二人目の男子はIS学園No.1(最強とは言ってない) 作:塩ようかん
「(この専用機……ゾフィーを貰い受けた時から覚悟はしていたが……まさかこんなに早く、その機会が来るとはな)」
旅館の奥に設けられた大広間で、箒、セシリア、シャルロット、ラウラ、そして一夏と共に千冬から説明を受けながら静かに慎吾は厳しい顔つきのまま緊張の冷や汗を額から流していた。
千冬の説明と入ってる情報が完全に正しいと考えれば、今回の事態は纏めれば、ハワイ沖で試験稼働中だった第三世代軍用IS『銀の福音』が制御下を離れて暴走した事から始まっていた。
暴走した福音は監視空域を易々と越えるとそのまま疾走を続け、衛生による追跡によるとどういう訳か、時間にして五十分後、慎吾達が宿泊している旅館から二キロ先の空域を通過する事が予測され、その事態に対処すべき要員として学園上層部から訓練機を使用してでの空域と海域の封鎖役に千冬達教員、そして作戦の要として専用機持ちである慎吾達はこの場に集められていたのだ。
「(……相手は特殊射撃を特異とする万能型。格闘戦は未知数、偵察は不可能……厄介だな)」
セシリアの懇願により提示されたデータを目にしながら、精神を落ち着かせ冷静に時折、千冬達教師陣シャルロットやラウラ達代表候補生達と意見を交わしつつ作を共に練っていく慎吾
「……つまりアプローチは一回が限界。一撃決殺が可能なISで勝負を決めなければならない訳ですね」
ある程度、纏まりかけた話を許可を貰って代表するように慎吾がそう口にする。
「………………」
その瞬間、視線は一斉に発言者であり今までにも凄まじいまでの威力を持ち、直撃すればどんなISでも一撃でシールドエネルギーを空にしてしまうであろう『M87光線』を装備した専用機ゾフィーを持つ慎吾と
「えっ……?」
こちらもまた、命中すればその特性により確実に相手を落とす事が可能な『零落白夜』を使用する事が出来る白式を自らの専用機とする一夏。この二人に向けられた
「ちょっ、ちょっと……!」
今まで話についていけず弱っていた一夏は急に自身が指名された事で焦りを見せ、慌てて口を開こうとする
「………分かりました織斑先生、私が出ます。私がゾフィーで福音を落としてきます」
「……慎吾さんっ!?」
と、丁度その瞬間、迷いを見せないような表情と確かな決意を裏付けるようなはっきりとした口調で慎吾がそう口にし、一夏は思わず口にしようとした言葉を飲み込んだ
「一夏、私は今回の事件概要を聞いた時から決めていたんだよ。可能ならば私が率先して参加するとな……」
慎吾はそんな一夏に首を動かして視線を向けると、そう言ってふっ、と笑いかける
「しつこいと思うだろうが、これが私の……年長者としての義務なん……痛っ」
続けて言葉を発しようとした慎吾だったが、その言葉は千冬からの出席簿での一撃を頭にもらい途中で制止させられた
「やはり効く一撃ですね……」
「馬鹿者、大谷……お前は私が以前言ったことを聞いていなかったのか? こいつらから見れば年上だろうが、所詮はお前も私から見れば、まだまだ小僧。おまけにこれは訓練では無く実戦だ。一丁前に背伸びなんかするんじゃない」
「……前向きに検討します」
貰った一撃で顔をしかめながら苦笑する慎吾に千冬はため息を付きながらそう言い、それに慎吾は苦笑したままいつぞやと似たようなニュアンスの言葉で千冬に返事を返した
「はぁ……それで、自分から言い出したのだ。手は持ち合わせているのだろうな?」
その言葉を聞いてこれ以上、慎吾に何を言っても無駄だと判断したのか千冬は再びため息を吐くとそれ以上の言及を止め、作戦に付いて語りだした
「速度についてならゾフィーであれば全く問題はありません。移動エネルギーについてもウルトラコンバータで十二分に行き帰りの移動と戦闘、M87を放つだけのエネルギーを確保可能です。無論、超高感度ハイパーセンサーも搭載済みです」
千冬の問いに慎吾はあらかじめ考えていたのか、全く淀み無くすらすらと答えていく。千冬は慎吾の話を聞き終えると、ふむ、と一言呟き
「では今回の作戦は大谷のM87を中心とー」
「待ってくれ千冬ねっ……! 織斑先生!!」
千冬が作戦の具体的内容を決めようとした瞬間、座っていた一夏は急に立ち上がり必死に声を張り上げながら割って入った
「この作戦、俺も参加させてくださいっ!!」
「一夏…………!?」
先程の一夏の繰り返しのように今度は慎吾が驚愕に染まった表情で一夏を見つめた。そんな慎吾に一夏は真っ直ぐに視線を返し、口元には軽い笑みすら浮かべながら言葉を続ける
「勉強でもISでも、おまけに学園生活でも慎吾さんに助けて貰って甘えてる訳にはいかない……それを当たり前にしたくない! 俺も慎吾さんと一緒に戦います!!」
「覚悟は……どうやら出来てるようだな織斑。良いだろう、今回の作戦の中心は大谷、織斑の両名とする」
そんな一夏の様子をしっかりと見ていた千冬は弟の成長に、一夏にしか分からないほどうっすらと笑みを浮かべてそう言い、一夏は思わず小さくガッツポーズを決めていた
「さて、大谷に加えて織斑の参戦も決まったが故に問題となるのは、織斑の移動方法だが……現在、この専用機持ちの中で最高速度が……」
一旦、息を吸い込み再び千冬が話を再開させようとしたその瞬間
「ちょーっと待った、待った! いい作戦が私の頭の中にナウ・プリンティングなんだよ!」
またも割り込む形で、どこかわざとらしく間の抜けた声が天井から響いてきた
◇
その後、一番高速戦闘の訓練時間が長いセシリアを中心とした代表候補生組からじっくりと高速戦闘のアドバイスを受け、改めて作戦を頭から終わりまで練って内容を三十分かけて頭に叩き込んだ一夏と慎吾、そして追加されたもう一人の三人は雲ひとつ無いほど晴れ渡った空の元で僅かな距離を立っていた。
「……ゾフィー!」
「来い、白式」
三人は互いに一度を目を合わせて頷くと、一斉にISを展開させる。まずは口火を切るようにゾフィーが水面に浮かぶ波紋を思わせるような赤い光に包まれてその姿を現し、それに続いて一夏の白式
「行くぞ、紅椿」
そして最後に太陽の光に反射してよりその紅を色鮮やかに魅せる箒の紅椿がその姿を見せた
「(この作戦における紅椿は移動エネルギーに困っていた一夏のいわゆる運び役になってくれる。さらに紅椿は篠ノ乃博士の作った各国が躍起になって行ってる第三世代型IS開発を無意味にしてしまうような規格外にも程がある第四世代のIS。以上から考えて紅椿の参戦は非常……に有効。……のはずなのだが)」
事前に決めた作戦通りに紅椿の背に乗る一夏を見ながら、慎吾はどこか不信を感じていた
「(篠ノ乃博士の登場といい、福音の暴走といい、あまりにも話が出来すぎている。本当に全ては偶然で、私の気のせいだと助かるのだが……どうにも腑に落ちないな……) 」
と、そんな風に胸の中に説明しがたい奇妙なわだかまりを感じながらも千冬の合図の元、一気に上空まで飛翔していった紅椿のすぐ後に続くように大地を蹴って急加速していたのであった
次回の話から私が最も、と言って良いほど書きたかったパートに移るので気合いを入れて書いていこうかと思います