二人目の男子はIS学園No.1(最強とは言ってない)   作:塩ようかん

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 今回は危なかったです……次回こそ早くしたい……とは思うのですが


26話 実習授業と模擬戦をするゾフィー

「うむ、そうだ!いいぞ、その調子だ」

 

 打鉄に乗り込んだクラスメイトの正面からある程度の距離を置いてゾフィーを展開させた慎吾は、何かあれば一秒ともかからず駆けつけられる距離を保ちつつ、丁寧に指示を出し、成功すればすぐに誉める。 

 

 そんな事を繰り返しながらスムーズに授業を進め、気付けば慎吾のグループ全員の生徒は授業が半分を過ぎた所で全員が授業でやるべきノルマを終えていた。

 

「よし、これで皆一通り終えた……皆、よく頑張ってくれたな。ありがとう」

 

『はいっ!大谷さん!』

 

 ゾフィーの展開を解除し、皆の前に向き直りながら慎吾がそう言うとグループのメンバー達は真剣かつ元気に慎吾に返事を返した。実際、慎吾の生真面目で優しく、一人一人にしっかりと気を配ってフォローもする授業姿勢に引っ張られたのか慎吾のグループのメンバーは皆が真摯に授業に向き合っていた。……それこそ背後の一夏のグループで行われていたちょっとしたトラブルによるお姫様だっこ騒ぎのゴタゴタに殆ど気が付かなかった程に。

 

「しかし予想外に時間が余ってしまったな……どうするか」

 

 皆の分の実習を終え、落ち着いた事で改めて予想以上に余った時間に気が付き悩む慎吾。

 

「ふむ……では……」

 

 と、次の瞬間、慎吾の口から何かを確認する小さな声が漏れる。その顔にはうっすらと笑みを浮かべているようにも見えた。

 

「えっと、どうしたんですか大谷さん?」

 

 そんな慎吾の様子を見て気になった清香がそっと慎吾に尋ねた。

 

「いや何、皆が嫌だと言うなら勿論しないし、織斑先生から許可を貰えるかは分からないのだがな……?」

 

 慎吾はそう苦笑しながらも、警告するようにそう言うと一つの提案をする。

 

「折角、授業の残り時間はたっぷりあるんだ。復習も兼ねて私と模擬戦でもしてみないか?」

 

『えぇっ!?』

 

 その瞬間、同時に慎吾のグループメンバー全員の声が重なった。

 

 

 

「さて……始めよう、ルールはさっき言った通りだ」

 

 再びゾフィーを展開させた慎吾が力を抜いた状態で向き直り、確認するかのように言う。

 

 以外か否か、慎吾の唱えた模擬戦の案は時間を考えて一試合のみと武装の使用は禁止と言う条件付きであっさりと千冬から許可され、グループのメンバーも迷いこそすれど誰も反対をしなかった為、今まさに互いに準備を終えて、模擬戦は始まろうとしていた

 

「私からは一切、攻撃をせず防御と回避にのみ専念する。それを突破して、授業終了までに私に一撃でも通るダメージを与えれば皆の勝ち。分かったか?」

 

 そして、そんな慎吾との模擬戦に自ら名乗り出たのは。 

 

「はいっ!大谷さん、私、負けませんよ!」

 

 打鉄に乗り込んだ慎吾の言葉に大声で答え、ついでに、むんっ!と言わんばかりに構えて見せる。

 

「はは……気合いは十分なようだな」

 

 その元気一杯に張り切ってる清香の様子に不安は無い事を悟り、慎吾は優しく笑う。

 

「さぁ、始めよう、どこからでもかかって来るといい相川!」

 

 と、次の瞬間、慎吾は腕を上げて合図をし模擬戦は始まった。

 

「たぁああぁぁっ!!」

 

 慎吾の合図と共に清香は大地を蹴って慎吾に向かって走り出し、距離を詰めると右足での蹴りを慎吾に向かって右足での回し蹴りを放った。

 

「おっと」

 

 

 それを慎吾はその場から動かず、体の軸をずらす事で難なく回避して蹴りは空振りに終わった。

 

「何の、まだまだっ!」

 

 初撃が外れたものの清香は諦めず、素早く振り上げた脚を戻すとさらに踏み込みゾフィーのボディーを狙って両手で数発のパンチを打ち込んだ。

 

「うん、いい気迫だぞ!」

 

 慎吾はそんな清香の姿勢を誉めながらも、そのパンチを片手で全てガードして受け止め、無力化した。

 

「誉めてくれるなら、大人しく攻撃に当たって欲しいですっ!」

 

「その気持ちには答えたいが……すまないな。自分から言い出した手前、早々に負ける訳には行かないんだよ……」

 

 今度は左足から離れた蹴りを後ろにのけ反って避けながら、慎吾は少し困ったような口調で返事を返す。

 

「うっそ、これも当たらないっ!?………ならっ!」

 

 先程から休む間もなく攻撃し続けるのにも関わらず余裕を持って慎吾に避け、もしくは受けられてる現状に焦る清香だったが、一瞬、何か覚悟を込めたような表情をするとさらに一歩踏み込み、渾身のストレートパンチを打ち込んだ。

 

「とっ……」

 

 が、威力は大きいものの若干のタイムラグがあったそのパンチはゾフィーの腕で当然のように防御される。

 

 

 しかし、清香の真の狙いはそれでは無かった。

 

「えええぇぇぇいっ!」

 

 

 ガードした瞬間、清香はゾフィーの両腕を勢いよく掴み、打鉄の持つ力、その全てをもってゾフィーを空中に持ち上げた。

 

「なっ……!?」

 

 予想外の清香の行動に慎吾は驚愕の声を上げ、僅かにその反応が遅れる。

 

「たあぁっ!!えいっ!」

 

 瞬間、清香はゾフィーを地面へと勢いよく投げ、更にだめ押しとばかりに投げられた勢いで落ちるゾフィーに向かって再び打鉄での渾身のストレートパンチを放った。

 

『今だっ!』

 

 と、そんな清香の奮闘に思わず見物していたクラスメイト達から歓声が上がる。気付けば慎吾のグループだけでは無く他のグループのクラスメイトも一夏達もその白熱した戦いを思わず目で追っていた。

 

 そして、次の瞬間、金属同士が激しく音が響き、決着は訪れた。

 

 

「見事……実に素晴らしかったぞ相川」

 

 清香に投げられたものの慎吾は空中で素早くゾフィーの体勢を立て直して地面に着地。そして、迫り来る打鉄のパンチも見え、ガードをする余裕もあった。が

 

「この模擬戦……私の負けだ」

 

 そう屈託無く笑って言う慎吾、その胸にはゾフィーの右腕でのガードをコンマ数ミリですり抜け、打鉄の拳が命中していた。

 

「やった……やったぁぁぁああっっ!!」

 

 模擬戦とは言え慎吾に勝利した、その事実を理解した清香は思わず打鉄に乗り込んだままガッツポーズする。

 

「(模擬戦とは言え敗北は敗北……鍛練の量を増やさなくてはなぁ……)」

 

 勝利を祝福する友人達に囲まれて溢れんばかりの笑顔を見せる清香を見ていた慎吾の顔はそう考えながらも優しく笑っていたのだが、全身装甲のゾフィーを展開させたままだった為に、それに気付いた者はいなかった。




 挿し絵が欲しい……と、最近良く思います。自力で頑張りたいとも思うのですが……生憎画力は私には無く……

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