二人目の男子はIS学園No.1(最強とは言ってない)   作:塩ようかん

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68話 悩みのゾフィー、波乱と騒動の学園祭!……の、始まり

「午後の授業ではすまなかったな一夏……私としたことが庇うことができなかった……」

 

「は、はは……いいですよ慎吾さん。謝る必要なんか無いです」

 

 その日の夕方、寮の自室に戻って自身のベッド腰かけるなり慎吾は一夏に謝罪し、一夏は自分のベッドにうつ伏せになった状態のまま、未だに疲労が残っている様子の表情でそう言って慎吾の謝罪を止めさせる

 

 結局、あの授業では慎吾がどうにかして千冬、そしては目だけが笑っていない笑顔を浮かべるシャルロットに事情を説明しようと試みるが、その頃には千冬の指示でシャルロットのラピッド・スイッチの実演、の『的』になった白式がひっくり返り、一夏がのびている所であった

 

「しかし……一夏には悪いが、シャルロットの戦い方らは見事だな」

 

 慎吾は少し遠慮するように声を押さえながらも、午後の実習での空中制動訓練を兼ねての対戦で、自身も対峙したシャルロットの鮮やかな動きを思い出して感嘆したように呟く

 

「あの一戦はゾフィースピリットの能力をフルに使って全力で挑んでも辛勝がやっとだった……それも僅か一手でも違えば敗北していたのは私だっただろう」

 

 一応、ゾフィーが第二形態であるゾフィースピリットに変わってから試合で慎吾は一応、『敗北は、無し』と言う結果を納めていたが、その試合がどれも辛勝、あるいは引き分けと言うなれば形になっており余裕を持って勝利を掴んだ試合など殆んど存在しておらず。慎吾は遥かに火力や機動力がました第二形態に移行しても『3分』と言う制限時間が付いた事でむしほ以前よりも慎重に戦う事を余儀なくされていた

 

「(そう、シャルロットやラウラは何の問題もなかった。ただ……)」

 

 授業での記憶を甦らせているうちに、ふと一つだけ授業中にどうしても気になった事を思い出して慎吾は部屋のベッドに腰掛けたまま黙って腕を組んだ

 

「(セシリアの様子が明らかにおかしい。いつものセシリアならあの程度の一撃は回避するはずだが……)」

 

 慎吾が熱心に思い返していたのは、午後の実習で対峙したセシリアとの試合様子。何やら試合序盤からビットでの射撃が明らかにとまでは言えないが僅かに甘く、スターライトでの射撃もいつもより苛烈で発射数こそ多いもの、どこかキレが無く見切りやすかった。終いには慎吾が牽制として放ったZ光線を避けきれず直撃を受けて敗北をしてしまった程だ

 

 この事について授業終了直後に慎吾は出来うる限り言葉を選びながらセシリアにそれとなく尋ねてみたもののセシリアは『少し調子が悪かったのですわ』と、だけ慎吾に答え、それ以上は何も答えようとはせず、セシリア自身が口にこそ出さないものの『答えたくない』と言う様子の雰囲気を醸し出していた為に慎吾もそれ以上は問いただす事を諦めていた

 

「(当人から聞けない以上、あくまで推測でしか無いがおそらく理由は……焦りだろうな。唯一、自分だけが白式第二形態に負けた事の)」

 

 しかし、セシリア本人から答えが聞けなかったとは言え、慎吾はその理由は大体の見当自体は付けていた。

 

 そう、慎吾を含めた全員が一度は第二形態と刃を交え、BT兵器しか積んでおらずいくら攻撃してもエネルギーを無効化されてしまう状況を抜けきれず、セシリアただ一人だけが敗北し、土を付けられていたのだ

 

「(セシリアは心に高い誇りを持っている……今回はそのプライドが裏目に出てしまったのだろう。だとすれば……それを私一人で解決するのは不可能に近いだろうな)」

 

