二人目の男子はIS学園No.1(最強とは言ってない)   作:塩ようかん

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 遅刻分の投稿です、金曜日頃にはもう一本も投稿します。


33話 ゾフィーvsシュヴァルツェア・レーゲン 後編

「慎吾さんっ!?慎吾さんっ!!」

 

 

 アリーナの大地に倒れ、装甲のあちこちが傷付きピクリとも動かないゾフィーを見た瞬間一夏は、自分達がいる観客席に張られた特殊なエネルギーシールドで声がアリーナ内にいる慎吾の元には届かない事を知っていながらもたまらず叫ぶ。

 

 一体、慎吾に何が起こったのか?話は試合開始直後に遡る

 

 

「てやぁっ!」

 

 試合が始まったのと同時に、慎吾は大地を蹴り、前身しながら構えて数発のスラッシュ光線をシュヴァルツェア・レーゲンに向かって放つ。

 

「その程度……」

 

 放たれたスラッシュ光線をラウラは僅かに動いたのみで容易く回避し、反撃とばかり大型カノンをゾフィーに向けて発射した。

 

「くっ……!」

 

 慎吾はそれを紙一重で避け、追い討ちとばかり迫る砲撃をも上下左右と立体的なジグザグへと動いて回避し、さらにレーゲンに向かって加速しながら一気に近付いていく。

 

「たぁっ!」

 

 そして、射程距離に入った瞬間その勢いのまま慎吾はラウラに向かってゾフィーの強烈な蹴りを放った。

 

「早さは中々だが……甘い」

 

「なっ……!?」

 

 しかしその一撃はラウラが片手を上げた瞬間、レーゲンに命中する瞬間、突如凍りついたかのように空中で制止してしまい慎吾は目を見開いた。

 

「(この特性……ま、まさか慣性停止能力……AICか!?くっ……迂闊に接近しすぎた!)」

 

 自身の迂闊な行動を内心で呪う慎吾、と、そのレーゲンの瞬間巨大なリボルバーカノンが音を立てて無防備なゾフィーへと狙いを付ける。

 

「動きを止めたな……?」

 

「くっ……スペシウム!」

 

 レーゲンから弾丸が放たれる瞬間、慎吾は片足を上げたまま不安定な体勢でスペシウムを放って相殺するとAICの拘束が切れるのと同時に、爆煙が収まらない間に転がるように移動して距離を取る。

 

「ふん、距離を取っても無駄だ」

 

 と、その瞬間、ラウラの冷たい嘲笑と共に爆煙を吹き飛ばしてレーゲンの両肩に搭載されいた一対刃がゾフィーに向かって発射される。刃とレーゲン本体はワイヤーで繋がっており、縦横無尽かつ三次元で軌道を読みづらい動きをする計4つのワイヤーブレードが一斉にゾフィーへと襲いかかった。

 

「ふっ……!たぁっ……!」

 

 慎吾はワイヤーブレードのワイヤと刃の両方を無駄を押さえた最小限の動きで避け続け、レーゲンから腰部からさらにワイヤーブレードが発射されても落ち着いた様子で体を動かす速度を上げたのみで回避を継続し、それどころか逆に冷静に隙を見てかすみ切りのような手刀でワイヤを切断してワイヤの範囲を狭めていく。

 

「ほぅ、どうやら回避だけは上手いようだな……だが」

 

 ワイヤブレードの嵐を紙一重ですり抜け続ける慎吾を見て、ラウラは表情を変えぬまま一言そう称賛する。

 

「ワイヤーに構いすぎて隙だらけだ!」

 

 次の瞬間、迫り来るワイヤを避ける為に一瞬、ほんの一瞬、レーゲンに背後を見せてしまったゾフィーの背中に向かってリボルバーカノンが発射させる。が、

 

「あぁ……分かってるさ、私が故意に作った隙だからなっ!」

 

 ラウラの攻撃のタイミングが完全に分かっていた。まさにそんなタイミングでゾフィーは振り向き、振り向き様にZ光線をレーゲンに向けて発射した。

 

「なにっ………!?ぐぅぅっ!!」

 

 さすがに慎吾のこの行動はラウラも予測しきれず、結果、AIC発動のタイミングが僅かに遅れて直撃こそ避けたものの殺しきれなかった分のZ光線が襲いかかり、ラウラの苦悶の声と共にレーゲンは背中から大地へと崩れ落ちた。

 

「……ぐっ!」

 

 が、ただで倒れた訳では無いらしくレーゲンは倒れる直前に急速にワイヤーブレードを本体へと収納、Z光線を放った直後の隙を付かれたゾフィーはワイヤーを避けることが出来ず、刃が背中に命中して正面に膝をついて倒れる。

 

「(ラウラ・ボーデヴィッヒ……予想していたより……いや、それ以上に強い!)」

 

 膝をつき、息を荒めつつも決して倒れているレーゲンから視線は離さず慎吾はラウラの強さに驚きを隠せないでいた。

 

