二人目の男子はIS学園No.1(最強とは言ってない)   作:塩ようかん

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 何とか更新出来ました……。戦闘描写に普段より気合いを入れて書いてみたら予想以上に長くなったのが原因です。が、今回でやりたい事はやれたので満足しています


144話 二人の策

「ハァァッ!! セイッ!!」

 

 ひび割れたボディ部分を狙った渾身の蹴りはゴーレムⅢに容易く回避されたが、それでも慎吾は追撃の手を止めず反撃とばかりに放たれたゴーレムⅢのラリアットを腕で弾きとばすと今度は頭部のバイザー目掛けて空気を切り裂くような鋭い音を立てて手刀を叩き込んだ 

 

 僅かな時間での光との話し合いを終え、再びゴーレムⅢと対峙した慎吾は戦闘の場所を低空へと移動し、ウルトラディフェンダーを再びブレスレットに戻すと、先程とはうって変わって防御を必要最低限レベルにまでとどめた非常に攻撃的な戦法で戦闘を続けていた

 

「まだだ……確実に成功に導くためにはまだ、責め続けなくては……!」

 

 決して多いとは言えない残されたシールドエネルギーの両では、洒落でも無く一手の誤りが即ち敗北と言える

緊迫した状況の中、慎吾は自身の心音が大きくなり冷や汗が流れ始めるのを感じながらも、覚悟を決めてそう叫ぶと、更なる攻撃を続ける

 

 勿論、慎吾は決してやけっぱちでこんな強硬手段を選んだ訳ではない

 

 あくまで慎吾の頭は激情に流されず冷静さを保っており、全ては短い時間の中で捻り出した二機のゴーレムⅢを纏めて倒す策を実現させる為の行動であった。

 が、それに加えてもう一つ、慎吾の専用機たるゾフィーの第二形態移行たるゾフィースピリット。それは全てに置いて通常時より全ての機体スペックが優れ、特殊な条件付きではあるが他のIS機体が持つ唯一使用を再現して使用する事が可能とする反面、元より一夏の白式程では無いが、燃費が良いとは言えなかったゾフィーの燃費は更に悪化し、維持可能とする時間が約180秒と制限されている。

 既にゾフィースピリットに移行してから二分が経過していた慎吾にとっては最早、一秒たりとも時間に余裕は残されていない。と、言うことも大きな理由の一つに他ならなかったのだ

 

「ーーーー」

 

「うっ!?……ぐっ……!」

 

 と、その瞬間、連続で繰り出される慎吾の蹴りの中、僅かに甘かった一発の右足の蹴りをゴーレムⅢが巨大な左手でガッシリと受け止めると、がっしりと足首を掴むのと同時に装甲が悲鳴を上げだす程の強靭な力で締め上げ、ゾフィーの警告表示がやかましい程に鳴り響くのと同時に足首から先が千切れそうになる程の激痛に耐えながら慎吾は拘束から逃れるべく捕まれていない左脚を振り上げる

 

「がっ……!」

 

 しかし、それよりも早くゴーレムⅢは足首を掴んだまま、力ずくでゾフィーをアリーナの大地に向かって投げ飛ばし、慎吾の左脚が何も捕らえずむなしく空を切った瞬間、ゾフィーは大地に激突して慎吾の苦悶の声と共に土埃が巻き上がった

 

「ーーーー」

 

 決定的な隙を見せてしまった慎吾に、ゴーレムⅢはゾフィーが墜落した場所、土煙に目掛けて、長高密度圧縮熱線を豪雨の如く降り注ぎ、土煙はみるみるうちに真っ赤な熱線へと埋め尽くされていった

 

「ハアアアァァッ……!!」

 

 と、その瞬間、微かになった土煙と降り注ぐ熱線を突き破り、ウルトラディフェンダーですっぽりとゾフィーの全身を守れるように構えた慎吾がかけ声と共にゴーレムⅢに向かって真っ直ぐ突撃を開始した

 

「(まだだ……まだ、まだ耐えられる……! このブレスレットは試作型だが皆で協力して作り上げた一品! 理論上はあの熱線であっても受けきれる筈だ!)」

 

 降り注ぐゴーレムⅢの熱線を正しく盾となって受け、同時に反射を続けるウルトラディフェンダーの表面はあまりの熱量に次第に白熱している範囲が広がってゆき、慎吾も次第にウルトラディフェンダーを持つ手に感じる熱が増していくのを感じながらも、慎吾は突撃を止める事無く、更に速度を上げてゴーレムⅢへと向かっていく

