二人目の男子はIS学園No.1(最強とは言ってない)   作:塩ようかん

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 戦闘描写に自身が持てないながらも張り切って書いたら、何時もより少々長めになってしまいました。今回は所謂、『無双回』ですので苦手な方はご注意ください。なお、今回のサブタイトルはダンテの神曲から引用させていただきました


149話 『これより先に進むもの、一切の希望を捨てよ』

「はぁっ……はぁっ……はぁっ……はぁっ……!!」

 

 焦燥に駈られたまま一夏は背後を一切振り向く事も無く、足の靴紐がほどけているのにも汗が吹き出すのも構う余裕も無く、全速力でアスファルトを蹴りつけ走り続ける

 

 信じがたいニュースが目に入った瞬間から自身の下らない勘違いであってほしい、嫌、例え事実だとしてもどうか自分の仲間達も、そして学園の仲間達もどうか全員が無事であってほしかった

 

 けれども一夏が学園に近付く度に強まる、何か複数の物が焼かれて焦げてゆく悪臭が、複数の人間からなる慌ただしい喧騒と警報が、次々と増える悲鳴と怒号が、そんな甘い期待は徐々に徐々に、一夏の胸の中から消えて行きー

 

 そして、一夏は学園にたどり着いた一夏は見てしまった

 

 あちらこちらに刻まれている何かが激しく激突した事を示すひび割れたアスファルトや壁を、周囲に内蔵されていた部品を撒き散らせたまま白煙を上げてピクリとも動かないISとは異なる人型をした機械を、もうもうと黒い煙が燻る学舎を、担架に運ばれながら苦痛の悲鳴をあげる生徒達を、外壁に大穴を開けられ無茶苦茶になった内部が見える宿舎を、もはや半分ほどにしかその原型を止めていないアリーナを、そして

 

「光! おい光っ!! しっかりしろ光!! 何とか、意識を保っていてくれ!!」

 

「お姉ちゃんっ!? お姉ちゃんっっ!! やだっ!」

 

 医学知識が疎い一夏でも、危険な状態と断言できる程に傷付いた体を指一つピクリとも動かさぬまま担架に運ばれていく光と楯無と、それに追走しながら必死に呼び掛ける箒と簪を

 

「い、一夏……ぼ、僕は……僕達は……! お兄ちゃん……ごめんね……!」

 

「ううっ……! くっ……くそっ! 何が『私達に任せろ』だ! くっ……くううっ……! おにーちゃん……」

 

「一夏さん……お兄様がっ! お兄様がっ!!」

 

 共に傷付き、力無く地面に崩れ、三者三様の絶望にくれて涙を流す慎吾の義妹である三人を

 

「一夏……いい? くれぐれも落ち着いて聞くのよ……」

 

 そして仲間達の中で一番、冷静さを残していたものの腕と頭に巻かれた包帯が痛々しい姿の鈴から一つの、更なる無慈悲な事実を一夏は聞かされる事になった

 

 

 襲撃者による大谷慎吾の拘束および拉致

 

「嘘だろ…………?」

 

 まだ慎吾が何処に連れ拐われたのかも分かっていないと、続ける鈴の言葉を聞きながら一夏は悪夢でも見ているように呆然と騒がしいばかりの警報と負傷した生徒達の悲鳴、そして一面の煙が立ち込めるIS学園を眺める

 

 不明機によるIS学園襲撃。全ては一夏が私用により、学園から離れていた僅か一時間。その一時間と言う、あまりにも短い間に起こった出来事だったのだ

 

 既に燃え出してから時間が過ぎると言うのに、消えぬ黒煙は一夏の頭上で輝いていた太陽を徐々に覆い隠していってしまった

 

 

 

「うん? あれ……? 今の何?」

 

 二時間前、異変に最初に気が付いたのはグラウンドで自主練習の真っ最中、打鉄を纏い近接ブレードで素振りをしていた一人の三年生の生徒だった。

 彼女が練習の最中に何気無く見上げた空、その雲の向こうに一瞬、学園では見たことがないような真っ黒のISが翔んでいるのが見えた気がし、意識を鍛練へと集中させてた為にはっきりと断言は出来ないのだが打鉄のセンサーにも非常に短いが、反応があった気がしていた

