二人目の男子はIS学園No.1(最強とは言ってない)   作:塩ようかん

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 最低、忙しくて更新がしにくいです……もっと執筆力が欲しいと日々、思います……


15話 一夏と鈴の約束、ゾフィーの言葉

「し、慎吾さんこの状況どうにかなりませんか?」

 

「私も何とかしたいとは思うが……現状では下手に手を出せば問答無用で噛みつかれるだろうな。それも双方から」

 

 目の前で繰り広げられる修羅場に青ざめ身を縮こませながら一夏がそっと隣に立つ慎吾に訪ねる。それに慎吾は静かに首を横に降り一夏にだけ聞こえるように、そう言う。よくよく見てみると慎吾の顔にはうっすらと冷や汗がにじんでいた。

 

 ここはビットから移って寮の1025室、つまり一夏と箒の部屋。そこでは獣のごとく相手の一秒の隙も逃さないとばかりに睨み合い、互いに怒濤の勢いで言葉のドッジボールを交わしている箒と鈴。その気迫に圧倒される一夏。そして、どうしたものかと頭を抱えて悩む慎吾の姿があった。

 

 あの後、鈴からの質問攻めで箒と同室で生活してる事を一夏は明かしてしまい、その結果、夕食後に鈴が二人の部屋を訪れ開口一番に『部屋を変わって』と告げたのであった。

 

「えぇい、慎吾!お前はどう思うのだ!?」

 

「……まずは、落ち着くべきかと思うぞ。箒も鈴もな」

 

 そしてこの場に慎吾がいる理由と言えば、嫌な予感がした為に偶々一夏の部屋を訪れていたため『第三者の意見』と言う形で慎吾も交えて話に組み込まれているのが大方の理由である。……ちなみに残りの理由は、ほぼ半泣きとなった一夏に一緒にいてくれるよう慎吾が頼まれたからである。

 

「ねぇ、ところで一夏、約束は覚えてる?」

 

 と、慎吾と会話している隙を狙い、すり抜けるように一夏に話しかける。

 

「わ、私を無視するな!ええい、こうなったら………」

 

 その態度が癪に触ったのか箒が、ベッドの横に立て掛けてある木刀を取ろうとする。

 

「待て箒!……いいか鈴も聞いておけ、これ以上騒がしくすると、この時間に見回りしている織斑先生にも気付かれてしまうぞ?」

 

 それに気が付いた慎吾が大声で箒を制止し、ぼそりと継ぎ足すかのようにそう言った。

 

「うっ………」

 

「ち、千冬さんかぁ……」

 

 それを聞いた瞬間、思い出したかのように箒は思わず絶句と共に硬直し、鈴は今朝食らった出席簿の一撃を思いだし冷や汗を流した。

 

「……一夏と話があるのだろう?丁度、互いに話は平行線だったんだ。続けてみろ」

 

 静まった空気の中、絶句から落ち着きを取り戻した箒がベッドに腰掛けてそう呟く。

 

「え、えっと鈴、約束ってのはあれか?確か小学校の時の………」

 

 はれて箒からの許可が出た一夏が周囲の空気を伺うように恐る恐る語り出す。

 

「そ、そうよ!うん、それそれっ!」

 

 一夏の口から想いの通りの言葉が出てきたのが余程、嬉しかったのか鈴は一瞬で顔を満面の笑顔に変えて続きを促す。

 

「あれは確か………」

 

 鈴に促された一夏は記憶の糸を手繰り寄せ、ぽつりぽつりと過去の話を語り出す。そして、その会話を聞き終えた瞬間、慎吾は確信した。

 

「(毎日酢豚を……うむ、完全にプロポーズだな。しかし、小学生でプロポーズするとは……大胆だな。しかし……)」

 

 そこで慎吾はちらりと、『完全に記憶出来ている』と満足毛に笑いながら言う一夏を見て、小さく溜め息をついた。

 

「(困った事に一夏は全く、その自覚は無し……の、ようだな)」

 

 と、そう思った慎吾が再び溜め息を吐いた瞬間、鈴が勢いよく一夏の頬をひっぱたいた。

 

「最っっ低!女の子との約束をちゃんと覚えてないで笑うなんて信じらんない!犬に噛まれておっ死んじゃえ!!」

 

 そう、あらんかぎりの暴言を一夏に投げつけると、鈴は自身の荷物全部が入っていると言っていたボストンバックを片手にドアを蹴破るかのごとく部屋から出ていった。

 

「……大丈夫か一夏?」

 

「慎吾さん……」

 

 異様な程に静まった部屋で、慎吾が一夏を見つめながら話しかける。

 

「鈴は、泣いていたな……」

 

 慎吾は立ち上がり、静かにそう告げる。

 

「はい……」

 

 一夏はベッドに緊張が解けて崩れるようにベッドに座り込むと、小さく頷きながら答えた。

 

「一夏……人の記憶とは案外、思い込みが多い時もあるものだ。心底、今回の事をお前が悪いと思うならもう一度、もう一度だけ鈴との約束を思い出してみろ。出来る限り主観を捨てて……な」

 

「はい………!」

 

「ならば私からは何も言うことは無い……邪魔をしたな」

 

 一夏が肯定したのを確認すると、慎吾はそのままゆっくりとドアに向かって歩き、ドアを開いて廊下へと出ていった。そして、ドアを閉じる瞬間

 

「箒よ、あんまり一夏を責めてやるな……分かっているとは思うが一夏はあまりにも純粋なのだ……」

 

 と、だけ告げると自分の部屋へと戻っていき。部屋で着替えるとベッドに入り込んだ。

 

「やれやれ……やる事ばかり増えて行くな。が、それを何とかするのが年上の勤め……か」

 

 部屋に戻った慎吾はそう呟くと、静かに眠りについた。

 

 

 

そして翌日

 

「……やれやれ、運命とはかくも狙ってるかのように奇妙に動くな……」

 

 朝のトレーニング帰りに生徒玄関前に立ち寄った生徒玄関に張り出された『クラス対抗戦日程表』を見て自嘲気味にそう言った。

 

 そこに張り出された一組、一夏の対戦相手は二組。つまりは鈴だった

 

「現状を嘆いても仕方無い……私は私でやれる事を探すか……」

 

 そう決意した慎吾はその場を後にして歩き出す。

 

 しかし慎吾は知らない、運命は予想以上に過酷な道を仕掛けて来る事を

 

 その結果、慎吾がセシリアとブルー・ティアーズを相手にした時も、一夏と白式を相手にした時でさえも使わなかったゾフィーの最強の切り札を使用する事になるのを

 

 その時の慎吾はまるで予想出来なかったのである




 最後の方で理解されたでしょうが……はい、出します。近々……に、なると良いですが。

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