二人目の男子はIS学園No.1(最強とは言ってない)   作:塩ようかん

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 今回はタイトルから察された通りです。つまりは、あの回です。弁明らしき物も後書きにしてますのでよろしければ


47話 ゾフィーが負けた! 白式も負けた!

「はぁぁぁっ!!」

 

 ダメージ覚悟で慎吾は最低限発射の邪魔にならない程度の光弾を回避、あるいは相殺しつつ一秒にも満たない隙を狙って未だに光弾の連射を続ける福音目掛けてZ光弾を発射。しかし複数の光弾を破壊しながら放たれたこの一撃も福音には命中する直前に踊るように回避されてしまい、空振りに終わった

 

「相手が私一人なった瞬間、途端に回避重視に逆戻りか。分かりやすいと言えば分かりやすいが……やはり、やりにくいな」

 

 福音が反撃に放った光弾を回避し、油断なく福音を睨み付けながら慎吾は自身の攻撃が回避され続けている現状に僅かに焦りを見せ初めていた

 

 箒達が戦闘を離脱した先程から移動しつつ、様々な角度やタイミングで攻撃を続け、更に福音の反撃を出来うる限り回避していたとは言え何発かを被弾した影響でウルトラコンバータに残されたエネルギーは残り一割程。圧倒的不利とは言えないものの慎吾は真綿で首を締めるかの如く徐々に福音に追い詰められ初めていたのだ

 

「この戦い方を続けても私の勝ち目は薄い……と、なると勝つためには多少の無茶な賭けでも仕方ない。……ふふ、私からこんな事を言い出すとは、私も知らずうちに一夏と過ごす中で影響を受けたのかもな」

 

 自身のシールドエネルギー残量を改めて確認しつほう考えを纏めた慎吾は、自身のその考えがどこか訓練や試合の時に一夏が考えて実行してくるような策に似ている事に気が付いて小さく笑う。そして次の瞬間

 

「ぜやぁっ!」

 

 慎吾が福音に行ったのは単純明快、正面からゾフィーの持つ全速力での一直線の突撃。まさに引き絞られた弓から放たれた矢の如く凄まじい勢いで発進したゾフィーはみるみるうちに福音との距離を縮めていく

 

 が、そんな大胆不敵な接近を許すほど福音は抜けてはいない。当然のように勢いよく突撃してくるゾフィーに容易く照準を付けると一斉射撃モードで大量の光弾の弾幕を作り上げる

 

「はぁっ……!」

 

 迫り来る光輝く壁のような弾幕を見ても慎吾は全くスピードを緩めず、ゾフィーは全速力で福音に向かって飛び続けながらも銃口から放たれた弾丸の如く激しく回転を始めた

 

「先程までは混戦の中で一夏や箒に当たる事を配慮して使用を控えたが……今ならば!」

 

 光弾が回転するゾフィー装甲のあらゆる部分に次々と命中していくが光弾の殆どはゾフィーに突き刺さる事はなく、命中した瞬間ゴムボールをコンクリの壁にぶつけた時のように弾き飛ばれ周囲の光弾を巻き添えにして爆発し徐々にその数を減らしていく

 

「ぐっ……!」

 

 が、それでもなお福音の数は余りにも多すぎるのか完全に防げている訳では無いらしく。偶々弾き飛ばされずにゾフィーの装甲に突き刺さった光弾が爆発してゾフィーのシールドエネルギーを削り、ゾフィーの速力を僅かに落とす。そして、そのスピードの減少は

 

「《銀の鐘》最大稼働ーー開始」

 

 福音に追い討ちとなる第二射をさせるのは十分だった

 

 

「…………っ!!」

 

 慎吾の息を飲むような声が聞こえた次の瞬間、眩い程の光が爆ぜ大量の光弾がゾフィーに襲いかかると一瞬でその姿を覆い隠すのと同時に、光弾は一斉に爆発し先程までゾフィーがいた場所は一瞬にして爆炎に包まれた

 

 

 それを確認した福音が、大きく広がる爆炎の中からゾフィーをスキャンしようとした瞬間

 

「捕まえたぞ……!」

 

 爆炎を切り裂いてゾフィーが姿を表し、一瞬の間を福音の脚をがっちりと両手で掴んだ。突如あらわれたゾフィーに動揺するかのように福音はゾフィーを振り払おうとしたが

 

「ぜっ……!!」

 

 それを狙っていたかのように慎吾は両手を離すのと同時に福音に向かって右足で膝蹴りを放ち、福音を衝撃で仰け反らせた

 

「たぁっ!!」

 

 更にそれだけでは終わらない。慎吾は蹴りの勢いのまま一回転し、一瞬福音に背を向けるとそのまま福音が体制を立て直すより早く左足での回し蹴りを叩き込む

 

「ぜぇぇやぁっ!!」

 

 そして最後に気合いの声と共に渾身の力を込めたミドルキックを福音の装甲に叩き込む。立て続けにゾフィーの蹴りを受けた福音はゾフィーの凄まじい速度と鋭さを持った蹴りを回避する事は叶わず、勢いよく海面に向かって降っ飛ばされていく

