二人目の男子はIS学園No.1(最強とは言ってない)   作:塩ようかん

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 大変、遅れて申し訳ございません。どこでカットするべきか悩んでしまいまして……


103話 運命の一撃

「隙あり! 喰らえぇっ!!」

 

 絶え間なくタイラントから発射されるガトリング・レーザーの弾雨を回避しつつ、一瞬の隙を付いて鈴が先程からラウラと楯無の二人の攻撃を回避し続けながら牽制するように攻撃を行っているタイラントのがら空きの胴体に目掛けて複数の衝撃砲を撃ち込む

 

「援護するよ!」

 

「流石にこれならば……回避出来ないでしょう!?」

 

 その攻撃にシャルロットとセシリアも加わり、計三方向からの射撃が一斉にタイラントに襲いかかった

 

「G……GYAAaaaaaaaaッ……!?」

 

 それを何とか回避しようと試みたタイラントではあったがラウラと楯無による強力な追撃。さらに戦闘開始から徐々に徐々にと自分へと距離を縮めてくる箒に気を取られ、結果、三方向からの銃撃。その全てがタイラントに直撃して、タイラントは悲鳴のような音声を発して、着弾と共にタイラントの姿は煙に包まれた。

 

 明らかなタイラントへのクリティカルヒット。しかし、尚も六人は決して喜びの感情など見せず、むしろ焦りにも似た緊張に包まれていた。そう、何故なら『この程度の攻撃は』戦闘開始以来、既に幾度もタイラントに浴びせているからだ

 

「ぎっ……Syaaaaaaaaaッッ!!」

 

 直後、自身を包む白煙を瞬時に吹き飛ばし、ISを展開させても尚、鼓膜が大きく震わされて脳へと響く程までに強大な衝撃を持って発せられたタイラントの憤怒の怒声にも似た雄叫びと共に、先程よりいっそう破壊力とその密度を増したガトリング・レーザー、そして一瞬遅れて射程距離が大きく伸びた火炎が、銃撃により一瞬の硬直時間が生じた鈴達に襲い掛かった

 

「……あぁっ! もうっ! なんなのアイツ!? どんだけタフなわけ!?」

 

「あれほど私達の攻撃を受けても未だに機動力や、攻撃スピードに変化が無いとは……。まるで悪夢のようですわね……」

 

 攻撃が着弾してから、ほんの僅かなラグだけで平然と反撃してきたタイラントのレーザーを紙一重で回避した鈴がたまらず叫ぶ。その隣を飛ぶセシリアの表情にも僅かに青ざめ始めていた

 

「くっ……奴め……時間に猶予など無いと言うのに……。……すまない光……」

 

 そして、焦りを感じ始めているのは決して二人だけでは無い。メインの攻撃役として出来うる限りタイラントの正面に立って交戦を続けていた箒もまた、五人を同時に相手にしながらも決して自身を決定的な一撃が決まる範囲内に寄せ付けようとせず、それどころかこちらの瞬き一回ほどの隙を狙って凄まじい一檄を打ち出してくるタイラントに苦戦し、無情にも過ぎていく時間、それと比較して消費していく光の身体を気づかい、一手先を誤れば即座に敗北するようなこの状況では危険極まりないと脳内では理解していながらも、胸の中に込み上げる焦りを押さえる事が出来ずにいた

 

「(このまま戦闘を続けていれば奴も無敵と言う訳ではない……ダメージが蓄積されている以上、時間をかければ変則的だが私達は奴に勝利する事が出来るだろう……。だがしかし……それまでの長時間戦闘に及んでも尚、ただでさえ病み上がりの光の身に何も起きないが言い切れる!? やはり一刻も早く勝負を決めるしか無い!)」

 

 タイラントから勝利を手にする手段を箒は既に浮かんではいた。が、しかし、互いに全身全霊をかけて剣で戦い、心からの友となっていた光を犠牲にしてまでそれを成し遂げようとまでは決して思慮に入れようとはせず、あくまでリスクの高い短期決戦へと固着して勝負を持ち込もうとしていた

 

「(と、なると……やはり多少の危険は当然。……と考えて早急に動かねばならないな……)」

 

