二人目の男子はIS学園No.1(最強とは言ってない)   作:塩ようかん

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 更新が少々遅れてしまいました……。今回は自分でもかなりの難産となってしまい、少々おかしな点や違和感もあるかもしれません。どうか、目に余る者や、お気づきになられましたら報告してくださると大変助かります

 それと蛇足ですが、何故か私が書くと意図せずして閣下が煽りキャラクターとなってしまい……ベリアルとはこんなにも相手を煽ったか? と、若干の疑問を感じ始めております


151話 嘲笑う『悪魔』

「ハハハッ……真面目にやれ! 全然、つまらんぞお前」

 

「黙れ……! 黙れ黙れ……っ!!」

 

 身体の芯から簪を燃やしつくさんとばかりに溢れる憤怒に身を任せたまま、瞬時加速を利用した上で息もつかせぬような猛烈な薙刀のラッシュを仕掛ける簪であったが、そのラッシュをベリアルはその場で地面に立ったまま移動すらせず、あろうことか手にしたバトルナイザーすら録に使用する事も無く、身体を反らして回避するか片手で刃を叩く事でその全てを完全に防ぎきっており、更にはそんな風に怒髪天の簪を嘲笑する余裕すら見せていた

 

「これなら……!」

 

 薙刀のラッシュが通用しないと判断すると簪はすかさず戦法を切り替え、薙刀から今度は荷電粒子砲を二門を構えるとすかさずベリアルに向けて立て続けに放つ

 

「俺に二度も言わせるな……お前は動きが直線過ぎてつまらん!」

 

 だがしかし、それをもベリアルは苛ついているかのような口振りで言いながら、荷電粒子砲による攻撃をさながらピンポン玉でも弾いているかのように次々に片手で吹き飛ばすと、一瞬の隙を付いて簪にバトルナイザーの棍部分を向けた

 

「……! …………っ!!」

 

 瞬間、自身に向けられたバトルナイザーに既に此方を撃墜するには十分過ぎるエネルギーが充填されている事に打鉄弐式のセンサーを通して気が付いた簪はそこで、目を見開くのと同時に一瞬の内に頭が冷え、楯無が倒された姿を目にした怒りに身を任せて以前の失敗と同じ鉄を踏んでしまった理解し、己の不覚を悟った。だがしかし分かった所で最早、簪には回避も防御も間に合わず、ベリアルからの一撃を受けてしまうのは決定的に見えた

 

「……フン」

 

 が、その瞬間、ベリアルは一つの鼻息と共に急激に簪に向けていたバトルナイザー手元に引き下げると、瞬時加速を使用し、急激にその場から飛び退いて後退した。と、その瞬間、先程までベリアルが立っていた場所に上空から何かが降り注いだかと思うと一瞬のうちに直径二メートル程のクレーターが形成された

 

「簪さん! 大丈夫ですか!?」

 

「……ったく、非常時だってのに一人で勝手に動いてるんじゃないわよ」

 

 それと同時に簪の頭上の空から姿を表したのは、それぞれ自身の専用機を展開させたセシリアと鈴であり、二人は簪にそう声をかけながらも値踏みするようにじろじろと此方を見てくるベリアルから一挙手一投足も逃さぬとばかりに視線を剃らさずそれぞれ何時でも発射出来るよう砲口を向けていた

 

「ふん……まぁ、お前ら程度の実力なら1対3になれば俺様も『ほんの少しは』楽しめるかもな」

 

「あんた……それ、もしかして挑発してるつもり?」

 

 一気に二人、それもセシリアと鈴、代表候補生二人の援軍だと言うのにも関わらず『それがどうした?』と、言わんばかりに上から目線で語るベリアルに苛立ちを感じながらも鈴は代表候補生の誇りからか、その感情を表立って表さないようにしながら、そうベリアルを睨みつけながら問いただした

 

「挑発……? 俺様がお前らにか……?」

 

 その問いかけにベリアルは一瞬、不思議そうに首を傾げ

 

「ぷっ……ハッハッハッハッハッ!! オイオイオイ

……まさかお前ら揃いも揃って俺様が態々挑発しなきゃいけない程、自分達の実力が優れているとでも考えていたのか? 3対1程度で俺と渡り合えると思っているのか? だとしたらそいつは……」

 

 

「とんだ『お笑い草』って奴だな。代表候補生より、ピエロでもやってた方が向いてるんじゃあないのか?」

 

 体を震わせ、笑いを堪えきれないと言った様子で黒い仮面越しに自身の口元を手で多いながらベリアルがそう呟き

 

「っっ……ざっけんなっっ!!」

 

「その余りにも過ぎた高慢さ、私が矯正してさしあげますわっ!!」                

 

 もはや挑発など生易しい物では無く侮辱、分かりやす過ぎる程に貶めている言葉に鈴、そして同時にセシリアの許容点をも一瞬にして限界点を迎え、二人は全く同時にそれぞれ龍砲による衝撃砲とスターライトMKⅢによるレーザーでベリアルを狙い撃った

 

 

「行くよ……『打鉄弐式』!」

 

 しかも、攻撃はそれだけでは終わらない。二人に合わせるように打鉄弐式のマニュアル誘導システムを起動させた簪が打鉄弐式に肩部ウィング・スラスター六ヶ所に取り付けられた八連装独立稼働型ミサイル『山嵐』計四十八発。その全てをベリアルに向けて発射する

 

 

 鈴の見えない衝撃砲に加えて激怒してはいるが狙いの精度はまるで落ちぬセシリアのレーザー、更に以前以上に複雑な三次元陽動を描いて迫る四十発以上のミサイル。突発的な物ではありながら三人が行ったこの攻撃は、衝撃砲、レーザー、ミサイルの何れかが仮に一発でも攻撃がベリアルに当たりさえすれば連鎖的に他の一撃が命中し、相手を問答無用で袋叩きにする。と、言う非常に完成度に高い物になっていた

