二人目の男子はIS学園No.1(最強とは言ってない)   作:塩ようかん

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89話 戦いの決着、そして……

「うっ…………ちっ! クソがっ! ただがマント一枚羽織ったくらいでいい気になるんじゃねーぞ!!」

 

 一瞬、ブラザーズマントを装着し軽々と炎を吹き飛ばしたゾフィーに息を飲まされたバードではあったがその不安を嘘だと自身に誤魔化すように、パイルバンカーを構えなおすとゾフィー目掛けて瞬時加速で攻撃を仕掛け始めた

 

「たぁっ!」

 

 が、しかしその動きを完全に見切っていた慎吾は軽くマントをはためかせながらパイルバンカーを回避しつつ、中段の回し蹴りを無防備になった腹部に叩き込んだ

 

「うぐっ……!? げ……っ!」

 

 強烈な回し蹴りが叩き込まれた事でバードは肺の空気が一度に抜けてしまいそうな一撃に悶絶しながらも、追撃を避けるために背後に飛び退のき、同時に攻撃後の隙を狙ってゾフィーへの反撃を試みようと左腕を再び構える。が、しかし

 

「はぁぁっ!!」

 

 その瞬間には既にゾフィーは大胆にも更に一歩を踏んでバードンの懐に飛び込んでおり、火炎が発射される寸前に空気を唸らせてその左肩を渾身の力で殴り付ける

 

「ぐがっ……! げっ……な、なんだ、コイツは!? さっきよりあきらかに動きが速く……いや技のキレまで上がっていやがるっ!」

 

 二度の攻撃の直撃により、今度こそ堪える事が出来なくなったバードンは背中から地面に倒れ、バードは苦しげにもがきながらもゾフィーの動きに驚愕して叫んだ

 

「(体が軽く動く……心を落ち着かせて奴と戦う事が出来る……!!)」

 

 地面に倒れたバードが先程のようにいつ起き上がって攻撃してきても対処出来るように身構えながらも、自らの動きを振り返って自身でも少し慎吾は内心で静かに驚いていた。

 

 シールドエネルギーが完全には回復しておらず、尚且つ先程のバードンの攻撃による肉体ダメージがあるのにも関わらずこんな絶好調とも言える動きが出来るのは、ウルトラアレイから与えれたエネルギーの影響なのか、新装備であるブラザーズマントの力なのか、それとも

 

「ほんの少し見ないうちに……また腕を上げたようだな、慎吾よ」

 

 今まさに、この場所にケンがいる、自身が尊敬して止まないケンが自分の戦いを見ている。そんな単純ながらも重要な事実が今の自身を動かしている。慎吾にはそんな気がしてならなかったのだ

 

「くっ……そが……! ふざけんなあぁぁぁっっ!!」

 

 つい一分前まで絶対的優位に立っていたはずが一転、怒濤の勢いで攻撃を仕掛けてくるゾフィーに一方的に押しきられて防御や回避も出来ていないと言う事実が心底癪に触るのか、地面を苛立ちのまま殴り付けて立ち上がるとバードは怒りのあまりに声がかすれそうな程の大声で叫ぶと、左腕と右腕のパイルバンカーを同時に構えながらゾフィーに向かって突撃を仕掛けてきた

 

「はあぁぁっ!!」

 

 が、命中さえすれば効果は絶大なのだろうが、冷静さを失い、怒りに身を任せただけのバードの攻撃は、一度窮地に立たされた事で、神経を集中させていた慎吾には見切る事が容易であり、次の瞬間、パイルバンカーから放たれる杭とバードンの左腕から放たれた灼熱の火炎のほんの僅かな隙間に潜り込んだゾフィーの気合いの掛け声と共に打ち出されたハイキックがバードンに命中した

 

「がっ……!? う、嘘だこのあたしが……オータムの奴より優れてるはずのこのあたしが……!?」

 

 ゾフィーのハイキックが直撃したバードは目を見開き、まるで幻覚でも見ているかのようにどこかうつろな表情で呟き、バードンは蹴りの勢いのまま高く、学園の屋根を軽く越えてしまう程に高く空中へと飛ばされていく

