二人目の男子はIS学園No.1(最強とは言ってない)   作:塩ようかん

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 今回から、しばしオリジナルエピソードを公開していきます。そして……かねてより『出す』と言っていたある人物がついに今回、登場します


53話 歪む空間、ゾフィーに迫る危機

「なるほど、急にナターシャさんが来たのは、そんな事があったからですか……慎吾さん強盗に巻き込まれた上にそんな目にあうなんて大変でしたね……」

 

 アリーナで日課の訓練の半分を終え、慎吾と一夏は互いにISを展開させたままま小休憩し、お互いにあった出来事を報告するように軽く雑談をしていた

 

「ナターシャさんはISについては非常に参考になるアドバイスをしてくれて助かるのだが……流石に私も、その見返りに執事の格好をして一時間近く撮られ続ける事は困ってしまうのだがな……」

 

 そう慎吾は、非常に有益かつ理解しやすいナターシャからのアドバイスの言葉と、白い執事服を着用した自分に細かいポーズ指示や表情の注文まで出され、ほぼナターシャ主催の撮影会と化していた一時間の出来事を思い出し、仮面の下でややんなりとした苦笑を浮かべた

 

「しかし、過ぎた事を悩んでいて仕方がない……。よし、ここで小休憩は終わり。早速、今から一本の模擬戦は出来るか一夏!?」

 

 と、そこで慎吾は沈みぎみだった自身の心を振り払うように全身に通るような張りのある声でそう言うと、休憩の終わりを告げるのと同時に一夏に尋ねた

 

「えぇ慎吾さん、俺はいつでも!」

 

 そんな慎吾の声に答えるように一夏も力強く慎吾に返事を返すと、その手に持った雪片を構える

 

「うむ、いい返事だ……」

 

 一夏が戦う模擬戦を行う意志を見せ構えるのを見届けると、慎吾もスッとゾフィーの両手で一夏の素早い斬撃を捉える為、前傾よりの構えを作り始めた

 

「よし、それでは……!」

 

「行きますよ……!」

 

 一夏と慎吾は互いに相手の準備が出来た事を確認すると、全く同じタイミング地面を蹴って相手へと向かって一直線に走り出し、一夏の白式の放つ斬撃と慎吾のゾフィーの蹴りがぶつかろうとした時だった

 

 

 突如、全くの前触れもなく二人の周囲の空間がぐにゃりと大きく歪んだ

 

 

「!?」

 

「なっ……!?」

 

 目の前で起きた信じがたい出来事に、二人は思わず攻撃の手を止め、周囲の様子を見渡した

 

「な、何なんだこりゃあ……」

 

 例えるのらならば揺らめく炎に物が照らされて壁に映し出された影絵のように、錯覚などでは決して説明が出来ない程に奇っ怪に歪み、ねじれていく周囲の光景を呆然とした様子で見ながら一夏が呟く

 

「通信機器が上手く働かない……? そんな馬鹿な……!?」

 

 慎吾はそんな奇妙な現象を報告すべく、千冬、あるいはIS学園教師陣に連絡を取ろうと試みたのだが何故か上手く通信を繋ぐことが出来ず、枯れそうなノイズ音しか響いてこない

 

「まさか、この現象の影響だと言うのか……?」

 

 続く異様な事態に慎吾は額から汗を滲ませながら、何とか外と連絡を取ろうと無駄とは思いながらも調整をしつつ再び通信を試みる

 

「し、慎吾さんあれ……」

 

 と、その時とき歪むアリーナを見渡し、あるものを見つけた一夏が驚愕で声を震わせながら一点を指差した

 

「なんだあれは……」

 

 そして、一夏に言われるがまま指差す先を見つめた慎吾もその異様な『物』に思わず言葉を詰まらせた

 

 

 それがあったのは歪みに包まれたアリーナの中央、そこからやや東へと逸れた方向。そこに、いつのまにか1m程はある、怪しく不気味に光ともに波打つようなエネルギーの波を放つ、一つの光球が出現していた

のだ。

 

