二人目の男子はIS学園No.1(最強とは言ってない)   作:塩ようかん

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 すいません。GW明けに少々体調を崩して更新が遅れてしまいました。もう体の調子は戻りましたので次回の更新は何時も通り、来週には出来るように頑張ります


119話 白熱! キャノンボール・ファスト! そして……

「くっ……! 分かっていた話だけど……それにしたってやっぱり速い……!」

 

 必死で加速を続けるものの、コーナを曲がる度に徐々に開いて行く戦闘列との差に冷や汗を流し始め、歯噛みするように一夏が苦しげに呟く

 

 大歓声の中、始まったまだレースはまだ一周目にすら入らぬ序盤であるうちから既に抜きつ抜かれつ、撃ちつ、避けつつの序盤からラストパートかとばかりの火花飛び交う派手なバトルレースを繰り広げ、それは未だ二年生のレースの熱が冷めやらぬ観客を多いに沸かせるのと同時に興奮に包み込み熱狂させる

 

 そして今、現在、レース参加者全員が専用機持ちと言う厳しい環境を押さえて首位に立ち、一夏が必死にその背中を追い続けていたのが

 

『さ、避けたっ! 完璧に決まるかと思われた攻撃をまたも現在首位、大谷慎吾が回避した!』

 

 ラウラが放つ大口径リボルバー・キャノンの一撃を慎吾は決してブレーキをかけたりスピードを落とす事無く、ゾフィーをさながら波に乗るサーファーの如く空中に滑らかな複数のカーブを描くように舞わせ、複数放たれた弾丸、その全てを回避してみせ、観客を更に沸かせた

 

「まさか、今の攻撃を回避するとは……やるな、流石はおにーちゃんだ……」

 

 当の攻撃したラウラさえもそんな慎吾のスーパープレイには驚かされたらしく、目を驚愕で大きく開き、慎吾を素直に評価する。が

 

「しかし、だ、おにーちゃん。回避したことでコースから『逸れたな』」

 

 慎吾が回避した事でやむを得ず生まれた隙間、即ち今の今まで慎吾が維持してきたインコースにラウラのレーゲンが入り込み、一瞬にしてゾフィーを抜き去っていった

 

「くっ……!」

 

 回避の為に不可避となる隙を突かれた慎吾は慌ててゾフィーをコースへと戻して行く。が、今の今までトップを飛んでいた慎吾ではあったがそれは紙一枚程度の小さく弱い優勢に過ぎなかった物であり、それを示すようにゾフィーのすぐ背後についていたセシリアとシャルロットが慎吾が元のコースに戻る前に次々と抜き去ってゆく

 

「僅かでも隙を見せた瞬間にこうなるとは……しかし、まだまだ勝負はこれからだ……!」

 

 一気に三人にも抜き去られた事で慎吾は驚愕を露にする。が、すぐに意識を切り替えるようにそう叫ぶとすぐに全速力で抜き去っていった三人を追い始める

 

「実戦でのその切り替えの早さは、見事。だが慎吾よ……」

 

「私達もいるの……忘れてないっ!?」

 

 

 と、その時、背後から箒と鈴の声が響くと共に紅椿の刀から放たれるレーザー、甲龍から発射される衝撃砲の連射が同時にゾフィーの背中目掛けて放たれた

 

「それは勿論……っ! 僅かでも注意は怠らなかったとも!!」

 

 二人の攻撃の予兆を感じ取った瞬間、慎吾はゾフィーをフルターンさせて背後に振り向くと、二人の攻撃をZ光線を発射して迎撃する事で対応し、ゾフィーの量腕から放たれたZ光線が命中した瞬間、一度に複数のエネルギーが衝突した事で爆発と共に慎吾と鈴と箒の二人の間を遮るようにコース場に濃い白煙が発生した  

 

「うおおおおりゃああっっ!!」

 

