二人目の男子はIS学園No.1(最強とは言ってない)   作:塩ようかん

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 何とか間に合いました。相変わらずバトルの連続となまして表現にいつも苦戦させられています……。現在は特にベリアルの戦闘スタイルを思い返す為に改めて銀河伝説を見返しております。そして今回のサブタイトルはウルトラマンメビウス最終三部作Ⅱのタイトルからせていたただきました


150話 絶望の漆黒

『……山田先生、現在の状況と被害は?』

 

 端末越しに心底、忌々しげな表情で千冬は真耶にそう問いただす。先日の無人機襲撃から二週間も過ぎていないのにも関わらず、再度の襲撃。それも相手が力任せに立ち向かう戦闘教員達をまるで相手にせず好き放題暴れまわっているとなれば流石の千冬も苛立ちを隠せずにはいられなかったのだ

 

「は、はいっ! 『敵』は10分前上空から超高速降下でグラウンドから侵入! 突然の襲撃に練習中の生徒二名と教員一名が攻撃を受けて共に重症! 迎撃に向かったチームもつい先程、『敵』に全滅させられました! 『敵』に未だ、目立った損傷は確認されてません! 『敵』は尚、手当たり次第に周囲の建造物の破壊を続けながら学園奥、地下シェルターに向けて進撃しています!」

 

 千冬の言葉に格納庫で自身の機体を纏い、武装して何時でも出れる状態のまま真耶は非常に緊張した様子ながらも状況を纏めて、一息でそう一気に言い切って見せた

 

 襲撃を受けてから10分。迎撃をまるで異に介さず学園内を思うがまま、文字通り力任せに暴れまわるベリアルを前にIS学園は混乱と騒動に襲われ、爆発して全体にパニックが広がる所を水際の所で食い止めているような非常に危機的な状況に見舞われていた

 

『ちっ……またか……今回も早過ぎる……! 『あいつ』を出すには、せめてあともう少し……』

 

 真耶からの報告を聞くと千冬はますます顔をしかめて、そう苛立ちと焦燥が入り交じったように呟いた

 

「……? 織斑先生?」

 

 以前の無人機襲撃の際にも聞いたかのような千冬の言葉に何か引っ掛かりを感じたのか真耶は一瞬、思わず非常時だと言うことも忘れ、そう率直に千冬に問いかけていた

 

『……何でもない。教師は引き続き生徒の避難先導を最優先して続行しつつ防衛布陣を更に固め、『敵』を何としても地下シェルターに近づかせるな!』

 

「りょ、了解!」

 

 だがしかし、千冬からその答えが帰ってくる事は無く、一瞬の沈黙の後に真耶へと指示を出し、その声で我に返ったのか真耶は先程、感じた疑問を意識の彼方に追いやり、慌てて千冬の指示通りに動き出すのであった

 

 

「ハッハッハッ……それなりにはやるじゃねぇか。俺様とここまでやりあえるとはな」

 

 空中を大鷲の如く自在に動き回り手にしたバトルナイザーを上下左右、更には真上や真下などまるで最初から体の一部であったかのように自在に振るい、楯無の蒼流旋を容易く防いたうえで、僅かな隙を付いてはカウンター攻撃を仕掛けながら、ベリアルは楽しそうに笑う

 

「くっ……!」

 

 一方の楯無はと言うと、戦闘しつつ軽口を叩く程の余裕を見せるベリアルとは対照的に、言葉も録に返せずベリアルを悔しげに睨み付けるしか余裕が無いレベルで現在進行形で苦境に立たされていた

 

「(ちょっと、冗談でしょ……!? こっちは時間が無いから最初から全力で攻めてるってのに……)」

 

 ベリアルに向かって瞬きすら限界まで堪え、タイミングを計っては放つ全力の一撃が当たる所か、掠める事すらしない事が続いている状況に次第に感じる焦燥感を堪えながら楯無は自身の頭を狙って振り下ろされるバトルナイザーの強烈な一撃を両手で構えたランスで防いだ

 

「うっ……!」

 

 が、しかし、バトルナイザーを受け止めた瞬間、楯無は苦痛に顔を歪め、ぐらりとその体制を崩してしまう

 

 実の所、先日のゴーレムⅢの襲撃の際、楯無はゴーレムⅢとの戦いでゴーレムⅢを撃破したものの、その体には大きな怪我を負っており、今も尚残るその負傷を誤魔化しつつ戦っていた楯無ではあったのだが、想定を遥かに越えた戦闘能力を持つベリアルを相手し続けていた事により、元から無理をしていた楯無の体についに限界が訪れ始めていたのだ

