二人目の男子はIS学園No.1(最強とは言ってない)   作:塩ようかん

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 週一更新だった更新が今では殆ど月一……と、ここ最近の更新が大幅に遅れて申し訳ありません。何とか時間とアイディアを有効活用したいのですが、中々上手くいかず大変苦戦しています。


131話 悩みは消えきらず、問題は尽きず

「うーむ……弱ったなこれは……」

 

 そう休み時間終了間際、一組への帰路を慎吾は頭を抱えて溜め息をつきながら浮かない表情で歩いていた。

 

 と、言うのもつい先程まで時間が押している為に食事を取りつつ光と簪と自身の三人で当初の予定通りゾフィーの新武装開発についての話し合いをしていたのだが、いかんせん今回の話し合いにおいて肝心の簪が一夏と遭遇して以来、本人も悪気は欠片も無いのたろうがどうにも口数が少なくなってしまい、どうにか慎吾や光が尽力したものの話し合いは予定の半分。本当に最低レベルの目標と予定しか決めることは叶わなかった

 

「これは何も今日だけの話と言う訳ではない。何とか事態を解決しなければ私や光は勿論、タッグを組みたいと言う一夏。……そして簪自身にも非常に良くない事だ」

 

 だからこそ慎吾は深く悩んでいた。どうにかこの事態を解決できないものか、できうる限り多くを円滑で穏便に済ませる事は出来ないのか。そんな風に慎吾が人に追突しない程度にしか前を見ないほど熱心に考えに集中し過ぎたせいであろうか。慎吾は危うく歩み過ぎて一組の教室を歩いて通りすぎそうになってしまった

 

「おっと……これはいかん」

 

 慎吾はその事に気が付くと、自身のケアレスミスが恥ずかしいのか苦笑しながら半歩ほど後退して教室の入口に戻ってドアを開け

 

「……一夏、最後のチャンスだ。もう一度だけ聞く、お前は誰と組むんだ?」

 

「い、いや……そ、それは……待ってくれラウラ。もう少しだけ話し合おう!?」

 

 何の因果かその瞬間、予め狙っていた慎吾の目の前に飛び込んできたのは、口調こそ普段と変わりは無いが明らかに視線や漂う雰囲気に怒気を表しながら一夏に一歩ずつ詰め寄るラウラ。そして、必死の弁解の途中で入ってきた慎吾にいち早く気付き視線で助けを求めてくる一夏の姿。と、どこか既視感を感じる光景であり、気付けば慎吾は再び苦笑していた

 

「(まぁ……冷静になって考えてみればこうやって入学当初からトラブルとは日常茶飯事と言っていいレベルで起きてたんだ。今更、悩み過ぎるのは馬鹿らしいかもしれないな……)」

 

「とりあえずはラウラ、一夏。二人とも一旦落ち着いてくれ。出来れば、二人それぞれから話を聞かせて欲しいんだ」

 

 慎吾自身でも意外な事に、それで幾分かではあるが慎吾の心に霧の如く立ち込めていた悩みは晴れてゆき、早速目の前の事態を対処し出来るだけ早く、そう可能ならば千冬が教室へとやって来る前に一夏を救いだし、騒動を収束させるべく動き出したのであった

 

 

「……! 避けろ一夏! 真上だっ!!」

 

 ヒカリのナイトビームブレードの光刃と紅椿の空裂の刀をぶつけ合い火花を散らす激しい戦闘の最中、偶然、視界の端に一夏が入った事でその危機に気付いた箒は素早く簡潔にそれを一夏に伝える為に叫んだ

 

「うおおおっっ!?」

 

 間一髪、その一声のお陰で一夏は視界から消え、瞬時加速を用いて真上へと移動していたゾフィーの鋭い蹴りを回避し、隙を付いたはずのゾフィーの蹴りはほんの僅かに白式の装甲を掠めるだけに終わった。が、それだけでは慎吾の攻撃は終わらない

 

「ぜやっ!」

 

「うわっ……! とっ!」

 

