二人目の男子はIS学園No.1(最強とは言ってない)   作:塩ようかん

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 正直、今回は間に合わないかと思った……更新です


40 話 臨海学校開始!ののほんさんとゾフィー

「慎吾さん……本当に、本っ当に申し訳ありません!!」

 

「今回はホント悪かったわ……ごめん」

 

 慎吾の目の前でセシリアは全力で謝罪し、鈴も申し訳無さそうに頭を下げた

 

「いいんだ二人とも……幸いな事にペンキは水溶性ですぐに落ちたし、セシリアが持ってきてくれたシャンプーでペンキの跡も殆ど残らなかったからな……」

 

 髪についた水分をタオルで拭き取りつつ、慎吾は幾分か元気を取り戻した顔でそう言って笑いかける。

 

 慎吾がペンキを頭から浴びてブロンズ色になった後、周囲は蜂の巣をつついたかのような大騒ぎになり。不用意に中身が入ったペンキ缶を放置していたと店側が自らの非を訴えた事と責任を感じたセシリアの必死の心力もあり、慎吾は体に付着したペンキをモール内のフィットネスクラブに備え付けられたシャワー室で綺麗に落とし、着ていた服はクリーニングへと渡され、慎吾は今、替えとなる新しい服に袖を通していた。

 

「すまん、おにーちゃん……妹の私とした事がおにーちゃんの危機を救えんとは……くっ!」

 

 遅れて現場に駆け付けたラウラ(何故、突如皆から離れたか話そうとはしなかった)が悔しそうに歯を噛みしめて、そう言う

 

「ラウラ、お前も気にする必要は無い……皆もだ。今回の件は不幸な事故。それで話はおしまいだ」

 

「慎吾さん……」

 

「…………」

 

 表情に笑顔を浮かべ、落ち着いた態度でそう言うと優しくラウラの頭を撫でる慎吾。一夏はそんな慎吾を憧れのような視線を向けていた。

 

 結局、その場はそのまま流れという形に収まり慎吾は、謝罪代わりとばかりに積極的に慎吾の水着選びに協力した鈴とセシリアのおかげで無事に新品の水着を手入れる事が出来たのであった

 

 

「お、お~海が見えたよ、しんに~」

 

「ああ、天気に恵まれた事もあって最高の景色だな、本音」

 

 快晴となった臨海学校初日のバスの中、隣席となった本音こと布仏本音のゆったりした口調に合わせてなのか、いつもよりペースを緩めた速度でのんびりとそう返事をした。

 

「あのね、しんに~は海、好き?」

 

「ふむ、どちらかと言われれば好きな方と言えるな。水泳も昔からそれなりにはしていたからな」

 

「おー、しんに~泳げるんだ。何出来るの~?」

 

「とりあえずバタフライに背泳ぎ、平泳ぎとクロールの基本は身に付けたかな」

 

「へー、しんに~すごーい!ぱちぱち~」

 

「ふふ、そう言われると照れてしまうな……」

 

 気付いた時から既に慎吾を奇妙なあだ名で呼び、ゆるいペースで毒にも薬にもなりそうになりまったりとした会話を続ける本音だが、慎吾はそれを全く気にした様子は無くゆっくりと言葉を返し続ける。

 

『(ずっと楽しそうに話してるし、仲はいいみたいけど……恋人というより兄妹だ、これ……)』

 

 その様子を何か起こらないものかと聞き耳を立てていた慎吾の周囲の席の女子生徒達は溜め息と共に、どこか安堵したかのような、それでいてがっかりとしたかのような奇妙な気持ちで大部分が意識を慎吾と本音の会話から外していくのであった。しかし

 

「うぅ……一夏の隣は譲れないけど……お兄ちゃんと沢山話せるのも……ううん……」

 

「まさか……私がくじ引きで二回連続で負けるとは……不覚!」

 