 相変わらず酷く耳障りなひび割れた電子音声で激昂した獣のように吼え、嵐の如く攻撃を仕掛けてくるタイラントの攻撃を回避し続けながら、そこまで思考を巡らせた箒はタイラントの攻撃、特に自身の周りを一定の距離を保ちながら駆け巡り、隙を狙っては攻撃を仕掛けてくるレーゲンとミステリアス・レイディを何とか捕らえようとするワイヤーの動きと、回避が間に合わないリヴァイヴとブルー・ティアーズの銃撃をボディに命中する前に打ち落とす鎌とハンマーの動きをじっくりと、そろこそコンマ一秒も見逃さぬように観察を続け

 

「みんな……聞いてくれ……」

 

 やがて、箒はプライベート・チャネルを通じて仲間達全員にメッセージを送る

 

「今から私が奴に突撃する。だから皆は奴のガトリング・レーザーと光熱火炎、超低温冷気の相殺札だけに火力を集中して欲しい。……その間に私が何とか奴の攻撃をやり過ごして懐に飛び込んで一太刀浴びせてみせる……!」

 

『んなっ……!?』

 

 一言で言えば無茶苦茶、しかし迷いが感じられない様子の箒の言葉に通信を受けていた全員は思わず絶句した

 

「そ、それ本気なの………?」

 

「うーん……いくらなんでも、それはちょーっと無茶が過ぎるんじゃあないかしら……?」

 

 声を震わせながらも口火を切って、その心意を問いただしたのはシャルロット。その後に続いて言う楯無も表面上はいつもと変わらぬどこかおどけた口調と余裕を見せた表情ではあったが、よくよく見てみればその顔は驚愕の為かほんの僅かにひきつっていた

 

「うむ……確かに背負うリスクは大きい……が……ふむ……」

 

 そんな中、先に二人の動揺を見ていたお陰か幾分か落ち着いた様子でラウラは考え込むように僅かな時間、思考を集中させるように目を瞑り

 

「分かった。お前の指示通り私達は奴からの遠中距離と攻撃を援相殺にするのに火力を集中させよう」

 

「ちょっと!? 勝手に何を……!」

 

 そう、さして迷わない口調で全員を代表するように箒にすらすらと了承の返事を返す。そんな少々、乱暴なラウラの態度に反感を感じたのかセシリアが抗議するように叫んだ。が

 

「では今、他に有効手段があるか? ……それに……何より、今現在も奮闘している光はおにーちゃんの親友(とも)。ならば私にとってはおにーちゃんと等しく尊敬すべき相手。……私も何としても守りたいんだ。おにーちゃんの『妹の一人』として……!」

 

 直後に、発せられたラウラの以前から考えられぬ程に熱い覚悟と義兄の兄である慎吾を慕う強い想いが込められた言葉に圧せられて、一瞬沈黙が広がった。そして次に帰ってきたのは

 

「全く……今回ばかりは特別ですわよ?」

 

「あーもう……こうなったら、あたしもこの無茶苦茶に付き合ってやるわよっ! 失敗したら承知しないわよ!!」

 

「ラウラ……念を入れて言っておくけど僕もお兄ちゃんの妹。で、僕は君の『お姉ちゃん』なんだよ? だから当然、何も言わなくても協力するよっ……!」

 

「あらあら、みんな揃って闘志全快ねぇ……ま、それは私も含めてだけど……ね」

 

 四人それぞれの力強く、容赦なくタイラントの攻撃が降りそ注ぐこの現状でも口元に笑みが浮かぶ程の力に溢れた了解の返事だったす

 

「みんな……!」

 

 そんな仲間達から寄せられる熱い言葉に箒は無意識の内に胸が震え、精神が高揚するのと同時にその勢いのまま感涙しそうになる

 

「……っ! みんな……ありが……とう」

 

 しかし、それでも敵を前にして涙を流している暇は無い。そう考えた箒は剣を構え直しながらそう一言、プライベート・チャネルを通じて小さな声で自身の無謀な策に乗ってくれた皆に礼を言う。箒が珍しく素直に心の内を晒した事で箒には仲間達からはどこか生暖かい微笑ましい物を見るような視線が注がれるが、箒はそれをどうにか気に止めないようにした