 

「ーーーー」

 

 と、その時だった、多数の熱線を受けても一向に引かない所か全速力で突撃してくる慎吾に対して対処を切り替えるつもりだったのか、はたまた決してありえぬ話ではあるが無人機であるゴーレムⅢが持つ電子の脳で『焦り』を感じたのか、ゴーレムⅢは後退し、今の今まで左腕から途切れなく発射されていた熱線が一瞬、止まった

 

「今……だっ……!!」

 

 無論、その降って湧いたような決定的な隙を慎吾は決して見逃さす道理は無い。今の今まで構えていたウルトラディフェンダーをすかさず頭上へと掲げる。その瞬間、ウルトラディフェンダーは目映い光に包まれ、僅かな時間その姿を元のウルトラブレスレットに変化させたかと思うと再び変形し、より細く、長く、そして鋭利な全く別の姿へと変化してゆく

 

「ハアッ!」

 

 その僅かな間も無駄にはせず、慎吾はゴーレムⅢに狙いを定めるのと同時に頭上で腕を引いて構え、ウルトラブレスレットが新たな姿へと変化を終えた瞬間、空を裂くほど鋭く、早く投擲した。その一連の動作に所要した時間は実に0,5秒。ゾフィースピリットの力でシャルロットの『高速切替』を再現したからこそ可能であった早業であった

 

「ーーーー」

 

 一撃たりとも食らわないとばかりに固くガードを固めていた状態から文字通り一瞬にしてゴーレムⅢへの攻撃へと反転した慎吾ではあったが、無人機であるゴーレムⅢはそれに決して動じたりなどする事は無い。ゾフィーが凄まじい投擲したモノを読み取り、すかさず球型の可変シールドユニットが規則正しく並び、投擲物と接触するタイミングでエネルギーシールドを展開させ

 

 次の瞬間、投擲されたエネルギーシールドをゾフィーから投擲された、持ち手近くの紅白模様と矢にも似た形が特徴的な一本の細身の『槍』がエネルギーシールドをまるでそれが薄ガラスであるかの如く軽々と可変シールドユニットごとシールドを貫通し、その長さがゾフィーの身長ほどもある槍は回避も間に合わせずそのままゴーレムⅢの亀裂部分に命中し、串刺しにした

 

「これが今出来るウルトラブレスレットのもう一つの形態、ウルトラランス……! どうにかぶっつけ本番で形使用する事が出来たが……ふっ、予想を越えた破壊力だな。と……」

 

 荒く息を吐き出し、ウルトラランスが突き刺さった事で空中で大きくふらつくゴーレムⅢをみながら慎吾は仮面の下で改めてウルトラブレスレット小さく笑みを浮かべる。が、直ぐにその顔を緊張で引き締める。もはや、このタイミング以外に策を仕掛けるタイミングは無かったのだ

 

「こちらは準備が出来た! 行くぞ光っ!」

 

 そう叫ぶや否や、慎吾は光を信じて返事を待たずにゴーレムⅢに向かって急加速すると体制を立て直す前に勢いのまま回し蹴りを叩き込み、光ともう一機のゴーレムⅢが戦っていた方向へと弾き飛ばすのと同時に光に向かって飛んだ

 

「あぁ……! 俺も今……そちらに行こう!」

 

 その慎吾の声に、すかさず光は答え、余程苦戦したのかアーヴギアが吹き飛ばされた上にタイマーが点滅している状態な上に格闘戦でゴーレムⅢに押し込まれる寸前だったもの、これ以上時間をかけられないとばかりに覚悟を決めると、片手でゴーレムⅢの刃を防ぎながらナイトブレスを天空に掲げ一気にエネルギーを集中させる

 

「ぐっ……うっ……おおおおっっ!!」

 

 そのままゴーレムⅢが反撃や防御に動くより早く、殆どゼロ距離に近い状態で光はナイトシュートを発射し、慎吾が蹴り飛ばしたゴーレムⅢに目掛けて吹き飛ばす。あまりにも近距離で発射された為にナイトシュートのバックファイアが光自身にも襲い掛かるが、それでも光はナイトシュートの発射を止めず、出来うる限りゴーレムⅢを遠くへ吹き飛ばすと自身もまた慎吾に向かって飛ぶ

 

 

「今だっ!」

 

「行くぞ慎吾っ!」

 