「(くっ……鈴とセシリアを守るためとは言え……訓練で失ったエネルギーを回復しないまま挑んだのは予想以上に困難だったのかもしれないな)」

 

 慎吾はゾフィーの右腕に視線を移す。この戦況を優位へと進められそうなウルトラコンバータは何の因果か今朝一番に調整の為にヒカリの元へと送っており、今現在手元には無かった。

 

 つまり、現状ゾフィーのシールドエネルギーを回復させる手段は無い。

 

 自身に迫る危機を改めて理解し、思わず慎吾は顔を歪ませ額からは冷や汗を流した。

 

「ふっ!」

 

 と、その瞬間、レーゲンの両手首から超高温のプラズマの刃を展開させたラウラが起き上がるのと同時に加速して一気にゾフィーへと迫り来る。

 

「くっ……たぁぁっ!だあっ!」

 

 迫るラウラから逃げず慎吾は、襲い来る二つの刃にゾフィーの両拳で対抗し、防御を最小限に抑え、被弾覚悟のスピード重視の突きで次々とレーゲンへ張り付くような近距離で猛攻を加えていく。

  

「こいつ戦い方を……っ!」

 

 先程まで、相手の隙を見て慎重にパワーを込めた一撃を狙うような戦い方をしていた慎吾が急激にスピードと手数重視の戦法に変わった事により、ラウラは少しずつ押され始めていた。嵐のような慎吾のラッシュはラウラにAICを発動させる隙も与えない。

 

「くっ……調子に乗るな!」

 

 不利になりだしたラウラはゾフィーの拳を避けつつ牽制の為、ゾフィーの手刀に切断された事により数が減ったものの計六つのワイヤーブレードを攻撃に集中しているゾフィーに向けて発射した。

 

「うっ……!」

 

 囲むように迫り来るワイヤーブレードに慎吾はやむ無くレーゲンへの攻撃を中断すると、回避の為に背後へと下がる。と、丁度、その瞬間に先程までゾフィーがいた場所でワイヤーブレードが鋭くうなり上げて空を切った。が

 

「今度こそ本当に隙を見せたな……これで終わりだ……」

 

「………っ!!」

 

 その隙をラウラが見逃すはずもなく、次の瞬間ゾフィーのボディはAICに捉えられ完全に動きが制止し、勝利を確信した様子のラウラの言葉と共にレーベルの肩に搭載された大型レールカノンが音を立ててゾフィーに狙いを付ける。更にゾフィーのカラータイマーが鳴り出し、シールドエネルギー残量の低下を警告し始める。まさに一瞬、一秒にも満たない一瞬で慎吾は優位を覆され窮地に立たされていた

 

「M……ッ87光線!!」

 

「なっ……この距離でっ!?この死に損ないが!!」

 

 が、それで慎吾は諦めるつもりは無く、最後の抵抗、AICで拘束されていない右腕に力を込めてラウラ目掛けてM87光線を放とうと試みた。慎吾の行動にラウラは目を見開いて驚愕するもAICの拘束は決して緩めず、カノンを連射してどうにかM87を放たれるより先にゾフィーを沈黙させようとする。が、慎吾はシールドエネルギーが目に見える勢いで減少し、防御仕切れないダメージが体を襲っても決してM87を放つ体勢を崩さない。

 

 

「だっ……あぁぁぁっ!!」

 

 

「おおおぉぉぉっ!!」

 

 

 次の瞬間二人の怒濤の声と共にアリーナはM87の青い光に包まれた。

 

 

 そして

 

 

「ぐっ……わぁっ……」

 

 

「この戦闘技術、そして精神力……見事、実に見事……」

 

 光が晴れた瞬間、既にラウラとゾフィー二人の戦闘に決着は付いていた。

 

「この学園にも……大谷慎吾……お前のような強者がいたのだな……」

 

「うっ……う……」

 

 そうラウラは言いながらプラズマ手刀で捉えたゾフィーを地面へと投げ捨てる。ゾフィーのカラータイマーは今にも消えてしまいそうな程の勢いで激しく点滅してもはやゾフィー、慎吾共に戦える力が残って稲井事を示していた。

 

「これでトドメだ……」

 

 もはや呻く事しか出来ないゾフィー目掛けてラウラがトドメを放つべく、冷たく見下ろしながらカノンで狙いを付けた時だった。

 

「おおおおおっ!!」

 

 アリーナのバリアを突き破り、白式を展開させ、雪片を装備した一夏がゾフィーとレーゲンの間に割って入るかのように突入してきた。




 ラウラとの戦闘描写はかなり苦戦しました……さて、皆様のおかげでこの小説もめでたくお気に入りが100件を越えましてたので、その感謝を込めまして近いうちに感謝の気持ちといたしまして特別番外編を投稿しようかと思います。特別番外編には……『あの人』を出すつもりです。

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