 約二名だけが例外的に少し羨ましそうに、目的地である旅館前にまで続けられた本音と慎吾の話を聞き続けていたが、それを知る者は本人達を除いては誰もいなかった

 

 

「「「よろしくおねがいしまーす!!」」」

 

「三日間、よろしくお願いいたします」

 

 千冬の後に続いて、クラスの全員が一斉に臨海学校の三日間、宿泊と食事をする事となる旅館『花月荘』の出迎えに来てくれた従業員と女将に挨拶をし、慎吾も一言そう言ってから僅かに遅れて頭を下げた

 

「はい、こちらこそ。ふふ、今年の一年生も元気がありますね。……あら、もしやこちらのお二人が?」

 

 そう言って丁寧にお辞儀をしてから、こちらに挨拶を返してきた見た目からして三十路程でありながらも、纏う雰囲気から不思議と若々しさ女将。と、そう挨拶を言い終えた所で女将は一夏と、その隣に立つ慎吾に気付いて千冬に尋ねる

 

「どうも初めまして、私は大谷慎吾。私の隣に立っているのが織斑一夏と申します」

 

 千冬が返事をするのより早く、慎吾が一歩前に出ると軽く頭を下げると、にこやかな笑顔でそう女将に挨拶をした

 

「今回は、イレギュラーな男性操縦者たる我々二人がいるために浴槽分け等で皆様に苦労をかけてしまうでしょうが……どうかよろしくお願いします」

 

「うふふ、これはご丁寧にどうも。清洲景子です」

 

 慎吾の挨拶に女将、景子は先程見せたのにも勝るとも劣らない丁寧なお辞儀を慎吾に返した。

 

「男性操縦者のお二人は、どんな子かと思いましたが……随分としっかりとした子ですね」

 

「えぇ、大谷は確かにそうと言えます。……不出来の我が弟にも見習って貰いたい程です」

 

「ちょっ、ちふ……織斑先生!?」

 

 景子の率直な感想に、千冬はため息を付きながらそう返事を返して、その言葉に一夏が慌てる。そして皆が妙に必死な様子の一夏がおかしくて笑いだし、臨海学校の一日目は和やかに始まりを告げた

 

 

「むむ……あれは?」

 

 自室となった教員室(一夏、千冬と同室に)に荷物を置き、クラスメイト達にも誘われていた故に一日目の自由行動を海で満喫すべく、手持ち鞄に水着とタオルに水中ゴーグルと水泳赤と銀の水泳キャップの水泳セット、替えの下着、1000円ほどが入った小銭入れ、何かあった時の為の小型の救急箱を詰め込んだ慎吾が先に更衣室のある別館へと足を進めていた。……のだが、その道中に妙な物を発見して足を止めた。慎吾の視線の先にあるのは地面

 

 

 そう地面から、いわゆるバニーガールなどが頭に付けるカチューシャタイプのウサギの耳が生えていたのである。

 

「………………」

 

 その余りに異質な光景に思わず慎吾は無言のまま地面から生えたウサギの耳が見つめる

 

「…………止めておこう」

 

 が、たっぷり数十秒程考えてから慎吾はウサギの耳から視線を外して再び別館へと向かって歩き始めた

 

 正直に言えば慎吾にも抜いてみたい気持ちは持っていた。が、どこから自身に向けられる妙な気配を感じた為に慎吾は直感を信じてそれを断念し、見なかった事にした

 

「まぁ、あれだけ奇異な物があるのだ。私で無くとも誰かが直ぐに抜いてしまうだろう」

 

 男子用の更衣室の扉を開いて中に入りながら誰に言い訳をするまでも無く、慎吾はそう呟いて着替えを始める。

 

 その後、ウサギの耳が生えていた場所に遅れて一夏が到着し、ちょっとした騒ぎになったのたが。場所がちょっと離れていた為にその騒ぎは慎吾の耳には届かなかった。




 今回、以前から言っていた慎吾のあだ名を出しました。改めてテクノクラート社員さん、ご協力ありがとうございました!

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