二人目の男子はIS学園No.1(最強とは言ってない)   作:塩ようかん

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 すいません、最近投稿が遅れぎみです……言い訳がましいですが何とか早くはしたいのですが上手く行かなくて……


109話 戦いの決着

「ヒ、ヒカリブレイブ……? それがお前の新たなる力なのか……?」

 

 数分もしないうちに起こる怒涛の事態に流石に頭での処理が追い付かなくなり始めたのか思わず箒がそう聞き返す

 

「あぁ、箒。おかけでナイトブレスが破損した俺も戦えるようになった。……皆が死力を尽くして奴と対決している中、一人見ていることしか出来なかったのは楽しい物では無かったからな……」

 

 タイラントの攻撃を受け、それぞれ自機ISのあちこちが傷付いた楯無、一夏、そして箒を順番に見渡しながら光は感慨深げにそう答える

 

『Gigigi……がッ……Guuu ……』

 

 一方で崩壊してゆく機体を更に酷使させて放射熱線を放ったタイラントは、その反動か頭部を中心としてほぼフレームのみの薄い装甲がさながら熱した飴のようにどろりと流れて崩れてゆき、元々朝までは持たないタイラントデスボーンの短い寿命が更に削られているように見えた。最も、それでも尚タイラントは逃走など見せる様子は無く、憎悪に歪んだ紫色の目で自身が破壊すべき対象の一夏達、専用機持ち達、そして致命的一撃を叩き込んだ慎吾と光を睨み付け、攻撃的なうなり声を電子音声から発した

 

「……ここまで執念深いのを見せられると、例え相手が命が無い機械とは言え、ある意味ではあるが尊敬の念すら沸いてくるな……」

 

 スクラップまで数歩手前と言うレベルまで損害を受けても一向に戦闘を止めようとはしないタイラントを見て光は光剣を構えながら呆れたように呟く

 

「それは私も同感だな……どれだけ自身の体を傷付けても……死骸同然に変わろうとも組み込まれた目的を達成しようとする姿は凄まじいと言うしか無い……。が、しかし奴はプログラムされた行動を盲目に行うだけ、我々のような困難に立ち向かう確固たる『魂』の輝きは持ってはない」

 

 光の言葉に慎吾も腕を組みながら頷いて同意するが、何か思う事があったのか睨み付けてくるタイラントを気にせず、そう言って慎吾は更に言葉を続けた

 

「小さな事に思う者もいるかもしれないが、自分の『魂』を持って行うか否か……それが勝負の場においては重要なのだ。魂を持たずして行う行動では決して強い信念を持つ相手には勝てないからな。つまりタイラント、お前には最初から完全なる勝利などあり得なかったんだ」

 

『GiYaaaaaaaaaaッッ!!』

 

 と、その瞬間、タイラントが慎吾の言葉を掻き消すよう咆哮と再び動いて再びエネルギーを頭部に集中させる。度を越えた無理を繰り返した事で残っていた右腕が高熱で溶けた内部パーツを撒き散らしながら千切りになり、元々ダメージを受けていた腹部のエネルギー吸収機関からは激しい炎を吹き出し、例え放てたとしてもその一撃がタイラントの最後の一撃になるのは目に見えて明らかではあったが、それでもタイラントはエネルギーのチャージを止めない。そこまでして放とうとしているのは恐らくデスボーンに変わった直後に放って見せた四機のISをかすめただけで一気に落として見せた、最強最大の一撃

 

「やはり残された全てのエネルギーをも攻撃に使って来るか……」

 

 それを理解していても慎吾は避けようとも防御も行おうとはしない

 

「みんなタイミングは分かるな? ……行くぞっ!」

 

 何故なら、慎吾は既にタイラントを『詰み』に追い込むまでの一手を打ち終えていたからだ

 

「「「了解!!」」」

 

 慎吾の掛け声に一夏と箒、そして光と楯無がそれぞれの得物を構えながら答え

 

「っよし! 待ってたわよ、アイツを叩きのめせるこのタイミングを!!」

 

「私とブルー・ティアーズが受けたこの屈辱……今、果たさせてもらいますわ!」

 

「お兄ちゃんごめん……また僕達を助けてくれたんだね」

 

「だが、礼を言うのは後にさせてくれ、おにーちゃん。今は奴に引導を渡してやるのを優先させよう!」

 

