二人目の男子はIS学園No.1(最強とは言ってない)   作:塩ようかん

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77話 気にしないゾフィー、気になる一夏

それから、しばらくして着替え終わった光は少しの休憩の後に慎吾と机を挟んで静かに会話をしていた

 

「なるほど、大方の話は聞いていたが、まさか楯無会長相手にそこまで粘るとは……」

 

 慎吾の話を聞き終えた光は隠すこと無く純粋な想いでそう言って楯無との試合での慎吾を高く評価して見せた

 

「ヒカリのその言葉は嬉しいが……私としては『粘る』ので精一杯だったと言うべきだな。私は楯無会長を相手にして、知りうる限りのあらゆる手を試して攻略方法を捻りだそうとはしたのだが……見つけるよりも先に私の方が体力が尽きてしまい、結果的にそれが敗北に繋がった。……結局、未だに攻略方法などは分からないよ」

 

 一方で慎吾はその試合結果にあまり満足はしていなかったのか、視線を床に落とし、苦笑をしながら試合自身の行動を振り替えって少し反省するようにそう答えた

 

「それは、ある程度は仕方ないと言えるだろう。……見も蓋も無い言い方になってしまうが、相手はこの学園最強の生徒会長。対して君はISに触れて一年にも満たない入学したてのルーキーだ。普通に考えるのなら前提としてこれほどの差があるのにも関わらず、『粘らせた』と言うのは君を知らない人間であれば行き過ぎたビックマウスにしか思われないぞ?」

 

「ヒカリ……それは大分身内贔屓な意見ではないか?」

 

 少しネガティブになってしまった慎吾の言葉をフォローするように迷い無くそう述べる光。そんな光に向けて慎吾は再び困ったように笑うと手元のマグカップに入っているコーヒーを一口だけ口に含んだ

 

「そうか? 俺は俺が想ったままの事を伝えているだけなんだがな……」

 

 そう、ぼそりと呟かれた光の言葉は二人しかいない室内で小さく響いて行くのであった

 

 

「どうした一夏? 私には、いつもにも増して疲れているように見えるが……」

 

 慎吾が引っ越しをしてから二日が過ぎた日の四時限目の授業終わり、机に突っ伏してる一夏の目から疲労を感じ取った慎吾は、授業終了と共に直ぐ様、自身の席を立ち、一夏机にまで歩み寄ると少し心配そうに声をかけた

 

「あ、慎吾さん……それがですね、昨日の事なんですが……」

 

 机に突っ伏していた一夏は慎吾に声をかけられた事に気が付くと顔を起こすと、二日前と比べて少しだけやつれたように見える表情で何とか苦笑を浮かべると淡々と語り始めた

 

「そ、そうか……今度はそこまでやったのか楯無会長は……」

 

「えぇ、やりましたよ……下着にワイシャツだけの楯無会長にマッサージをするなんて、今思い出しても何か全然現実に思えなくて……おかけで昨日は全然眠れませんでしたよ……」

 

 あまりにもラフと言うか、ルームメート兼指導役と言うにしては距離が近過ぎる楯無とのエピソードを一夏から聞いた慎吾はどう反応して良いか分からずに、ただ苦笑しながら言葉を詰まらせ、一夏は肺にある空気を全て吐き出してしまいそうな程に深く長いため息を付いた

 

「……一夏には悪いが私は新たなルームメートがヒカリで良かったと思ってるよ」

 

 そんな一夏を見て少し申し訳無くは思いながらも、慎吾は小さな声で呟いた

 

「あぁ……慎吾さんの同室は芹沢さんでしたね……」

 

 そんな小さな呟きをしっかりと耳にしていた一夏は慎吾に視線を向けると、再びため息をついた

 

「芹沢さんは落ち着いてるし、慎吾さんの旧友だし……本当に楽そうだなぁ……」

 

「そうだな、例を述べるのなら……」

 