 瞬間、まるでそのタイミングを事前に予知していたかのように白煙を文字通り切り裂き、気合いの雄叫びをあげながら一気に雪片弐型を構えた一夏が慎吾に急接近して肉薄する

 

「くっ……! ……はぁっ!!」

 

 白煙を煙幕がわりにして突撃してきた一夏への反応がコンマ一秒遅れた事で雪片での斬撃を回避し損ね、慎吾の苦悶の声と共に浅く斬られたゾフィーの装甲が火花を吹き、空中で大きくバランスが崩れる

 

「ぐっ!?」

 

 しかし、斬撃を受けて崩れながらも慎吾は射程距離まで迫っていた白式に左足で強烈な回し蹴りを叩き込み、結果的にゾフィーはその衝撃でどうにか体制を建て直し、白式は先程のゾフィーの焼き回しのように大きくバランスを崩され,たちまち急降下してゆく

 

「(……今の一撃は一夏がもし、零落白夜や雪羅を使っていたらここで私は撃墜されていたな……確実に……)」

 

 追撃を食らわぬように、全速力でその場を離脱しながら慎吾は自身が幸運に救われなければ先程の一撃であっさりと敗北しかねなかった事に気が付くと戦慄し、冷や汗を流した

 

「てて……やっぱり慎吾さんは強いな……だが、レースはまだまだこれからだぁっ!」

 

 と、そんな時、慎吾の元に一つ、悔しげながらも何処か尊敬、そして熱意が込められた一夏の声がかけられる。どうやら、慎吾が起死回生とばかりに放った回し蹴りの直撃を受けても一夏は撃墜される事なく、空中で踏みとどまったらしくその声は次第に近付いて来ていた

 

「あぁ……! そうとも、決着はまだほどほど遠いな。  そう簡単に私に再度攻撃を当てられると思わない事だ一夏よ!」

 

 そんな一夏に影響されたのか慎吾もまた、一夏に向かってそう叫んで返事を返す。無意識のうちに慎吾はゾフィーの仮面の下で笑顔を浮かべていた

 

「(もはや万が一でも油断などしない……このキャノンボール・ファスト。この私とゾフィーが見事、優勝してみせようではないか!)」

 

 心に熱い闘志を燃やしながらも、頭は冷静に、より神経を集中させながら慎吾は先程までの遅れを取り戻す為に慎吾はゾフィーを凄まじい勢いで加速させ、トップを走るラウラとシャルロットを視界に捉えた

 

「行くぞ……!」

 

 二人は共に恐ろしく早く、単純にスピードをあげて迫るだけではらちがあかない。そう判断した慎吾は前傾姿勢で飛行しながら胸の前に両手を添える

 

「Z……!」

 

 そうして慎吾がゾフィーの両腕にエネルギーを収束させ、必殺の一撃を放とうとした。まさにその瞬間

 

「……!? シャルロット! ラウラ! 危ないっ!!」

 

 上空からトップを走る二人に向かって迫る一機のISに気付いた慎吾は慌ててZ光線発射を中断して二人に警告を送る

 

「え……っ?」

 

 そして、慎吾の声にシャルロットとラウラが反応した丁度そのタイミングで

 

 トップを走っていたシャルロットのリヴァイヴとラウラのレーゲンの二機は乱入してきたISの無慈悲な射撃によって撃ち貫かれていた

 

「あれは……!」

 

 コースアウトして吹き飛ばされゆく二機には目もくれず、余裕たっぷりにコース内へと降り立つISの姿を見て慎吾の脳内で侵入者の正体が記憶を元に直ぐ様割り出される

 

 そう、慎吾にとっても忘れもしない学園祭。そこで事件が終わった後に知った自身とバートが死闘を繰り広げている際に起きていたもう1つの戦い。そこに姿を現した鮮やかなブルーのIS

 

「サイレント・ゼフィルス! 亡国機業か!」

 

 相手の危険性を理解して警戒し、慎重に構える慎吾を前に侵入者は口元を歪めて邪悪な笑みを浮かべた


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