二人目の男子はIS学園No.1(最強とは言ってない) 作:塩ようかん
「なるほど……どうやら君……いや、慎吾は別の世界から私達の世界へと来てしまったようだな」
慎吾の話、『慎吾が暮らしていた地球』やISについての説明を含めた話を全て聞き終えると、『ゾフィー』は腕を組み、そう静かに呟いた
「平行世界の話などフィクションでしか見たことはありませんし、普通ならとても信じがたい話ですが……今の現状をそうでもしないと全く説明出来ない事を考えれば、どうやら間違い無いようですね」
『ゾフィー』の言葉に同意して頷くと、慎吾は改めて『ゾフィー』から説明を受けても大まかにしかその機能が理解出来ない不思議な機械達、そして暖かく目映い光が照らす上空を見上げた。
『ゾフィー』の話によれば、慎吾が寝ているこの場所は空港。そこに設置された応急治療室のような場所であり、この星に暮らす、先ほど慎吾に本来の姿を見せた『ゾフィー』のような住人以外には少し強すぎる光に満ちた光の国で、慎吾のような地球人が過ごせる場所らしい。
「……ですが、実に奇妙ですが私にも分かることが一つあります」
と、そこで慎吾はただ一つ、一つだけ『ゾフィー』の話を聞いて密かに確信と言って良いほどに察していた事を『ゾフィー』に語る
「うむ……こんな状況ながら私もだ。恐らくは、それは慎吾と同じ事だろう」
その慎吾の言葉に『ゾフィー』もまた確信を持った様子で返事を返し、二人は互いに呼応するように静かに同時に口を開く
「慎吾、君は……君の世界の……」
「そう言う『ゾフィー』あなたは……この世界の……」
そして、次の瞬間
「「私」」
「……なんだな?」
「……なのですね?」
二人は全く同じ表情、同じタイミング、同じ音程、同じ語調でそう相手に殆ど同じ言葉を言ってみせた
「ははは……ここまで私達が酷似しているのならば、言うまでも無く、そのようだ」
「ふふ……そのようですね。最も、私は荒唐無稽過ぎて直感では解っても、脳での理解が追い付かないですが」
慎吾にも、その何千倍以上の時間を生きた『ゾフィー』でさえも体験した事が無いような余りにも奇妙な状況に、二人は気付けば再び完全に同時のタイミングと互いを映す鏡のように同じ表情で苦笑いを浮かべていた。その姿は一卵性双生児の兄弟以上に似ており、ある意味で歪にも感じられた
「と、……このまま二人で悩んでだけいても仕方あるまい。慎吾が元の世界に帰る為の方法を探さなくてはならないな」
と、そこで『ゾフィー』はふと苦笑いを止め、真剣な表情でそう慎吾に言う
「そうですね……何か手がかりはありますか?」
言うまでも無く『ゾフィー』と全く同じタイミングで苦笑いを中断していた慎吾は、この世界で暮らしている『ゾフィー』ならば何か帰還に役立つ事を知っているのではないかと期待を込めて尋ねた
「うむ慎吾、君の話が正しいのならば君が君のいた世界で目撃したと言う光珠は『異次元空間』へと繋がる入り口に違いない。そして君はその異次元空間を経由してこの世界へと来てしまったようだな」
「異次元空間……?」
難しそうな顔をしながらそう語る『ゾフィー』に、慎吾は若干オウム返しをするように聞き返す
「あぁ、そうだ。そして私は異次元空間をそのように奇妙に操り、支配する事が出来るような者に心当たりがある。が」
そこで『ゾフィー』は言葉を止め、僅かに緊張したかのような表情をしてみせた
「……私達と彼等は真っ向から敵対している。それどころか彼等は私達を滅ぼさんと根強い悪意を持って幾度と無くあらゆる方法で私達に挑みかかって来たのだ」
「では、今回の一件は……」
そこで慎吾も状況を理解し、ハッとした表情でそう呟き、『ゾフィー』はそれに無言で頷いた
「そうだ、彼等『異次元人ヤプール』が私達、光の国の戦士達を滅ぼす為に、打ち立てた何らかの策略があったのだろう。それに、慎吾は偶然か計画のうちかはまだ解らないが、巻き込まれてしまった……」
そこまで言うと『ゾフィー』は慎吾に向かって申し訳なさそうな顔をしてみせた
「すまない、どうやら半ば、私達のせいで君をこんな目にあわせてしまったようだな……」
そう言うと『ゾフィー』は慎吾に軽く頭を下げて謝罪した
「そんな……気にしないでください『ゾフィー』。話を聞くに今回の出来事はあなた達にも予想していなかった事なのですね?」
そんな『ゾフィー』を見て慎吾は慌てて腰掛けていたベッドから立ち上がって止めると、確認するかのように落ち着いた様子で言葉を続ける
「ならば起きてしまった事はもはや今、後悔しても仕方がありません。今は問題の解決に集中しましょう」
「すまないな慎吾……」
慎吾の言葉で『ゾフィー』も若干は励まされたようで、少々力無くはあるが、そう言いながら慎吾に笑顔を返した
「それと『ゾフィー』……身勝手な事だと思いますが巻き込まれた以上、私自身もこの事件解決に向けて動かせてはくれませんか? このまま何もせずにただ帰るのを待っているのは私は、嫌なんです」
「…………」
続けて放たれた慎吾の言葉を『ゾフィー』は真剣な表情で聞くと、一瞬、沈黙し
「普段の私なら『若い君をそんな危険な目に合わせるなど、とんでもない』と断っていただろうが……慎吾が私であるとなると、ここで私が断っても無理に動こうとするだろう?」
どこか悟ったかのような笑顔でそう言うと、慎吾に向かって手を差し出した
「ならば共に行こう慎吾。……ただし、どんな危険があるかは分からないぞ?」
「ふふ、軽々しく大丈夫とは言いませんが危険な目には元の世界で、ある程度慣れてますよ……」
『ゾフィー』の手を握り返してそう答える慎吾
今、まさにここに互いに生まれた世界は違うなれど、『自分同士』であると言う臨時ながら奇妙なコンビが生まれようとしていた