 少し羨ましさを覗かせながら言う一夏に答えるように慎吾は静かに引っ越し初日、昨夜の自室での記憶を思い出しながら語り始めるのであった

 

 

「慎吾、トレーニング中の所で悪いが……可能なら今、調整中の装備について参考までに君の意見が欲しいんだが構わないか? あぁ、忙しいのなら耳を貸してくれるだけでも構わない」

 

 食事と30分程の休みを終え、自室でいつものトレーニング着(タンクトップにジャージ姿)に着替え、額に少し汗を滲ませながら日課にしている腕立て伏せを一心不乱にしている慎吾にそう言って光が話しかけてきた。

 

 ちなみに、そう訪ねた光はと言うと話ながらもベッドの上で座りながら一心不乱に集中してピアニストをのような鮮やかな動きで携帯端末を操作し続けており、その服装は既にシャワーを終えて自身の髪色に合わせたかのような寝巻きではあったのだが、縮んでしまったのかサイズを間違えたのか、パジャマはさながらボディスーツの如く肌にみっちりと光の体に密着してその体のラインを浮き彫りにしてしまって、服を着ているのにも関わらず、ある意味で裸よりいかがわしいような雰囲気を持っており、追い打ちのように光本人の『胸元が苦しい』との理由でその胸辺りのみがボタンで止められず大胆に露出していた

 

「いや……丁度、トレーニングはこの腕立て伏せで最後。それも……これで終わりだ」

 

 慎吾はそんな光の姿には特に言及する事は無く、そう言い終わるのと同時に腕立て伏せを止め、事前に近くに置いておいたタオルで汗を拭き取ると光の元へと向かう。トレーニングの影響で滲んだ汗によりタンクトップは慎吾の体に張り付いて透け、慎吾の上半身はほぼ裸に近い形になり、男特有の汗の臭いが漂い始めていた

 

「あぁ……助かるよ慎吾。話はこのUシリーズ四号機……仮の名として『J』と言う名が付けられたコイツの事なんだが……」

 

 当然のように光もまた、そんな慎吾の姿は特に気にした様子は無く平然とした様子で身を乗り出して携帯端末を手にし、ディスプレイに写し出される映像をゆびさしながら慎吾に説明を始める。が、あまりにも身を乗り出した為に近寄ってきた慎吾の腕に光の胸が押し付けられた

 

「ふむ……以前言っていたゾフィーの後続機に外見は似ているが……攻撃のエネルギー出力を若干下げて、代わりに燃費と格闘性能を上昇させたのか……確かに何を装備させるかは悩無所だな」

 

 そんな事態でも、もはや当たってる事に気がついていないのかのように、落ち着き払った様子で慎吾は消灯時間ギリギリまで光と意見を交わして行くのであった

 

 

 

 

「いやいやいやいや……いくら親友でも、おかしくないですか慎吾さん!?」

 

 そこまで話を聞いた所で、貯まりかねた様子で珍しく一夏が慎吾にそう言った

 

「む、やはりそうなのか? どうも光とは付き合う時間が長すぎたせいで上手く距離感をつかめないんだが……」

 

「どう考えても変ですよ!?」

 

 一夏に言われても少し難しい顔をして考え込む言う慎吾に、再び一夏は叫ぶように言った。普段とは逆の珍しい光景に思わずクラスメイト達は圧倒され、一夏や慎吾を食事に誘おうとしていたメンバーも足を止めてしまった

 

「えーっと……これは、ちょーっと困ったわね……」

 

 そんな中、教室の外では一夏の大声で若干、入るタイミングを逃してしまった楯無が少し所在無さげにしていたのだが教室にいた生徒達の視線は慎吾と一夏に集まっており、楯無が気付かれるのは少し遅れる事になるのであった




 私が書いてると何故か光がこんな事に……。真面目ゆえの天然を表現を使用としていたつもりだったのですが

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