二人目の男子はIS学園No.1(最強とは言ってない) 作:塩ようかん
「ひ、光……? その輝いている石はなんだ……!? 一体、何を手にしている!?」
光が取り出した途端、突如として目がくらむ程に強く輝きだした赤い石。それにいち早く気が付いたのは比較的、周囲を見る余裕が残されていた箒だった
「……その質問に答えたい所だが箒、俺にもさっぱり分からない。だが……」
当然だが光自身も問われても尚、答える事は出来ない。何故ならこの手の中の石は以前、念入りに調べた時にも正体が掴めてないのだ。だが、それでも一つだけ分かる事があった
「……この石は慎吾に反応して引き合っているようだ。……見ろ! 今も、ひとりでに動いて慎吾の方へと向かっている……!」
そう、光の手の中にある赤い石は輝きを放ちながら糸で引っ張ぱられるようにゆっくりと、まるで石事態に自分の意識があるかのように慎吾へと向かって動いており、それに合わせて光も一歩、また一歩と慎吾へと向かって歩いていく
「これって……もしかしてお兄ちゃんが求めているの……? あの……石を……」
「そんな馬鹿な……とも、言えんな……こんな訳の分からない状況では……」
シャルロットとラウラはそれを見送りながらそう言葉をかわす。彼女達も何がどうなってるのかは分からない。が、この絶望的な状況が一変するような出来事が今、まさに起きようとしている事だけは直感的に理解できていた
「……! みんな! 慎吾さんの身体が急に血色が良く……! って言うか……身体も暖かくなってきているぞ!? な、なんだこれ……!?」
偶々の形ではあるが慎吾のすぐ近くにいた一夏は石から放たれる光を浴びた瞬間、すっかり青白く変色してきた慎吾の皮膚がほんのり赤く色付き始めた事に変化にいち早く気付き、咄嗟に皮膚に触れた事で僅かではあるが心臓が止まっている筈の身体から体温まで戻り始めている事もを理解すると目を見開きながら叫んだ
「この一連の現象……全くもって不可解……と、言う他に無いな。だが……」
そして、ついに石に導かれるがまま慎吾の元へとたどり着いた光はこの状況を思案しながら呟く
「例えこれが幻想だとしても……ベリアルとの戦いで疲れはてた俺達が見ている夢だとしても……慎吾を救える可能性があると言うのなら……!」
そう言うと光は輝く石をそっと慎吾の胸、心臓の上へと乗せる。その瞬間、石は光を放ちながら溶けるように慎吾の中へと吸い込まれ
ドクン
と、二度と音を発しなくなった筈の慎吾の胸から一つの鼓動が響いた
◆
「ここは……何処だ……?」
奇妙な浮動感を感じた慎吾が目を開けばそこは全てが白い光に満ちた何処か幻想的な空間だった
「この世……とはとても思えないな……」
呼吸を整えながら慎吾が辺りを見渡しても見えるのは何故か傷一つ無い自分の身体と、何処からか降り注ぎ続ける柔らかな白色の光だけで、慎吾の全身を包む浮遊感は上下左右どころか自分が地に足をついているのか浮いているのかさえ判断させなくさせる
「……しかし、全く見覚えがない訳ではない。何処と無く……では、あるがあの時……銀の福音に破れた際に見た空間と完全に同じでは無いが近いものを感じる……」
この異質な空間を見て、慎吾の頭に過るのはかつて致命的なダメージを負って生死の境を彷徨った際、夢のような形で自身が夢のような形で見た空間だった。だがしかし、あの空間は今のように気付いたその瞬間から明るかった訳ではない。最初は呼吸すら困難な程に重い暗闇だったのを照らしてくれたのは……
「もし、本当にそうならば……この光は……今、私を照らすこの光は……」
そう慎吾が思いながら首を上げて空を見上げ
「……やぁ、久しぶり……と、言うのは妙な話か……今回も大分、無茶な戦い方をさせてしまったからな……」
「なぁ『ゾフィー』……」
『………………』
慎吾を見下ろすように上空に浮かぶ胸部の赤い水晶が特徴的な性別も分からぬ赤い人型、かつて遭遇した自身の愛機ゾフィー。その意思が具現化したもの……と、慎吾自身は認識している存在が無言のまま慎吾に視線だけを向けた状態でそこにいた
「……ゾフィー……おぼろ気ではかるが私の記憶が正しいのならば……あの時、ベリアルを撃破した直後に私は……」
数度見返し、目の前の存在が間違いなくあの時、遭遇した愛機の意思だと確認すると慎吾は一度、息を整え、緊張した様子で問い掛ける
あの渾身のM87光線でベリアルを撃破した。その感覚は慎吾には確かにあった。しかし、それと同じくらいその直後に自身の力が消えていく感覚。もっと言うならば生きる上で必要な決定的な何かが水が満たされたコップの側面に穴が空いたかのように、身体から流れ、宙へと消えていってしまうようなゾッとする感覚、それと同時に眠るように自分の意識が次第に薄れ消えていく実感があったのだ
「私は必死になって自分の意識を保とうとしたがそれも叶わず……気がつけばここにいた。だからこそ今、ここで聞きたいんだ。……私をここに呼んでくれたのは君か? ……もしかして私はあの時……」
誰に対しても口に出して伝えたことこそ無かったが、ベリアルと戦う。それを決めた時点で慎吾は、仲間や妹達は何としても守るとしてと結果として自身がそうなる可能性は頭に入れていた。しかし、だからと言ってその可能性を強く感じた時、動揺しない筈も無かった
『この場所については、そうとも言えるし違うとも言える。私は単に頼まれた橋渡し役としの役割を果たしただけだ』
「君が橋渡し役? それじゃあ一体誰が……」
