二人目の男子はIS学園No.1(最強とは言ってない)   作:塩ようかん

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 再び遅くなってしまいましたが、更新です。喩え遅くなっても確実に行進できていけるよう頑張りながら書かせていただきます


130話 四組、簪との初対面

「ああっ!! あれって一組の慎吾さん!? 慎吾さんだ!」

 

「えっ!? あの兄オブ兄の慎吾さん!?」

 

「もしや四組に新たなる妹志願者が!? まぁ、そりゃ私もだけど!」

 

 光と共に四組についた途端、慎吾を待っていたとは、四組の生徒達からのまるで動物園のライオンかパンダを見るかのような熱い歓声と視線の嵐であった

 

「以前、一夏も言っていたが……やはりあまり慣れないな、こんなに多くの好奇の視線を向けられるのは……」

 

「仕方ないだろう? こればかりは有名税のようなものだと思って諦めるしかないさ」

 

 自身と一夏がIS学園に入学してそれなりの月が過ぎているのにも関わらず入学当初からさほど変わらない学園生徒達から向けられる視線に思わず慎吾は苦笑しながらそう小さく呟き、光もまた苦笑しながら、慎吾を励ますように背後からこっそりと慎吾の肩を叩いた

 

「皆、すまない。君達が歓迎してくれる気持ちは嬉しいが、生憎今日は大切な用事があるんだ。道を開けてくれないか? もし、どうしても何か私に関する問いならまた近いうちに出来る範囲で答えると約束しても構わない」

 

 と、そこで慎吾は気を取り直すように軽く咳払いをしながら集まっている全員に聞こえるように声を張りながらもまるで威圧感は感じさせないような優しい口調でそう告げる。

 

『は~い』

 

 と、その瞬間あれほど騒ぎ、教室の入り口部分を生徒達は返事と共に潮が引くように速やかに動き、慎吾と光が通れる程度の道が開いた

 

「さっ、行くぞ光。時間はあまり無いんだ手早く事を済ませるのに越した事は無い」

 

 そう何気ない様子で慎吾は光に言うと、開いた道を先導するように歩きだし、光を手招きした

 

「無意識なんだろうし、人としては美点なんだろうが……俺としては、お前のそう言う所が未だにあちこちで騒がれたり話題にされる大きな要因だと思うんだがな……」

 

 そんな事を小声で呟きながら光は苦笑しつつ慎吾の後を続いて歩き出すのであった

 

 

「改めて協力の誘いを引き受けてくれてありがとう簪。知ってると思うがこっちは慎吾。今回の新武装開発の立案社であり、俺の友でもある」

 

 代表するように光はそう言って簡易的に慎吾を紹介すると柔らかな笑みを簪に向ける。慎吾の声かけの影響もあったのか、事前に予定していた時間ぴったりに簪と合流した慎吾と光はクラスの一番後ろの窓際の自席でキーボードを叩いて作業中だった簪の許可を得て、一旦騒がしい教室を離れて廊下で会話をしていた

 

「あの……初めまして……」

 

「あぁ、初めまして。だな、私からもよろしく頼む。……簪、と、私も呼んで構わないかな?」

 

 光の紹介を合図に簪は控えめに、慎吾は微笑みかけながら互いに頭を下げて挨拶を交わし、簪は慎吾の言葉に小さく頷いて名で呼ぶことを許可した

 

「それでは……挨拶を終えた所で場所を移すぞ。最初に伝えておきたい事もあるし……何より話し合いをするにはもう少し静かな所が相応しいだろうしな」

 

「そうだな……流石にここでは……」

 

「……」

 

 光の言葉に慎吾と簪は未だに騒ぐ生徒達に視線を向けると、互いに頷いて場所の移動を受け入れ、歩き出そうとし

 

「えーっと、更識さんって……あれ? 慎吾さん? それに光さんも?」

 

 まさにその瞬間、狙ったようなタイミングで慎吾達が立っている廊下の真向かい側から一夏が四組教室前に表れ、四組の教室のドアに立ったその瞬間、まず見慣れた慎吾と光の姿に反応して足を止めた

 

「えっ……ちょ、ちょっと待ってください! もしかして慎吾さん達と一緒にいるその子って……」

 

 直後、一夏は改めて二人を見直した事で慎吾と光に挟まれるような形で立っていた簪に気が付き、何か慌てたように近付いて来た

 

「光さん……慎吾さんも、行きましょう……」

 

「お、おい……」

 

「簪……?」

 

 その瞬間、簪は一夏にそっぽを向くと慎吾と光が混乱しているのにも構わず、二人を先導するように歩き出した

 

「ま、待って簪さん! 頼みたいことがあるんだ!」

 

 明らかに自分の姿を認識して離れていった簪を一夏は慌てた様子で駆け寄り、必死に引き留めんとしての事か簪の進まんとしている方角に立ちふさがった。と、その瞬間、簪は眉をしかめ嫌そうな表情を浮かべた

 

「一夏、お前も何か簪に頼みたい事があるのか? その様子を見るとどうやら早急の用件のようだが……」

 

 そんな様子を見かね、一夏と簪の間の空間に割り込むような形で入り込み一夏と簪、互いの表情を確認しながらそう問いかけた

 

「あ、はい。今回のタッグマッチの事なんですけど……簪さんにペアを組んで欲しくて……」

 

「それはまた……唐突な話だな」

 

 一夏の言葉に慎吾は怪訝な表情を浮かべると、思わず首を傾げた

 

 このIS学園に入学して以来、学園内でただ二人しかいない男子生徒同士と言うわけで今日まで、互いに持ちつ持たれつの関係で行動を共にする事が多かったのだが記憶にある限り簪の話は聞いたことは無かったし、仮に一夏が隠していたとしてもその理由が分からない。と、言うよりそもそも一夏は決して嘘を付くのが得意な人間ではない。と、慎吾は今までの付き合いで分析していた。では何故、あえて箒や鈴と言った気の知れた仲間達では無く初対面の簪と一夏は組もうとしたのか?

 

「(答えは一つ、一夏は簪と組むように頼まれた……と、言うことになるな。誰に……かは、わざわざ『更識 簪』と組んでくれと言う時点で答えが出ているようなものだな)」

 

 脳内でそう思考を纏めると、慎吾は思わぬ形で遭遇した難題に思わずため息を吐き出した。

 

「簪……一応、私からも聞いておくが、君は今回のタッグマッチは……」

 

「……イヤです」

 

「うっ……即答……」

 

 先程一夏が現れてから明らかに不機嫌になった様子からほぼ不可能だと分かりきっていたが様子を伺いながら問いかけた慎吾に簪は迷うこと無く拒絶の意志を示し、その早さに一夏は思わず顔をしかめて額から汗を流した

 

「(仕方ないとは言え、新武装の開発に向けた第一歩からこれでは……また、何か一筋縄ではいかないような出来事が起こりそうな気がしてならならないな……)」

 

 これから起こるであろうトラブルを感じ取った慎吾はそう想いながら頭を抱えるのであった


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