二人目の男子はIS学園No.1(最強とは言ってない)   作:塩ようかん

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93話 死闘! 暴君対ゾフィー

「くっ……! あのハンマーにはワイヤーが内蔵してあるのか……私とした事が迂闊に接近しすぎた……それに……」

 

 タイラントからの一撃でバランスが崩れたゾフィーの姿勢を海面にぶつかる前に立て直しながら、慎吾が呟く

 

「一撃が想像を越えるこの重さ……奴からの攻撃は出来うる限り回避に専念した方がいいな」

 

 実の所、慎吾はタイラントからのワイヤーの一撃が直撃する本当にギリギリの所で両手と片膝でのガード、さらにだめ押しの抵抗とばかりに後ろに引くことで避けれぬのならば、どうにか威力を軽減させようと試みていた。が、それでもなお、ゾフィーは大きく吹き飛ばされ、ほんの僅かでもタイラントの力が強ければ吹き飛ばされた勢いのまま海面に激突する寸前にまでの衝撃を受け、並の一撃が直撃した時よりも多くシールドエネルギーまでも削られてしまっていたのだ

 

「…………!」

 

 と、そんなゾフィーに分析する暇も与えないとばかりに上空からタイラントが高速で迫り、再び大量の針状のビームを発射し、ワイヤーをさながら鎖鎌の如く回転させながら迫ってきた

 

「おまけに……単純な攻撃速度や移動速度までもが早い……! はっ!」

 

 それをしっかりと見ていた慎吾は咄嗟に瞬時加速を利用し、海面を滑るように回避する。直後、先程までゾフィーが浮遊していた場の下にあった海面を蜂の巣にせんばかりのビームが直撃し、海面に激しい水飛沫と薄い蒸気があがる

 

「…………」

 

 更にそれだけでは終わらず、ゾフィーの瞬時加速が終わった直後、ビームを無駄撃ちさせながらも瞬時加速後のゾフィー位置を予測していたのか、タイラントからワイヤーの一撃が伸びる

 

「はぁっ!」

 

 が、この一撃が来ることは慎吾も見越しており、慎吾は瞬時加速の勢いのまま、迫るワイヤーに向かって鋭く回し蹴りを放ち、ワイヤーを産み面に突き落とすと、同時にタイラントのワイヤーが噴射され、現在も先端から太いワイヤーロープが伸びているハンマーの手に向かってゾフィーの腕から再びスラッシュ光線を放った

 

「…………」

 

 が、しかし先程のタイラントとの遭遇時の繰り返しのように真っ直ぐ腕に向かって飛んでいっていたスラッシュ光線は不自然にその軌道を変化させると、再びタイラントの腹部、そこに取り付けられた五角形のエネルギー吸収器官に吸い込まれて、タイラントにダメージを与える事なく吸収されて消えていく

 

「はぁっっ!!」

 

 直後、スラッシュ光線を放つと同時に瞬時加速をしていたゾフィーのフルパワーの右足の踵落としがタイラントの頭頂部に炸裂し、その衝撃で巨大なタイラントの体が空中で大きく揺れる

 

「お前が私の放つエネルギーを吸収すると言うならば……このゾフィーからの直接物理攻撃を受けてみろ! たぁっ!」

 

 体制を崩したタイラントに慎吾は叫びながら更なる追撃を続け、今度はタイラントの頭部と体、そこを繋ぐ不自然な繋ぎ目に目掛けてゾフィーの左手で手刀を打ち込んだ

 

「………!!」

 

 踵落としの直撃により、体制が崩れてた事が原因か次の一撃たる手刀もまた、タイラントは防御も反撃に放ったビームも間に合わずに直撃を受けて、ビームをあさっての方角に飛ばすと今度は先程より大きく体制を崩した

 

「今だっ……!」

 

 その隙を決して逃すまいと、更にタイラントに向かって更に突撃をして懐に飛び込む、飛び込む寸前に腕を振り回して反撃するタイラントのハンマーがゾフィーの頭部を掠めて装甲から火花を飛ばすと共に慎吾の体に衝撃を伝えるが、慎吾はそれも気にかけずゾフィーの両腕でタイラントの胴体をがっしりと掴んで拘束する

 

「ハァアアアッッ……!!」

 

 そのまま慎吾は拘束されたタイラントが拘束から逃れようと暴れだすより、一瞬早くタイラントのずっしりとした太い脚を払い、タイラントの腹部を掴んだまはま変則的な背負い投げのような投げ技を放ち、海面を狙って勢い良くゾフィーより遥かに重量の重いタイラントを投げ飛ばす

 

「行くぞっ……!!」

 

 その瞬間、慎吾の掛け声と共にゾフィーは姿をより力が溢れ、赤いオーラのようなエネルギー光を放つスピリットゾフィーへと変え、踵落としから始まったこの連撃のフイニッシュを決めるべく落下していくタイラントに向けて勢い良く飛び出した

 

「ゼヤァァアッッ!!」

 

 飛びながら姿勢を整え、加速しながら飛び蹴りで狙ったのはタイラントの首部分。スピリットゾフィーになった事で更に加速速度が増したその一撃は、いくら非常に優れた機動力を持つタイラントいえども、二発の攻撃でバランスが崩れている状態で回避するのは不可能であり、慎吾の狙い通りスピリットゾフィーの加速した蹴りは見事にタイラントの首部分に命中し、激しい激突音と共にスピリットゾフィーの脚が命中した部分から無数の火花が飛び散った

