二人目の男子はIS学園No.1(最強とは言ってない) 作:塩ようかん
「全く……どうしてあんな空気になってたのよ、凄いやりづらかったんだからね!」
「その事については本当にすまなかったな鈴。返す言葉もない」
あれから、どうにか普段通り落ち着きを取り戻した慎吾に鈴が呆れたように言い、慎吾はそれに頭を下げて謝罪する。
今、現在、長テーブルを囲んで慎吾、一夏、箒、セシリア、鈴の五人が男女に別れて対面する形で座っており、一夏の対面には鈴が座っていた。
「鈴、いつ日本に戻って来たんだ?あっ、そうそう、おばさんは元気か?あ、そう言えばいつ代表候補生になったんだよ」
「おいおい一夏、そんなに一気に鈴に質問してどうする。答えられる筈がないだろ?」
慎吾の謝罪が終わると同時に、鈴に矢継ぎ早に質問を投げ掛ける一夏を慎吾は慌てて制止する。そんな一夏の様子を見ながら一夏が若干、いつもよりテンションが上がっているらしい事に気が付いた。
「ホンとに少し落ち着きなさいよ……ってかアンタはいつの間にIS使えるようになってんのよ………」
慎吾に制止されて恥ずかしそうにしている一夏を見てる鈴は溜め息を付きながらそう言う。と、その時、先程から堪えていたが、ついに我慢が出来なくなったのか箒とセシリアが同時にテーブルを叩いて立ち上がった。
「こら、行儀が悪いぞ」
慎吾がそう二人に注意するが全く耳に入っていないのか、二人はそのまま一気に一夏に詰めよる。
「そろそろ、二人がどういう関係だか説明してほしのだが……一夏?」
「そうですわ!いったい……ハッ、まさかこちらの方と……」
静かな刺々しさを見せながら言う箒に続いて言葉を半分ほど言いかけた所で、セシリアが何かに気付いたような表情で手を口に当て驚きを見せる。そのやたらにドラマチックな動きに自然と周囲の視線も集まりだした。
「んなっ!?ち、ちがっ……べ、べべ、べちゅに……!」
突然の質問に鈴もまた慌てているのか、呂律が回らず箸を持った手がサンバの如く派手に踊っていた。
「(これは……箒やセシリアに引き続いて鈴もだったか……)」
そんな非常に分かりやすい変化で鈴が一夏に向けている気持ちを理解した慎吾は、この状況をさて、どうフォローをすべきかと考えていた丁度その時
「さっきから何の話かよく分からないけど………俺と鈴はただの幼馴染みだぞ?」
約一名、状況が全く飲み込めて無い一夏が心底不思議そうにそう言い放った。
「………………………………」
そんな一夏を鈴は無言で睨み付け、慎吾はどうしたものかと頭を抱えた。
その後も一夏の天然っぷりは遺憾なく発揮され、放課後に一夏に二人きりのデートを誘った鈴を阻止すべき奮戦する箒とセシリアを宥めるのに慎吾は大分、神経をすり減らす事になったのであった。
◇
「あれ、慎吾さん………今日は何か疲れてません?」
「何………訓練には支障は無いから大丈夫だ一夏」
放課後、今日もまた訓練すべきアリーナに向かって並んで歩く慎吾、一夏、セシリアだったが、慎吾の顔に疲労の色が見えた一夏が何気なく訪ねる。慎吾はそれに少し弱々しげに答え、一夏に軽く笑いかけた
「(うぅ……もしや慎吾さんが疲れてらっしゃるのは私のせいでは……)」
そんな慎吾を見て負い目を感じるのかセシリアはいつものような軽快な口上は出てこず、黙って弱々しくアリーナへの道を歩き、三人が同時にアリーナへと入った時だった
「えっ?」
「ふむ」
「篠ノ乃さん!?」