 そんな短い合図を交わした瞬間、二人はすれ違いざま『瞬時加速を行いながら』互いの機体の足裏を合わせると、光が力を込めて慎吾を蹴り飛ばす

 

「はぁっ!!」

 

 多少の誤差はあれど二機分のパワーで加速されたゾフィーは、そのあまりの速度のせいか、空中に一筋の矢のような鋭い飛行機雲を描きながらゴーレムⅢに向かって真っ直ぐに飛んで行き、そのまま速度を利用して上空から急降下し、居合い抜きの如く摩擦熱のせいか炎が見え始めたゾフィーの右脚で、鋭く蹴りを放ち二機纏めて吹き飛ばして怯ませると、速度を落とさないまま機体を大きくカーブさせると上昇した

 

「光! 次はお前だっ!」

 

「ああっ! 任せろ!!」

 

 慎吾を発射された後、すかさず移動してカーブの終わり際で待機していた光に向かってゾフィーの足を浮かべながら慎吾が叫ぶと、先程の巻き戻しの如く加速したまま二機は足裏を合わせ、今度は慎吾がゾフィーの両足で瞬時加速したヒカリをカタパルトの如く激しく発射した

 

「おおおおおっっ!!」

 

 発射されたヒカリは先程のゾフィーに勝るとも決して衰えぬ勢いで、同じく飛行機雲が残る勢いで加速すると

ナイトビームブレードを出し、未だに急加速して放たれたゾフィーの蹴りで体勢が崩れている二機のゴーレムⅢを上空から急降下して斬り伏せ更に大きく体制を崩させると、やはり先程の慎吾同様に大きくカーブしながら上昇し、そこで待機していたゾフィーを再び蹴り飛ばし、急加速させる

 

「「うっおおおおおお……っっ!!」」

 

 『何と、してでもこれで決める』そんな慎吾と光の気迫が込められた雄叫び共に二人の一連の動きは更にその速度を上げて行き、ゴーレムⅢの反撃を決して許さずビー玉か何かのようにゾフィーとヒカリの間を滅茶苦茶に吹き飛ばし滅多うちにしてゆき、やがて二機が作る飛行機雲が空中に巨大な∞のマークを作り出した

 

 そう、この二機が瞬時加速中している最中に互いにタイミングを合わせ、片方がもう片方を蹴り飛ばす事で二機分のエネルギーでもう片方を発射する。と、言う戦法こそが慎吾が簪と一夏を救おうとした際に偶発的に編み出した技であり、タイミングを一歩でも誤れば互いが大ダメージを負ってしまう危険性を秘めた慎吾と光の切り札たる策だったのだ

 

 そして今、絶え間の無い急加速による攻撃にゴーレムⅢの装甲が大きくひび割れ、二機のコアが露出した瞬間、二人の策は最終段階に達していた

 

「光、行くぞっ、トドめだ!」

 

 タイミングを見計らってカーブの途中で一旦方向転換慎吾はボロボロになったゴーレムⅢを掴み、背後に立つ光に向かって叫びながら振り返り、残されたエネルギーを全て使う勢いでゴーレムⅢを拘束したまま最後の瞬時加速を行った

 

「慎吾! 最後でタイミングを崩すなよ!!」

 

 呼ばれた光もまた、傷付いたヒカリの両腕でゴーレムⅢを拘束しながら答えると、瞬時加速をしながら慎吾に向かって飛ぶ

 

「「はあああっっ……!!」」

 

 互いに相手に向かって瞬時加速を行った二機は目にも止まらぬ動きでその距離を縮め、加速されたまま互いに正面衝突をしそうになり

 

 その寸前、二人はそれぞれ拘束していたゴーレムⅢを文字通り放り投げると、近付き過ぎた事で相手の装甲に掠めて火花が出るほどギリギリの所で互を避け、慎吾、光と共にやり過ごした

 

「「」」

 

 その瞬間、嫌な音を立てながら真っ正面から二機のゴーレムⅢは巨大な弾丸と化した相手に激突し、ボロと化した装甲はヒビ部分から、たちまちのうちにコアごと衝撃で崩れてゆき、瞬きもせぬうちにさっきまで人の形をとっていた二機は、それが元は何の姿をとっていたのか判断がつかぬ程に砕け、ゴーレムⅢは最後に断末魔の如く聞き取れる程に小さな電子音を奏でると、単なる瓦礫の山となってアリーナの大地に崩れ落ちていった

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