二人目の男子はIS学園No.1(最強とは言ってない)   作:塩ようかん

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 何とか更新です、出来るだけスムーズに進めて行けるようになりたいですね……


134話 ある日の休日、(一夏との遭遇)

「ふう……やはり改めて基本に帰って過去の資料を見返すのは大事だな。これで、もう少し新武装開発にも前進が見られるだろう」

 

 休日、慎吾と共にM-78社、そこの自身の古巣でも研究部所へと訪れていた光は作業を終え、必要な資料を自身の端末にインストールしながらそう呟くと、ふと壁に掛かっていた時計に目が入った

 

「もうこんな時間か……そろそろ日が落ちるな……慎吾、そろそろ終わりにして帰宅するか?」

 

 そこで二人が昼過ぎにM-78社に到着した時点から実に五時間以上が過ぎている事に気が付いた光は、そこで隣のデスクで作業をしていた慎吾に声をかける

 

「…………」

 

 が、しかし、当の慎吾はそんな光の問いかけに答える事は無く、食い入るようにコンソール片手に目の前のモニターを凝視していた

 

「……慎吾? どうした、何かあったのか?」

 

「あっ……! あぁ、すまない光、少し集中し過ぎていたようだ」

 

 再度、光に話しかけられると慎吾はそこで漸く光に声をかけられていた事に気が付いたらしく、慌ててモニターから視線を外すと、慎吾は少し恥ずかしそうに短く謝罪した

 

「いや、気にする必要は無いが……一体、何にそこまで集中していたんだ?」

 

 慎吾は光から見れば、基本的に生真面目で人の言葉を聞き逃す等、通常ならばまずあり得ないような性格の持ち主だ。では、一体何がそこまで慎吾を集中させたのだろうか? 無性にそれが気になった光は気がつけば自然と、そう慎吾に問いかけていた

 

「あぁ、実はこれらの装備を見ていたら、一つアイディアを思い付きそうになってな」

 

 すると慎吾は先程まで自身が見ていたモニターを動かし、映し出されている映像を光にも見えるように動かして調整した

 

「ふむ、このデータは……キングブレスレットにメビウスブレス……と、俺のナイトブレスも見ているのか?」

 

「まだ空論に過ぎない思い付きだが……あと少し、10分程時間があればどうにか大まかな図面くらいは作り上げる事は出来そうなんだ。悪いが光、私はもう少し残ることにするよ」

 

 光と流暢に会話を交わしながらも慎吾は、モニターに映し出された各装備のデータとをじっくりとチェックしながらコンソールを忙しく動かして、確実に一つの図面を完成させてゆく

 

「いや、構わん。もう六時間もここで過ごしたんだ。この際、10分やそこらの時間など気にしないさ」

 

 そんな非常に真剣に熱中している様子の慎吾を見た光は、普段年齢以上に大人びてる慎吾の何処か時間も忘れて熱中する子供のような行動が少しおかしいのか少しだけ笑みを浮かべると、再び自身のデスクに戻り数分前に購入したコーヒーの残りを慎吾の作業の様子を見つつ、ゆっくりと飲み始めるのであった

 

 

「ふぅ……終わった終わった。いや、本当に待たせて、すまなかったな光」

 

「ふっ……その分、今度の会議での発表を楽しみになるだけさ」

 

 それから十分後、宣言した時間丁度に作業を終えた慎吾は光と共に研究部所を出てM-78社の廊下を歩いていた。設計図面作成には結構な苦戦を強いられたらしく、慎吾の表情には若干の疲労の色が見てとれたが、それ以上に満足する結果を得られた事が自然に慎吾を笑顔にさせ、それにつられて光も自然と慎吾に笑みを返してした

 

「しかし……この時間となると、今日の夕食は学園に戻るよりは外で済ませた方が良さそうだな。慎吾、何か案はあるか?」

 

 と、そこで光は右腕の腕時計に視線を向けて改めて現在の時刻を確かめ、そう慎吾に問いかける

 

「そうだな、この近くとなると……まてよ」

 

 問われた慎吾は数秒ほど思案すると、何かを思い付き小さく言葉をこぼした

 

「この間、会話の中で一夏から紹介してもらった店がここから歩いてすぐの所にあったはずだ。何でも定食屋らしいが……それで構わないか光?」

 

 慎吾がそう問いかけると、光は無言のまま軽く頷いてそれに答え、二人はそのまま並んで幾人もの社員が通る、M-78社正面入り口の自動ドアを抜けて外へと歩み出していった 

 

 

「あった、ここだ光。間違いない」

 

 慎吾と光がM-78社を出てから数分後、二人は迷うこと無く目的地の定食屋にたどり着いていた

 