 

「えっ、何々、どうかした?」

 

 と、同じくその生徒の隣で素振りをしていたクラスメイトの生徒は素振りをする手を止めると、近接ブレードを肩に背負い、突如声をあげた生徒の方へ振り向いてそう問い掛けた

 

「えっと、あのね……さっきあっちの何か空の方に見たことも無いISが見えたような気が……」

 

 問われた彼女がそう言って、隣の生徒へと向けていた首を動かし、自身が見た方角の空を指差そうとした、まさにその時だった

 

「よぉ……」

 

 嗤うような女性の声と共に、全く突如として指を指した生徒の目の前に自身がつい先程、遥か遠くの空に見たはずの特徴的な全身装甲に包まれた一機の黒いISが姿を表していた

 

 「えっ……?」

 

「それじゃあ……くたばれ」

 

 突如として起きた、理解を超越した事態に女子生徒が指を指すポーズのまま呆然としている間に黒いISは手にした武器を頭上に振り上げると、そのまま歌うように笑いながら打鉄に乗った女子生徒を叩き潰した

 

「……!?……!!」

 

 近接ブレードを背負った少女は先程まで話していたクラスメイト同様、一瞬だけ理解が追い付かず棒立ちをしたいたが、そのクラスメイトが指を指したポーズのまま地面にその衝撃を示すクレーターと頭上より高い土煙を作り上げ、クレーターの中心で倒れたままピクリとも動いてない事を理解し、その瞬間、少女は明確に謎のIS を展開している何者かを『敵』と判断した

 

「こんのっっ……!!」 

        

 判断するやいなや、近接ブレードを背負った少女は瞬時にブレードを両手で握り締め、武器を下ろしたまま構えすらしていない謎のISの西洋騎士のとさかのような頭部目掛け、日頃の鍛練の成果なのか、はたまた気持ちが成せる事なのか先程までしていた素振りより数段速い速度で斬りかかった

 

「遅ぇ」

 

「がっ……はっ……!?」

 

 が、しかし、その一撃は刃が届くより早く謎のISが容易く軌道を見破り、手にした持ち手の長い棍棒のような武器で近接ブレードごと生徒が身に付けたISを雑に凪ぎ払い、直撃を受けた少女は悶絶の声を上げながら飛ばされ、数メートル程グラウンドを転がると静止し動かなくなった

 

「雑魚じゃこんなもんだろうがよ……つまんねぇな」

 

 瞬く間に倒された二人を見て、謎のISは溜め息をつきながら退屈そうにそう言うと、欠伸をしながら軽く伸びさえして見せた

 

「待ちなさい! その場を動かないで!! もし、この警告を無視して動けば発砲します!!」

 

 と、その時、二人の監督役として指導していたラファール・リヴァイブを展開させた若い教師が動き、謎のISに向けて油断無くトリガーに指を添えグレード・ランチャーの銃口を向けながら警告の声をあげた

 

「ちっ……雑魚のくせに、うっとうしい……」

 

 そんな教師を謎のISは頭部に作られた濃いオレンジ色に輝く鋭い目で一瞬見ると、端から警告など無かったかのように手にした武器を肩に背負い、歩いてその場を移動し始めた

 

「言ったはずよ……! 動けば撃つ……って!」

 

 その瞬間、教師が生唾を飲み込む謎のIS目掛けてグレード・ランチャーのトリガーが引かれ

 

「がはっ……!?」

 

 次の瞬間、謎のISが背負っていた棍棒状の武器から一発の光弾が発射されると、それは謎のIS登場者が余所見をしているのにも関わらず正確にリヴァイブを纏った若き教師に命中すると爆発と共に構えていたグレード・ランチャーごとリヴァイブを軽々と吹き飛ばし、グラウンドに叩きつけた

 

「クク……バトルナイザー……ベリアルは当然として、やっぱりこいつは便利だな。実に良い『贈り物』だ。さぁて……そろそろ俺様に準備体操くらいは始めさせてくれよ……?」

 

 謎のISこと『ベリアル』の主、ベリアルは手にした柄が槍の如く長い棍棒に似た武器『バトルナイザー』を片手に満足毛にそう言うと次なる獲物を求め、漸く侵入者を知らせる警報が鳴り始めた学園のより奥へと向かって歩みを進めていった

