二人目の男子はIS学園No.1(最強とは言ってない)   作:塩ようかん

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 宣言した通り、少し文量を増やしました。と、言っても今回は本当に誤差レベルですが


24話 真耶とゾフィー

 何とか一夏とシャルルの腕を取ってリードしたまま慎吾が怒濤のように迫り来る女子達をやり過ごし、そのまま手早く更衣室で着替えを終えた三人は、第二グラウンドへと前から慎吾、一夏、シャルルの順で早足で歩いていた。

 

「ところでさ……何でシャルルは俺と慎吾さんから隠れて着替えたんだ?」

 

 と、何気無い様子で、更衣室でのシャルルの行動を見て浮かんでいた疑問を一夏が歩きながら直球で聞く

 

「えっ!?えっと、それは……」

 

「ん?どうしたんだシャルル?」

 

 突然の一夏の質問にシャルルは声に出して驚き、うろたえて言葉が詰まった。それを疑問に感じた一夏は足を止め、シャルルに向き直る。

 

「待て一夏、同性同士でも肌を余り見せたく無い人もいるんだ。私達に着替えてる所を隠すのはシャルル個人の自由ではないか?」

 

 そう慎吾が足を止め、一夏の方へと振り向きながらたしなめるように言った。

 

「それもまぁ……そうですね。悪かったなシャルル、いきなり変な事を聞いて」

 

「う、ううん、僕は大丈夫だよ」

 

 慎吾の言葉を受け取った一夏は軽くシャルルに謝り、シャルルはそれにどこか安心したような顔をしながら謝罪を受け取った。

 

「さぁ、急ごう。このまま授業に間に合わずに織斑先生に叱責されてしまうぞ」

 

 その様子を見届けた慎吾は再び正面を向き、早足第二グラウンドへと歩き出し、一夏とシャルルも慌ててその後についていった。

 

 

「では、本日から格闘および射撃を含む実戦訓練を始める」

 

「はい!!」

 

 千冬の声にいつもの倍以上の声量と勢いで返事が返ってきた。と、言うのも本日の授業は一組と二組合同の為、千冬を見慣れてない二組の生徒は張り切って声を出し、一組もそれに負けじと気合いを入れて叫び、結果空気が震えるほどの音量と化していたのだ。

 

「相変わらずだが、織斑先生が絡んだ時の皆の気力は驚くばかりだな……」

 

「ぶっちゃけ圧倒されますよね……」

 

 そんな様子を見ながら慎吾と一夏は顔を見合わせ、話を続ける千冬に気付かれぬようにこっそりと苦笑した。

 

「今日は戦闘を実演してもらおう。そうだな……凰にオルコット!」

 

「「は、はいっ!!」」

 

 突如、千冬に指名された鈴とオルコットは緊張のせいか上ずった声で返事をすると慌てて前へと出てきた。

 

「お、鈴とセシリアで模擬戦するのか?」

 

 揃う二人を見て、一夏が思わず声を漏らす。

 

「どうだろうか……む?」

 

「どうしました慎吾さん?」

 

 話を慎吾が急に止めたのを疑問に思い、一夏が尋ねる。

 

「いや、気のせいか上空から空気を裂くような音が聞こえるのだ……がぁ!?」

 

「うおあぁぁっ!?」

 

 次の瞬間、音のする方向、真上を見上げた慎吾と一夏は共に目を見開き声に出して叫んだ。

 

「ど、どいてくださ~いっ!」

 

 何と上空からは学園の訓練機『ラファール・リヴァイブ』を展開させた真耶がきりもみ回転しながら真っ直ぐこちらに向かって落下して来ていたのだ。

 

「くっ!間に合うか……っ?ゾフィー!」

 

 何とか冷静さを取り戻した慎吾は真耶を助けるべくゾフィーを展開させた。

 

「たぁっ!」

 

 瞬時に赤い光に包まれ、ゾフィーを展開し終えた慎吾は大地を蹴って空中へと飛び出して真っ直ぐに落下し続ける真耶へと向かって行き、地面までの距離が近付きながらもゾフィーの腕がラファール・リヴァイブに触れそうになった瞬間

 

 

ドン!

 

 

 そんな鈍い音と共に激突音、そしてその衝撃により土煙が一瞬で周囲に立ち込め、あちこちから土煙を吸った生徒達が咳き込む声と慎吾と真耶を心配する声が聞こえた。

 

「間一髪……か。山田先生、大丈夫ですか?」

 

 と、土煙が薄れ、中から片膝を付いて着地している赤と銀が輝くゾフィーの両足が見えると周囲から安堵の溜め息が漏れる。

 

 が、土煙が完全に晴れゾフィーの姿が、完全に見えた瞬間、周囲が一気にざわついた。

 

「あ、あ、あの、そ、そのですね……」

 

 顔を真っ赤にして呂律の回らない盛大に慌てている様子の真耶。その様子に周囲のざわつきは歓声に代わりだした。

 

 それも無理の無い話で、今、現在真耶はゾフィーの腕でしっかりと、しかし決して傷付けぬように強く抱き締められていたのだ。それは端から見れば、まるで姫を助けた騎士を描いた絵画のような光景であり、乙女の憧れをのシチュエーションでもあった。

 

「おっと、これは失礼を。救助の為とは言え長々と抱き締めてしまいましたね」

 

 と、その状況が周囲からどう見えるか、特に意識をして無かった慎吾はゆっくりと真耶を足から地面へとおろし真耶が立ったのを確認した瞬間、体を離した。

 

「あっ…………ありがとうございます大谷くん」

 

 慎吾が体を離した途端に真耶は一瞬、名残惜しそうな声をあげ、腕は先程の感触を求めるように宙を動いたが真耶は周囲の視線に気付き、慌てて慎吾に礼を言うと距離を取る。そんな真耶の行動に再び周囲から再び歓声が上がった。

 

「はぁ……慎吾さんみたいにカッコいい人ならああいうのも似合うんだろうけどなぁ……」

 

 直後、一夏が溜め息と共にそう羨ましそうな声を漏らし、しっかりとその発言を聞いていた箒に背後から睨み付けられるのだが当人は気付かない。

 

「(やれやれ、どうしたものかなぁ……)」

 

 結果、慎吾一人が時折、送られる真耶からの奇妙な熱い視線と、クラスメイトからの何らかの期待を込められた呟き、箒へのフォローと言う三つの出来事に悩まされながら授業を進めて行く事になったのであった。




 気付いて見れば、慎吾と山田先生の距離が近く……需要はあるのでしょうか?

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