二人目の男子はIS学園No.1(最強とは言ってない)   作:塩ようかん

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 遅れてすいません。最低でも月に二本以上は投稿出来るようにしたいですね……


132話 『信じる』と言う選択

「えっ……?」

 

「お、お兄様……?」

 

 夕食を終えた後、すぐに一夏の部屋に訪れた箒とセシリアは瞬間、全く同じタイミングで驚きの声をあげた

 

「まぁ……その気持ちは分からんでも無いが、取りあえずは落ち着いて座ってほしい」

 

「そう言う事だ、俺達がいる事情は今から話すから俺からも頼む」

 

 そこに待っていたのは緊張した様子でベッドに腰掛けていた一夏を囲むような形でそれぞれ両隣に立つ慎吾と光の姿であり、二人の表情もまた緊張しているのか笑っているのか困っているのか分からない表情をしていた。

 

「う~む……君達の気持ちを考えると私としては非常に言いづらいのだが……」

 

 箒とセシリアが状況を理解できない様子のまま慎吾に誘導されて敷かれた座布団に座り、それを確認すると慎吾は困った表情をしながらも何かを決意した様子でそう言うと口を開き始めた

 

「だがしかし、事態を無闇に先送りにしても何の解決にもならないので単刀直入に言おう。箒、セシリア残念ながら一夏が今回タッグマッチを組むことに決めた二人のどちらでも無いんだ」

 

「すまん!二人とも本当に悪い!」

 

 すかさず慎吾の言葉に合わせて一夏が素早く自身の胸の前で手を合わせると箒とセシリア両者に向かって交互に素早く頭を下げて謝罪した

 

「す、すまないで……!」

 

「落ち着け箒、まだ慎吾の話は終わっていない」

 

 一夏のその言葉に思わず頭に血がのぼってしまったのか、箒が一夏に鋭い視線を向けながら立ち上がり、そこで箒と同タイミングで立ち上がった光に制された

 

「……以前の私なら、ここで箒さんと一緒に動いていたのでしょうね」

 

 一方で、セシリアは一夏の発言には動揺した素振りを見せたものの、感情のまま立ち上がるような行動する事は無く、箒を横目で見ながら自嘲の笑みを見せた。が、それはほんの一瞬の事であり、次の瞬間にはセシリアの表情は何時も見るような自信に満ちた表情に変わっていた

 

「ですが、今の私は末席に甘んじているとは言えお兄様の妹。この場にお兄様がいる以上、私はお兄様を信じて待ちますわ。ええ、それが妹としてあるべき姿ですもの」

 

「……セシリア……その私に対する信頼の気持ちは喜ぶべき事なのだろう。ありがとう」

 

 何故か少し目を輝かせながら、一切の迷い無くそう語るセシリアに慎吾は少しだけ圧せられながらもどうにか笑って礼を言うことでその場をやり抜けた

 

「事情はプライベートに関わるので今は私の口からは詳しくは言えないが……今回のタッグマッチの件については一夏にとっても、事情があって全くの予想外の形で引き受けた事なのだ。それこそ、皆が動き出すより早く……にな。だから、今回の事に一夏に責任は無い」

 

 光に宥められ、箒が再び座したのを確認すると慎吾は一夏から聞いた事情を楯無の名前を隠す形で二人に語って聞かせ、特に最後は断言するように言い切った

 

「……慎吾、お前は事情があって一夏に責任は無いと言ったな。だが、その肝心の事情をお前は語っていない。そんな事で私達に、お前の言う事を信じろと言うつもりか?」

 

 と、そこで今まで興奮した所を光に宥められた事を罰が悪く感じていたのか視線を落とし、黙って慎吾の話を聞いていた箒が視線を床から慎吾へと移し、そう問い掛ける。その目には口にせずとも『下手な誤魔化しだてをすれば容赦しない』と、言う確かなメッセージが込められている事が慎吾には感じられた

 

「そうだろうな……確かに、ただ私と一夏を信じろと言っても、そう簡単に納得は出来ないだろう」

 

 そんな箒の言葉に慎吾は否定も肯定もする事は無く、むしろそれを予想していたかのような落ち着きを持って答えながら二度ほど小さく頷くと、箒をしっかりと見つめながら更に言葉を続ける

 

「……しかし、だ。だからと言って今、箒やセシリアに教えられる事はこの程度の情報しか無い事も事実。ならば勝手を重ねてすまないが後に必ず説明する。だから『それでも私や一夏の事を信じて欲しい』としか言うことしか出来ないな……すまないな、箒」