 

 

「来たか……!! ついに……!」

 

 警報が鳴り響いた瞬間、整備室で万が一の事態に備えて床に屈んでヒカリの整備と調整していた光は作業の手を止めると立ち上がり、緊張した様子で生唾を飲み込んで立ち上がった

 

「ひ、光ちゃん……」

 

「……なぁ、もう一回だけ聞くけど……ほんまに大丈夫なんか光?」

 

「…………」

 

 一向に鳴りやまぬ警報と緊張した様子の光を見て、そうに聞くのは光が慎吾同様に情報を話して整備を手伝って貰っていた三人の内の井出と堀井であり、ショーンは何も言わずに光を見つめていた。三人は何れも顔を不安げにしており、共に光の身を案じているのが分かった

 

「ありがとう、皆。気持ちは嬉しいが……ここは俺達に任せて、どうか避難していてくれ」

 

 その言葉に光は微笑み、三人を安心させる為に出来る限り落ち着いた口調で言葉を返す。が、決して光は嘘でも『大丈夫』とは口にする事が出来なかった。M-78社で謎のUシリーズ機を見たときから確信にも似た気持ちで今まで戦った相手とは訳が違うと言う事を感じていたのだ

 

「……分カッた……光がソウ言うなら、ボクは光を信ジルよ……」

 

 重苦しい沈黙の後、目を細め、溜め息をつきながら全員を代表するようにショーンがそう言うと、井出と堀井は互いに顔を見合わせる、二人もまたショーンの言葉に同意だと言わんばかりに光に向かって小さく頷く

 

「井出……堀井……ショーン……」

 

 三人が行ったのはただそれだけ。アクションと言うはあまりにも短い行動。しかし、それでも光の胸には三人から向けられる暖かさに溢れて満ちており知らずのうちに光は自身の目頭が熱くなっている事を感じていた

 

「それじャア……光、グッドラック」

 

「グッド・ラック……皆もな」

 

 最後にそんな短い会話を交わすと光は決意を新たにし、ヒカリを待機状態のブレスに戻すと決意を新たに整備室から駆け出していった

 

 

「そっ……んなっ!? 嘘でしょ! アイツ本当に人間!?」

 

「怯むな! 落ち着いてさっき言った通り、集中砲火! アイツをこちらに近付かせたら負けだ!」

 

 恐慌状態になりかけた仲間を自身が使い慣れている銃を構えたまま臨時でリーダーを任された三年の専用機持ちの生徒を叱咤激励しながら叫ぶ。が、よく見れば叫ぶ彼女の顔は端から見ても分かる程に青ざめており、拭えない恐怖からか構える銃も震えていた

 

 彼女達は侵入者迎撃の為に向かった、IS学園の教師及び特に優秀な二、三年生の生徒達からなる100人程の混合チームであり、織斑千冬が外出の為に不在と言う今日の状況の中での未知のISを展開させた学園への侵入者の登場。と、言う突発的な事態の中でも誰一人、動揺などは見せず堂々と侵入者の元へと向かっていったのだ

 

 そう、ついさっきまでは

 

「ふん……まぁ、準備体操くらいにはなってるなぁ」

 

 バトルナイザーを背負ったままベリアルは嘲笑うように、そう言うと自身の一撃を受けて倒れ、ベリアルに向かって膝まずくように倒れ、纏ったISのシールドエネルギーが枯渇寸前になった一人の教師を無造作に蹴り飛ばし、蹴られた教師は悲鳴すらあげれず校舎の壁に激突するとそのまま衝撃で壁まで砕け、やがて教師の姿は瓦礫と埃に隠れて見えなくなってしまった

 

 混合チームとベリアルが対峙してから未だに30秒。ただそれだけの時間で100人近かったチームはあっという間にその姿を減らし、もはや僅か10名程度しか戦闘可能とするメンバーは残されてはいなかった

 

「今だ! 奴は隙だらけだ! 一斉に撃て!!」

 

「「「うっわああああぁぁっっ!!」」」

 

