二人目の男子はIS学園No.1(最強とは言ってない) 作:塩ようかん
「くっ……とりゃぁぁ!!」
ゾフィーに向かって両手を突き出し、ミサイルを放つベロクロン。そのミサイルをゾフィーのスラッシュ光線で打ち砕き、そのおまけとばかりにもう一発を隙を見て慎吾はベロクロンの頭部に向けて放ち、ミサイルの爆風を突き破りながらスラッシュ光線は見事ベロクロンの眉間に命中して爆発し、煙が上がった
「これで……どうだ?」
追撃の準備をしつつ、煙に包まれるベロクロンの頭部を伺ってスラッシュ光線の一撃がどれほどのダメージを与えたのか慎吾は様子をうかがう
「うわっ……!!」
その瞬間、ベロクロンの口からゾフィー目掛けて真っ赤に燃える火炎が発射され、慎吾は咄嗟に右に旋回する事でその一撃を避けた
「ミサイルだけでは無く、火炎までもか……他にも何かあると見ても良い見ていいだろうな」
ゾフィーのセンサーで関知したベロクロンの吐いた火炎の信じがたいような温度に冷や汗を流しつつ慎吾はそう呟く。コンバータを装着している故にシールドエネルギーには大分余裕があるとは言え、あれをまともに受けてしまえばゾフィーでもただではすまないだろう。
こちらの攻撃に対する動きや攻撃パターンを分析しながら戦う。ベロクロンはどうやら、そんな長々と余裕を持った戦い方が出来るような相手では無いらしい
嫌らしい程に追尾性能が優れたミサイルを次々と発射していくベロクロン。そのミサイルをスラッシュ光線、あるいは瞬時加速をつかって擦れ違い様に破壊してやり過ごしながら慎吾は今の現状を分析して、そう判断していた
「(ならば多少の危険は承知で短期決戦に持ち込むべきか……)」
再びミサイル攻撃の隙を見てベロクロンにZ光線を命中させながら慎吾がそう考えた時だった。
Z光線が直撃して怯んだかに見えたベロクロンが突如、弾かれたように動いてゾフィーに腕を前に突きだし、再びミサイルが発射されると警戒した慎吾は咄嗟に後退しつつミサイルを撃破するべく身構える
と、その瞬間、ベロクロンが真っ赤な瞳でゾフィーを見ると、巨大な口角を吊り上げて不気味にニヤリと笑う。少なくとも慎吾にはそう見えていた、ベロクロンその顔を見るのと同時に言葉に出来ないような凄まじく嫌な予感を慎吾は感じ取っていたのだ
「なっ……!?」
そして、直感を信じて慎吾が動くより早く、ベロクロンの両腕からは白熱したリング状の光線が発射され、ゾフィーに命中すると光線はたちまち一つの巨大な鎖のように絡み付くとゾフィーを拘束してしまった
「しまった! 奴には拘束技までもが……!」
自身の直感を一瞬だけ疑って動かなかった事を後悔しつつ、両腕に力を込め、ゾフィーの持つ最大限の力で何とか絡み付く鎖を打ち砕かんと奮闘する。が、鎖は力に押されて軋みこそするものの砕けず、更に絡み付いた鎖の影響かゾフィーをその場から少しも動かす事が出来ずに、結果、慎吾はベロクロンの眼前にして狙ってくれと言わんばかりの大きな隙を見せてしまい、勿論ベロクロンがそれを見逃すはずも無かった
「…………っ!!」
瞬間、今まで回避され続けられた上に反撃されていた鬱憤をぶつけるかのようにベロクロンから複数のミサイルがゾフィーに次々と向けて発射されると爆発し、もがくゾフィーの姿はあっと言う間にミサイルの爆炎に飲み込まれてゆき、その衝撃と破壊力は切羽詰まった様子で放たれた慎吾の声をもかき消してしまう。それを見てトドメとばかりに更に口を広げ、ベロクロンは口内からミサイルを発射し、余りにも激しい爆発でもはやゾフィーの姿は完全に炎に飲み込まれてしまった
それを見て、疑う余地も無く完全に撃破したとベロクロンは確信し、自身も未だ異次元空間で行われているであろう戦いに参戦しようと背中を向けた瞬間
炎を突き破り、ベロクロンに向けて一直線に放たれた青白い光線、M87光線がベロクロンの頭部を吹き飛ばし、ベロクロンは膝を付いて倒れると息絶えた。
「はぁ……はぁ……」
ベロクロンが倒れるのと同時に炎が霧のごとく晴れてゆき、そこからM87発射の構えのままのゾフィー、それもその第二形態となる太い四肢と全身から放たれる赤いエネルギーが特徴的な『スピリットゾフィー』が姿を現した
「ま、まさに紙一重か……ぐっ……」
息を切らし、疲労困憊の体で慎吾はそう呟いた
ベロクロンからのミサイルが迫った瞬間にリスク覚悟でゾフィースピリットへと変わり、大きく強化した力で鎖を破壊。そこから息も付く暇もなくゾフィースピリットの力で再現された高速切換で次々とスラッシュ光線とウルトラスラッシュでミサイルを破壊、迫る爆炎と衝撃を回転によるウルトラバリアーで防御。ベロクロンがトドメがわりに使ったミサイルは同じく、再現されたAICで寸前で防ぎ、そして最後に油断したベロクロン目掛けて相手が『人間』では無い為に一切の手心を加えないM87を放ち、どうにか撃破したのであった
「いくらなんでも少し、酷使し過ぎたか……私も、ゾフィーも……」
当然、そこまでの事をしておいて全くの無事の筈が無い。ミサイルの持つエネルギーを完全に消し去る事は出来ずゾフィーのシールドエネルギーはコンバータを駆使した今でも半分程くらいしか残っておらず、装甲にも直ぐには機能には差し支えは無いが見て分かるような傷が付いた。連続して強力な出力の光線を放ち続けたゾフィーの両腕はオーバーヒートを起こし、暫くは何も撃つ事が出来ないだろう
「『ゾフィー』の事が心配だが……私がこれでは……」
ゾフィーをエネルギー消費が激しいゾフィースピリットから通常形態に戻しつつ、遠くで未だに開いてる異次元空間の入り口を慎吾が『ゾフィー』を心配してそう呟いた時だった
突如、異次元空間の入り口から宇宙にそびえる柱の如く太く、それに並ぶように強く輝く青白い光が勢いよく飛び出した
「あれは……!?」
それが何であるか、軽く見ただけで自身の物とは威力が桁違いではあるが、一目見ただけで慎吾はその正体を確信した
それが、この世界の『ゾフィー』の放つ自身と同じ名を持つ一撃必殺の技、M87光線なのだと
慎吾、初の単独での勝利!(相手がISとは言ってない)