 そして、アリーナを包む歪みは、どうもこの光珠から発射されて徐々に周囲へと広がっているようなのだ

 

「もしかして誰かの新しいISの装備? な、訳は無いよなぁ……」

 

 光球を怪訝な顔で見つめながら、さらに良く調べてみようと近付く

 

「待て、私が前に出て光球を調べよう。私もいつでもM87を放てるようにしているが、一夏も万が一の為に備えて零落白夜をいつでも使えるようにしておいてくれ」

 

 と、そんな一夏を遮るように手で制しながら慎吾が一夏の前へと出ながら、そう指示を出す

 

「で、でも慎吾さん……」

 

「何、一夏、君を見くびってるのではない。むしろその逆だ」

 

 何か思う所があるのか少し言葉を濁す一夏、慎吾はその肩を軽く叩くと励ますように言葉を続ける

 

「一夏の実力や才能を信じているからこそ私は全くの未知の物であろう、あれに対しても君に安心して背中を任せる事が出来る。目の前の事に集中出来るんだ。……どうだろう、改めてここは私に任せてはくれないか?」

 

 淀みなくそう語る慎吾の言葉を一夏は黙って聞くと

 

「分かりました、気を付けてくださいね慎吾さん」

 

 決意したかのようにそう言って後ろへと下がった

 

「……ありがとう一夏」

 

 慎吾はそう一言だけ一夏に礼を言うと、注意しながら珠の前に立ち、間違っても触れないように注意しながら改めて珠を良く調べ始めた

 

「……やはり周囲の空間が歪んでいるのはこいつの仕業か、しかし正体までは……」

 

 珠に近付いた事でゾフィーに搭載された高感度センサーの手助けもあって、慎吾はこの原因不明の空間の歪みを引き起こしてるのが間違いなく目の前の光珠だと言う事は読み取れた。が、しかしヒカリ達Mー78社の研究員達が死力を尽くして作り上げたゾフィーの力を持ってしても珠の正体が何なのか全く分かる事は無かった

 

「本当に何故、いきなりこんなものが学園のアリーナに現れんたんですかね……」

 

「私にもそれは分からん。しかし、このまま……」

 

 珠を不思議そうに見ながら尋ねてきた一夏の問いに慎吾が、そう答えようとした瞬間

 

「なにっ……!?」

 

 何の予兆も無く珠が突如、激しく光り輝き、その光がは矢のように真っ直ぐに飛ぶと珠の一番近くにいたゾフィーに襲い掛かり、その装甲に突き刺さった

 

「慎吾さん!?」

 

 その様子を見た一夏は咄嗟に零落白夜を発動させ、珠に向かって勢い良く踏み込みながら必殺の一撃を放つべく構えた

 

「くっ……M8じゅ……」

 

 そして、謎の光を受けて怯みながらも慎吾が自身の持つ最大の一撃を放とうとした瞬間。

 

 慎吾の視界は珠が放つ不気味な光一色に染まった

 

 

 

 ある世界、ある宇宙、ある恒星近く

 

「なに? 異次元空間が開かれたらしき空間の歪みが発見されただと?」

 

 パトロールを終え、帰還中だった一人の戦士は仲間達から送られてきたその報告に宇宙空間を飛行しながら驚いたような声を発した

 

「場所は……私が今いる場所から近い……気がかりだな」

 

 まだハッキリとは決まってはいない不確かな情報、しかしどうにも相手が『異次元空間』と言う事で戦士の心は、僅かにざわついていた

 

「パトロールの延長戦と考えて見に行ってみるか……」

 

 結果、戦士は帰投ルートから体を反らし、自らその報告のあった地点へと向かう事へと決めた

 

 戦士の名前はゾフィー

 

 宇宙の平和を守る光の国の宇宙警備隊の隊長であり、ウルトラ兄弟の長男であるゾフィーその人であった




 と、言うわけでオリジナルエピソードではご本人に登場して貰いました。ゾフィー隊長を慎吾とはまた違った風にかつ、格好良く、原作のイメージを崩さないように書くのが大変、気を使います……

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