 

 そう言い終えるなり慎吾は困ったような表情を浮かべたまま、軽く箒に向かって頭を下げて謝罪した

 

「はぁ……そこまで真っ直ぐに『信じてくれ』と言われては、断るものも断れないではないか……」

 

 その途端、身体中の息を全て出しているかのような深いため息と共に肩の力を抜くと、顔をしかめて根負けしたかのようにそう言った

 

「じゃあ箒……!」

 

「こ、これは……あ、あくまで今回だけ、今回だけは慎吾の普段の行いから判断して信じてみただけだ……!」

 

 事実上、一夏を許した言葉に一夏は目を輝かせながら確認するように箒に問いかけ、正面からキラキラした一夏の視線を向けられた箒は瞬時に頬を赤く染め上げながらも、それを誤魔化すようにぷいっと首を動かして視線を反らすと、多少、声をどもらせながらも箒本人としては背一杯、落ち着きと冷静さを意識した口調でそう言った

 

「私は、先程と何も変わりません。ここで万全の信頼を置いてお兄様を信じる事こそ真の妹に相応しい……つまり、そう言う事ですわね? お兄様」

 

「あ、あぁ、助かる。ありがとうセシリア……」

 

 一方でセシリアは既に今回の事態についての結論が出ていたらしく。自信に満ちた表情で慎吾にそう確認し、それに慎吾は多少、困惑しながらもセシリアから向けられる信頼は決して悪い気分では無く、それに答えたいと感じた為にセシリアに笑顔でそう返すのであった

 

 

「ううん……構想そのものは間違ってはいないはずなのだが……これは取り扱いが難しすぎるな……」

 

「このままじゃあ、エネルギーに耐えられずに数分で自壊するのは免れない。かと言って自壊しない程度にまで強度を上げれば凡庸以下のスペックしか発揮できない……です」

 

「笛と剣を一体化させた武器と言うのは私は面白い発想だと思ったのだがな……現段階でこれを実用にまで持っていくのは無理だな」

 

 慎吾が話し合いを平穏に終えた翌日、IS学園の各アリーナに隣接する形で存在するIS整備室では光、簪、慎吾の三人が順に意見を交わしながらゾフィーの新武装に関して意見を交わしていた。

 が、生憎、簪の参加によって新武装のアイディア自体はいくらかは生まれてはいたのだが、それが実用に向くかどうかはまた別問題であり、光は顔をしかめて悩んだ末にスクリーンに表示された横笛と片手剣が一体化したような武装の設計図を再び端末に戻し現段階での開発を見送る事にした。

 

「どうにも……行き詰まってしまったようだな……」

 

 光明が見えない展開に慎吾もまた頭を抱え、ため息をしながらそう呟いた。

 

 既に慎吾、光、簪の三人はそれぞれ幾つかの案を出しあってはいたものの、その全てが先程の光のようにスペック自体は強力なものの実用には向かなかったり、開発可能なもののゾフィーとの相性に問題を見つけて断念せざるを得なくなったり等して総じてどれも採用になる物は無かった

 

「あの……すみません私、あまり力に……」

 

「簪、俺も慎吾も三人が揃ったからと言って何も一日や二日で素晴らしいアイディアが出てくる等は考えていない。むしろ、今はリラックスして率直な意見を出来るだけ多く出してくれ」

 

 進まない話し合いに責任を感じているのか、簪が申し訳なさそうにそう言う。が、直ぐ様、光がその必要は無いとばかりに諭すように簪にそう告げて簪のフォローに回った

 

「……もう時間も遅い、今日の所はここまでにして切り上げた方が良さそうだな」

 

 そして慎吾は、時計から今の時間と現状を見て本日の話し合いを終える事を結論ずけ、光も簪もその提案には特に反論は無かったらしく慎吾の言葉に頷いて答えると、三人はそれぞれ持参した荷物を纏めて帰宅準備を始める

 

 まさに丁度、その時だった

 

「よっと……お疲れ様。飲み物、買って来たけどどれ飲む?」

 

 奇しくも何気なく簪が整備室の入り口の自動ドアに視線を向けたその瞬間に自動ドアが音を立てて開き、手に何本かの缶ジュースを抱え、やんわりとした笑顔を浮かべた一夏が姿を表したのは


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