿へと向かって加速し続けながら飛行し、接近してゆく。自身にプログラムされてる破壊対象の接近にタイラントは損傷を負ってるのにも一切かまわず、傍観や観察等と言った行為はまるで計算に入れずに紅椿に向かって猪の如く突撃して言ったのだ
「Sya……!」
紅椿が射程距離に入った瞬間、タイラントは唸るように電子音声を発すると問答無用で頭部からガトリング・レーザーを豪雨の如く発射し、同時に左手の鉄球を振りかぶってワイヤーを噴出した。更にもし、この二撃をも紅椿が回避した時を考え念を入れて火炎をも発射する準備をしていた
が
頭部から放ったガトリング・レーザーは『タイラントから見れば』瞬間移動でもしたかのように突如、姿を表したブルー・ティアーズとリヴァイヴ・カスタムⅡによるレーザーと実弾による同時射撃でただの一発も紅椿に当たる事は無く相殺と言う形で打ち消され、同時に放たれたワイヤーも同じく突如、姿を表したミステリアス・レイディの水のヴェールで速度を緩まされた所をシュヴァルツェア・レーゲンのAICで捉えられ、空中でその動きを完全に封じられていた
そして、タイラントが最後に放った火炎は
「はぁぁっっ……!」
「やあぁぁっ!!」
当然のように予兆も無く姿を表した甲龍の衝撃砲、そして紅椿の雨月によるエネルギー刃が霧を吹き飛ばすように炎を突き破り、炎の塊をただの蛍の光程度の無数の火の粉へと変えてゆく
「Gyaaa……!」
そして、タイミングを合わせて放たれた二機のISによる爆発的破壊力を持った攻撃は炎を霧散させてもなお、確かな威力を持っており、まだ昼間の戦いのダメージが残っているタイラントの装甲に激突するとタイラントは悲鳴のような音声を発した
「(よし……ひとまずは作戦通り……ここで抜かっては話にならないからな……)」
悲鳴をあげながらも攻撃を続けてくるタイラントを注意深く見ながらそう思考する箒。その脳裏には数時間前の作戦会議の時の光景が甦っていた
◇
「まずは前提として、奴の馬鹿げた破壊力の攻撃を一人で受けきるのはリスクしかなく無謀なだけの行為に近い。と、考えていてくれ」
場所をマリからの許可を受けて貸切状態とした同階の会議室に変え、始まったタイラント撃破の為の会議序盤、光は開幕直後にそう強く警告を促した
「ただでさえフィジカルで冗談のようなパワーと高出力のレーザー、機動力を合わせ持っているのにも関わらず、更に咆哮のような音声を発する事で装甲の強度まで含めた全ての機能が通常状態と比べて三倍に跳ね上がる……全く恐ろしい相手だ」
更に光は、タイラントの詳細なスペックが示されている画面を見つめながらそう続け、深く、重いため息を吐いた
「しかし、奴は決して無敵ではなく、決定的な弱点がある。……それは奴がコアネットワークを遮断しどのISとも繋がっていない完全な無人機であると言うこと、自身に搭載された装備のみでこちらを補足していること。そして……これらの管理を行う奴のAIに甘さがあると言うことだ。それを利用して……」
その直後、光は不適な笑みを浮かべるとヒカリを腕部分だけ展開させると、王冠を思わせるような装飾の金色のブレスレットを出現させた
「この装備、試作型キングブレスレットは装備すれば狙ったIS一機の各センサーに強力な妨害効果を発生させ探敵能力を大幅にダウンさせる事が出来る。タイラントのセンサーがいくら優れていると言えどもその元となってるのは第二、及び第三世代の機体だ。これを完全に打ち破れはしないだろう。最低でも三分以上は効果が続くはずだ」
「あの……光さん、一つ聞いてもいいですか?」
キングブレスレットについて説明を続ける光。と、そこで一夏が少し迷った様子で手をあげ、光に質問を求めた
「光さん、そんな凄い装備があるなら、なんでタイラントとの戦いで……」
「……あぁ、確かにキングブレスレットを使えばまた違った結果になったのかもしれないが……使おうとも、使えなかったんだ織斑くん」
少々ぶしつけな一夏の質問に光は目を閉じると、少しの苛立ちと悔しさを含んだ複雑な表情と口調でそう答える
「この、キングブレスレットが試作型に過ぎないせいか今一つ動作に安定性が見られなくてな……後続のUシリーズの機体を使えば話は変わるのかもしれないが、以前の実験では俺のヒカリと慎吾のゾフィー、そのどちらでもキングブレスレットの力を上手く発揮する事が出来ず、殆どただの飾り状態になってしまっていたんだ。……あの激戦の中でそんなものを使おうとは思わないだろう?」
そこまで言うと光は無念さの為か無意識に必要以上に体にかけていた力を抜くように、再び重いため息を付くと肩を落とした
「……これがどうにか使えるようになったのはついさっき。治療を続けながらも調整に調整を重ねた結果。ようやくと言った所だ。全く現実とはままならないものだな……とっ、すまない。話がずれてしまったな」
だがそうやって落ち込むのも短い間の事であって、光はすぐにそう言って苦笑しながら謝罪した
「ともかく……タイラントとの戦いは奴のスペックやキングブレスレットでの制限時間を考えると短期決戦で一気に決着を付ける以外に無いだろう。それで肝心の作戦内容だが……」
◇
「SYAaaaa!!」
緊張感に包まれていた会議の内容をそこまで思い返した直後、シャルロットとセシリアからの援護射撃の攻撃を受けながらタイラントが腹部から周囲の空気をも纏めて凍り付かせる勢いで超低温の真っ白な冷気を発射してきた
「…………くっ!」
強制的に思考を中断させられた箒は今度は空裂を奮って危うい所で迫り来る冷気を霧散させ、事なきを得た
「(焦りは禁物……ではあるが、今は急がなくては……!)」
極度の意識を集中の為に額から汗を滲ませながら、箒はそう決意し、5人のサポートを受けて更にタイラントへと接近し、どうにか必殺の一撃を叩き込める距離にまで踏み込もうと試みていた
何故、ここまで箒が急いでいるのか? ここまで接近するまでタイラントから皆の姿を隠していたキングブレスレットの制限時間の事もあるが、それ以上のある事が箒を急がせていたのだ
「何としてもお前の立案した作戦は成功させる……。だから、無理はするな……光!!」
そう、それは現在タイラントと交戦中の箒達から更に500メートルほど上空で、損傷が大きく使用不能になったナイトブレスはそのまま、本体に最低限の修理だけを済ませただけのヒカリを展開させ、自身は痛み止めの注射を済ませただけの状態なのにも関わらず『これを自由に制御できるのは俺だけだ』と、箒達を助けるために傷付いた体に鞭打ち、現在進行形でキングブレスレットを懸命に制御している光の事であった
慎吾よりは軽傷とは言え、光も即座に病院に搬送される程の傷を負っている。『キングブレスレットの制限時間くらいは持たせて見せるさ』と、皆の反対を振り切った光は出撃前にそう言っていたが決して無理はさせられない
「はぁぁっ!!」
そんな光の覚悟を決して無駄にしてはならない。そう改めて箒は誓うと掛け声と共に1秒でも早く決着を付けるべく再びタイラントに向かっていった。
大変、急かつお手数をかけてすみませんが、予定を変更して活動報告でのアンケート期間を延長させて今月いっぱいとさせていただきます。何とか特別編は書き上げますので出来ればご協力お願い致します