二人目の男子はIS学園No.1(最強とは言ってない)   作:塩ようかん

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66話 ゾフィー白熱の模擬戦、組むべき相手とは

「……っぐ! うおおおぉぉっ!!」

 

 避け損ねたゾフィーのスラッシュ光線が命中しても一夏は攻撃の手を止めず、第二形態となった白式で一気に慎吾へとつめより零落白夜の輝きを持つ雪片を振るう。

 

 九月の三日、二学期初となる一組二組との実戦訓練。その中で行われた一夏と鈴の試合後、どちらかの組の誰かが呟いた一声で実地された慎吾と一夏の戦いは、序盤、慎吾の猛攻に押されていた一夏が粘りに粘ってどうにか食い付き、隙あらば零落白夜の一撃で沈めんとする。緊迫した戦いが超時間に渡って続いていた

 

「早い!? ……だが!」

 

 白式目掛けて弾幕状に無数に放ったスラッシュ光線が予想に反して命中せず、更に一気に距離を詰められて慎吾は一瞬焦りを見せる。が、すぐに構えを変え

 

「んなっ……!?」

 

 一夏の振るう横凪ぎの一閃が今まさにゾフィーに命中せんとしたその瞬間、慎吾は空中で背後に倒れるように大きく身を反らして本当に際どい所で零落白夜を回避してみせた。その事に一夏は驚愕の声を上げるが、まだ慎吾の行動は終わらない

 

「ふっ……!」

 

 反らした勢いのまま、ぐるっと空中に円を描くように一回転した慎吾は一瞬で一夏への背後へと回り込むとゾフィーの両腕で一夏の腕を掴む

 

「はあっ!!」

 

 と、慎吾は一夏を拘束したまま残像が見える程の猛烈な勢いでその場で回転する。そして回転速度が限界点にまで達した瞬間、生まれた強大や遠心力とゾフィーの持つパワーを持って一夏をアリーナの大地に向かって投げ飛ばし、急激に腕から解放された一夏は成す統べなくそのまま大地に激突し、土煙を巻き起こした

 

「ぐうっ……!」

 

 立ち込める土煙の中、一夏は刀を杖のようにしてどうにか起き上がり、投げられた事で受けた衝撃による傷みを堪えながら首を上げて宙を見つめる

 

「行くぞ……!」

 

 その先、上空で一夏を待つように腕組みをしていた慎吾は一夏が大地に立ち上がったのを確認すると、空気を切り裂きながら一夏へと向かって勢いよく突進するように動き出し、白式を狙って空中で蹴りの構えをとった

 

 その胸のカラータイマーは試合中に幾度も装甲をかすめた零落白夜と、回避や攻撃に使用した瞬時加速、自身のシールドエネルギーを消費して発動する光線類の影響等で大方が減らされており、既に赤く点滅し、エネルギーの底が見え始めている事を警告していた

 

「おおおおぉぉっ!!」

 

 それに対抗するように一夏も気合いの掛け声と共に刀を構えて迫りくるゾフィーを迎え撃つ。その構える雪片にも既に先程のような零落白夜の輝きが残っておらず、通常の物理的に変化していおり、既に白式のシールドエネルギーもゾフィー同様に決して多くは残されてない事が目に見えていた

 

 そして次の瞬間、ゾフィーの飛び蹴りと白式の斬撃が同時に炸裂し、試合終了を告げるアラームが鳴り響いた

 

 

「ううむ、引き分けるとは……甘かったか」

 

「ぐう……また慎吾さんに勝てなかった……しかも今日だけで二連敗かよ……」

 

 実戦訓練が終わり、片付けを終えて慎吾達は昼食を取りに来ていた。が、未だに慎吾はどこか吹っ切れて無い様子で首をかしげ、一夏は本日勝ち星無しと言うショックを未だに引きずっているようだった

 

「全く……大の男二人がいつまでそうしてるつもりよ」

 

 そんな二人の様子を見ていた鈴は食事の手を止め、少し呆れたように溜め息を吐きながら呟く

 

「だって俺パワーアップしたのに、鈴にも、スピリットになってない慎吾さんにも勝てないなんて……」

 

「うむ、私のゾフィーも一夏の事はとやかく言えないが、白式は確かに大幅に強化されねはいるがエネルギー消費も一層激しくなっているからな。それに一夏……」

 

「な、何ですか慎吾さん?」

 

