二人目の男子はIS学園No.1(最強とは言ってない)   作:塩ようかん

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 どうにか今月中にもう一本更新する事が出来ました。これから少しずつ調子を上げて更新してゆきたいですね


141話 兆候

「一夏……あと少しで否応なしに知ることになるだろうが……それでも最初に言っておこう。すまない、私には止める事が出来なかった」

 

「へ……?」

 

 専用機タッグマッチトーナメント大会当日の朝、これから楯無による開会の挨拶が始まろうとする最中、T事件などで楯無に作った複数の借りの為もあって生徒会に所属していた慎吾は、集合した生徒達や教師陣がマイクスタンドの前で司会をする虚に注意が移った一瞬の隙を縫って、同じく生徒会メンバーてして虚の背後で整列するつ一夏に、こっそりと耳打ちした

 

「まさか……慎吾さん何か本番になってどうにもならないほど困ったことがあったんですか……!?」

 

 不意討ち気味に放たれた慎吾の言葉に一瞬、気を取られたようにポカンとしていた一夏だったが、その内容を理解するや否や表情を険しくして声を潜めながらも緊張した様子で慎吾に問いかけた

 

「……確かに、ある意味ではあるが、そう言う事にもなるのだが……」

 

 一方で問いただされた慎吾は歯切れ悪く、苦笑いするような表情で一夏に答えると小さなため息と共に肩をすくめた

 

「ん~……? ど~したの? しんにーに、おりむー? ふぁー……」

 

 と、そこで偶然にも整列していた立ち位置が二人のすぐ隣だったゆえに話が聞こえていたのか本音が若干、二人に向かって顔を寄せながらそう問いかけ……その途中で眠たげに欠伸をした

 

「……待て、気を付けろ本音。それに一夏もだ。どうにも私達を不信に思ったらしいが先程から何度も連続して教頭先生が君や、私や一夏に視線を向けている。やはり、承知の上だったが、この場で話すのは無理があったか……」

 

 そんな本音と、本音の問いかけに答えようとしていた一夏を慎吾は制すると真っ直ぐに背筋を伸ばして起立した姿勢のまま視線だけを動かして生徒達のすぐ近くに並んで集合している教師陣、その中でコソコソと不審な行動をする慎吾達を睨み付けている一人

 逆三角形が特徴的なフォックス型眼鏡に逆に老けをより強めに見せてしまうような濃い目の化粧、所謂『お堅め』と言われてしまうような皺一つ無いスーツと、まるで絵に書いたような『無駄に厳格で融通が効かない教師』の服装をした(最も、慎吾の知る限り、見た目だけでは無く、性格もまさに当人の服装の通りなのだが)教頭の事を二人に気付かさせ、その瞬間一夏が隣にいる慎吾にしか聞き取れない程度の小さな声で「げっ」と声をこぼした

 

「すまん……私から一方的に語り出した事なのに、ぶつ切りになってしまったが話はここまでだ……」

 

 睨み付けてくる教頭の視線に気付いた一夏が慌てて姿勢を正したのを確認すると、慎吾は最後に短くそう言って一夏に謝罪し、自身も改めて何事も無かったかのように視線を真っ直ぐ、丁度、マイクスタンド前に立ち、開会の挨拶をせんとする楯無へと視線を向けた

 

「どうも皆さん、今日は専用機持ちのタッグトーナメントですが……」

 

 何時もと変わらず堂々とした、しかしそれでも少しも嫌味に聞こえないような声で楯無が語り始める。その内容自体は長すぎも短すぎもせず、抑揚がはっきりしており非常に聞き取りやすいだけで、ごく普通の挨拶であり、何もおかしな点を見つけられず隣に立つ一夏は小さく胸の中で先程の慎吾が何を自分に伝えんとしていたのかと疑問を感じた

 

 そう、確かにこの時まではごくごく普通だったのだ

 

「名付けて『優勝ペア予想応援・食券争奪戦』!」

 

 楯無が『博徒』と書かれた扇子を開き、力強くそう宣言するまでは

 

「…………はい?」

 

「……………………」

 

 楯無の宣言に生徒達が興奮で沸き立つ中、一夏は思わず間の抜けた声をあげ、慎吾は疲れを隠せない顔で思わず頭を抱えていた

 

「……ってぇ!! それって賭け事じゃあ……っ!!」

 

「それがだな……一夏、一応はこれは生徒達の応援の一環『レクリエーション』の一つであり、賭け事ではない。と、なっているんだ……少なくとも先生達には、そう話はついている……」

 