 

「あーあ……直接言わねぇと分からねぇ程、お前ら馬鹿なのか? 俺様は『事実』を言っているだけだってな……」

 

 一見すれば被弾覚悟で回避、あるいは徹底に防御に専念する事しか手段が無いように見える三人の攻撃を前にしながらもベリアルは特に動じた様子を軽く欠伸をしつつ

腰を低く落とし、バトルナイザーを手にして低く身構える

 

「ふんっ……!」

 

 と、次の瞬間、ベリアルは吐き出すような一息の呼吸と共に激しくバトルナイザーを回転させると、それを盾にするかのように一直線に無数の弾雨の中に突進していった

 

「んっ……なっ……!?」

 

 ベリアルの行動にスターライトMKⅢでの銃撃を続けながらセシリアは思わず絶句する。これで片が付くとまでは楽観していなかったセシリアだが、いくらなんでも突撃して来る。と、言うどう見ても自爆にしか見えない方法などは端から想像だにしていなかったのだ

 

「うおらああぁぁっ!!」

 

 が、雄叫びをあげながらベリアルが回転させるバトルナイザーに命中した瞬間、レーザーも衝撃砲もミサイルの爆風や砕けた破片でさえ暴風の前の塵や埃のように吹き飛ばされベリアルに命中する前に霧散してゆき、そのままベリアルは攻撃を続ける三人をどこ吹く風とばかりに更に加速して一気に距離を詰めてゆき、そのままベリアルは弾幕を突き破った

 

「なっ……このっ……!!」

 

 突き抜けて来たベリアルに一瞬、鈴は驚愕の声をあげたもののセシリアや簪に先駆けて反応し直ぐ様、龍咆の発射を止めると双天牙月を構えて加速状態から停止に移ろうとしているベリアルに急接近すると同時に斬りかかった

 

「フンッ……!」

 

 が、しかし、不安定な体勢ながらもベリアルはバトルナイザーで双天牙月を受け止めると、更にカウンターとばかりに鈴に向かって強烈な前蹴りを叩き込んだ

 

「うぐっ……!? がはっ……!!」

 

「鈴さんっ!!」

 

「……危ないっ!!」

 

 ベリアルに腹部を蹴り飛ばされてしまった鈴は悶絶しながら勢いよく背後にいたセシリア向かって吹き飛ばされてしまい、それをセシリアとそのサポートに入る形で簪がそれぞれ手を伸ばして飛ばされきた鈴の背中をしっかりと支える。が

 

「……っ!?」

 

「こ、この力は一体……!?」

 

 何と二機分のISの力を持ってしても尚、鈴にかせられたベリアルの蹴りの衝撃は収まらず、その力に圧せられながら二人は鈴を支えた状態のまま空中で引きずられるように押し出されしまっていた

 

「はん……馬鹿め! 隙だらけだっ!!」

 

 そして、三人が見せてしまった決定的な隙をベリアルが見逃す筈も無く、笑うようにベリアルはそう言うと手にしたバトルナイザーにエネルギーを蓄積させると、手元に引き寄せる形で構える。と、その瞬間、音もなくバトルナイザーの棍部分が光り、オレンジ色に輝く大鎌の刃のような形のエネルギーの刃が出現した

 

「おらあっっ!!」

 

 そのままベリアルが声と共にバトルナイザーを勢いよく振りかざすと刃はバトルナイザーが最高速で加速された瞬間バトルナイザーから離れ、空気を切り裂きながら宙を飛ぶと、鈴を助けようと硬直したまま動けない三人に襲いかかり、刃が直撃した瞬間、三人を中心としてエネルギーの閃光の爆裂と爆煙が巻き起こり、爆煙が晴れるのと同時に三人は声も無く同時にまっ逆さまに落下し、共に土煙を上げて地面に崩れ落ちた

 

「ふん……これで分かったか? お前らじゃ決して俺様には勝てないって事くらいはな」

 

 そんな三人を見下ろし、ベリアルは嘲笑うようにそう言うと高笑いをしながら悠然と歩いてその場を後にしてゆく

 

「ま、待ちなさいよあんた……まだ……あたしは……」

 

「かっ……はっ……! ここで倒れる訳には……お兄様……」

 

 そんなベリアルの背中に向かい、何とか立ち上がろうと鈴とセシリアは懸命に地面でもがくが、激しいダメージにより機体にも彼女ら自身の体にも既に限界は訪れており、共に立ち上がる事はかなわずそのまま崩れ落ちてしまった

 

「お……ねぇちゃん……」

 

 そんな中だった。果たしてそれは偶然なのか必然なのか簪は二人から若干離れ、倒れたまま動かない楯無の近くへと落ちていたのだ

 

「はぁ……はぁ……うぅ……」

 

 簪は激しく痛む自身の体で力を振り絞り、ほふく前進のような形で一歩、また一歩と近付いて行く。が、あと一歩で楯無の手に簪の指先が触れようとした寸前、簪は意識を失い地面に突っ伏してしまった

 

 そう、だからこそ

 

 既に気絶してしまった鈴やセシリア、そして既に立ち去ってしまったベリアルも決して気が付く事は無かったのだ

 

 簪が気絶した直後、弱々しい動きながらも確かに意志を持って動き、すぐ近くにまで伸びていた簪の手を包み込むようにしっかりと楯無の手が握りしめた事を

 

 学園教師陣や各国代表候補生達を軽々と退け、無双を繰り広げているベリアルがこの時点で最初の失策を犯していた事を、この時ばかりは誰も知るよしが無かった


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