二人目の男子はIS学園No.1(最強とは言ってない)   作:塩ようかん

54 / 177
 思ったより設定を練るのに苦労してしまいました……やはり、オリジナルとなると構成にいつも以上に気を使いますね


54話 二人の『ゾフィー』

「ここだな……報告があった場所は」

 

 あれから数分ほどでゾフィーは報告のあった場所。ゾフィーから見れば自身の握り拳程の大きさの小惑星が無数に漂う地帯へとたどり着いていた 

 

「見たところ、超獣や侵略者などが現れた形跡は無いようだが……うん?」

 

 そう言いながら気を抜かずに飛行ながらゾフィーが周囲の調査を続けていると、そこで隕石群の間に一つの生命反応を見つけた。とは言っても、反応からして怪獣等では決して無い。それを気掛かりに感じたゾフィーは反応のあった方向へと飛んで行き

 

 次の瞬間に生命反応を放っていた者の正体を理解し、そしてゾフィーはその生命体を良く知っていた。

 

 だからこそ、その生命体が母星からは数百光年以上離れた生物もいない小惑星以外に何も無いこの場所にいる事に、自分が生命体の母星に訪れた時も、兄弟や部下達からの報告でも一度も見たことが無いようなその生命体の姿に驚きを隠す事が出来なかった。

 

「馬鹿な……彼は地球の人間なのか!?」

 

 ゾフィーはそっと巨大な手の中で包み込むようにして保護した一人の人間を見ながら、思わずそう声に出していた。それは全身に甲冑のような装備を身に纏っていたが、ゾフィーが傷付けないよう慎重に調べて見れば甲冑の下にあるのは間違いなく一人の人間、それも少年であった。少年は意識は失っているようだが心臓はしっかりと動き、甲冑状の装備が酸素を確保しているのか呼吸も安定してる。しかも周囲に彼の装備以外に彼が乗ってきたと思われるような人工物が一切確認出来ない。

 

 それだけでも十分に驚くべき自体ではあったが、ゾフィーを一番驚愕させたのは彼の甲冑のような装備のその姿であった

 

「似ている……なぜ、彼の装備はここまで私に似ているんだ……?」

 

 改めて手の中で保護している少年の姿、そして自身の姿を確認してゾフィーは驚きに満ちた様子で呟く

 

 

 そう、ゾフィーが保護した少年の甲冑状の装備は偶然では決して無いと断言出来るまでにゾフィー自身に酷似していたのだ。

 

 シルバー族特有の銀と赤の体色も目の形や色、カラータイマーもゾフィーと鏡に映したかのように同じで。スターマークまでもがしっかりと甲冑には刻まれていた。二人の違いと言えば単純な体の大きさと、少年の甲冑がやはりゾフィー自身と比べるとやや機械的な所くらいか

 

「ともかく、彼をこんな場所に置いていく訳には行かない。出来れば地球に送り届けたいのだが……」

 

 それはゾフィーの心からの想いではあったが、何分パトロール後にこの場に駆け付けた為にゾフィーに残されたエネルギーは万全とは言えなかった。更に、この辺りから得れる光エネルギーも決して十分では無く、ゾフィーが地球に少年を地球に送り届けるようなエネルギーを得れるとは思えなかった

 

「……ここは一旦、光の国へと戻って彼の治療をしてみよう。それに、私自身も彼に聞いてみたい事がある」

 

 一瞬の思考の後、そう判断するとゾフィーは少年をそっと手の中で守りながら光の国へと向かって飛び立っていった

 

『おのれ……よもや、この段階でウルトラ兄弟、それもゾフィーに嗅ぎ付けられてしまうとは……』

 

 そんなゾフィーの様子を姿を隠し、忌々しげに観察している者がいたのだが少年の保護に集中していたゾフィーは気付く事が出来なかった

 

 

 

「う、うん……ここは……?」

 

 降り注ぐ柔らかな光を感じとり、慎吾は緩やかに意識を覚醒させ、目を開いた

 

 アリーナに出現し、周囲の空間を歪めた元凶らしき不気味な光珠をどうにか破壊せんとM87を光珠目掛けて放ったが、光珠が放つ光にM87ごと飲み込まれて意識を失った。自分がどれ程の時間気絶したかは分からないが、それだけはしっかりと覚えている

 

「ゾフィーは……待機形態か。しかし、ここは……」

 

 仰向けの情態で寝たままISスーツ姿の慎吾は首だけを動かして、まずは不調が無いか自身の体を確かめると、続いてゆっくりと自身の周囲を観察し始めた

 

「いったいここは……どこだ?」

 

 慎吾が寝かされていたのは金属製のベッド、その周りにはベッドを包み込むように小さな半透明に透き通ったドームが被せられていたが、慎吾はそれに息苦しさをまるで感じる事は無く、逆にどこか心が落ち着くような快適な空気がドーム内には静かに流れ循環していた。

 

「いや……そもそも、ここは地球であるのだろうか?」

 

 そんな半透明ドームの向こうに見える景色にあった機器類は、あらゆる箇所で最新技術が惜しみ無く使われているIS学園でも、日々新しい物を開発してるMー78社の研究所でも慎吾が『全く似た形の物すら見たことが無い』と言えるような未知の物ばかりが立ち並んでおり、とてもそれが慎吾には地球上の光景と思うことが出来ず、気付けばその想いを口に出していた

 

「おお、意識を取り戻したようだな」

 

 と、その時、慎吾に『妙に聞き覚えのある声』で何者かがそう話しかけ、慎吾はハッとして声の主の方角に目掛けて再び首を動かして視線を向け

 

「なっ……!?」

 

 思わず絶句した

 

「すまない……この姿では、逆に君を驚かせてしまったようだな」

 

 そう慎吾に申し訳なさそうに謝罪する一人の男性。その顔は慎吾より年を重ね、より大人の顔付きに変化している事だけが、逆に言えばそれ以外の体格から髪の色、筋肉の付き方までのその全てが男性は丸写しと言えるレベルで酷似したのだ

 

「あ、あなたは……ここは……?」

 

 次々と起こる未知の出来事に激しく混乱する頭の中で慎吾はどうにか思考を纏め、そう男性に問いかける

 

「私は『ゾフィー』ここは……『光の国』。M78星雲、ウルトラ星の光の国」

 

「M78星雲……」

 

 男性、どういう訳か自身のISと同じ名のゾフィーの言葉を復唱するように慎吾は呟いた。

 

 地球でM78と呼ばれる星があるのは慎吾も知っていた。が、慎吾の記憶が正しければM78は地球での観測の結果、生物の住まない星であり、とてもこんな超高度な文明があるとは思えなかった

 

「君から少し話を聞きたいのだが……構わないか?」

 

 自身にそう穏やかに問いかけるゾフィーの声を聞きながら、慎吾は自身がたった今、想像も出来ないような状況に立たされている事を確信した




 ゾフィーの様子をうかがっていたのは……もちろん、異次元のアイツです。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。