 そこまで考えて深いため息を付きながら、慎吾は観念するようにベッドにあお向けに横たわり、汚れの少ない天上を見上げる

 

「(やはり、この問題は今は、同じ女性……シャルロットに任せた方が良いだろう。私は……今は下手な手出しはしないでおこう)」

 

 やがて慎吾は冷静に考えたうえで、セシリアに質問を断られ僅かに途方に暮れた時に『僕に任せて』と告げてくれたシャルロットを全面的に信じる事に決め、少しだけベッドで仮眠を取り、日課となっているトレーニングを再開し始めた

 

 ちなみにこの慎吾の一連の行動を見ていた一夏は寝た体勢のまま首をかしげ

 

「(ずっと悩んでると思ったら急にトレーニングを始めて……慎吾さん今日は一体どうしたんだろ……?)」

 

 と、心底疑問に思っていたのであった

 

 

 翌日、今月中にまで迫った学園祭についての説明と言うことでSHRと一時間目の授業時間の半分を大胆に使って全校集会が行われ、学園の生徒全員は学園内のホールに集合していた

 

「しかし……こうして学園の全校生徒が集合した所を見させられると、改めて学園内に男子生徒達が私達だけだと言うことを強く実感させられるな……」

 

「ですね……俺、慎吾さんがいてくれなかったら、この学園に男子が俺一人だけだったら……絶対に今より居心地悪かったと思いますよ、この光景見てると」

 

 周囲から頭一つ飛び抜けた身長でホールに集合した生徒を見渡した慎吾が感慨深く呟くと、一夏もそれに頷きそう答え苦笑した

 

「はは……それは私もだ一夏。きみがいなければ私も落ち着いた学園生活は送り辛か……おっと、話はここまでにしておこう」

 

 そんな一夏に慎吾は返事しかけたが、丁度同じタイミングで生徒会役員の一人が生徒会長が壇上に上がるのを告げ、慎吾は咄嗟に話を中断させると壇上に視線を向ける

 

「やあみんな、おはよう。ちゃんとした挨拶がまだだったけど、私が君達生徒の長、名前は更識楯無よ。以後よろしくね」

 

 壇上には当然と言うか、楯無が立ち微笑みを浮かべながらそう言って全員に挨拶をしていた

 

「あら……ふふっ」

 

 と、そこで慎吾は偶然にも楯無と視線が合い、視線が合うと楯無は笑顔を浮かべながら慎吾に向けて軽くウィンクを送ってきた

 

「どうも……」

 

 そんな楯無の行動にどう返すか、一瞬だけ悩んだ慎吾ではあったが結局、一秒後は自身も笑顔を浮かべて頭を下げると言うやや無難な対応を慎吾は取っていた

 

「さて、今月の学園祭の事だけど、今年に限り特別ルールを導入させて貰うわ……それが」

 

 そんな慎吾を一瞬だけ見て楯無は一度だけ笑うと、どこに隠し持っていたのか扇子を取りだし、横へとスライドさせる。その瞬間、空中投影ディスプレイが浮かび上がり

 

「え…………え?」

 

「これは……参ったな。本当に……」

 

 そのディスプレイに表示された内容を見た瞬間、一夏は驚愕に目を見開き、慎吾は心底弱ってしまったらしく額に冷や汗を流しながら早くも頭痛がし始めた頭を抱えた

 

「その名も、『織斑一夏vs大谷慎吾! 各部対抗争奪戦』っ!」

 

 ディスプレイに非常に大きく表示された慎吾と一夏の写真と共に楯無が扇子を開きながら華麗にそう宣言するとホール内は冗談でも比喩でも無く、揺れるような叫び声に包まれた

 

 うっすらと慎吾自身も予想はしていたが、どうやら例え学園祭だとしても慎吾の気の休まる暇は与えてくれないようだった




 学園祭で……慎吾の旧友としてメロスやネオス、21を少しだけ出そうかと考えていますが……無難に行くとケンとその家族を登場させるつもりです。

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