「店名は……『五反田食堂』? ……あぁ、前に会った弾くんの実家かここは。そう言えば一夏くんの誕生会で話していたのを聞いた覚えもある」

 

 店の看板を見た事で光は全てを察したらしく、記憶を思い返して納得したように頷いていた

 

「味に関しては一夏からお墨付きを貰っている。確か……『業火野菜炒め定食』と言うメニューが特におすすめで鉄板だと言っていたな……」

 

 そう言いながら慎吾は光を促すように先導して店内へと入ってゆき

 

「あれ……慎吾さん!?」

 

「一夏? それに箒も……お前たちも来ていたのか?」

 

 直後、店内で今まさに自分が話題に出していた一夏、そしてその隣にいる箒と遭遇し、あまりにもタイミングの良い偶然に慎吾は思わず驚愕の声をあげるのだった

 

 

「なるほど、黛先輩に頼まれた雑誌モデル撮影の日は今日だったか……」

 

「えぇ、撮影に慣れなくて大変でしたよ……本当に色々と」

 

 数分後、食事の傍らに一夏達から事情を聞いた慎吾は納得したように頷き、一夏はどこか疲労が残る顔で苦笑しながらそう答えた

 

「あぁ……私も自分の撮影の時は恥ずかしながら緊張してしまったな。仕方ないとは言え多くの人々から必要以上に注目を浴びるのはやはり心が落ち着かないものだな。本当に」

 

 一夏の言葉に慎吾は箸を動かす手を一旦止め、思い返すように、そうゆっくりと呟いた

 

「へぇ、慎吾さんもモデル撮影をしたことあるんですね。どんな撮影だったんですか?」

 

 その言葉に一夏は興味を持ったらしく、特に考えずに純粋に果たして自身より筋肉質な体型を持つ慎吾がどんな服を着て撮影に挑んだのかを知りたくて率直に問い掛けた

 

「確か端末にその時の写真を入れて置いたはずだが……あぁ、これだ」

 

 一夏の言葉を聞くと慎吾は懐から携帯端末を取り出し、多少操作すると目的の画像を発見したらしくそのまま端末画面を一夏の方へと向けて近づけ、自然な流れで一夏はそのまま軽く身を乗り出しながら画面へと視線を向け、ついでに少しばかり興味を引かれていた箒もまた画面を覗きこみ

 

 

「「………………」」

 

 二人が共に揃って、そこに映し出されていた予想の斜め上を突っ走る写真に沈黙してしまった

 

「この写真は……あぁ、例の、お前が前に言ってた、今の流行より自分の信じたモノを信じて撮る。と、言う現代にしては妙に粋なスタンスを持ったカメラマンの撮影した奴か? 確かにこの独特の雰囲気は他に無い独特のエネルギーを感じるな……」

 

 その中で唯一、慎吾以外に写真に見覚えがある光がどこか納得したように頷きながらそう言う

 

「これは……この姿は……仏教の十二神将をモチーフとしたのか……?」

 

 と、そこで漸く理解不能な物を見た故の硬直状態から立ち直った箒が恐る恐ると言った様子で慎吾に訪ねた

 

「あぁ、分かるか。何でも私を最初に見た瞬間に電撃的にこのイメージが浮かんできたらしい」

 

「「…………」」

 

 そう何気無く答える慎吾に箒と一夏は何も言うことが出来ず再び沈黙させたれた

 

 慎吾の端末に写し出されていたのは撮影に使われたらしい数名の写真であり、そこには慎吾一人を撮影したものや、慎吾のまわりを多種多様のお洒落な服装に身を包んだ数人の若いモデルの男性が取り囲んだものが撮影されており、それ自体は普通と言えた。そう、何より問題なのは

 

「しかし袈裟も初めて着ると慣れないものだな……道着ならば着なれているのだが」

 

 そう、その写真に写し出されている慎吾の服装は最新ブランドの新発売服や老舗メーカーの自慢の服装等では無く。白地にどこか落ち着いた紅色が目立つ袈裟。それもどういう訳か袈裟の上半身や下半身が品を損なわない程度にはだけており、慎吾の鍛え上げた筋肉が露になっており、良く見てみれば慎吾と共に写真に写っているモデルの男性の何人かは明らかに周囲と比べても異質な慎吾の服装に笑顔が引きつっているのが見てとれた

 

「まぁ、一夏も私も専用機持ちで二人しかいない男性操縦者であゆ以上、これから再びモデル撮影の話が来る事もあるだろう。これもある意味、専用機持ちの義務だと思ってやっていこうではないか」

 

「そう……ですね……はい」

 

 苦笑しながら語る慎吾に、未だに端末画面に写し出されている袈裟を着た慎吾の姿に唖然とさせられていた一夏は額に汗を滲ませながらそんな曖昧な返事を返すことしか出来なかった


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