 

「バード! これで終わりだ……!」

 

 そして、その間に慎吾は既に宙を飛ぶバードンに目掛けて狙いを定め、胸の前に両腕を水平に置いていた

 

「M87光線!!」

 

 次の瞬間、慎吾の掛け声と共にまるで学園の上空を貫かんとばかりに太く、まばゆいばかりに輝く青白い光、M87光線がゾフィーの右腕から発射され、光は真っ直ぐに未だ空中で体制を維持出来ていないバードン目掛けて飛んでいった

 

「ひっ! う、うわっ……! くそっ……まだまだぁっ! 負けねえ! あたしの装備はまだ残ってる! 残ってるんだあぁぁっ!!」

 

 怒濤の勢いで自身に迫るM87の凄まじい迫力にバードは恐怖を隠しきれない様子で、回避が間に合わないと分かりながら何とか抗おうとパイルバンカーを引っ込めるのと同時に代わりにシールドを2枚出現させ、シールドを両手に持ち、素早くM87から自身の体を守るように深く構える。丁度その瞬間、M87がバードのシールドに直撃し

 

 

 

 命中した瞬間、バードがたった今出したばかりの2枚のシールドは台風の前の紙屑のように軽く、実に容易く吹き飛ばされた

 

「…………へ?」

 

 

 予想の範疇を越えたあまりにも理不尽な光景にバードが呆けた声をあげた瞬間、バードンのその全身はM87の青白い光の中へと飲み込まれていた

 

 

 

「………………」

 

 M87を既に放ち終え、それが直撃して大爆発が起こった事をハイパーセンサーで確認した慎吾はM87の直撃で気絶したであろうバードを拘束すべく油断なく空中で待ち構えていた。が

 

「なに!? くっ……!」

 

 突如、何処からか構えていたゾフィーに向けてレーザー・ガトリングでの多数の攻撃が放たれ、全力攻撃の連続でシールドエネルギーに余裕が残されていなかった慎吾は思わず咄嗟にブラザーズマントを広げてそれを防御し、一瞬、慎吾の視界はブラザーズマントの赤に覆われる

 

「しまった……! 逃げられてしまったか……!」

 

 慎吾のブラザーズマントが再びその背中に戻った瞬間、爆炎の中にバードの姿は無く、代わりにくすぶるように残る爆炎と、遥か遠くにバードと慎吾を襲撃し、バードを救助したらしいもう一人の襲撃者となる一機の未知のIS。その二つの影が見えただけであり、慎吾はそれを追わず悔しげに黙ってその場で浮遊しながら見送るしか無かった。何故ならば

 

「あの襲撃者は、あの攻撃で私を倒そうと思えば倒すことが出来ていた……!」

 

 そう、確かにブラザーズマントで防いだ筈のレーザー・ガトリングが何発が命中しており、ゾフィーの装甲からは少し白煙があがり、その事によってもともと余裕が無かったシールドエネルギーは更に削られ、撃墜こそされてはいないものの、もはや瞬時加速どころがフルスピードでもう一人の襲撃者を追尾する事すら叶わない程にエネルギーは枯渇して二人を追いたくとも追えず。同時に、例え追えたとして余裕を見せるもう一人の襲撃者に今の自分では勝利するのは困難だと慎吾は直感的に理解してしまっていたのだ

 

「亡国機業……近いうちにまた戦う事になりそうだ……果たしてその時も、勝利できるかは……」

 

 もはやハイパーセンサーでも確認出来ない程に遠くへと行ってしまった、もう一人の襲撃者が飛び去った方向を見つめながら慎吾は確信した様子で呟く

 

 不吉な予感に、気付けば慎吾の体には無意識のうちに小さく鳥肌が立ちはじめていた




 今回はただの慎吾無双回になってしまいました……まぁ、たまにはこう言うのもありだと割りきってみます。
 そして、実は今回の話で初めて対ISでのゾフィー勝利の描写を書きました

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