と、慎吾に向かって目の前のゾフィーはそう簡潔に答えると向けていた視線を動かし、慎吾の背後を見つめると空中に溶けるようにその姿を消した。それに誘導されるように慎吾が視線を動かす
「……!? これは……」
そこにあったのは蛍のように小さく、音も無く自在に飛び回る小さな赤い無数の光球だった
慎吾がそのまま視線を向けていると、赤い光球は空間のあちらこちらから吸い寄せられる次々と集り、一つの形を作り上げていく
「」
すると色も赤色の「だった光球の色の中に次第に銀色が多く交じりだし、最後に胸元に形成された光球が青く輝いた瞬間、慎吾は漸くその正体を理解した
「『ゾフィー』……! あなたなのか……?」
『やぁ……久しぶりになるな慎吾。……この世界の私よ』
その姿は陽炎のようにぼやけてはいるが見間違いようが無かった。姿は自身の愛機瓜二つで全く同じ名前。しかし、その口調や性格はまるで鏡を見ているかのように己に似ている存在。かつて偶発的な事故で自身が出会ったもう一人の自分
M78星雲、光の国の戦士『ゾフィー』がそこにいた
『……良かった。これが発動していると言うことは私の贈り物は無事にその役目を果たしてくれたらしい』
「贈り物? ……あの赤い石の事か?」
『ゾフィー』の言葉に慎吾は此方の世界に帰還した時に自身が握り締めていた正体不明の赤い石の事を思い出し尋ねる。そうすると『ゾフィー』は、ああ、そうだ。と頷きながら短くそう言い
『ヤプールが最後に話していた繋がりとやらによって君の世界に何が起こるかは私にも予測することは出来なかった。が……間違いなくそれが世界を揺るがす事態になること、そしてそうなる以上、君のや君の大切な仲間に命が関わる事態が起こる事は予想外出来た。……だからこそ君には去り際に状況を一転させるような切り札を持たせたのだ』
『結論から言おう。あの赤い石の正体は私の友がかつて作り上げた究極とも言える発明。言うなれば物質へと固形化された命。そのものだ』
「なっ……!?」
その言葉に流石に慎吾は目を見開き激しく動揺する
「固形化された命!? あなたの世界では命と言う概念を実体化した上に持ち運び出来るまでの科学技術があると言うのか!? それではまるで不老不死の実現ではないか……! おとぎ話としか言い様が無い話だな……」
『そうとも言えるかもしれないが……しかし、私達の世界でもこの技術を用いたからと言って必ず蘇生出来る保証などは無い。そう言う意味では命の重さについては私達もそうは変わらないさ』
「だとすれば、あなたの世界でもこの技術は相当に貴重な物の筈だ。何故それを縁があったとは言え私に?」
地球の技術では最早、魔法の領域に至るような話に動揺する慎吾の問い掛け『ゾフィー』は落ち着いた口調で答え続ける
『それは勿論、私の世界の影響で起きた出来事の償い。そして何より……』
『自分が危機的状況に立たされても心底、妹達を思う君に私は自分自身の姿を重ねた。だったら私がリスクを負おうとも放ってはおく訳には行かないだろう? 君はここで死ぬべくような人間ではないさ』
そう言うとゾフィーは再びじっと慎吾に視線を向ける
「『ゾフィー』……あなたは…………」
その言葉に向けられる優しさに何とかして答えたかった。だからこそ慎吾は何とか感謝の言葉を伝えようとした。が、その直後、慎吾の視界は急に霞み始め、元々蜃気楼のように見えていた『ゾフィー』の体はますます視認する事が困難になりだす
『どうやら君の目覚めが近づいて来ているようだな。……会話をするのはここまでのようだ』
「ま、待ってくれ『ゾフィー』……! まだ貴方に言いたいことが……ー」
慎吾は咄嗟に向かって手を伸ばし叫ぶ。が、目の前にいる筈の『ゾフィー』の姿すらもはや僅かにしか見えない程に視界は白く薄れ、物理的に距離そのものも遠くなって行く気がしていた
『大丈夫だ慎吾。たとえこれが今生の別れだとしたも私は君で、君は私。心は何時だって繋がっているはずさ。君は君の守るべき者がいる世界で生きるんだ』
そんな慎吾に薄れながらも『ゾフィー』はそう優しく諭すように語りかける。それは暖かい言葉ながらも再度会うことは二度と無いと言う事実を告げているようであり
『だから、さらばだ慎吾。この世界の私よ』
「『ゾフィー』ーーッッ!!」
その言葉を最後にしたように空間は崩れ落ち……『ゾフィー』の姿は慎吾の視界から消えてゆき
それかま慎吾が『ゾフィー』と言葉を交わしたの最後の記憶になった
◆
「……ろ!! 慎吾さんが……目を………!」
「……られん。まさか本当にあの石が……」
「科学者の端くれとしては気軽に口にするべきではないが……『奇跡』としか言いようがないな……」
「お兄ちゃん! お兄ちゃん! あぁ……よかった……」
「おにーちゃん……私達が分かるか……?」
最初に感じたのは先程まで見てきた太陽の目映くも暖かい光と全身を包む鈍い痛み。その直後、目をしっかりと開いて見えたのは泣きそうな顔で自分を見つめる仲間と大切な妹達
「……みんな……ただいま……」
だからこそ慎吾は皆を安心させるべく、そう言って微笑みかけた
こうして誰にも予想が出来ない『極度の奇跡』によって二人目の男子であり、シャルロット、ラウラ、セシリア、簪の義理の兄である男
IS学園の『No.1』大谷慎吾は生き返ったのであった
長らく続いたこの物語も一応、本編としてはこれで完結。次回はエピローグとなります。何はともあれ1『78』で終われた。と言うのは縁を感じますね……