 すかさず回避した一夏目掛けて今度は慎吾の気合いが込められた掛け声と共に回し蹴りの形で放たれたゾフィーの左足が襲い、その早さにどうにか反応出来た一夏は素早く雪羅のシールドで蹴りをガードするが、衝撃までは殺しきれず大きく体制を崩す

 

 あの後、本当に紙一重と言う所でラウラの説得に成功して宥める事が出来た慎吾は、現在、放課後の第アリーナで、簪とスケジュールが合わなかった事で光との実践的訓練を行おうと訪れた際、偶然遭遇した一夏と箒のコンビと本番を想定したタッグマッチ方式で特訓を行っていたのだ

 

「くっ……! 絢爛舞踏を完全に使いこなして来ている……やるな」

 

「今回の勝負は私が……私達が勝利を貰わせてもらうぞっ!」

 

 一夏のひとまずの無事を確認した箒は改めて意識を光との戦いに集中させるとつばぜり合いの状態から光を弾き飛ばして斬撃を振るい、底が尽きないかのようなその紅椿のパワーに思わず光は仮面の下で顔をしかめる。しかし、その表情には決して諦めの感情は存在していなかった

 

「行きますよ慎吾さん!! うおおおっっ!!」

 

「あぁ、来い! はぁぁっ……!!」

 

 一方、慎吾と一夏の戦いも激しさを増しており、白式から受けた攻撃が少しずつ重なり、シールドエネルギーが減少して言った事でゾフィーのカラータイマーが鳴り出したのを見た一夏が一気に勝負を決めるべく零落白夜を発動させ、それに答えるように慎吾も両手を胸の前に水平に置き、M87を発射する構えを取る

 

 次の瞬間、二条の光が交差してアリーナ内は見てる物の目を射ぬくような鋭い光に包まれた

 

 

「ううむ……また時間切れで引き分け……か」

 

「……何か、お互いに全力で戦ってたのに、しまらないですよね」

 

 それから数分後、アリーナの使用時間切れで引き分け、と、言う有耶無耶な形で決着がついた練習試合を終え、手早く着替えを終えた慎吾は額に残る汗をタオルで拭いながら複雑そうな表情を浮かべながら呟き、着替え途中の一夏もまた時間切れでの決着には納得がいっていないのか同意するようにそう答えると苦笑した

 

「では、一夏。そろそろ寮に戻るとするか。丁度、夕食の時間が近いは……うん?」

 

 タオルを首にかけ、慎吾が手荷物と携帯端末を手にしたその瞬間、狙いすませたようなタイミングで慎吾の携帯端末にメールが届き、その送信者を見た途端に慎吾は怪訝な表情を浮かべた

 

「どうしました慎吾さん?」

 

「いや、光からメールが送られてきてな……私と光は、ついさっき更衣室前で別れるまで話をしていたんだが……もしや……」

 

 と、自らの口でそんな事を言ってる中で慎吾ははたと気付いた。何故、光が通信ではなくわざわざメールを使って連絡したのか。何故、間違いなく一夏と自分しかいないこのタイミングにメールを送ったのか。嫌な予感を感じ始めながら慎吾は光からのメールを開き

 

『箒、そして先程、遭遇したセシリアが互いに自分が一夏のタッグマッチにおけるパートナーに選ばれると確信してる。……これはまずいのでは無いか?』

 

「一夏、ちょっと待ってくれ。少しお前と話したい事が出来た」

 

 簡潔、しかし大変分かりやすく危機を伝えていた光からのメールを読み終えた瞬間、慎吾はすかさず更衣室から出ようとしていた一夏を呼び止める

 

「ん? 何です慎吾さん?」

 

 そんな慎吾の様子に一夏は特に何も気付いた様子は無く、不思議そうに首を傾げて慎吾に聞き返す

 

「いきなりで悪いがくれぐれも落ち着いて聞いてくれ、このままではお前の身に問題が起きかねない事なんだ……」

 

 そんな一夏に慎吾は出来るだけ落ち着かせるように穏やか、しかし慎吾自身も多少いつもより早いペースで自らが思い付いた惨事を避ける為の対抗策を伝えてゆくのであった


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