 気付いた瞬間、反射的に楯無の賭博開始宣言に思わず反射的に突っ込みを入れる一夏だったが、そこに慎吾が心労からか頭を抱えながら更なる情報を付け加え、たまらず一夏は絶句する

 

「私も、どうにか時間を縫って新装備開発の傍ら生徒会に赴いてやれるだけの事はやったんだが……やはり多数決には勝てなくてな……一夏、君も呼ぼうと思ったんだが、あまりにも集中して声をかけづらくてな……」

 

「おりむー、多数決の取る日も生徒会室に来なかったからね~」

 

「ははははは……嘘だろ……おい……」

 

 申し訳なさそうな顔の慎吾といつも変わらぬにへっとした緩い笑顔の本音の口から続けざまに語られる衝撃の事実による精神のダメージにより、もはや一夏はひきつった顔で乾いた笑い声を発しながら立ち尽くす事しか出来なかった

 

「まぁ、そう言うことだから良かったら生徒会メンバーだからって遠慮せずに二人も楽しんでね?」

 

 二人から向けられる視線に気が付いた楯無はそう言って、慎吾と一夏に魅力的に笑いかけながらウィンクをしてみせ、それと同時に二人のため息はシンクロでもしているかのように重なるのであった

 

 

「まったく……生徒の皆を楽しませようとする心は生徒会長としてはすげぇ良いと思うんですけど……少しは押さえて欲しいですよねぇ……」

 

「はは、確かにその気持ちは分かるがな一夏。しかし、我々には破天荒にも見える想像も行動力、そして予測も不可能な行動を実行に移せるカリスマを持っている事こそが楯無会長の魅力だと私は思うし、だからこそ皆がついて来る……楯無会長とは短い付き合いだが、私はそう考えているんだ」

 

 アリーナへと続く道を共に並んで歩きながら慎吾と一夏は先程までの楯無の事を思い返し、二人ともに苦笑した

 

「まぁ、それはそれとしてだな……」

 

 と、そこで慎吾はふと足を止め、一夏に向かって真っ直ぐな視線を向ける

 

「第一試合を背負った、君の抱えるプレッシャーは大きいだろうし……相手はあの楯無会長と箒だ。間違いなく厳しい戦いになるし、私が一夏の立場だったらぞっとしない相手だと思うが……それでも勝機は確かにある」

 

「うっ……そりゃあ、そうなのかとしれませんがね……」

 

 慎吾からの言葉を受けた慎吾は盛大に顔をしかめ、緊張によるものか額から汗を流しながら、そう答える。

 そう、何の因果か今回のタッグマッチトーナメントで先陣を切ったのは一夏であり、実の所、先程から一夏との会話の合間にその様子を見て、その精神の乱れを案じた慎吾はこうして足を止めて一夏に声をかけたのだ

 

「……慎吾さんも一緒に見たでしょう? さっき黛先輩が見せてくれたオッズ。あれ慎吾さんと光さんのペアが同率二位で、俺と簪のペアが最下位だったじゃないですか」

 

 当人としても、あまり口にはしたくは無いのか一夏は若干、声をひそめ、自信なさげにそう慎吾に語る

 

「一夏、それはあくまで統計の結果だろう? 私個人としては一夏を……勿論、簪も、持つ実力を信じている。だからこそ、私は先程『勝機がある』と、言ったわけだ。それにな、統計が全てだと言うなら、そもそも我々がこの地球にこうして、ここにいる事すら怪しいものだぞ?」

 

 そんな一夏を慎吾は特に責めることもせず、あくまで穏やかな口調で一夏に言い聞かせるようにそう言い、励ますようにその肩に自身の手を添える。と、そこで慎吾はたと柔和な笑みを浮かべていた表情を真剣なものに変え

 

「……それに、無茶を言うようだが、もう一つだけ君に頼みたい。私は出来るだけの事はしたが、彼女の……簪の心を変える決定的な一歩を導いてやれるのは他でもない君の気がするんだ……」

 

「……慎吾さん?」

 

 思いがけず放たれた慎吾の言葉に困惑した一夏が聞き返そうとしたその瞬間

 

 全く、突如として空気が張り裂けるような衝撃音と共に地震のような激しい地響きが巻き起こって校舎を揺らし、その力は容赦なく二人にも襲いかかった

 

「んな……っ!?」

 

「こ……れは……っ!!」

 

 一夏が壁に寄りかかり、慎吾が床にしゃがみこむ事でどうにか振動を堪えるなか、廊下に備え付けられた電灯が赤い非常灯へと変わった

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