二人目の男子はIS学園No.1(最強とは言ってない)   作:塩ようかん

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 更新、遅れてすみません。


113話 自室での一幕、光からの知らせ

「……アメリカのIS保有基地が亡国機業(ファントム・タスク)に襲撃された……? しかも、奪われそうになったのはナターシャさんの……!? それが本当ならばナターシャさんは無事なのか……!?」

 

 どうにかいつもの調子を取り戻し、部屋へと帰宅した慎吾はその詳細思わず冷静さを失い叫びそうになり、しかしどうにか、すんでの所で隣の部屋にはタイミングを合わせて聞き耳でも立てない限り聞き取れない程度に声を押さえて驚愕の声を押し込めた

 

「あぁ、未だに非公式な情報とはされている事実と見て間違いない。何せ当の侵入者本人が堂々と『銀の福音をいただく』と語っていたと複数の兵士が証言していると言う情報まで入って来たからな……デマにしては少し手がかかりすぎだ。それと……ナターシャ・ファイルス氏の無事も確認済みだ」

 

 慎吾にその事実を教え、そう言って苦い顔で肯定したのは他でも無い慎吾の部屋の気心知れた同居人であり、それが当然と言うように何の見返りを求めず情報を提供してくれている親友の光。

 

 ちなみにだが、光はシャワーを終えて出てきて間もない状態で会話を為に、その深い海を思わせるような光の髪は未だに水気が残り、体も下着の上からタオルを巻き付けて一応隠しただけの大胆な格好であり、汗が滲んで肌や下着が透けていたのだが、慎吾は会話を続けながらそんな光を見てもまるで動じずに深刻な表情のまま会話を続け、同じく光もトレーニングを終えて帰宅したばかり故に上半身がほぼ裸で筋肉で引き締まった体を晒していた慎吾も、あられもない姿を見られている自分も特に意識した様子も無く落ち着いた態度で語り続ける。

 端から見れば実にあまりにも異質に見える光景ではあるが、これらは全て二人が過ごした長い付き合いの中で互いに相手に抱く事が出来た絶対的な『信頼』がある上でなりたつ行為であり、例えこの立場が逆であろうとも二人は全く互いの態度を変えることは無く、そもそも光はゾフィーの調整時に正確なデータを得る為に慎吾の裸体を事細かに観察した事があるので、この二人の組み合わせで思春期特有の緊張や照れなどは全くと言いほど起こらず、いつぞやの二番煎じを思わせるような姿で二人は互いに意見を交わしながら会話を続けていた

 

「……なんにせよ慎吾、今回の事件は国も場所も俺達の専門外。一般生徒と多少違うだけの俺達が関わる事件ではない」

 

「それは、そうだが……」

 

 と、最後に光は慎吾を宥めるようにそう語りながら巻いていたタオルを洗濯機に投げ込みつつ、寝巻きに着替えた所で光は話を終わらせ、慎吾は一瞬、納得出来ないような表情を浮かべたが光の言っている事が正しいと理解しているのかそれ以上何も言わずに自身のベッドに深く腰掛けた

 

「だが、しかし……亡国機業がこの事件に関わっている以上、警戒するに越した事は無いだろう。以前の学園祭のように奴等が織斑くんやお前に襲撃を仕掛けてくるかも知れないからな」

 

「…………」

 

 光の言葉を聞いた慎吾の脳裏に浮かぶのは、自身が以前、変装した亡国機業のメンバーオータムに連れ去れそうになった一夏を助けようとした際に交戦した亡国機業のバード。そしてそのISバードン。この戦いは結果から言えば慎吾が勝利し、M87光線でバードンのコアも破壊した。と、言えるものの実際にはバードに隙を付かれた事で大ダメージを受けて敗北寸前どころかとどめを刺される直前にまで追い込まれており、ケンの介入が無ければ自分は間違いなく負けていただろうと慎吾は確信しており。それだけ亡国機業が恐ろしい相手だと言うことを理解していた

 

「だとすれば鍛えるしか無いな……例え幾度亡国機業や新たなる驚異が襲いかかって来ようとも屈せぬように……! 仲間や私の家族を守れる為に……!!」

 

 が、慎吾は油断が許されない恐ろしい相手と理解しても、嫌、いるからこそ、僅かでも怯むつもりは無く、義理ではあっても兄として確実に護るため、更に己を鍛える道を選択した

 

「鍛える……か。ならば折角の機会だ。復帰したヒカリとゾフィーの調整も兼ねてお互いに空いている今週末にでも、久し振りに一戦、交えてみるか? 慎吾」

 

 そんな慎吾の気持ちを汲み取った光は軽く笑うと慎吾にそんな提案をしてきた

 

「ありがとう。是非、頼むよ光……」

 

 そんな光の優しさへの感謝で頬が緩むのを感じつつ、そう慎吾は答える。

 

 例えどんな難敵と戦う事になっても、それで倒れたとしてもこうして支えてくれる仲間がいる限りきっと立ちあがる

 

 慎吾はこの日、友の優しさに触れた事で改めてそう心で想うのであった

 

 

 

「……あの拳は完全に見切ってたと思ったんだが……まさか剣を振った死角を利用して二発も当てられていたとはな……相変わらず格闘技術では俺は一歩劣るようだ」   

 

「何……これは、お前が直前に放った一閃を防ぐ事も回避する事も出来そうに無かったから一か八かで放った拳が上手く当たっただけ。まだ、狙ってあんな一撃は出せないよ」

 

 そして、時は進んで週末。部屋で取り決めた通り慎吾と光は、休日でもIS訓練に集中する熱心な生徒達に入り交じりながら一戦を交え、結果的に時間切れでの引き分けとなった後、二人は訓練を終えた後、汗を吹いて着替えただけて済ませてアリーナ近くのベンチで横に並んで座りつつ、戦闘を振り返りつつ互いの反省点と評価点を見つけ、改善策を模索し合っていた

 

「そうだな後は……うん?」

 

 と、そんな風に光と会話を続けていた慎吾は何気なく顔を上げた瞬間、少し離れた所で第三アリーナへと向かって真っ直ぐ歩く見知った顔を見つけた。余程、集中しているのか若干の距離はあるとは言え

 

「うん? 何かあったか慎吾?」

 

 語調から慎吾の異変を感じ取った光は、会話を止め慎吾と同じく顔を上げながらそう尋ねた

 

「いや……あそこにセシリアの姿を見たんだがな……」

 

 それに答える慎吾の声はどこかぎこちなく、言い淀んでいる。と、言うのもアリーナに向かって歩くセシリアの表情には距離があっても分かる程に緊迫そして濃い焦燥感が滲み出ており、それがどうにも慎吾がセシリアに声をかけるのを躊躇わせてたのだ

 

「ふむ……確かにあれは……俺も声をかけ辛いな……」

 

 慎吾の様子を見て、ある程度状況を察した光は同意するようにそう言って頷く

 

「あのセシリアの表情……嫌な予感がするのは杞憂であってほしいのだがな……」

 

 直感的感覚で、そう嫌な予感を感じとる慎吾を尻目にセシリアはどんどんと歩いてゆき、やがてアリーナ内部へと、その姿は消えていってしまった




 慎吾の悪い予感は残念ながら良く当たる……

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