二人目の男子はIS学園No.1(最強とは言ってない)   作:塩ようかん

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 ギリギリでした……それなのに文章がいつもより少ない矛盾……次こそは頑張ります


48話 動く妹達、慎吾とゾフィー

「お兄ちゃん……」

 

「くっ……おにーちゃん……!」

 

 頭、胸が殆んど包帯に包まれてしまうような大怪我そして自発呼吸でさえつい先程まで出来なかった程の深いダメージを受け、意識も無くベッドで横たわる慎吾のその枕元。そこでシャルロットは傷付いた慎吾の姿を見て悲しげに呟き、ラウラは自身が参加出来なかった作戦で一夏、そして慎吾と言ったIS学園で得た『大切な人達』を無惨に傷つけられた事実に歯噛みするかのように悔しげにそう言った

 

 偶然にも封鎖に当たっていた真耶によって、呼吸停止状態で慎吾が孤島に打ち上げられているのを発見されたのは二時少し過ぎの事であった

 

 ただちに救助された慎吾は一夏同様にただちに待機してた医師達によって治療を受けたものの、慎吾とゾフィーの受けたダメージが共に一夏と白式よりも大きく、慎吾もまたISの操縦者絶対防御、その致命領域対応による昏睡状態から目覚めそうには無かった

 

 と、二人が目を覚まさない慎吾を見守っている中、突如ラウラの脇に置いてあったブック端末が振動し始めた

 

「出たか……!」

 

 その瞬間、つい先程まで纏っていた悔しげな雰囲気を一瞬にして消し去り、ラウラは素早くブック端末を手に取ると、そこに表示された期待通りの結果に不適に口を小さく吊り上げた

 

「ここから30キロ離れた沖合上空に目標を確認した。ステルスモードに入っていた所をたった今、衛星による目視で発見したぞ……そっちはどうだ?」

 

 ラウラがそう告げシャルロットに視線を向ける

 

「うん……僕も準備オッケーだよ。いつでも大丈夫」

 

 そんなラウラにリヴァィヴの専用防御パッケージ『ガーデン・カーテン』のインストールの準備を終えたシャルロットはどこか得意気そうにラウラに返事を返す。当然のように先程まで今にも泣きそうだったはずの表情からは悲しみが吹き飛んでいた

 

 そう、今の二人にあるのは

 

「福音よ、おにーちゃんを傷付けた借りは返させてもらうぞ……!」

 

「覚悟してもらうよ……今の僕には手加減は出来そうにないから!」

 

 妹として、兄の雪辱を張らす。単純ではあるがそこに淀んだ復讐心は無く、純粋で真っ直ぐな想いだけがそこにあった

 

「行こう……」

 

 ラウラはそう言うと綺麗にたたんでブック端末の隣に置いてあった真っ黒の軍服をさっと羽織るって立ち上がると、今まさに一人、責任を背負い込んで死にそうな目を目をしている箒を鈴がはげまし……もとい活を入れているだろう。一夏の病室を目指してシャルロットと共に歩き出した

 

「大丈夫、僕達は皆、必ず帰ってくるから。だから……待っていてね、お兄ちゃん」

 

 去り際にドアの隙間から再び慎吾を見てシャルロットは呟くと、そっとドアを閉める。しかし、シャルロットは気がつかなかった

 

 シャルロットの言葉に反応するかのように意識の無いはずの慎吾の体、その右手の指先がほんの僅かに動いている事を

 

 そして、二人達が立ち去ったすぐ後にドアを開いて真耶に先導される形で一人の人物が慎吾の病室へと入ってきた事を

 

 この時ばかりは全く気付く事は無かった

 

 

「ここは……一体……?」

 

 福音との戦いに破れて海へと沈みながら意識を失っていた慎吾は気付くと、顔に近付けた自分の手の平さえ全く見えず、自分が今大地に立っているのか浮かんでいるのかさえ判断できない程に深く分厚い暗闇の中にいた

 

「く、暗い……何も見る事が出来ない……」

 

 呼吸でさえ困難になるかのような重苦しくねばつくようや暗闇を前に慎吾は本能的に思わず呻き、顔をしかめる。もし、僅かでも光があるのならば慎吾の顔が青ざめ、脂汗が浮かぶのが見えていただろう

 

「この闇を照らしてくれる一筋の……そうせめて一筋の希望のような光があれば……!」

 

 心が押し潰してしまうかような周囲の闇に立ち向かい精一杯抗うかのように慎吾がそう呟いた瞬間。

 

 慎吾の声に答えるように幾重の闇を力強く切り裂きながら目映い光が慎吾の眼前に姿を表した

 

「……っ!? こ、れは……」

 

 慎吾はその光を太陽、もしくはそれに匹敵するような強い電気の光と思ったがすぐにそれが違う事に気が付いた。その光はここ最近の慎吾にとって最もと言って良いほどに身近にある光だったのだ

 

「ゾフィーの放つ……光……? うっ……!」

 

 慎吾がそう呟いた瞬間、光がいっそう激しく輝いて闇を打ち消した。その強い輝きに目を開くことが出来ず、慎吾は思わず目を閉じる

 

『慎吾……』

 

 と、少しの時間が過ぎ、慎吾が瞼の裏から光が収まって行くのを確認して目を開こうとした瞬間、何物かが慎吾に語りかけてきた

 

「君は…………」

 

 目の前から聞こえてくる中性的で、どこか懐かしい気持ちがするその声に反応して慎吾が目を開く

 

『聞こえているか慎吾……』

 

 慎吾が目を開くと、いつの間にか目の前には暖かい光を全身から放つ何者かが立っていた。光に包まれているせいかその全体像は水中で物を見ているるのように歪んでぼやけ、人形で慎吾とそう変わらない背格好と言うこと、そして胸で青く輝く水晶くらいしかはっきりと分かる物は無い

 

『私達の仲間が今、危機に晒されている。共に戦い、仲間達を救いだそう……!』

 

「…………!」

 

 ここが何処なのか? 目の前にいる者の正体は?

 

 ここに来てから慎吾の脳裏に浮かぶ疑問は数え切れないが、『仲間が危機に晒されている』目の前の人物から告げられたその情報だけで慎吾が決断するには十分だった。それに、目の前にいる人物が何物なのかは先程の言葉でもう検討が付いていた

 

「あぁ、共に戦おう……ゾフィー!」

 

 慎吾が力強くそう答えた瞬間、目の前の人物は頷き。世界は赤く、水に浮かぶ波紋のようなエネルギーに包まれる

 

 それはまさに慎吾がゾフィーを展開する時にいつも見ている光景そのものであった

 

 

 

「行ったか……」

 

 流星のような勢いで水平線の向こう側へと一直線に空を飛んでいく赤い光、それに続く白い光を見ながら一仕事を終えた芹沢光は浜辺に無造作に放置してあった簡易椅子に腰かけたまま小さくため息をついた

 

「あれほど痛めつけられた状況の中で更に進化して自らの力で第二形態を取得するとは……慎吾はますます強くなっていくな……」

 

 親友の成長を目の当たりにした光は心底満足そうに呟き、目で追っていた二つの流星が完全に水平線の彼方へと消えたのを確認するとゆっくりと立ち上がり、戻ってくる慎吾達を出迎える準備をすべく旅館へと戻っていった 




 こっそりヒカリ登場、そしてゾフィーの第二形態発動です!名前や能力は次回にて

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