二人目の男子はIS学園No.1(最強とは言ってない)   作:塩ようかん

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 今回で決着となりますが、この二人の勝敗を決めるのは大変悩まされました。それこそ直前までどちらが勝つか悩みましたが、一応、自分なりに決めさせて頂きました


65話 終わる激闘、握られた手

「……………………」

 

「……………………」

 

 箒と光は互いにそれぞれのIS、紅椿とヒカリ自慢の武装たる雨月とナイトビームブレードを構え、一定の距離を保って無言のまま向き合っていた。

 

 箒が絢爛舞踏を発動させてからの僅か数秒の激戦により互いのシールドエネルギー激減しは共に相手の一撃が当たれば即座に沈められる程度。ほんの僅かにでも無駄な行動は許されないような状態だ。

 

 だからこそ、二人は意識を究極と言えるレベルにまで集中させて、相手に決まり手となる一撃を与えるべく、この戦いに決着を付けるべくまるで武士同士の決闘のように互いに剣を構えて向き直っていたのだ

 

 

「………………」

 

 無言のまま光は音を立ててアリーナの大地を踏み締めながら、ゆっくりと横に移動する。試合開始からつい十秒程前にまでヒカリの全身を包む防御する鎧と同時わにヒカリ事態のエネルギーを増幅させる役割を兼ねていた『アーヴギア』と呼ばれる装備は既に先程の雨月の連撃で大破してしまいこの試合ではもはや使用不可能。更に胸のカラータイマーが赤く点滅してヒカリの残りエネルギーが枯渇しかかっている状態ではあったが光自身には全く動揺は見られず、ナイトビームブレードを深く構えて瞬きすらも忘れる程に箒に意識を向けていた

 

「………………」

 

 移動する光に合わせて脚を運び、油断無く雨月を構える箒の紅椿もまた、大地に倒れ伏した時よりはシールドエネルギーが回復こそしているが、それでも全身に渡ってナイトビームブレードが掠めた後やナイトシュート、ブレードショットが直撃した痕跡がはっきりと残り余裕などは決して残されていない事が目に見えて明らかになっていた

 

 そんな互いに一言も発しない、しかし二人から放たれる闘志とプレッシャーが激突して聞こえざる音が聞こえているような重い緊張感に満ちた時間が永遠のようにも続くかと思われた時だった

 

「……たああぁぁっっ!!」

 

「はぁあぁぁっ……!!」

 

 瞬間、その切っ掛けがどちらかが相手の隙を見つけたのか、あるいは何気なく吹いた一陣の風が切っ掛けなのか、ともかく二人は弾かれたような勢いで相手に向かって走り出し残された全ての力を解放せんとばかり力強く声を発すると、最も相手に接近した瞬間、互いに蒼と紅、それぞれの斬撃を繰り出した

 

『きゃあっ……!?』

 

 箒と光の斬撃のエネルギーが激突した瞬間、相手にぶつけても尚、余ったエネルギーは周囲で爆発と同時に周囲の土を巻き上げて二人の姿をかき消し、その余りに激しく、そして壮大な光景に思わずこの試合の司会を担当していたが二人の対決に飲まれてあまり話す事が出来なかった女子生徒は悲鳴を上げる

 

 そして爆風と土煙が収まった瞬間、アリーナに現れたのは

 

「ぐっ、うぅっ……」

 

「うわぁっ……くっ……」

 

 ともにISが解除され、アリーナの大地に力無く倒れて苦しげにうめく光と箒の姿だった

 

 

「えぇっ!? ちょっ……これ、まさか引き分け!? ここまで来て、そりゃちょっと無いでしょ……?」

 

 アリーナに広がる衝撃的な光景を見て、信じられないと言った様子で鈴がそう叫ぶ。

 

 確かに箒と光、二人の激しい剣撃が炸裂する序盤から始まり、劣勢と優勢が交錯し、互いに奥の手を見せても尚、互角の状況であったこの名勝負の終わりが『引き分け』で、終わるとは理解こそ出来るものの簡単には余り納得できる話では無い。想定外の決着に観客席に動揺の波紋が広がり始めた

 

「……待って! 映像での判定に入るみたい!」

 

 と、そこでアリーナ内の大型モニターには試合の様子を撮影し続けた映像が流れだし、映像にはまさに剣を構えた二人が交錯して互いに一閃を放つ瞬間のスローモーションと画面端に二人の残りエネルギーシールドの値が表示された、シャルロットの声を切っ掛けにモニターに観客席全員の視線が集まった

 

 一部分を切り取って拡大し、より見やすいように加工された映像の中でも二人の刃は同時に放たれ、同時に命中したかのように見えていた。が

 

「あっ…………!」

 

 流れる映像を更にスローにするとほんの僅か、薄紙一枚にも満たない程に僅かではあるが、片方の刃が先に命中し僅かに相手の装甲を切った直後、相手の斬撃を受けて倒れていた。それに気付いた一夏が小さく声を上げた瞬間、遅れてブザーと共に決着を告げるアナウンスが流れ

 

『試合終了、勝者芹沢光』

 

 光の勝利を告げるアナウンス音声と共に観客席は揺れるような歓声と拍手に包まれた

 

「やったな……光」

 

 その中で慎吾は席に腰掛けたまま小さくそう呟いて光に微笑みかけ、静かにその勝利を祝福するのであった

 

 

「……敗北か」

 

 流れる音声アナウンスにより、剣が交錯した時から感じていた小さな予感が現実へと変化した事を知った箒はアリーナの大地で小さく溜め息をつく。が、自身が敗北したと言うのに箒のその表情は落ち着いており、どこか安らかささえも感じられるような微笑みさえも浮かべていた

 

「だが、何故だろうな……ふふ、不思議と晴れやかな気分だ」

 

 事実、箒の心には当然ながら光に瀬戸際の攻防で敗北した悔しさはあったものの、それと同じくらい自分の持てる力の底まで全て出しきり、自分が戦う意味を改めて決意出来たこの試合をどうしようも無いくらいに満足していたのだ

 

「し、篠ノ之……」

 

 と、そんな箒の元に光がダメージと疲労で所々でよろけながらも自分の力で歩き、腕が届く程の距離まで箒に近付くと、ふらふらで倒れそうな体を屈めて手を差し出す

 

「最高の勝負だった……ありがとう篠ノ之。……いや、君の強さを称えて、俺も箒と呼んで構わないか?」

 

「…………!!」

 

 そんな光に箒は一瞬、呆気にとられた様子だったが

 

「礼を言うのは此方の方だ……! 光よ……」

 

 そう言うと、すぐに笑って光の手を取り、それに答えた

 

「折角、同じ学園に入ったんだ……また、戦おう」

 

「あぁ……!!」

 

 どちらからともなく交わされたその約束は、興奮が覚めやまないアリーナの中にひっそりと響いていった




 オリジナル編は今回で終了。次回からは、原作に戻ります
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