二人目の男子はIS学園No.1(最強とは言ってない)   作:塩ようかん

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 やや危ない所でしたが何とか更新です。


63話 断ち切れた拮抗、見守る二人

「これは……勝負が決まった……っ!?」

 

 箒の雨月での一撃が放たれた瞬間、どこか確信じみた様子でシャルロットが口にする。

 

 確かに、ヒカリの一瞬の隙を付いて放たれたその一撃は打突と共に放たれるエネルギーの刃でたちどころにシールドエネルギーを急激に減らして、その底を着かせただろう

 

「いや…………」

 

 緊迫した膠着が続く試合が動いた事で観客席がにわかに騒がしくなってゆく中、慎吾は落ち着き払った様子でそう呟く

 

 そう、光が『ただの剣道経験のある科学者で』そしてIS ヒカリが『ただの近接戦型のISならば』、決着は付いていただろう

 

「試合はまだまだこれからだ……!」

 

 

 慎吾が確信を持って呟いたのと同時に、光は自身に迫るエネルギー刃を見ても全く慌てた様子は無く、まるで箒の動きを予め予測していたかのようにナイトビームブレードをナイトブレスに引っ込めると、勢いよく背後に後退しながらヒカリの右腕のナイトブレスを天の神に捧げるように上空へと向ける。と、それに呼応するようにナイトブレスから青い稲妻のようなエネルギー光が覗き、光はそれを一瞬だけ見ると右腕を下ろしてそっとナイトブレスに手を添える。そして、エネルギー刃の先端が今にもヒカリに触れそうになった瞬間

 

 

 十字に組んだヒカリの手から虹色の光線、ナイトシュートが勢い良く放たれた

 

 

『っ!?』

 

 観客席が驚愕に包まれた瞬間、一直線に箒に向かって放たれたナイトシュートはエネルギー刃を突き破り、打突を中断して回避をしようとした紅椿へと目掛けてそのまま吸い込まれるように命中し、次の瞬間爆発を起こした

 

 

 

 

「ぐっ……うぁっ……!」

 

 痛みと衝撃を堪えてどうにか体勢を維持しながら、箒は苦し気にうめく、迫るナイトシュートの速さを見て、回避を諦めて咄嗟に防御した事で直撃こそは避けれたもののその破壊力は流石に慎吾のゾフィーが放つM87には劣っているものの脅威的としか言いようが無く、事実、紅椿のシールドエネルギーはナイトシュートの一撃で大きく減らされていた

 

「(こ、事を早く仕掛けすぎた……っ!)」

 

 光と実際に剣を交えた事で僅かに生まれてしまった焦り、もしくは緊張感からか数秒前の自分が選んでしまった失策を箒は後悔し、内心でそう叫んだ

 

「はぁっ!」

 

「うっ……!」

 

 と、その瞬間、再びナイトブレスからナイトビームブレードを伸ばしたヒカリが瞬時加速を要いて一気に紅椿へと迫るのと同時に斬撃を放ち、それを箒は危ういタイミングで咄嗟に雨月で受け止める。が、ガードの出が遅かったのと光の斬撃の勢いが箒の予想を越えていた事もあって、箒はその場から押されて強制的に後退してしまった

 

「(不味い……早く立て直さなくては……っ!)」

 

 後退した箒目掛けて、その隙を逃がさないとばかり更に踏み込んで激しく攻撃を放ってくる光に、箒はこののまま不利な状況にはされないと、対抗するように自身もまた苛烈に剣を振るい、防御にも気を配りなからもヒカリに向かって反撃を開始した。が、荒波に打たれた岩が波で少しずつ削られてゆくように、徐々に反撃に移ったはずの箒が光の猛攻に押されて攻撃する余裕が無くなり、いつの間にか防御中心となって後ろへ後ろへと押し込まれてゆく

 

 

 そして

 

「はぁっ……!」

 

 光の攻撃に生じた僅かな隙を狙い、箒が咄嗟に咄嗟に大振り気味な右払いの一撃を放つ。

 

 だが、それが第二の過ちだった

 

 その軌道を読んでいた光は放たれたその一撃を前進しながら踊るように空中で身を反らして回避し、一気に箒の懐へと飛び込んで行く。

 

「し、しまっ……!」

 

 気づいた箒が慌てて剣を戻そうとするが、それは光の反応速度を相手にしては僅かに遅すぎた

 

「たぁっ!」

 

 箒の懐に飛び込みながら光が放ったのは隙が少なく、かつ鋭い居合い切りのようなナイトビームブレードでの横一閃。その一撃は紅椿の装甲を紙のように軽々と切り裂いた

 

「うわぁっ……!」

 

 ヒカリの一閃で急激で急激にシールドエネルギーは減少し、紅椿はナイトビームブレードで斬られた装甲から火花をあげ、翼を失った鳥のようにアリーナの大地へと崩れ落ちていった

 

 

「あの一撃を元に……何と言う奴だ」

 

 一連の光の攻撃を見ていたラウラは珍しく心底、感嘆してそう呟く

 

「あぁ、あの相手に生じた僅かな隙も逃さないのがヒカリの恐ろしい所だラウラ。あれだけ戦闘に優れていて実力で技術にも天才的な物を秘めているとは全く凄まじいとしか言えない……私も、まだまだ鍛えなくてはな……」

 

 その意見を肯定するように慎吾はそう呟き、光に触発され少しだけ熱が込められた口調でそう呟く。

 

 観客席の内では篠ノ之博士特性の紅椿に勝るとも劣らないどころが、確かにリードを取っている光を称賛する声が徐々に大きくなり、光へと大きな視線が集まり始めていた

 

「………………」

 

 と、そんな中、一人、一夏は少し落ち着き無く体をそわそわと動かしながら心配そうに固唾を飲んで倒れた箒を見つめていた

 

「……箒が心配か? 一夏」

 

 それに真っ先に気が付いた慎吾は首を動かすと、そう優しく声をかける。慎吾の声に反応すると、一夏はゆっくりと顔を慎吾の方に向けた

 

「慎吾さん、俺……」

 

「とは言っても、私達はこの試合は箒とヒカリの戦いだ、それを私達が邪魔をしてはならない。それが箒の為でもある……」

 

 不安げな表情で呟く一夏に、慎吾は困ったような笑みを浮かべてそう言い

 

「だが……だからと言って決して、何も出来ない訳ではない。思い出すんだ一夏、以前に箒がお前にした事を。それも、お前も箒にすればいいんだ」

 

 直後にそう、一夏に間接的な形で助言した

 

「そうか……! ありがとうございます慎吾さん!」

 

 慎吾の言葉を受けると、一夏はすぐさま座席から立ち上がり行動へと移す

 

「さて、お前なら理解しているだろうが箒はそれで敗れるほど弱くはない。これからが勝負だぞ。ヒカリ……」

 

 それを見届けると慎吾はそう呟きながら、アリーナへと視線を移した




 今回の『ヒカリvs箒』。一応の予定としてはあと二話で決着を付けるつもりです。

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