 と、言葉の途中で慎吾はちらりと一夏に視線を向け、突然視線を向けられた一夏は何かしら思い当たる節があるのか少し動揺しながら慎吾に返事を返し、慎吾はそんな一夏を少し見てからゆっくりと口を開いた

 

「うむ、実は先程の試合でも感じていた事だが……一夏は少々、雪羅での無駄撃ちが多すぎるのでは無いか? 仕方がないとは言えあれではすぐにエネルギーが尽きてしまうだろう」

 

「うっ……」

 

 慎吾がその言葉を口にした瞬間、一夏は気まずそうに顔をしかめる。

 

 事実、つい先程の慎吾と一夏の試合でも一夏は序盤から慎吾に向けて幾度も雪羅の荷電粒子を放ってはいたが、その軌道を慎吾に軽く読まれ殆んどが難なく回避され、終いには荷電粒子砲を避けるついでの反撃とばかりに放たれたZ光線の直撃を受けてしまう場面もあった

 

「エネルギー……エネルギー運用かぁ……ああ、俺も慎吾さんみたいにウルトラコンバーターさえあればなぁ……」

 

 慎吾の話を聞くと一夏は悩みながら頭を抱えると、大きく溜め息をつき俯いたまま慎吾に視線を向ける

 

「おいおい一夏、この現状では無理も無いが、無い物ねだりはあまり感心しないぞ?」

 

 一夏の言葉に慎吾は困ったように苦笑しながらそう答えると、ふと自身がゾフィーを展開させている時に通常ウルトラコンバーターを装着している右手首に視線を向ける

 

「……それに、ウルトラコンバーターはヒカリが『私に』と作り上げて送ってくれた物だ。たとえ渡せたとしてもお前にやる訳にはいかんよ。悪いな」

 

「そりゃそうですよねぇ……」

 

 慎吾の言葉を聞くと、一夏は予めその答えを予想したらしくそう言ったが、やはり多少なりともショックはあったらしく、ますます机の上で大きく項垂れた

 

「だからな一夏……」

 

 そんな一夏を見捨てる事が出来ず、慎吾が何か一夏を励ませるような言葉を語ろうした。が

 

「あ、安心しろ一夏! そんな問題は私と組めば万事解決だ!」

 

 その瞬間、啖呵を切るように、光との試合で自身の最小のエネルギーを増大させるワンオフ・アビリティー『絢爛舞踏』を目覚めさせた箒が腕組しながら立ち上がりそう述べる

 

「ふん、おにーちゃん以外に、嫁は渡さん」

 

 それに負けじと次に動いたのはラウラであり、そう言いながら全く躊躇無く一夏の腕を引き寄せるとそれに抱きついた

 

「ちょっ!? 組むなら幼なじみな上に近接も中距離もこなせて白式と相性もバッチリなあたしでしょ! って言うか、あんたは一夏の腕から離れないよ!」

 

「皆様、揃って勝手な事を……! この場は白式の苦手距離から慈母の如く守れるわたくし、セシリア・オルコットを選ばない手は無いでしょう!? ねぇ一夏さん!?」

 

「……一夏、ここは無難に前に組んだ経験があって、しかも優勝と言う結果まで残せた僕がオススメだと思うよ?」

 

 それに遅れまいと、鈴が立ち上がりながら一夏の腕からラウラを引き剥がそうと汗を流し、三人に比べて少し出遅れてしまったセシリアは何とか遅れを取り戻そうと懸命に一夏へとアピールし……そしてシャルロットはそんな最中、何気無い様子で微笑みを浮かべて一夏に囁いた

 

「(やれやれ……これは当分、静まりそうにないな)」

 

 もう少し騒ぎになったら止めに入ろうと想いながら、慎吾は昼食と一緒に注文したブラックコーヒーを一気に飲み干しながらそう内心で苦笑した。

 

 その後、誰か選ぶかの騒動の末に一夏が、『皆も無理して男と組む事は無いだろ』と謎の気を効かせて、『俺は組むなら、慎吾さんと組む』と答えた為に、納得して大人しく席に着いたシャルロットとラウラを除いて、慎吾は箒、鈴、セシリアの三人に囲まれる事になり話はますますややこしくなるのだが、昼食を取りつつ騒動を眺めるこの時の慎吾には知るよしも無かった




 少しだけ余裕があると、思っていたら結局いつも通り程に……でも、それなり満足ゆく話を書けたような気がします

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