二人目の男子はIS学園No.1(最強とは言ってない)   作:塩ようかん

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 最近、中々更新するのに苦労します。今回も何とかギリギリで間に合った……と言う形です


38話 ラウラの説得、苦難のゾフィー

「な、何でラウラがここに!?」

 

「気持ちは分かるが……落ち着け一夏……そう、まずは落ち着くとしよう」

 

 そのまま飛んで天井へと激突してしまいそうな速度でベッドから起き上がり、動揺する一夏にそう言い聞かせながら慎吾は出来うる限りラウラの体を見ないように注意しながら額に冷汗を滲ませながら、若干震える手でひとまずそっと自身が取った布団をラウラに被せてその小さな体を隠した。

 

「ん……もう朝か……?」

 

 と、布団が小さく動き、少し眠そうに目を擦りながら眠っていたラウラが目を覚ましベッドの上で起き上がった。

 

「聞きたいことは無数にあるが…………ひとまずは、おはようラウラ」

 

「うむ、おはよう、おにーちゃん!そして嫁よ!」

 

 少し慎吾に話しかけられるとラウラは瞬時に寝惚けていた顔をいつもの状態に戻し、自信に満ち溢れた真っ直ぐな表情でそう返事を返した。

 

「ラウラ、寝起きてま悪いがまず一つ聞かせてくれ。何故ラウラは私達の部屋に入って、一夏のベッドで……それも全裸で寝ていたか私達に教えてはくれないか?」

 

「あぁ、勿論いいぞおにーちゃん。それはだな……」

 

 言葉を選んでラウラに話しかける慎吾に、ラウラは得意気にそう笑うと話を続ける

 

「何でもこの国では、将来結ばれる者同士ならばこうして相手を起こすのが理想的だ、と言う有力な情報を入手してな……早速、実行してみた訳だ。同室がおにーちゃんならば裸を見られても全く問題無いからな」

 

「そ、そうか……」

 

 しっかりとした意思が込められた目でそう語るラウラに思わず、慎吾は押されて思わず曖昧な返事を孵してしまった。

 

『あの一戦を終えてラウラは、セシリアや鈴に自身が言った事を謝罪したし、周囲への対応も柔らかくなり、私や一夏と行動を共にする事が多くなった……それらは良い進歩だと思っていたのが……今日のこれは、思わぬ弊害だな』

 

 そう、慎吾はここ最近の事を思い出しながら思わず大胆が過ぎるラウラの行動に改めて苦笑した。

 

「どうしたおにーちゃん?嫁もいつまで黙りこんでいるんだ?」

 

 しかしラウラ本人は殆ど気にした様子を見せず、逆に不思議そうにそう慎吾と一夏に訪ねてきた。

 

「ひとまずラウラ、お前が一夏を起こしに来てあげようと思った事はとても良い事だ。少なくとも私は評価しよう」

 

「ちょっ、慎吾さん!?」

 

 何とか事態の解決へと導いてくれると信じていた慎吾からの予想外の言葉に思わず一夏は叫ぶ。が、慎吾はそれを無言のまま手で制すると、『私にまかせろ』と言うようなアイコンタクトを一夏へと送った。

 

「だがな、我々が寮暮らしで集団生活を送っているのがここで問題となる……一例を出せば、そのままでは何らかの形で早朝から私達の部屋を訪れる事になった者……先生方、あえて更に言えば織斑先生等に目撃された場合、間違った認識を抱かれてしまうのかもしれないのだ」

 

「む…………?」

 

 真面目に慎吾の言葉を聞いていたラウラは、慎吾が『織斑先生』と言う単語を耳にした瞬間、ピクリと顔面の筋肉を僅かに動かした

 

「……無論、織斑先生の事だ、常に冷静な織斑先生ならばこの光景を目撃した所で私達が速やかに冷静かつ落ち着いた態度で説明すれば理解してくれるだろう。しかしなラウラ」

 

 ラウラが反応したのを決して見逃さず、慎重に気を抜かないように注意しながら慎吾は一気に勝負にかかった。

 

「万が一相手が織斑先生では無かった場合、開けた者が男子しかいないはずの部屋に裸のお前がいると言う状況に混乱してしまって話が通じず、最悪の場合。噂に尾ひれが付いて、私と一夏の印象が損なわれる可能性がある……かもしれない」

 

「なんと……!?そんな問題が発生するとは……くっ、私とした事が先走り過ぎて不覚だったか……」

 

 慎吾の言葉を聞いてラウラは心底衝撃を受けたような表情を見せると、歯を噛み締めて悔しそうにそう言った。

 

「だがなラウラ……さっきも言った通りお前のしようとしたその行動、それは決して間違いでは無い」

 

 その瞬間、待ってましたとばかりに慎吾は優しい口調でラウラに救いの手を差し伸べる。

 

「そこでだ……私から提案だが何も私達の部屋に入る必要は無く、お前はドアの前で呼び掛けて私達を起こしてくれれば良いのだ。その後、私達がトレーニングに出かければ余り余計な詮索を入れる者もいないだろう」

 

「おにーちゃんの話は良く分かった……しかし、それではあまりに味地味ではないか?」

 

「そう言われると否定は出来ないな……だがなラウラ」

 

 ラウラが、そう口にした瞬間、慎吾は最後の切り札を繰り出すべくラウラの耳元に顔を近付けてある一言を囁いた。

 

「朝、起きたばかりの一夏の視界に一番最初に入る女性がお前、と言うのはとてもロマンチックでは無いか?」

 

「っ……!?、お、おにーちゃんの言う事を妹は聞くものだからな!その要求を受け入れよう!おにーちゃんの言う事なら仕方ないな、うん!」

 

 その瞬間、頬を赤く染め、興奮した口調でラウラは一気にそう言い切ると、慎吾と一夏に背中を見せると逃げ出すように裸のままドアへと向けて走り出した。

 

「ラ、ラウラ!?おいっ!?」

 

「裸で外に出ては駄目だ!せめてこれを来ていけ」

 

 そんなラウラを慌てて止めようとする一夏、慎吾は走り出したラウラを止めるのが間に合わないと判断すると素早く自身の上着を脱ぎ捨て、ラウラへと投げ渡す。

 

「と……感謝する、おにーちゃん!」

 

 ラウラは正面を向いたまま、背後から飛んできた慎吾の上着を受けとると器用にそのまま羽織る。と、その瞬間だった

 

「お前達、何を朝から騒々しく………!?」

 

 どんなタイミングか、丁度朝の鍛練を終えて一夏を起こそうとした箒がドアを開き何かを言おうとし

 

「箒……何故このタイミングで……」

 

 上半身が全裸の状態で弱りきったような表情をする慎吾

 

「む、お前か……」

 

 そして全裸の上にブカブカのパジャマの上着を着たラウラを見て箒は、三度見までしながらも状況を理解出来ずに完全に硬直した。

 

「どういう事なのだこれは…………!?」

 

「(今度はこの状況をどう説明するか……か。全く、休む暇もないな)」

 

 ようやく絞り出すように呟いた箒の言葉に慎吾は頭を抱えながらそう思うであった。




 日常パートでは基本的に苦労人の慎吾、やはりこれが書いていて一番しっくり来ますね

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