 

「あぁん? どうした、急に動きが鈍くなったぞお前?」

 

 そんな楯無の異変に直ぐ様感付いたのだろう、ベリアルは黒い仮面の下でニヤニヤとした笑みを浮かべると、バランスを崩して怯んでいる楯無に向けて次々と容赦なくバトルナイザーを振るってゆく

 

「くっ……ううっ……!」

 

 何とかその連激に対処し、蒼流旋で受け捌き続ける楯無ではあったがその動きは何処かぎこちなく、徐々に一歩、また一歩と追い込まれてゆく

 

「うおらぁっ!!」

 

「…………っ!!」

 

 そして、ついにその瞬間は訪れてしまった。ベリアルが振るうバトルナイザーを一撃を受けてランスのガードが下がってしまった瞬間、ベリアルが一気に踏み出し、楯無のミステリアス・レイディに向かって強烈な膝蹴りを放ち、楯無を更に上空へと向けて大きく吹き飛ばしたのだ

 

「こいつで終わりだっ!!」

 

 蹴りを放つと同時にベリアルはバトルナイザーを背負うと、決着の一撃を与えるべく瞬時加速を用いて一気に楯無へと向かって駆け出した

 

「……ええ、そうね」

 

 文字通り目にも止まらぬ速度で迫り来るベリアルを前に楯無はランスこそ手放してはいないものの、ぐったりとした様子でそう呟き

 

「でも本当に終わるのは……私とあなた。どちらかしら……っ!?」

 

 その瞬間、楯無は急激に目にも止まらぬ速度で身を起こし、カウンターのような形で振り下ろされたベリアルのバトルナイザーをランスで受け流すように捌き、ベリアルの装甲に超高周波振動を纏ったランスの先端を突き付けた

 

「なっ……にぃ……っ!?」

 

 学校に突入して以来、常に自信満々かつ余裕綽々の様子であったベリアルが初めて見せた動揺と驚愕。自身の策略によって生み出したその結果に満足を感じつつ、楯無は更なる一手を繰り出す為、ランスを握り締めた

 

「行くわよ……!」

 

 そう覚悟を決めたように楯無が言うと蒼流旋からは装備されているもう一つの装備、四門ガトリングガンが火を吹き、超近距離からありったけの弾をベリアルに叩き込んだ

 

「ぐおっ……!? だがなぁ! こんなものじゃあ俺様はやれねぇぞ……!」

 

 ベリアルの瞬き程度の時間の動揺を付いて繰り出されたその連激に僅かにベリアルは怯んだ。が、直後、ガトリングガンと水のドリルランスによりベリアルの装甲から火花をあげながらもベリアルが動き、目の前の楯無を手にしたバトルナイザーを構え

 

「あら、言ってなかったかしら? 本番はまだこれからよ?」

 

 瞬間、楯無はその時を待っていたとばかりの笑みを浮かべると静かに自身の切り札を発動させた

 

「てめぇ……!」

 

 忌々しげなベリアルの怒声を何処か遠くで聞いているかのように感じながら楯無は思い返す

 

 正直な話をすれば、ベリアルとの戦闘を行う前まではいくら追い込まれたとしても先日の襲撃事件のダメージが色濃く残る体と機体でこの『切り札』を使うのは無謀を飛び越えもはや自殺行為に等しいとさえ考えていた。だがしかし、ベリアルとの戦闘を最中に楯無は心中で確信した。否、確信してしまったのだ『この手以外では倒せない』と

 

「(一夏くんや……慎吾くんの影響かしらねぇ……)」

 

 全身に抵抗するベリアルの反撃を受けながらもそう、何処か他人事のように思いながら楯無は笑うと静かに切り札を放った

 

--《ミストルティンの槍》発動--

 

 

 瞬間、上空から一条の流星が上空から真下のIS学園に向けて降り注いだ

 

 

「ちょっ……な、何っ……!?」

 

 突如、空に流星が見えたかと思えば同時にそれがすぐ近くの地面に着弾して地震のような凄まじい振動と轟音が鳴り響き、道の真ん中を歩いていた鈴は激しく巻き上がる土埃と暴風に思わず顔を手で覆い、足腰を引き締めて身を低くする事で堪える事で、どうにかその場に留まった

 

「鈴さん! いま落ちてくる時に落ちてくる二機のISが一瞬だけ見えましたが……片方は侵入者として……あの水色の装甲はミステリアス・レイディですわ! まさか……!?」

