二人目の男子はIS学園No.1(最強とは言ってない)   作:塩ようかん

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 投稿です、出来れば三連休中にもう一回くらい更新したいです


9話 ゾフィーVS 白式

 セシリアとの戦いから数時間が過ぎ去ったアリーナ、そこでエネルギー満タンまで補給したゾフィーを展開して夕日が差し込見始めたアリーナの中央で浮遊しながら腕をくみ、仮面の下では目を閉じながら慎吾は静かに待っていた。そして

 

「慎吾さん………」

 

 慎吾の正面に白式を展開させた一夏が現れた。その顔には迷いや不安、緊張と言った感情がごちゃ混ぜになり、非常に危なっかしさを感じさせた。

 

「一夏」

 

「は、はいっ!」

 

 突如、ぽつりと呟く慎吾に一夏がびくりと震えると、慌てて背筋を整えて返事を返す。

 

「私がお前に言う事は何も無い。一本勝負と行こうじゃないか、これまでの訓練、先程の私の試合、そこから学んだお前の全てを私にぶつけてみろ!」

 

 そう、高らかに告げる慎吾に一夏は一瞬、驚きで硬直するもの硬直から直った時には顔からは迷いは消し飛んだ。

 

「はいっ!慎吾さん!」

 

「……よしっ、では行くぞ一夏!」

 

 その言葉と共に一夏は雪片弐型を構え、慎吾は拳を握ってファイティングポーズを取り、二人の間に一瞬、あるいは長い沈黙が訪れ、それに呼応されて騒がしかったアリーナからの声も静まりかえる。

 

「でやぁぁっ!」

 

 そして、沈黙を先に破り気合いの声と共に慎吾に大上段からの切り込みを放った時だった。

 

「………がっ!?……はっ………」

 

「………………………」

 

 苦痛の声を上げて一夏は身を縮こまらせる。見れば一夏が降り下ろした雪片弐型はゾフィーの胸から数センチ程手前で止まり、反対に一夏の腹部にはカウンターとして放たれたゾフィーの右足がめり込んでいた。

 

「ぐっ……うおおおおぉぉ!!」

 

 どうにか立ち直った一夏はゾフィーから若干、距離を取るとゾフィーの格闘の範囲内に入らないよう注意しつつ雪片の範囲から連続切りを繰り出す。一夏も先程の先制ダメージを取り戻そうとしているのか剣撃は非常に鋭く、なおかつ恐ろしいほどの早さで次々と迫り来る。

 

「くっ……何と言うスピードと手数……よく鍛えていたようだな……だが!」

 

 慎吾はその連撃を繰り出した一夏の技量に驚愕しつつ攻撃をさばき、回避し、あるいは両腕で受ける面を最小限にしつつ防御しながら白式に接近し、一瞬の隙をついて連撃を掻い潜り、白式に手刀を叩き込んだ。

 

「うわぁっ!うぅっ……」

 

 一夏は怯みながらも何とかゾフィーにカウンターの要領で斬撃を繰り出す。

 

「ふっ……ぜやぁっ!!」

 

 しかし、その一撃はゾフィーの表面を僅かに削り取るのみで回避され、逆に隙を見せた白式にゾフィーの踵落としが叩き込まれた。

 

「うわあああああああぁぁっっ!!」

 

「……ふっ!」

 

 踵落としが直撃し、真っ直ぐに墜落していく白式がアリーナの地面に直撃しクレーターともうもうと立ち込める土煙か発生したのを確認すると、慎吾は白式を追うように緩やかにゾフィーを降下させた。

 

 

 

「んなっ……!馬鹿な……」

 

「私と戦った時もIS初心者とはとても思えない戦いでしたが……まさか、ここまでとは……」

 

 リアルタイムで慎吾と一夏の試合をピットのモニターから見ていた箒とセシリアは共に息を飲む。真耶もまた慎吾の初撃が決まった時からモニターの画面から全く目を離せないでいた。

 

「何、あれこそがあいつの一番得意な戦い方だからな」

 

 そんな中、千冬一人だけが冷静さを保ち、薄く笑いながら試合を見ていた。

 

「織斑先生、大谷さんの戦い方を知ってますの?」

 

 千冬の発言に驚きを隠せない様子でセシリアが訪ねる。

 

「あいつの実技試験の時に相手をしたのは私だったからな」

 

「「ええぇっ!?」」

 

 平然とそう言う千冬に再び、箒とセシリアの驚愕の声が重なる。

 

「勿論、手加減はしていたが……あいつは格闘戦で粘って私のシールドエネルギーの4割を削り取っていたな」

 

「「!?」」

 

 連続する爆弾発言に、三度、箒とセシリアの声が重なり、その内容が内容だったためにその言葉はもはや言葉になってはいなかった。

 

 そして、箒とセシリアが驚愕している間にも試合は動き、モニターの画面では未だに土煙が立ち込める中、アリーナの地面にゾフィーが降り立ち、何かを叫んでいた。

 

 

 

 

「一夏どうした、まだ余裕はあるだろ!?」

 

 渦巻く土煙に向かい、腕を組んだ姿勢で慎吾は叫ぶ。土煙の中、未だに倒れているであろう一夏に追い討ちを仕掛けるつもりは無く、ただ慎吾はその場に屹立して一夏の次の手を待っていた。