 その瞬間、タイラントの強烈な熱線を受けて海に叩き落とされた鈴、セシリア、シャルロット、そしてラウラが全機共に損傷しているがしっかりと飛行している自身の専用機を纏い、一斉に姿を表すと、勇ましくそう言ってタイラントに狙いを定めた

 

「……!! みんな……」

 

「……タイラントとの戦いでウルトラコンバーターも損傷を受けていたが基本動作に問題がある程では無かったからな……機体自体のダメージはどうにもならないが、タイラントと対峙するこの場に参戦する前に私が皆を助けて、シールドエネルギーを回復させておいたんだ」

 

 倒れた仲間達の復活に目を見開いて一夏が驚愕する。と、その疑問に答えるように慎吾は熱や衝撃で傷付いたウルトラコンバーターを見せながらその質問に答えて見せた

 

「これで私を含めて計、八機のISでタイラントを攻撃する形になるが、更にもう1つ……決して誉めれるような物では無いが、それでもお前の強さを称えて、ケンさんから授かった私のとっておきの一撃をお見せしよう」

 

 いよいよ持って真の決着が付こうとしてうるのか、戦力が次々と増加され、タイラントも最後の一撃となる文字通り限界を越えた熱線を放とうとする中、感慨深げにタイラントにそう告げゾフィーの左腕を前に出す

 

「慎吾……?」

 

 皆が今か今かと攻撃のタイミングを伺う中、その光景を見た光がいつでも必殺の一斬を放てるようブレードを構えながらもその意図を今一つ理解できないように呟く

 

 そう、デスボーンに変わる前のタイラントとの戦闘でゾフィーは左腕を損傷しており、機体にあまり負担のかからないスペシウムやウルトラスラッシュはどうにか使用する事が出来るものの、Z光線、そしてM87光線と言ったとっておきの装備を使用する事が不可能となっているはずだった。それなのにも関わらず、慎吾のこの自信は一体……

 

『giッ……GaaaaAAaaaaaaaaaaaaa!!!!』

 

「皆……行くぞっ!」

 

 その瞬間、タイラントが狂ったように吠えると頭部が爆発的に輝き、最初に見せた時と同様、あるいはそれ以上の破壊力を持つであろう熱線が発射され、それと全くに慎吾がゾフィーの右腕を動かし左腕の肘部分に添えて両の腕で大きなL字型を作る

 

 その瞬間、左腕から発射されたのはスペシウムとは明らかに異なる色、使えないはずのM87と全く輝きを放つ光線だった

 

「うっ……おおおぉ……っ!!」

 

 放った光線がタイラントの熱線と激突した瞬間、慎吾は一旦息を吸い込むと裂帛の叫びをあげる。と、それに答えるように光線の勢いはより激しさを増し、ついには単独でタイラントの熱線を非常に弱い力ではあるが押し返し始めた

 

『Gi……!?』

 

 そして、それにタイラントが気付き、驚愕の声をあげた瞬間

 

「今だっっ!!」

 

 それが謀らずともタイラントの断末魔になった。

 

 ゾフィーの攻撃に熱線の全ての破壊力を向けた為にガードも回避も出来ずにがら空きになったタイラント。そこに一夏の合図と共に次々と叩き込まれたのは七機の専用機から放たれる実弾、各種エネルギーのビーム、刀身を放れて飛んでいく斬撃、そして何より一夏の雪羅から放たれた波状のエネルギー弾、それらが全てが吸い込まれるようにタイラントのボディに命中するとを貫き、元々紙同然だったタイラントの装甲にさながら蜂の巣のような風穴を受けて破壊して行く

 

『…………!!』

 

「……終わりだ」

 

 最後に、放たれる熱線が止まった瞬間、光がブレスから伸びた光剣を瞬間的に巨大化させてタイラントを切断し、僅かに残った熱線の一部もゾフィーの光線で完全に霧散させられて消え去った

 

「……Uシリーズの後続機の一部を損傷した腕に使用し……限界ギリギリまでM87光線の威力を出しきったこの一撃……名称は仮にだが、『M87光線Bタイプ』はどうだろう……?」

 

 爆発と共に無数の小さな火の粉となって散ってゆくタイラントを見ながら静かに光に語る慎吾

 

「慎吾……それはいくらなんでも安直過ぎないか……?」

 

 少し呆れたように慎吾に語る光に自然と回りからも笑顔が溢れる。

 

 水平線からいつの間にか太陽が姿を表し、いつもと変わらぬように静かに朝が始まろうとしていた




 予想よりも長く続いたタイラント編はこれにて決着、次回は後日談となります

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