 

 そして眼前の敵、生体パーツが一切使われてない機械の体ながらまさに狂った獣のように吼え、暴君の如く暴れるタイラントを睨み付け

 

「行くぞっっ!!」

 

 短く、自身の心で決意するように、タイラントに宣戦布告するように、そして、仲間達に呼び掛けるように叫んだ

 

『おおっっ!!』

 

 その声に仲間達が力強く返事を返した瞬間、箒は紅椿が出せる最高の速さでタイラントに向かって飛んだ

 

「GYAaaaaaaaaaaaaaaaaaaaッッ!!」

 

 同時にタイラントも更に一段と激しく吼えると、自身にプログラミングされた破壊対象、紅椿を何としても引き裂き、砕き、打ちのめさんとに専用機持ちとの戦いで更に少なくなっていたエネルギー補給器官をフル稼働暴風雨の如くガトリング・レーザーを発射し、直後、殆んどタイムラグも無く高熱火炎と超低温冷気を連発し、怒濤の攻撃を紅椿に仕掛ける。が

 

 

「ふん、いくら量が多くともそんな攻撃……」

 

「……僕達が四人が通すとでも思ってるのかな!?」

 

 直後、ラウラとシャルロットの掛け声を合図に放たれた四人の専用機持ち達からの紅椿への援護射撃の弾幕でタイラントの攻撃は次々と相殺されて霧散し空中へと消え去り、決して紅椿の元へは届かない

 

「Gギっ……!!」

 

 

 攻撃がことごとく無力化されて行くのと急速に近付いていく紅椿を見て、それが回避不能だと判断するとすかさずタイラントは攻撃を近接中心に切り替えて紅椿を攻撃する

 

「速い……だがっ………!!」

 

 しかし、凄まじく速く、唸りをあげて放たれるワイヤーと大鎌そしてトドメとばかりの鉄球が織り成す連続攻撃をも箒はギリギリの所で見切り、避けて更にタイラントへと接近し

 

 

 

「タイラント……これを……受けてみろ!!」

 

 

 ついに、ついに、狙い通り必殺の一撃を畳み込めるタイラントの懐の中に入り込んだ

 

「Gi………!!」

 

「はああぁぁっ!!」

 

 そして動揺し、慌ててタイラントがガードの為に振り上げた鎌を引き戻すより早く、決着を付けるべく振り上げた雨月をタイラントのボディの損傷部を狙って打ち込み

 

 

 

「Gi……Gaッッ!!」

 

 その一撃はタイラントの残った最後の装備、臀部分から生えた長大で太い尾を巻き付かせる事よって受け止められ、刃はタイラントの装甲に命中する前にその動きを止められた

 

「………………っっ!!」

 

 そして、精神を研ぎ澄ませ、万応じして放った渾身の一撃を止められた箒は思わず動きを止めて息を飲む。その決定的な隙を狙ってタイラントが鉄球を振り上げた瞬間、箒は叫んだ。そう

 

 

「今だ………一夏!!」

 

 

 『完全に作戦通りに』動き、はまったタイラントに真のトドメの一撃を放つための合図を送るべく、箒はその名を呼ぶ

 

 ヒカリと共に上空で待機し、光のまさしく限界を越えた奮闘により今の今までキングブレスレットの力でタイラントに感知されずにいた白式を、この一瞬の隙を狙って極限と言えるレベルにまで精神を集中させていた一夏を

 

 

「うおおおおおおおおぉぉっっ!!」

 

 エネルギーを殆ど消費してない白式のもつ最大限のスピードで、落下するよりも速くタイラントに接近し、迷わず零落白夜を発動する

 

「G………!?」

 

 

 そして、そんな完璧なタイミングで放たれた零落白夜での一撃を紅椿と専用機持ち四人を相手するのに自身が所持する全ての武装を使用してしまったタイラントが防げる筈もなく

 

「………!!」

 

 頭部から零落白夜の一閃をまともに受けたタイラントは、断末魔のような電子音声を最後にこぼすと、糸が切れた人形のように力なく崩れ、足元の、それこそ数分前までエネルギー充填をしていた島へと墜落していった




 さて、タイラントは倒れましたが………次回は特別編です。

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