二人目の男子はIS学園No.1(最強とは言ってない)   作:塩ようかん

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 あけましておめでとうございます
 2015年までには間に合いませんでしたが、こうして元旦に更新させていただきました。良ければ今年もこの作品をよろしくお願いいたします


62話 拮抗を崩すのは

 慎吾と光が二人で話しているうちに時間はあっという間に過ぎて試合を約束していた時間となり、二人は共に第三アリーナのBピットに並んで立っていた

 

「いよいよ……だなヒカリよ」

 

「あぁ……待ちに待った、いよいよだ……」

 

 慎吾の呟きに光は静かにそう一言だけ返すと、一歩

歩いてピットゲートへと進んだ

 

「『ヒカリ』……! 行くぞ……」

 

 ゲートの入り口が開いてくのを確認すると光は右腕にブレスレットの姿で待機していた『ヒカリ』に合図をするかのように掛け声をかけると展開させ、光の体は雷光のような蒼くとエメラルドのような緑、二つの鋭い閃光に包まれ、光が収まった瞬間には『ヒカリ』展開は既に終わっていた

 

「なるほど……それがIS『ヒカリ』か……」

 

 その姿は、全身装甲で基本の状態では武器を持たず、銀をメインカラーにしていると言う点ではゾフィーに酷似していたが、銀を下地に赤のラインが走るゾフィーとは異なり、銀のベースの装甲に入るラインは蒼。さらに仮面の上で光輝やく目や胸にあるカラータイマーは見当たらず、変わりのように鮮やかに輝くのは右腕に装着されたブレスレット状のヒカリの専用武装『ナイトブレス』。目元や胸などの上半身を中心として全身を包む装甲は見るからにゾフィーより遥かに堅牢で頑丈に作られており。それは、まさしく蒼の鎧を纏った騎士のような美しい姿であり、慎吾は思わず感嘆の声を出した

 

「さてと……行ってくるぞ慎吾」

 

 光はちらりと慎吾を見て、ふっと力を抜いた様子でそう言うとピットから勢い良く飛び出し、自身が熱望した戦いの相手たる箒が待つ、アリーナの中央に向けて飛び立っていった

 

「この戦い、しっかり見させて貰うぞ……光」

 

 去り行く『ヒカリ』の背中を見送ると、慎吾は静かに観客席へと向かって歩き出していった

 

 

「待たせたな……篠ノ之よ」

 

「芹沢……それがお前の……」

 

「あぁ……これが、これこそが俺の専用機の『ヒカリ』だ。なるほど……それがお前の専用機たる紅椿か。やはり、資料映像等では無く、この目で見ると受ける印象も異なる物だな……」

 

 アリーナの中央で対面した光と箒は互いに言葉を交わしていた。その間に漂うのは戦闘前故に今にもはち切れてしまいそうなまで張りつめた緊張感。そして相手への牽制への空気。気の弱いものが下手に触れてしまえざ箒と光が相手に向けて放つ闘気の凄まじさに圧倒され、恐怖のあまり動けなくなってしまいそうな空気の中特に動じた様子も無く、箒の紅椿を観察しながら光はそう箒の質問に答えつつ呟いた

 

「さて……俺から話しておいて何だが、勝負の前にこれ以上の話は無用。そろそろ初めても構わないか?」

 

 と、そこで光は話を中断し、静かに構えを作りながら箒にそう尋ねる

 

「………………」

 

 それに箒は言葉で答える事は無く、無言で剣を構えて返答した

 

「そうか……ならば行くぞ篠ノ之……!」

 

 それを確認すると光は、腕のナイトブレスから白熱して輝く光剣、ナイトビームブレードを伸ばすように出現させると箒に合わせるように静かに構える

 

 そして次の瞬間、互いの残像が残るほどの超高速で紅と蒼、二つの閃光が互いを狩るべく激しく激突を始めた

 

 

「す、すげえ……箒も……芹沢さんも……」

 

 火花が激しく飛び散り、互いに恐ろしい程の速度で攻撃、回避、防御を不規則に繰り返し、相手に紙一枚での隙を見つければ即座に一刀両断せんと鋭さと破壊力を合わせ持った斬撃を放つような凄まじい試合を見ていた一夏は思わず自然と心に想った事、恐らくは観客席にいる殆ど全員が思っている事を呟いていた

 

「光の奴、最近は見る事が無かったが剣の腕を一味、いや……更にそれ以上と言うべきまでに上げたようだな」

 

 その一夏のすぐ近くに座り、光の動きから殆ど目を話さ無いように見守るように見ていた慎吾が感想を漏らす

 

「うん、『剣道』とやらはまだ良く分からないが、おにーちゃんの友達の、あの芹沢が優れた戦士だと言うことは、この場で見ているだけで良く理解出来るな」

 

 慎吾の右隣に腰かけたラウラも慎吾の意見に同調するように頷き、非常に興味深そうに瞬きさえも殆どせずに二人の試合を見ていた

 

「……!! 皆さん、どうやら試合が動き出そうですわよ……!」

 

 と、そこで嵐のような激しさで攻防一体の戦闘を繰り広げている二人の試合を、皆と同じく集中して見ていたセシリアが何かに気付いて、声を上げる

 

「あれって……!」

 

 その声に反応して、鈴が改めて試合の様子を凝視した瞬間、光を突き飛ばして距離を取った箒が構えた雨月で必殺の一撃を放とうとしていた

 

 

 話は少し前に遡る

 

「(ぐっ……な、なんと言う太刀筋と速さだ……!!)」

 

 試合開始の激突から全神経を目の前で次々と斬撃を放ってくる蒼い装甲のIS、ヒカリに集中しつつ箒は内心でその強さに舌を巻かされていた

 

 今の所、勝負は互いに刃が相手の装甲を掠めるのみで決定的一撃のない互角の形を取っているものの二人に差は殆ど無く、いつそのバランスが崩れるのかは箒にも……そして恐らくは光にも全く分からないのだろう

 

「(この決定打の無い降着状態をいつまでも続けているのは危険だ。では、これを打ち崩すような奴と私の差と言えば……)」

 

 焼き切れてしまいそうな程に神経を集中させて剣を振るいつつ、箒は試合を観察して降着を打ち破る策を練る

 

「ふんっ……!」

 

 と、その瞬間に光が箒の一撃を身を逸らしてかいひし、同時に白熱したナイトビームブレードを紅椿へと目掛けて放ち、右上から鋭い斬撃が箒へと迫る

 

「(やはり、これしか無い……!)」

 

 それを見た瞬間に箒は覚悟を決めて、被弾を覚悟の上で雨月の刀身でそれを受け止めると持てる力を全て込めてヒカリを突き飛ばした

 

「……!?」

 

 流石に想定していなかったのか、突き飛ばされた光は素早く空中で体制を整えようとしながらも一瞬、ほんの紙一重、反応が遅れた

 

「今だ……っ!!」

 

 それを確認した箒は素早く雨月を構えて必殺の一撃を放つ

 

 そして、アリーナに一つの爆発が巻き起こった


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