二人目の男子はIS学園No.1(最強とは言ってない)   作:塩ようかん

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 更新が少し遅れてしまいました…


91話 悪夢の目覚め

澄んだ海と他では見られないような希少な海洋生物が特徴的なある海に連なる諸島。そこから少し離れた所にある諸島の中でも大きいもののなる一つの島、表向けには建造途中のリゾート施設としているある研究所。今まさに、そこではさながら地獄のごとく複数の人間による怒声と悲鳴が飛び交っていた

 

「なんとしてもここで、食い止めろ! アレをここから外に出す訳には行かない!」

 

「くっ……! 怯むな! 落ち着いてヤツに攻撃を続けるんだ!」

 

 

「第四防壁も突破された! ええい、まだ制御は出来ないのか!?」

 

「駄目です! 相変わらず、こちらからの操作を全く受け付けません! 暴走が止まりません!!」

 

 

 そこにいたのはイギリス、中国、フランス、ドイツ、そして日本と複数の国のISに関する研究員と技術者、ISを展開させた兵士、そして一部の政府官僚達を合わせて200名程の人間達。彼らは皆、一様に焦り、そして恐怖に震えながらもここで開発された、しかし不可解な事に搭乗者が存在しないにも関わらず無人のまま動く一機の新型ISの暴走を食い止め、どうにかして沈黙させようと躍起になっていたのだ。

 

 兵士、科学者、そして当初はばらつきもあった政府官僚達もがこの緊急事態にそれぞれプロフェッショナルを意識し、持てる力を結集して挑む姿は実に見事であり、次々と攻撃は暴走を続けるISに叩き込まれていった

 

 が

 

「しまっ……! うああぁぁっ!!」

 

「さ、最終防壁突破されました!! だ、駄目だ! ヤツが外に出てしまう!」

 

 政府官僚達が連れてきた熟練の私兵達の一子乱れぬ猛攻撃、更に世界で活躍する技術者や科学者および技術者達による懸命の制御、そして官僚達による指示を持ってしても暴走する一機のISを止めることは叶わず、外部からの一切の干渉を受け付けないまま、暴走を続けるISはワイヤーの鋭い一撃で兵士達をなぎ払い、最後に用意された一際分厚い防護壁をも破壊すると、研究員達の悲鳴を背中にそのまま悠々と空へと飛びだってしまった

 

「だ、駄目だ……目標、こちらのレーダーからロストしました……」

 

 必死で研究所から逃げだした、暴走ISをレーダーで追おうとしていた研究所の所長である中年の男は顔を青ざめ声を震わせ 、絶望しきったようにそう言った

 

「なんて事だ……アレが……『T』が世界に解き放たれてしまったのか……!」

 

 かつて無いISを作りあげ、名声を得ようした結果、自分達が取り返しの出来ない過ちをしてしまった事に、官僚の中で纏め役の立場をを任されている白髪の老人は世界各国に、そう遠くは無いうちに迫り来る悪夢の絶望に震える事しか出来なかった

 

◇『T』研究所より脱走から十分後 日本 Mー78社研究施設近郊

 

 

 

「こちらゾフィーより慎吾、念のため先程チェックを済ませたが全く問題は無い。これより予定通り実験エリアに入る」

 

『了解した、実験エリアに突入次第早速、新装備の実験を開始してくれ』

 

 眼下に太陽の光に照らされて輝く海をほんの少しだけ眺めながら、ゾフィーを転回させた慎吾は高速で飛行しながら光へとプライベート・チャネルで通信を贈る。

 

 亡国機業の襲撃と言う大きな騒動はあったものの、ひとまず襲撃を受けた一夏も慎吾も無事のまま学園祭が終了してからいくらかの日数が過ぎたある休日の日。慎吾は光が生み出した新武装のテストの為にいつものようにMー78社の研究所。より正確に言えばいつも慎吾や光が利用しているものとはまた別の、本土から一本の橋を結んで隣接している。島にある研究施設を訪れていた

 

「ところで光……今日、いつもの研究所を利用しないのはやはり訳があるのか?」

 

『ああ、勿論だ慎吾。先程君に渡したその新武装、名付けてウルトラマジックレイが大きく関係している』

 

 海面近くを飛びながら実験エリアへと移動を続けながら慎吾はゾフィーの右手にある、どこかテトラパックにも似た三角錘から四本の突起がある奇妙な物体に視線を向けて呟いた

 

『その装備、ウルトラマジックレイは今まで開発した物に比べると少々特殊でな。その特殊さ故に今回のテストにはいつもの実験場とは別の場所で使う必要があったのだ』

 

「なるほど……果たしてどんな性能を持っているのか、実験エリアに着くまで期待している」

 

 肝心の性能の事をぼかして話す光に、慎吾はそれ以上何も言うことは無く。ただ黙って銀の仮面の下で小さく笑いながらそう答えるのであった

 

 

 この時は、移動を行っている慎吾も、そして別場所でヒカリを展開させてセンサーでゾフィーと慎吾の様子を念入りにチェックしている光も気が付く事は無かった

 

 

 自分達より勝るとも劣らないセンサー、驚異的な運動性能と、機動力を兼ね備えたIS。研究所を逃げ出したばかりの『T』が移動するゾフィーへと狙いを定めて動き出していたことを

 

 

 

「ええ……そうです。はい……お怒りはごもっともですが、既に、私自身どのような罰をも受けるつもりでこの連絡をさせて貰っているのです。……それほどまでに我々は取り返しのつかない事をしてしまった」

 

 『T』が逃走した研究所では、一人の官僚が決意を決めた様子で自国の首脳へと携帯端末で連絡をとっていた

 

「再度、申し上げます。研究所から逃走した暴走ISはここに集結した各国、複数のISパーツと装備を併せ持ってます。名は『T』こと『タイラント』! 一刻も早い警戒をお願い致します!」

 

 

 そう伝える官僚の声は何処に行ったかも知れぬ『暴君』の名を持つ、ISを畏怖するかのように震えていた




 はい、このオリジナル展開の敵はウルトラ兄弟を倒した強豪、タイラントです。オリジナルエピソードに苦戦してますが、どうにか頑張っていきます

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