 

 その近くにいたセシリアも咄嗟に、近くにあった頑丈な建物に影に隠れる事で風と土埃をやり過ごすと、同時に心中にざわりと立ち込める妙な胸騒ぎを堪えて建物の影から顔を出すとそう叫んだ

 

「……お姉ちゃん!?」

 

「……!? 簪さん!!」

 

 そして、この場にいるのはセシリアと鈴だけではない。簪もまたセシリアと同じく建物の影に隠れていたのだがセシリアの口から発せられた一言を耳にした瞬間、いてもたってもいられなくなった様子で砂煙がまた収まらないうちにセシリアの制止を振り切って建物の影から飛び出し、より土埃の濃い流星の落下地点の方角に向けて走り出していく

 

 当然の事ながらベリアルの襲撃を受け現在、IS学園全体には生徒全員に地下シェルターへの避難指示が出ている。では何故、現在の状況でこの三人が地下シェルターに向かう事すらせずにこうして外を出歩いているのか

 

 その理由はただ一つ、セシリアが避難する幾人もの生徒の列から離れ、緊迫した表情で正反対の方向へと向かっていく慎吾の姿を目撃した事にある

 

 しかも、その両脇にはそれぞれ慎吾に追走するシャルロットとラウラの姿もあった事を確認したセシリアがすかさず『お兄様が戦うのであれば当然、妹の私も共に戦いますわ!』と迷わず主張し、その場にいた簪も無言で頷く事でそれに同調し、鈴は妹云々の話はともかくとして単純にそれなりに愛着が沸き出しているこの学園で好き放題に破壊しながら暴れ回る侵入者が非常に不愉快だった為にこうして三人は教師の目を盗んで先行して行った慎吾と、侵入者を探していたのである

 

「お姉ちゃん! お姉ちゃん!」

 

 濃い土埃の中を進んだことで咳き込み、息を切らしながらも簪は声を張り上げ、疾走しながら必死に最近になって漸く分かり合う事が出来た最愛の姉を呼ぶ

 

 簪の脳内では先日の襲撃事件で深いダメージを受けて血塗れになり力無くアリーナの大地に倒れている楯無の姿が鮮明と甦って来ていた

 

 そんなはずはない、あんな恐ろしい事がそうそう起きてたまるものか

 

 吐きそうな不快感を堪え、念仏のように、そんな言葉を脳内で何度も繰り返しながら簪が落下地点にたどり着くと、大分薄くなり始めた土埃の向こう、落下の衝撃で出来たクレーターの淵に屹立して此方に背中を見せている大分、傷付いているものの土埃の中でも目立つ特徴的な水色の装甲が目に入った

 

「おねえ……」

 

 それを見た瞬間、ほっと、簪は胸を撫で下ろした。そうだ、やっぱりいかに侵入者が強力とは言え簡単に私のお姉ちゃんが、学園最強が敗北する筈は無い。そう考えると何だか我が事のように嬉しくなってきた簪は笑顔を浮かべながら楯無の元へと駆け寄ろうとし

 

「ちゃ……」

 

 その瞬間、土埃が完全に晴れ『侵入者のISの腕に首を捕まれ』、クレーターの淵近くで宙ずりにされている楯無の姿が簪の目に飛び込んできた

 

「ふん……何かしようとしてきたらしいが……所詮は無駄な足掻きだったなぁ! 学園最強ぉ!」

 

 侵入者、吊られたまま指一本動かさぬ楯無に向かってベリアルはそう言って嘲笑うと、手にしていた楯無を通路の外壁に向かってゴミでも捨てるかのように投げ捨て、壁に叩きつけられた楯無はそのまま力無くずるずると壁に背中をすり付けるように崩れ、地面に倒れたまま起き上がる事はなかった

 

「あっ……あ……あ……あ…」

 

 そのあまりにも無惨な光景を見た瞬間、簪は呼吸することすら忘れてしまったかのような声を上げると、錆び付いた機械のような動きで、倒れたまま目も開いてくれない楯無と高笑いを続けるベリアルを交互に見る

 

 

 大切なお姉ちゃんが、やっと分かり会えたお姉ちゃんが、奪われた、壊された、誰に? こいつに、お姉ちゃんを嘲笑うこいつに

 

「ああああああああああああっっ!!」

 

 それを理解した瞬間、簪は作戦も戦略も冷静さも何もかも投げ捨て、怒りに任せた声を上げながら打鉄弐式を展開させると同時に薙刀を呼び出すとベリアルに向かって斬りかかっていった

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