二人目の男子はIS学園No.1(最強とは言ってない)   作:塩ようかん

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 何とか更新です、これが今年最後の更新になります。何とか今年中にゾフィーを起動させる事が出来て本当に良かった……


7話 クラス代表決定戦への前準備、そして開幕。起動するゾフィー

「慎吾さん、なんで箒の奴あんな急に怒ったんですかね?」

 

 箒の視線が外れた瞬間を見てこっそりと一夏が隣に座った慎吾に小声で訪ねる。

 

「ふむ……私は篠ノ之の事は殆ど一夏から聞いたことくらいしか知らないが……あの様子だと、どうやら一夏の知らない所で何らかの確執があったようだな」

 

 それに対して慎吾をもまた、小声で箒に悟られぬよう一夏に返事を返す。慎吾がクラスの皆に待機状態の『ゾフィー』を見せてから幾分か時間は過ぎて今は昼時、場所は食堂、慎吾、一夏、箒の三人は一つのテーブルにそれぞれ一夏と慎吾は並んで座り、箒は一夏の対面に座っていた。ちなみに食べているメニューは全員が日替わり定食である。

 

「確執ですか……うーん、俺にはちょっと」

 

 そう慎吾に小声で返すと一夏は頭を抱えて悩みだす。

 今、現在、こんな状況になった事の発端は幾分か前にさかのぼる。簡単に言えば一夏と慎吾、二人の男子が共に専用機を持つ事に教室の熱気は何が何やら分からない程にヒートアップし、一人の女子が千冬に箒は篠ノ乃博士の関係者かと質問にしたのである。それに対し千冬が肯定した為に教室の注目は慎吾と一夏から箒へとスライドし、箒に質問が殺到した時だった。

 

「何にせよ、篠ノ之自身が『あの人は関係無い』と言ったんだ篠ノ乃の為にもあまり深く立ち入らない方が良いだろう」

 

 未だにどこか不機嫌そうな表情で黙々と食事をとる箒を見ながらそう慎吾は一夏に耳打ちした。そう、質問責めにあってた箒は突如、大声を出して主張するとそのまま機嫌は直らず、休み時間に慎吾と一夏の元にやって来たセシリアから偶然話を降られた際には睨み返してしまう程だった。そんな状態の箒を何とかするべくこうして慎吾と一夏は強力して箒を食事に誘ったのである。

 

「お前たち………自分達から私を誘っておいてさっきから人に隠れて何をコソコソと話しているんだ?」

 

 と、そこで箒が流石に自身に隠れて話している一夏と慎吾の態度に業を煮やしたのか軽く睨み付ける様な視線で二人に言う。と、直ぐ様、慎吾は箒に視線を移して言う。

 

「あぁ、つい話に集中してしまってな。不快に思ったのなら私の責任だ、すまなかったな篠ノ乃」

 

「……謝罪は受け取った、次は無いぞ」

 

 と、言いながら箒は慎吾から軽く視線を反らし、慎吾を許した。

 

「そ、そういえば箒に慎吾さんっ!」

 

 そんな若干気まずい空気を変えようとしたのか一夏が若干、大きめの声でそう話題を切り出す。

 

「ISの事教えてくれませんか?このままだったら知識がある慎吾さんならともかく、俺じゃ何も出来ずに負けそうだし」

 

 一夏のその言葉を聞いた瞬間

 

「「はぁ……」」

 

「まさかの同時ため息!?」

 

 と、まさに一夏の言う通り完全にシンクロしたタイミングで慎吾と箒の口から同時にため息がこぼれた。ただし付け加えるならば慎吾は困ったように、箒は呆れたかのようにだが

 

「一夏………自己紹介で私が言ったように私はISについてはゼロからのスタート。せいぜい入学前に参考書の内容を暗記していた程度でISの技術的面ではまず力になれない。私が言い出した決闘なのだが………すまない」

 

「ふん、元はと言えばお前がくだらない挑発に乗るからだ」

 

