二人目の男子はIS学園No.1(最強とは言ってない) 作:塩ようかん
「つまり最低三年間はこの特記事項二一によりシャルルの無事は保障される訳だ。この間に私達で対策を練る……これがベストな選択だろう」
どうにか落ち着きを取り戻そうとしながら慎吾が一夏とシャルルに説明をする。しかしその声は若干高く、良く見れば手も細かく震えていた。
「そ、そうですね……」
「う、うん……」
そんな慎吾に、一夏とシャルルもまたどこか落ち着かない様子で細かく動きながら慎吾に返事を返す。
「(ぼ、僕……いくら優しくしてくれるからって慎吾を『お兄ちゃん』なんて……は、恥ずかしいよぉ……)」
そして、シャルルはうつ向きながら内心で先程の自分の行動を後悔していた。現に、今のシャルルの突拍子も無い行動である程度落ち着きかけていた部屋の空気が先程とはまた別次元の異質な空気に包まれ、慎吾も一夏も対応に困っているのだから後悔するのも当然と言えるが。
「ごほんっ……だが、この3年間でデュノア社、およびフランス政府が何のリアクションも起こして来ないとは言い切れない。何にせよ注意は怠らない事に越した事は無いな……あ」
「……っ!」
多少咳き込みながらも慎吾は伝えるべき事を二人に伝え終えた。と、その瞬間、ほんの一瞬顔を上げていたシャルルと慎吾の視線が交差し瞬時にシャルルの顔が真っ赤に染まる。
「あー……シャルル?さっきの事だが……」
そんなシャルルの様子を見て少しの迷いを見せながらも慎吾が口を開きシャルルに何かを告げようとする。と、その瞬間だった
「一夏さん?いらっしゃいますか?」
「とっ……」
控えめなドアのノックと共にセシリアの声が聞こえ、慎吾は慌てて口に出そうとしていた言葉を止めた。
「セシリア?なんでこのタイミングで……」
「ど、どうしよう……?」
突然のセシリアの訪問に一夏とセシリアは目に見えて身をすくめ、小声でそう狼狽えた。
「弱ったな……ここでいきなりシャルルの秘密を言う訳にもいかないし……セシリアや他の皆は信頼出来る仲間だから近いうちに話すとして……とりあえず今はシャルルは布団に身を隠しておいてくれ。一夏はドアを開けてセシリアを部屋に入れてやるんだ」
慎吾もまたこの不足の事態に頭を抱えながらも少し考えると、手早く二人に指示を出す。
「う、うん、分かったよ……」
「分かりましたけど……慎吾さん、セシリアには何て?」
慎吾の指示を受けて二人がそれぞれ動く。と、ドアへと向かっていた一夏が足を止めて心配そうな顔で慎吾に尋ね、それに賛同するようにシャルルもまた不安げに視線を向けてきた。
「大丈夫だ一夏、シャルル。ここは私に任せて話を合わせてくれ。何、責任は全て私が取ろう」
と、そんな二人を励ますように、そう言いいながら慎吾は優しく笑いかける。
「わ、分かりました……」
慎吾の言葉を受けて一夏は頷くと、静かにドアを開く。
「ありがとうございます、一夏さん」
一夏がドアを開くとセシリアは丁寧に一礼してから部屋に入ってきた。と、そこでベッドで布団にくるまって横になっているシャルル、そしてベッドの横に立っている慎吾の姿をを見つけると、不思議そうな顔をした。
「あら、慎吾さんもいらっしゃいましたの?それにデュノアさんはどうして横に?」
「あぁセシリア。シャルルの体調が悪いと一夏から聞いてな。私が様子を見に来たんだが……。どうやら、軽い熱のようだ」
セシリアの問いに慎吾は難しい顔をして平然と実際にそうだっかのように語ると、無言でシャルルと一夏に目で合図を送る。
「あ、あぁ、そうなんだよセシリア!いやー本当にシャルルが心配で!うん」
「え、えっと……ごほっ!ごほっ!」
慎吾からのサインに気が付くとすぐに二人はそれぞれリアクションを起こして見せた。が、その余りにもわざとらしさが過ぎると言える二人の行動に慎吾は冷や汗を流す。
「あらあら、それは大変でしたわね。では、一夏さんは夕食をまだ取られてないようですし……偶然にも私もまだですので、本日はご一緒しましょう。えぇ」
が、セシリアはそれに気が付いた様子は無く。気のせいか上機嫌になると一夏を夕食に誘った。
「あっ、でも慎吾さんが……」
「私は、ここでシャルルの容態をもう少し見ている。私は後から行くから今は、先に二人で行って来るといい」
一夏の言いかけた言葉を慎吾は柔らかくそう言って遮り、気にせず行くように促した。
「は、はい、分かりました」
「それでは参りましょう。デュノアさんお大事に……慎吾さん風邪がうつらないよう、お気を付けて……」
慎吾に言われて一夏は多少ギクシャクしながらも返事を返すとドアを開いて廊下へと出ていき、セシリアは軽くシャルルと慎吾に一礼をするとその後に続いて出ていき……ドアが閉じる直前、そっと一夏の腕を取り絡めとった。
「(大胆な行動に出るな……セシリアも)」
しっかりとその現場を見ていた慎吾は腕組みしながらどこか感慨深げに内心でそう呟いた。
「……あの、おにっ……!……いいかな、慎吾?」
と、室内に二人だけになったのをしっかりと確認するとシャルルが一瞬、妙な噛み方をしながら慎吾に話しかけ始めた。
「あぁ……なんだシャルル?」
慎吾は認知したが、その事については何も言わずただそう言うとシャルルに視線を向けた。
「あのね……お……慎吾はさっき、僕に何を言おうとしてくれたのかな……って」
慎吾の問いに再び慎吾を『お兄ちゃん』と言いそうになったシャルルは真っ赤になりながら、慎吾にそう問いかける。
「あぁ……あれか……大した事ではないが……」
そんなシャルルを優しく見ながら慎吾は静かに口を開く。
「シャルル、お前が呼びたいのならば私を兄と呼んでくれても構わない……そう言おうしただけさ」
「えっ……?」
慎吾からの予想外の言葉にシャルルは思わず聞き返した。すると慎吾は恥ずかしそうに頭を掻きながら言葉を続ける。
「フェアにならないから後で一夏にも言うつもりだが……私は両親と既に死別して家族と言える者がいなくてな……シャルルにそう言われた時、私はとても嬉しかった……まるで、私に本当の妹が出来たかのように感じていたよ」
そこで慎吾は静かに言葉を止めると、再びシャルルに向き直った。
「だから私を兄とは呼んでくれないか?シャルル」
「………」
慎吾に正面から見つめられたシャルルは一瞬だけ迷い
「慎吾……お兄ちゃん……?」
頬を染め、上ずった視線でそう慎吾に言った。
「あぁ……何だシャルル?」
その問いに慎吾は肩の力を抜き、柔らかな笑顔でシャルルに返事を返した。
「……慎吾お兄ちゃん!」
次の瞬間、シャルルは心底嬉しそうに慎吾の手を握ると再び慎吾の名を呼び、慎吾は笑顔のままそっと開いた手を伸ばしてシャルルの頭を撫でる。
実際には生まれた国も違い、血の繋がりも無い二人ではあっだが、その姿は実の兄妹のそのもののようだった。
次回、ラウラvs慎吾をやります。どう、立ち回るかが悩み所ですね……