 

「これで終わりだ……!」

 

 そんな福音にトドメの一撃を与えるべく、慎吾はゾフィーの両手を胸の前に水平にするように構え、直後

、右手から体制維持が出来ない福音目掛けてM87光線を発射した。

 

 回避が間に合わないような範囲で迫り来るM87光線を福音はどうにか防御体制に移り堪えようと試みるが青白く輝く光線が福音へと命中した瞬間、M87光線が直撃した翼は跡形も無く消し飛んでおり、福音は風を失ってしまった凧のように力無くくずれ落ち、近くの足元の小島の海岸へと墜落していった

 

「ふぅ……福音は一斉射撃をした直後、僅かだが動きが停止する……。それを狙ってダメージ覚悟で防御しつつ、ギリギリまで近付いて瞬時加速で接近戦に持ち込んで即時決着……の予定だったのだが。やはり少し無謀だったか……」

 

 戦闘中のギリギリの駆け引きで乱れた呼吸を整えるように一息を付きながらゾフィーの右腕に視線を送る。そこに装着していたウルトラコンバータは福音の光弾数発が直撃した為に半壊してしまい、壊れた箇所から見える機械部分からは黒煙が上がっていた。これではとても使えそうには無い

 

「しかし、帰還するのには十分なエネルギーが残っている。不幸中の幸いと言うべきかな……」

 

 過ぎた事を引きずっていても仕方が無い。そう決めた慎吾が恐らく小島で倒れているであろう福音に目を向けた瞬間

 

「なっ……!」

 

 慎吾は心の底から絶句した

 

 先程まで福音が倒れていた場所にあったのは強烈な光を放つ光の珠。その球から放たれるエネルギーは浜辺の砂を軽々と吹き飛ばし、押し寄せる波を次々と蒸発させていく。そして、珠の中心では青い雷を纏った福音が胎児を思わせるようにうずくまっていた

 

「まさか……これは『第二形態移行』か!? ま、まずい……!」

 

 福音との戦いでエネルギーを消費し、エネルギー補給のウルトラコンバータが破損していると言う最悪の状況に慎吾が思わず焦りを見せた。その瞬間

 

『キアアアアアアア……!!』

 

 獣の咆哮に酷似した鋭い声を上げ福音が余りにも凄まじい速度でゾフィーに飛びかかってきた

 

「くっ……!!」

 

 たまたまコンバータを見るために腕を構えるような形にしていた慎吾は信じがたい速度で迫る福音に奇跡の抵抗とばかりにスペシウムを放った。

 

 が、しかし

 

 

「なっ……!?」

 

 何と福音はスペシウムが放たれるタイミングを最初から知っていたかのように、最高速度を保ったまま薄皮一枚で回避し両手でゾフィーの腹部を拘束した

 

「うぐっ……なんのっ……!」

 

 苦悶の声を漏らしながら慎吾は気力を振り絞り渾身の力で抵抗して福音の拘束から逃れようともがく。が、福音はゾフィーを全く離そうとはせずベアハッグのような形で強く絞めあげる。そして

 

 M87で跡形も無く吹き飛ばされたはずの福音の頭部から音もなく、緩やかにエネルギーの翼を伸ばす。それはまるで蛹から出てきた蝶が羽を伸ばすかのように神秘的で、いっそ美しさを感じるような動きではあったが、福音が何をしようとしているのか悟った慎吾は一瞬にして顔を青ざめた

 

「くっ……!」

 

 『間に合わない』と、頭では理解しながらもウルトラスラッシュを発動して福音の拘束からコンマ一秒でも早く逃れようとした瞬間 

 

 美しく輝くエネルギーの翼にゾフィーは抱かれ、零距離から全身にエネルギーの弾雨を食らった

 

「うっ……! ぐっ……ぐああぁぁぁぁっ!!」

 

 凄まじい猛攻に放つ寸前でゾフィーの腕の中で形成されていたウルトラスラッシュの輪はガラスのように粉々に砕け、次々と直撃する光弾はゾフィーのシールドエネルギーを凄まじい勢いで削りながら装甲を焼いていき、限界が来たゾフィーの頭部からは炎が上がり、慎吾は激痛に悲鳴を上げる

 

 そして慎吾に取っては永遠のようにも感じられた攻撃が終わると、福音はゾフィーを無造作に海へと放り投げた

 

「す……ま、ない……みん……な……。一夏……シャルロット……ラウラ……ヒカリ……」

 

 薄れる意識の中、慎吾が呟いたその一言は誰にも聞かれる事は無く、ただボロボロになったゾフィーは吸い込まれるように海中へと沈んでいった




 誤解の無いように言っておきますが私はゾフィー隊長がとても好きで、かっこいいと思っています。
 しかし、どうしてもバードン戦でのあの隊長はインパクトに残ってしまう為に書かずにはいられませんでした。しかし、個人的にはあの戦いは、ゾフィー隊長が疲れて無ければバードンに勝てたと言う説を指示します。一応、そう言った気持ちもを込めて今回は個人的に無理の無いと思える程度で出来る限り実力者に見せるように書かせていただきました。

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