「うっ……そ、そこを何とかっ!」

 

 二人の言葉を聞いても引き下がる訳にはいかない一夏は、拝むように手を合わせて慎吾と箒に頼み込む。

 

 すると、慎吾はふむ、と声に出し顎に手を当てて一瞬だけ考え込むような動作をすると静かに一夏に訪ねる。

 

「一夏、今現在もしくは過去に武術の類いを習った事はあるか?」

 

「えっ?あ、はい、昔は箒と剣道をやっていましたけど………」

 

 慎吾の問いに一瞬、驚きながらもなんとか質問に答える。それを聞いた瞬間に慎吾はしめた、といった様子の笑顔を見せた

 

「よし、それならば策はある。ISが操縦者自身が身に付けて戦うパワードスーツという形を取っている以上、効率よく体を動かして戦う武術を知っているのは間違いなく戦いにおいての力になる。一夏、この一週間の間に過去のブランクを出来る限り振り払うんだ」

 

「そ、そう上手く行きますかね……」

 

 やや自身無さげに言う一夏。と、そこで慎吾は箒に視線を移した。

 

「大丈夫だ一夏、何故なら今ここに過去の一夏の剣を知り、なおかつ剣道の全国大会の覇者がいる。……一夏の剣道強化特訓に協力してくれるか篠ノ之?」

 

「えっ?」

 

 箒は突如、慎吾から話をふられて一瞬呆けたような表情を作るが慌てて表情を無理矢理に元のキリッとした顔に戻すと

 

「ふ、ふん、そこまで言うのなら無下にも出来ん。一夏、放課後に剣道場に来い。今のお前がどの程度か見極めてみっちり鍛え直してやる」

 

「学習面は引き続き私が共に教えて行こう、そちらは心配するな」

 

 と、そんなやる気に満ち溢れた様子の二人の視線に晒された一夏は

 

「よ、よろしくお願いいたします……」

 

 と、冷や汗をかきながら奇妙な笑顔でぎこちない返事を返すしか無かった。

 

 

 

 そして、特訓の日々は矢のごとく過ぎ去り翌週、つまりは決戦の日、当日、慎吾、一夏、箒の三人は並んで第三アリーナのAピットで複雑な事情が絡み合ってごたついたらしく、未だに来ていない一夏の専用ISを待っていた。

 

「も、もう、やれる事は全てやったよな……?慎吾さん、箒」

 

 緊張しているのか武者震いなのか、若干声が震えている様子の一夏が二人に訪ねる。

 

「うむ、私は基礎知識の全てとその応用に付いて参考書の内容を出来る限り全てを一夏に教え、お前はそれを理解出来たと私は判断する。大まかには聞いているがそっちはどうだ?篠ノ乃……いや、箒」

 

「あぁ、最初は驚くほど弱くなっていてどうするべきかと思ったものだが……徹底的に鍛え直して完全に…とは言えないが大分ましな形にはなっただろう」

 

 互いに情報を確認しながら一夏に返事を返す慎吾と箒。そう、この三人はこの一週間、一夏を鍛える為に必然的に顔を合わせて相談する事なども多くなり、気がつけば互いに相手を名前で呼び会う程の仲になっていた。

 

「この日の為に一週間努力したのだろう?だったら後はもうそれをぶつけるだけだ。迷うこと無く全力で戦え」

 

 最後に慎吾はそう言って一夏を励ます。

 

「慎吾さん………」

 

「それに、相手はオルコットだけではない。私とも戦うことになるんだ気合いを入れてくれないと困る」

 

 元気を取り戻した一夏に、ほんの少しからかうような口調で小さく笑いながら慎吾は言った。

 

 本日のクラス代表決定戦は三試合に分けて行われ、初戦が今から始まるセシリア対一夏、次戦はセシリア対慎吾、そして最終戦が慎吾対一夏と言う流れになっていた。

 