同時に三人の声が重なる、一夏は驚いたような、セシリアは焦りを見せて、そして慎吾は何故か納得したように腕を組みながら言い、静かに言葉を続けた。
「なるほど、また一夏の練習の相手をしに来てくれたのか?箒」
「……あ、あぁ、一夏に頼まれたからな」
慎吾に的を付かれ若干、反応が遅れたが箒が直ぐ様『一夏に頼まれて』を強く強調して言う。
「丁度いい、私は格闘戦、セシリアでは遠距離戦しか満足には教えられないからな……お前との戦いは近接武器を持った相手とのいい学習になる」
「そう言う事だ……一夏、刀を抜け」
若干、嬉しげな慎吾の言葉が終わると同時に箒がそう言うと刀を抜刀して構える。
「お、おうっ!」
それに対して慌てて一夏もまた雪片を構えると、周囲の緊張が最高潮に包まれ、まさに二人の対決が始まろうとした時だった。
「……頭では確かに一夏さんの為にはなると分かっていても……やはり納得は出来ませんわ!お待ちなさい!」
「セシリア!?」
突如、セシリアが慎吾の制止を降りきり、箒と一夏の間に割って入り、その行動に怒った箒がセシリアを切りつけ、そのまま二人は戦い始める。
「全く……二人とも一夏の事になると熱くなりすぎだな」
慎吾はそう言って苦笑いしながら小さく呟くと、ゾフィーを急発進させ、二人の間に入り込むと箒の剣撃を手刀で受け流し、セシリアのスターライトmkⅢの弾丸をスラッシュ光線で相殺し二人を押さえ込む。
「おい慎吾、邪魔するのか!」
「慎吾さん箒さんの味方をしますの!?」
「箒もセシリアも熱くなりすぎだ、少し冷静になれ」
止めに入った慎吾に噛みつくように言ってくる箒とセシリア、それを慎吾は二人の攻撃を受け流して受け止めつつ何とか諭そうとする。
「えぇ……俺はどうすれば……?」
そんな状況の中、一人だけ何もする事が出来ずに一夏はポツリと立ち尽くしていた。そして、そんな様子は箒とセシリアの怒りの標的になった。
「おい一夏!」
「何を立ち尽くしてますの!」
「ええぇっ!?嫌、だってどっちかに味方したら味方しなかった方が怒るだろ!?」
二人に怒鳴り付けられた一夏はビクリと体を動かし、必死の弁論を開始する。
「「当然(ですわ)!!」」
しかし直ぐ様、二人に声を合わせてそう切り捨てられると二人の標的は慎吾から一夏に変わった。そんな二人を追いかけながら慎吾はやれやれと呟き、一夏に告げる。
「仕方ない……急で悪いが一夏、状況が状況だ、予定変更で今から箒&セシリア、そして私とお前でのタッグの模擬戦を開始する!!」
「慎吾さぁぁぁん!?」
唐突に告げられる無茶とも言える慎吾からの指示にギリギリの所でセシリアの銃撃を回避しながら一夏は悲鳴を上げる。
「一夏、サポートは私に任せろ!お前は思いっきり突っ走れ!」
箒の斬撃を潜り抜けて蹴りでのカウンターを叩き込みつつ、慎吾は叫んだ。
「えぇぇいっ!もうなるようになれ!!」
こんな状況でついにやけを起こしたのかついに一夏も雪片を構えて二人に突っ込んで行く
「はああああっ!」
「いい剣だが……隙はある!ゼェヤァァ!!」
「たぁぁぁぁっ!」
「うわぁぁぁぁぁぁ!」
その瞬間、アリーナからは三人の掛け声と一人の叫び声。そして銃声と金属音が桁ましく鳴り響き、その怒濤の音声はアリーナの外からもはっきりと聞こえたと近くを通りかがった多くの生徒から証言されたと言う……
もう少しでM87の出番が来ますが……うまくショートカット出来ないという私の力不足が……ゆっくり進めて行きます