 

「まだ勝負はついてない!かかってこい!」

 

 慎吾がそう叫んだ瞬間、土煙が揺れた。風の流れから見れば明らかに不自然なその動きに慎吾が一瞬、腕組みを止めたその時だった。

 

「うおおぉぉぉぉぉぉっ!!」

 

 厚い土煙を切り裂き、『零落白夜』を発動させた一夏が声と共にゾフィーに突撃しながら切りかかってきた。

 

「くっ、近いっ……!」

 

 土煙を利用した白式に予想以上に接近され、回避が間に合わない慎吾に一夏は迷い無く袈裟切りを放つ。

 

 その瞬間、勝負が決すると誰もが確信した。

 

 ただ、『甘い』と呟いた千冬と、覚悟を決めて白式と向き合う慎吾を残して

 

 

 

 

 

 

 

「うっ……ぐっ……」

 

「そんな………っ!」

 

 零落白夜はゾフィーを切り裂く寸前、それも初手の一撃とは違い、数ミリに満たないほど極々小さな距離を残して、命中する寸前に一歩を踏み出したゾフィーの両腕に刀身ではなく白式の腕を捕まれ止められていた。

 そんな状況に完全に決まったと確信していた一夏は動揺して僅かに力が緩み、その隙を慎吾は逃さなかった。

 

「でぇいっ!!」

 

「がぁぁっ!!」

 

 刃を地面に叩きつけ、ガードが無くなった白式に慎吾はゾフィーの飛び膝蹴りを打ち込む。回避も防御も出来ず直撃を喰らった一夏は吹き飛ばされ、背中から地面に叩きつけられた。

 

「うっ……ううう……」

 

 うめきながらも何とか雪片を杖のように地面に突き刺し、立ち上がろうとする一夏。しかし今、現在、白式のシールドエネルギーは慎吾の攻撃を受け続けた影響により枯渇寸前、対するゾフィーは半分以上が余裕を持って残り、カラータイマーも青々と輝き、なにより一夏自身の体力もまた度重なるダメージにより限界が近付いていた。

 

「……一夏、お前を突き放すような言い方になってしまうかもしれないが言おう」

 

 そんな一夏を見つつ、再び真っ直ぐに屹立して腕を組みつつ慎吾が静かに語り始める。

 

「オルコットとの戦いでお前は言ったな、織斑先生の……自分の姉の名を守ると。その気持ちに今、この瞬間でもこの状況でも一切嘘がないと誓えるなら……」

 

 そして慎吾は腕組みを止め、一夏に向かってアリーナ中に響くような大声で叫ぶ。

 

 

 

「立て!撃て!斬れ!」

 

 

 

 

「っっ!………うおおおおおおおおっっ!!」

 

 次の瞬間、一夏は勢いよく起き上がると、残る力の全てを使いきるかの如く怒濤の勢いでゾフィーに突進しながら『零落白夜』での居合い切りの一閃を放つ

 

「Z光線!!」

 

 その想いに答えるべく、慎吾もまた自身の必殺技であるZ光線を迫り来る白式に向けて放つ。

 

 

 そして、白式とゾフィーから放たれる二つの光が交差し、同時にブザーが鳴り響いた。

 

 

 

 

「……ううっ」

 

 Z光線が白式に命中し、一夏はそのダメージに膝を付いて崩れる。

 

「大丈夫か一夏?」

 

 試合が終わった事で闘気を解いた慎吾が一夏に話しかける。倒れた白式とは反対にゾフィーは未だに先程と変わらずしっかりと屹立していた。

 

「は、はい……何とか……いてて…」

 

 慎吾の呼び掛けに一夏は何とか笑顔を向けながらゆっくりと立ち上がる。が、やはり無理があるのか足元がおぼつかない。そんな一夏を見て軽く苦笑しながら慎吾が言う。それと同時に試合結果を伝えるアナウンスが流れた

 

「おいおい、しっかりしてくれ……せっかく」

 

 

『試合終了 勝者ー織斑一夏』

 

 

「せっかくお前が勝利したのだからな、負けた私が立っていて勝利したお前が倒れていてはしめしがつかん」

 

 そう、零落白夜とZ光線、この二つは全く同時に相手に命中したかに見えたが刹那、紙のような薄い差で零落白夜が先にゾフィーに命中しシールドエネルギーを全て削り取ったのだった。そして、白式はその直後にZ光線が命中して倒れたのであった。

 

「はは………慎吾さんに勝ったのは、その偶然みたいなものですよ」

 

「何、偶然だとしても今、この状況でそれをつかみ取ったのはお前の技量だ大したものだ」

 

 自信なさげに言う一夏を励ますと、慎吾は静かに右の手のひらを突きだした。

 

「いい試合だった……ありがとう」

 

「……は、はい、慎吾さん!」

 

 慎吾の行動に一瞬、驚きで固まっていた一夏も直ぐ様答え、二人は固い握手をかわした。

 

 そんな二人を祝福するべくアリーナからは慎吾と一夏、二人の名前が試合が終わった今もいつまでもいつまでも鳴り響いていた。 




 というわけで、慎吾のクラス代表決定戦の結果は、2戦0勝2敗で終了しました。
 M87光線やウルトラフロストは近いうちに使用しますのでしばしお待ちを

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