「と、そういえば慎吾さんは何か訓練はしてたんですか?」

 

 と、そこで一夏は、自身の専用機が来るのを待つてがら、ふと気になっていた疑問を慎吾にぶつてみた。

 

「はっはっはっ、何、心配する事はない」

 

 しかし慎吾はそれを笑ってごまかし質問をはぐらかす。そんな時だった

 

「お、織斑くん織斑く……きゃあっ!」

 

 一夏を呼びつつ、こちらに向かって危なっかしい駆け足で目の前まで走って来た真耶が……勢いよく転んだ

 

「大丈夫ですか山田先生?」

 

 が、地面を激突する前に慎吾が動き、真耶の両肩をつかんで支える形で受け止めた。

 

「あ、ありがとう大谷くん………」

 

 間一髪、助けられた真耶は慎吾に恥ずかしそうに礼を言う。

 

「全く……山田君、教師がこんな事で生徒に助けられてどうする」

 

「千冬ね……」

 

 呆れたように頭を抱えながら表れた千冬に話しかけた一夏が秒速の勢いで出席簿で殴られる。痛みで悶える一夏を軽くスルーし、千冬は言葉を続ける。

 

「織斑、お前の専用ISが届いた。アリーナを使用出来る時間は限られてるすぐに準備をしろ」

 

 千冬や箒に押され、慌てながらも一夏は早速、届いた飾り気の無い白が特徴的な専用IS『白式』に乗り込むとピット・ゲートへと進んで行く。

 

「(一夏、私は絶対に勝てとは言わない、ただ最後まで諦めるんじゃあないぞ………)」

 

 ゲートが開き、空へと飛び立って行く白式を見送りながら、そう心の中で念じる慎吾。

 そして、試合は始まった。

 

 

 

 

 

「す、すいません……」

 

 試合が終わり、一夏は申し訳なさそうに慎吾と箒に頭を下げる。結果から言えば一夏は負けた。が、被弾を最小限な押さえながら浮遊するビットの特性に気付いての破壊、そして一次移行からの奮闘は慎吾も息を飲むほどだった。ただ最後に、セシリアからの初撃のダメージと一夏自身が専用装備である『雪片弐形』の特性を良く理解していなかったのが不幸になったのだ。

 

「なに、お前は良くやったさどうしても悔いが残ると言うなら次の私の試合で挽回して見せろ」

 

「ふん、あれだけ啖呵を切っておいて負けるとは……」

 

 そんな一夏をISスーツに着替えた慎吾が肩を叩いて慰める。一方、箒は不満があるのかつんとした態度で厳しい一言を放つ。

 

「さて………行くか」

 

 そんな箒を苦笑しながら見ると、まもなく開始される試合に向け、静かに慎吾は数歩ほど歩いて待機状態の『ゾフィー』を構えた。

 

 瞬間、赤色の波状のエネルギーが『ゾフィー』から放たれたかと思うと一瞬のうちに慎吾の姿を変え、慎吾の専用IS『ゾフィー』は展開された。

 

 翼やビットは無く慎吾の全身を包み込む銀を下地に赤色のラインが走る装甲、胸に取り付けられた青く輝く光球の周囲には慎吾が貰った勲章をモチーフにしたポッチ状の装飾、頭部を包んだ西洋鎧のようなトサカが目立つ銀の仮面は表情をすっかり隠してしまっているものの、銀仮面に取り付けられた目は丸みをおびてどこか優しげな表情に見えた。

 

「んなっ、全身装甲のISぅ!?」

 

「そ、そんなISは聞いたことは……」

 

 ゾフィーを初めて見た一夏と箒が共に驚きの声を上げる。

 

「一夏、私の戦いをしっかりと見ているんだぞ!」

 

 慎吾は仮面越しにそう一夏に伝えると、開いたゲートから滑らかな動きで空へと飛び出して行った




 のほほんさんが慎吾を何と言うか今いち浮かんで来ません……。うーむ

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