二人目の男子はIS学園No.1(最強とは言ってない)   作:塩ようかん

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 またもや危なかった……今回はちょっと苦戦しました。


28話 ラファール・リヴァイヴ・カスタムⅡvs ゾフィー。そして……

 その日、午前授業が終了した土曜日の午後の第三アリーナでは慎吾とシャルルが模擬試合をしていた。回りで実習中の生徒達も学園に三人しかいない二人の戦いと言うのに加え、二人の目を離せないような高レベルの激戦に思わず実習の手を止め二人の対決の為の空間を譲り、信吾とシャルルの戦いを見守っていた。

 

「くっ……だああっ!!」

 

「……っ!?」

 

 シャルルは自身が搭乗するラファール・リヴァイヴ・カスタムⅡの放つ弾幕、それを音を立てて回転しながら突き破ってきたゾフィーを見て思わず息を飲んだ。

 

「はぁ……はぁ……」

 

 とは言え、弾幕を突き抜けた時点で既にゾフィーのシールドエネルギーは半分の更に下まで減り、警告を知らせる胸のカラータイマーはけたましく鳴り響いている。が、息を多少乱しながらも体制を整えている慎吾は全く闘志を失っていないようだ。

 

「……M87光線っ!」

 

 そして、動揺により一瞬、ほんの僅かな隙が出来たリヴァイヴに向け、慎吾はゾフィー最大の必殺技とも言える切り札を放つ。シールドエネルギーを削って使用する事で他のISのビーム兵器では考えられない程の破壊力を生み出すゾフィー。その中でもM87は最強であり、同時に使用時に一番シールドエネルギーを消費する装備でもあった。シールドエネルギーの残量が三割ほどシャルルに負けてる慎吾は、勝利を掴むためリスク覚悟の危険な賭けに出たのだ。

 

「くっ……!うぅっ……!」

 

 M87は重低音を響かせ大気を容易く切り裂いて一直線にリヴァイヴに迫る。もはや回避が間に合わないと理解したシャルルは実体シールドでどうにか防ごうと試みるがその圧倒的なエネルギー質量に押され、リヴァイヴは激流の中の流木のようにM87の青い光の中に飲まれてジリジリと後ろへ押されていく。

 

「……シールドがっ!?」

 

 悲鳴を上げながらもどうにかゾフィーから放たれ続けるM87の直撃を防いでいた実体シールドにヒビが入り、シールドに出来た隙間から青い光がこぼれだす。

 

「……とっ……うわぁっ!!」

 

 次の瞬間、シールドは音を立てて砕けちり、リヴァイヴに遮るものが無くなったM87光線が直撃し、リヴァイヴのシールドをエネルギーを恐ろしい勢いで削ってゆく。

 

 そして決着を知らせるブザーが鳴り、二人の戦いに決着は付いた。

 

「……やるな、シャルル」

 

 M87光線を放っていた構えをゆっくりと解き、慎吾が呟く。ついさっきまで激しく赤く点滅して鳴り響いていたゾフィーのカラータイマーはもう点滅しておらず音も止んでいた。

 

 そう、ゾフィーのシールドエネルギーは0になっていたのだ。

 

「はぁ……はぁ……あ、ありがとう慎吾」

 

 疲労困憊、そう言った様子でシャルルは慎吾に返事を返す。そしてリヴァイヴのシールドエネルギーは首の皮一枚で繋がり、先程砕け散った盾があった右腕でアサルトライフルをしっかりと握りしめていた。

 

「まさか盾が砕ける直前に防御を捨てて銃撃を行うとは……M87が直撃した時、私は勝利を確信して油断していたのかもしれないな」

 

 先程の一瞬の攻防を思い返し、シャルルの捨て身の一撃が直撃したゾフィーの胸元を見ながら慎吾はそう呟いた。

 

「あはは……最後のが当たるかどうかは賭けだったんだけどね……」

 

 そんな慎吾を見て苦笑しながらシャルルはそう言った。

 

「ふふ、敗れはしたが素晴らしい勝負だった……ありがとうシャルル」

 

 慎吾は軽く笑いながらそう言い、シャルルに手を差し出す。

 

「ふふ……慎吾の戦い方も凄かったよ?一夏の強さも慎吾が教えていたなら納得かな」

 

 シャルルはそう言うと慎吾の手を優しく握って応えた。その青春じみた光景に瞬間、観戦していたクラスメイト達から歓声が上がる。

 

「いいやシャルル……私もISについては一夏と同じゼロからスタートした身だ。私一人の力など対した事は無い、本当に凄いのは……」

 

 周囲の歓声を少し恥ずかしそうに受けながらも、慎吾はシャルルの手を握ったまま視線をクラスメイト達と共に見物していた一夏、そして箒達に向ける。

 

「私が勝手に言い出した訓練に付き合ってくれた箒とセシリア、もちろん鈴も。そして何より訓練をいつも一生懸命な一夏。本当に凄いと言えるのは彼らさ」

 

「慎吾さん……」

 

 信吾の一言に感動したように呟く一夏。セシリアは優しく慎吾に微笑みを返し、箒と鈴は頬を赤く染め恥ずかしそうに視線を反らしていた。

 

 そんな光景に思わず慎吾とシャルルの頬も緩み、周囲は暖かい空気に包まれた。

 

 

 

 

「おい」

 

 そんな空気を冷たく、短い一言が切り裂く。

 

 ISのオープンチャンネルで聞こえてたその声に、慎吾達が思わず周囲を見渡すと声の主は丁度ビットのすぐ近くにいた。小柄な体に黒きIS『シュヴァルツェア・レーゲン』を纏い、転校初日に一夏に平手を当てた少女。ラウラ・ボーデヴィッヒその人であった。

 

「見たところただ実習に来た訳では無いようだが……何か私達に要件でも?ボーデヴィッヒ」

 

 警戒した様子でラウラにから視線を外さないよう注意しながら慎吾がラウラに問う。

 

「おい貴様」

 

「……何だよ」

 

 そんな慎吾を無視し、ラウラは一夏を睨み付けながらそう言う。呼ばれた一夏は余り気が進まないような様子でラウラに返事を返した。

 

「貴様も専用機持ちだそうだな……ならば私と戦え!」

 

 冷たく鋭い声で一夏にそう言うラウラ。

 

 試合で流した汗が乾き始めた信吾の背中からは再び汗が滲み出し初めていた。




 次回予告 大胸筋バリアー。出ます

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