 

 が、しかし

 

「な、なにっ……!?」

 

 自身の攻撃が想い描いていた通りにタイラントに命中したのにも関わらず、慎吾は驚愕の声をあげていた。何故ならば

 

 

 

 タイラントは防御や回避を全く行わず、棒立ち状態のままスピリットゾフィー渾身の蹴りを受け、それを体一つで身動ぎ一つせずに受けきって見せていたのだ

 

「………………」

 

 と、そこで蹴りを放った姿勢のまま愕然としているスピリットゾフィーにタイラントが機械的に首を動かして視線を向ける

 

「……!! くっ………」

 

 その瞬間、タイラントからおぞましい殺気を感じ取った慎吾は咄嗟に飛び退くような勢いで脚を引っ込めながらゾフィーを後退させタイラントとの間合いを作る。

 

 先程まで自身の連撃を食らっていた時とは明らかに違う。今の今まで目の前に映る全ての相手に殺意を向けていたタイラントが、その殺意をゾフィーと言うその存在一つに全て向けた。慎吾には確信を持ってそう感じ取れていたのだ。

 

 その瞬間

 

「SYAッ、ぎ……GYAAaaaaあaaaあァaaaaaっッ!!」

 

 それの元のなったものが電子音声だと理解するのに暫しの時間を必要とする程に、ひび割れ、壊れたラジオのように激しく耳障りなノイズとエコーがかかった爆音でタイラントはゾフィーに吠えかかる。

 

「……!!」

 

 あまりの音量に足元の海面が波紋を描き、狂暴性と暴力に満ち溢れた咆哮は、タイラントの行動をうかがって身構えていた慎吾も気圧され、半ば強制的に一瞬、瞬き程の隙を作らせる

 

 タイラントが動いたのはその直後だった

 

「GYAaaaa……ッ!!」

 

「(しまっ……!!)」

 

 吠えながら弾かれたようにゾフィーに向かって飛びかかるタイラント、それに一瞬遅れて慎吾はガードを作るが

 

 『そんなものは関係ない』と言うようにタイラントはガードの上から左手のハンマーの横殴り一発で軽々とゾフィーを文字通り吹っ飛ばした

 

「が……っ! ぐぁあっっ……!!」

 

 瞬間、意識が吹き飛ばされそうになるほどの激痛と衝撃を受けながらハンマーの一撃を喰らったゾフィーはなすすべ無く、近くの岩礁に叩き付けられ、激突部分の岩を粉微塵にしながら、慎吾は苦悶の声をあげた

 

「ぐっ……うっ……この威力、先程の一撃より更に上を……これほどのパワーのある攻撃を軽々と打ち出せる何て、一体奴は……!」

 

 膝を付きながらもどうにか起き上がろうとし、受けた一撃の威力に戦慄する慎吾

 

「SYAaッ………!」

 

「くっ……うっ……!!」

 

 と、そんな事を考える暇も与えずタイラントは追撃のハンマーを起き上がれていないゾフィーに向けて放ち、慎吾はどうにかそれを右手で岩礁を叩き、転がるようにして回避する。その直後、ゾフィーが倒れていた部分の岩がタイラントのハンマーで木っ端微塵に砕け、辺りに水飛沫と小石の雨を降らせた

 

「たあぁぁっ!!」

 

 その小石の雨を振り払い、慎吾は起き上がりざまにゾフィーの左足でタイラントの脚部に蹴りを入れつつ、完全に起き上がって足場の岩を踏み締めた瞬間、タイラントのボディに威力よりスピードを優先させて複数のパンチを叩き込んだ

 

「(これで決定打が入るとは思わない……更に一撃を!)」

 

 パンチを叩き込み終えた瞬間、慎吾はスピリットゾフィーのパワーを持ってタイラントが反撃に移る前に両腕で頭上より高く持ち上げると、タイラントを頭から岩礁に叩き付けた

 

 タイラント自身の重量とゾフィーのパワー。その二つが合わさった一撃は岩を軽々と砕いて、有り余ったエネルギーが岩から伸びるようにして水面に波紋を描いた。が

 

「GSYaaaaaaaa……ッッ!!」

 

「ぐわあぁ!!」

 

 しかし、しかし、それを真正面から受けてもタイラントは崩れず、倒れたままゾフィーの右足をワイヤーで強烈に殴打して慎吾の悲鳴をバックにしながら再びゾフィーを岩礁の上に倒れさせた

 

「(……慢心でも無く、先程からタイラントに確実に私の攻撃は命中している……しかし、奴は何故……!)」

 

 何事も無かったかのように平然と起き上がるタイラントを見ながら、慎吾は渾身の一撃を何度受けても怯む様子を見せない相手に内心で焦りを感じ、じっとりとした冷や汗が背中を伝わり始める

 

 辺りには波の音と、タイラントの不気味な唸り声、そして、スピリットゾフィーのフルパワーの全力攻撃とダメージによりシールドエネルギーが大きく減少した事を伝えるカラータイマーの音が響き始めていた




 タイラントはこれほど強くても問題ないだろう。……そう考えていた結果が今回のこの話です。この凄まじい暴君との戦いにどう決着を付けるのか? それを一生懸命捻りながら執筆して行きます

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