二人目の男子はIS学園No.1(最強とは言ってない)   作:塩ようかん

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71話 『攻め』の最強と、『護り』の至高

「慎吾さんお待たせしまし……ってぇ!?」

 

「やぁ、織斑一夏くん」

 

「うん……それは、そうなるだろうな」

 

 職員室から出て、自分を待っていてくれた慎吾を迎えにきた一夏は、その場にいた予想外の奥から無に気が付くと思わず声に出して驚愕し、楯無はそんな事はあまりに気にかけて無いように一夏に笑顔を見せ、慎吾は慎吾でどこか納得したように頷いていた

 

「さて……君たち二人が揃った所で、実は君たちに是非聞かせたいとっても大事な話があるのよ」

 

 盛大に動揺している一夏を見て楽しそうに笑っていた楯無だったが、そこでふと口調を少し変え、真剣な表情で一夏、それから慎吾に視線を送る

 

「は、話って……何ですか?」

 

「うん、それはね、この場で話し……」

 

 勇気を出して尋ねた一夏の問いに、楯無が答えようとした時だった

 

「今だ! 覚悟ぉぉっ!!」

 

「……貰った!」

 

「一時休戦で三人がかりなら……さすがに誰かは……!」

 

 突如、前方から竹刀を構え頭に『覚悟完了』と

鉢巻きを巻いた女子生徒が近くの窓ガラスが震える程のかけ声を上げながら猛烈な勢いで楯無に迫ってたかと思うと、まるでそれを合図にするかのように震える窓ガラスを矢が突き破りその奥、隣の校舎から和弓を射る袴姿の女子生徒が、廊下の掃除ロッカーからはロッカーを破壊しそうな勢いで真っ赤なシャツと揃いの真っ赤なグローブを装着した女子生徒が地面を蹴ってロケットのような勢いで飛び出し、三人は一斉に楯無に向かって余力を隠す気など更々ないようやフルパワーで攻撃を仕掛けてきた

 

「な、何なんだ、こりゃあ!?」

 

「…………!!」

 

 先程までの日常を突き崩すように、何の全長も無く余りにも唐突に起こったその衝撃的な光景に、一夏は声に出して驚き、慎吾も袴姿の女子生徒が二人の援護に回り、変性的な三位一体の形となって一斉に楯無へと迫る三人を見て驚愕に目を見開いていた

 

「ふむん……皆、それぞれ技も速さ、それから気迫も中々……。手段を選ばず三人で一斉に攻撃を仕掛けるのも良いわね、勝つために手段は選ばない……そう言うの嫌いじゃないわ」

 

 対して今、まさに攻撃を受けている楯無は矢を身を捻るだけで回避しつつ非常に落ち着いた様子で三人をそれぞれ観察し、あまつさえ笑顔でそれを誉める余裕さえを見せていた

 

「でも……」

 

 その瞬間、竹刀を持った女子生徒の居合い抜きの形で放たれた鋭い斬撃と、ボクシンググローブの女子生徒が全身の筋肉をバネのように使って放つ渾身の右ストレート、そして和装の女子生徒が残り弓を全て使いきる覚悟で放った弾幕のような無数の弓が楯無に迫り

 

「でもみんな……『学園最強』を相手にするなら   もうちょっとが甘いかな? 次は頑張ってね」

 

 楯無がそう呟いた瞬間、全ての決着は付いていた

 

「くふっ……!?」

 

 先陣を切って楯無に攻撃を仕掛けた竹刀を持った女子生徒は竹刀と言う武器のリーチがまるで通じて無いように自身の居合い切り最中に踏み込んで来た楯無の手刀を首筋に受けて真っ先に崩れ

 

「にゃっ……!?」

 

 ボクシンググローブを装着した女子生徒は、竹刀の女子生徒を撃破した楯無にカウンターの要領での回し蹴りを受けてロッカーに向けて吹き飛ばされ

 

「そんなぁ……」

 

 持ち矢の全てを回避されてしまった袴姿の女子生徒は成す統べなく楯無が倒れた竹刀少女から拝借した竹刀の投擲、それを額に受けて窓にもたれ掛かるように崩れ落ち、結果的に時間にすれば10秒にも満たない時間のうちに三人はいっそ鮮やかに見えるほどの完敗で楯無に倒されたのであった

 

「ふぅ…………」

 

 一方でそんな超人じみた技を見せながらも楯無はまるで疲労した様子は無く、軽く息を調え

 

「あの一瞬で女の子を一度に二人も捕まえるなんて……やるわねぇ……慎吾くん」

                        

 

 楯無に破れて意識を失った二人の女子生徒を、それぞれ床やロッカーに激突する前に救いあげ、二人を守るように背中に背負っていた慎吾を見て、面白そうに笑った

 

「楯無会長、あなたにとっては単なる冗談に過ぎないのでしょうが……流石に皆が通りかかる廊下で誤解を招くような言い方は出来れば止めていただきませんか?」

 

「あらあら、ごめんね。悪気はあんまり無かったのよ?」

 

 二人を背負ったまま言われた慎吾は楯無にそう困ったような笑顔を見せ、楯無は慎吾にウィンクしつつ片手を向けて軽く謝罪する

 

「(す、すげぇ……)」

 

 そんな中、一夏は一瞬のうちに眼前で起こった出来事を脳裏で思い返して未だに目を見開いていた

 

「(三人をあっと言う間に倒したんだ先輩も信じられないくらい強いけれど……その先輩の攻撃の間をすり抜けて二人を助けてた慎吾さんも半端じゃ無いぞ……!)」

 

 そう、日々慎吾や箒達と鍛えていた成果か一夏には先程、楯無が見せた無駄が無く美しさすら感じるほどの華麗な反撃も

 

 楯無に手刀を打ち込まれて倒れた、女子生徒を瞬時に動いた慎吾が豆腐を掴むように優しく受け止めて救出するのも

 

 

 ボクシンググローブの女子生徒がロッカーに命中するより早く、上手く自身の体重を分散させるのと同時に筋肉に力を込めて自身が全ての衝撃を吸収してから、抱き止めるのも

 

 

 確かに『見えて』おり、一夏は改めて慎吾が見せたその技術の高さに驚かされていた

 

「ともかく……楯無会長は私達に何か言いたいことがあるのでしょう? ならば意識の失った二人を保健室に預けた後、場所を移して私達二人で共に聞きましょう……。と、一夏、勝手に言ってしまったが、 それで問題はないか?」

 

「……あっ、はい! 俺もそれで」

 

 と、そこで慎吾に確認するように問いかけられた一夏は慌てて思考を中断すると、慎吾に返事をする

 

「ふふ……では、二人を生徒会室へと案内するわね」

 

 そんな二人を見ながら楯無は小さく笑うと『乞うご期待』と書かれた扇子を開き、二人に強調するように静かに扇ぎ始めるのであった

 

 

 

 その一方で

 

「な、何だこの男臭いのに、胸に漂う全く不快じゃない感覚は……!?」

 

「これが……この安らぎが、『兄』の温もり……? くはっ……」

 

 慎吾の背中に背負われた二人の女子生徒は密かに意識を取り戻し、慎吾から漂う『男』特有の香りの直撃を受け、今までに味わった事の無い奇妙な安心感を味わっていたのであった

 

 この二人が、『織斑一夏ファンの集い』に比べれば総メンバー数では半分程でしか無いものの、濃くよりマニアックな者ばかりが集う『大谷慎吾、敬愛の集い』に参加するのはその日のうちの事であった




 次回は……少しだけ話をのほほんとさせようかと思います

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