 と、その時、恐怖に呑まれそうになるのを堪えるようにリーダーの少女が仲間達に合図を送るのと同時に自身もまた無防備な姿勢で此方を見つめるベリアル目掛けて手にした銃を発砲し、それに続いて奮い起たせるように声を上げながら他のメンバーも発砲を開始した

 

 実の所、残されたメンバーが纏うISはその何れも中距離あるいは遠距離を得意とする機体であり、対する侵入者のISは遠距離攻撃と言えば手にした長い武器から時折、強力な光弾を発射するのみで、主な戦い方は凄まじい威力ではあるが長い武器を振るったり蹴りやパンチを主体とする中近接型。ならば相手の武器が決して届かぬ距離から光弾を発射されるより早くこちらの一斉砲火で沈める。それがリーダーの少女の狙いであり、実際、その選択事態はそれほど間違ってはいなかった

 

「へぇ……なら、俺様も少しだけ本気で遊んでやるか……!」

 

 そう、それは『ベリアルがまだ半分の力も使っていない』と、言う最悪の事実さえなければの話ではあるが

 

 迫り来る無数の実弾とレーザーが織り混った弾幕を前にしても尚、ベリアルは楽しんでいるかのようにそう言って笑うと背負っていたバトルナイザーを構えると、避けようとする素振りすら見せず、その場に立ったまま迫り来る弾幕に向かってバトルナイザーをまるで空調機のファンの如く激しく回転させ始めた。そしてベリアルを狙って放たれた無数の弾と唸りを上げて周囲の空気を掻き込みながら回転するバトルナイザーが激突したその瞬間

 

「んなっ……!?」

 

 それはさながら竜巻に呑まれるかの如く、無数の実弾もレーザーも纏めて回転するバトルナイザーの渦の中に巻き込まれていき、やがて放たれた全ての弾は一発もベリアルに命中する事なく周囲の大気と同じくバトルナイザーの周囲を渦を描いて回転し始め、あまりにも理解からかけ離れた信じがたい少女は思わず絶句させられた

 

「ハハッ……この程度の攻撃じゃあ、まだまだ甘かったなぁ?……喰らえっ!」

 

 嘲笑いながらベリアルはそう言うとバトルナイザーを回転させながら唖然としている混合チームに向かって押し出した。と、渦を描いて回転していた無数の弾はバトルナイザーから離れるとその回転の起動のまま真っ直ぐに混合チームへと向かって飛んでいった

 

「み、皆避け……っ!!」

 

 そこで漸く、リーダーの少女が我を取り戻し、慌てて仲間達に危険を呼び掛ける為に叫んだ

 

「「「きゃあああああぁぁっっ!!」」」

 

 が、しかし、そのタイミングは僅かに遅く、次の瞬間、返ってきてしまった自分達が放った弾丸が一斉に彼女ら自身に牙を向き、全ての弾が戻ってきた後、残された混合メンバーは全員が力尽き、地面に付してしまっていた

 

「ハッハッハッハッハッ! IS学園っても、たいしたことはねぇなぁ!! だがなぁ……」

 

 その様子を見てベリアルは満足そうに笑うと、突如、笑うのを止め、戦闘によって瓦解した防壁に向かって手にしたバトルナイザーを向ける

 

「オマエは違うんだろ? なぁ……学園最強?」

 

「あら……やっぱり気付いていた?」

 

 と、そんないつも通りの調子の軽い口調と共に楯無が防壁を飛び越えて姿を表し、堂々とベリアルの前に姿を表して見せた

 

「お前は特に楽しませてくれそうだったからなぁ……ククッ、丁度手ぶらになったタイミングで駆け付けてくれるとはありがてぇ……」

 

「あら、そう……。それじゃあ、その慢心が命取りにならないようにね……!」

 

 心底楽しそうに笑うベリアルに正面から対峙した楯無は殺気を隠さずに、己のミステリアス・レイディを展開させると特殊ナノマシンによって超高周波振動の水を螺旋状に纏ったランス。蒼流旋を構える

 

「はああああっっ!!」

 

「どりゃああああっっ!!」

 

 次の瞬間、二機は一斉に相手に向かって弾かれたように飛び出し、楯無の蒼流旋とベリアルのバトルナイザー二つの武器がつばぜり合いになる事で二人の戦いは始まった




 
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