二人目の男子はIS学園No.1(最強とは言ってない)   作:塩ようかん

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96話 超速度の攻防戦

「おおおおおぉっっ!」

 

 最高速度を維持しながら一気にタイラントへと近づいた光はカウンター気味にナイトブレスからナイトビームブレードを出すとタイラントを頭から一刀両断せんとするような勢いと、空間すら切り捨ててしまいそうな速さで空中から斬りかかる

 

「…………GIッ!」

 

 が、その斬撃をもタイラントは見切ってしまい、ヒカリの渾身の一撃は実にあっけなくタイラントの右腕の大鎌に受け止められてしまった

 

「とぉおぉっっ!!」

 

 が、それもあくまで『二人』には十分に計算していた事であり、タイラントがヒカリのナイトビームブレードを受けた瞬間、ヒカリの足下を通り抜けタイラントの懐に飛び込んだスピリットゾフィーが両足でタイラントの左足に蹴り飛ばして払いのけ、タイラントの体制を大きく崩させると、空中でうつ伏せに倒れるような形に引き倒した

 

「食らえっ!!」

 

 その瞬間、タイラントの体制が崩れるのと同時に上空へと回っていたヒカリがナイトビームブレードを払いタイラントの背中の刺を数本纏めて気合いの声と共に一気に切り捨てる

 

「……GYAaaaaaaaaッ!?」

 

 ナイトビームブレードに切断された刺が宙を舞い、切断面から鮮血のような激しい火花が飛び出すとタイラントは悲鳴と共に激しくもがき激しく両腕を振り回し始めた

 

「うっ……!」

 

「ぐあっ……!」

 

 タイラントの棘を切断した瞬間に咄嗟に身を引いた慎吾と光ではあったが、それでもなおタイラントの攻撃スピードには僅かに追い付けず。慎吾が鉄球から発射されたワイヤーの一撃をゾフィーの腹部に受け、光が大鎌に右腕をかすめ、二機は揃って強制的に大きく後ろへとバックさせられた

 

「こちらの攻撃は通じてはいるようだが……それでも反撃の破壊力は全く衰えないか……」

 

「しかし……だからと言ってここで臆する訳には行かない。光、作戦通りもう一度攻撃を仕掛けるぞ!」 

 

 タイラントの攻撃を受けたヒカリの右腕を庇いながら言う光を、そう言って励ましながら今度はゾフィーが先手を切るとタイラントへと向かって飛び出した

 

「ゼヤァ!」

 

「…………!!」

 

 タイラントからゾフィー目掛けて迎撃として放たれたレーザー・ガトリングと空を切って唸るワイヤーを慎重な動きで回避し、あるいはタイミングを合わせて手で弾き飛ばしながら慎吾はタイラントが攻撃を放つ僅かな隙間を付いてゾフィーの両腕で形成された光輝く円状の光輝く刃、ウルトラスラッシュを放つ。

 が、その瞬間、機敏な動きでタイラントはゾフィーに向けていたワイヤーを引き戻すと、向かってくるウルトラスラッシュに目掛けて勢いよくワイヤーを打ち付けた。と、その瞬間ウルトラスラッシュはまるで衝撃を受けた窓ガラスのようにひび割れ、空中で木っ端微塵に砕け散ってしまった

 

「おおぉぉっ!」

 

 当然、それでも慎吾は決して攻撃の手を緩めることは無く被弾を覚悟で更にタイラントに接近すると首を狙って右足で回し蹴りを放った

 

「行くぞっ!」

 

 瞬間、今の今までゾフィーの背中に隠れる形でぴったり付いてきていたヒカリが勢いよく飛び出し、慎吾が蹴りを放つタイミングに合わせる形でタイラント目掛けて左足で回し蹴りを振るう

 

「GYA……ッ!?」

 

 直後、二つの強烈な回し蹴りがタイラントを挟むように直撃し、逃げ場の無くなった衝撃はタイラントのボディへと伝わり、ゾフィーが付けていた傷口から火花が溢れるように吹き出し、タイラントが悲鳴をあげる。更にそれだけでは衝撃は完全には消えなかったのか、先程のヒカリの斬撃で亀裂が入っていた刺が何本か、剥がれるようにタイラントの背中から落ちた 

 

「今だ、慎吾! M87光線を放て!」

 

 その隙を逃さず光がゾフィーに素早くウルトラコンバータを渡すと、タイラントに向かって正面から食らい付き、ガッチリとそのボディを取り押さえると、タイラントを抱えたまま横にぐるりと百八十度一回転しながら叫ぶ

 

「あぁ……これで決めて見せる!」

 

 その言葉を受けた慎吾は、すかさず自身に向けられた『タイラントの背中』目掛け、光から託されたウルトラコンバータに内蔵していたエネルギーの殆んどを用いたM87を発射する構えを作り、刺が取れた事で出現した装甲の切れ目を目掛けて狙いを付けた

 

「例え腹部に吸収されても……エネルギー補給器官の刺が欠けた今のお前に……M87の一撃は処理できない!」

 

 暴れるタイラントの攻撃をヒカリの強固な装甲を生かして耐えきりつつ、そう光は確信じみた様子で叫んだ

 

 そう、これこそが光が慎吾の元へ急行する中で思い付いた策。二人で協力して可能な限りエネルギー補給器官を破壊し、腹部の吸収器官を満全の調子で動作させる事を物理的に不可能とし、その隙を狙ってM87の一撃を撃ち込む。単純ながらも、光がタイラントの装備やエネルギー効率を考えた上で捻り出した、危険を承知で行うハイリスクな突破策であった

 

「(唯一の不安材料はタイラントの腹部から発射される超低温冷気派による攻撃だけだが……エネルギー補給器官が大きく失われてる今の現状では、それが発射されるよりもゾフィーのM87がタイラントに直撃する方が早い! 信じてるぞ慎吾!)」

 

 決して逃さぬようにエネルギーの消費も気にせずヒカリの持つパワーの限界までにタイラントを拘束し続け、タイラントの攻撃によるそう光は内心でそう判断し、慎吾を信じてひたすら堪え続ける

 

「行くぞ光……M87ッ!!」

 

 その瞬間、慎吾は光に合図を送り右腕から、さながら蒼白く光輝く柱のような太さになるまでエネルギーが込められたM87光線をタイラントに向けて発射した

 

「(ヒカリのエネルギー残量は……まだ大丈夫、直撃までタイラントを押さえていられる! 奴が超低温冷気派を発射する動作も見せていないし、着弾した瞬間に瞬時加速で攻撃範囲から離脱する余裕もある! よし、これで、この勝負は決まった!)」

 

 狙い違わずタイラント背中の亀裂、装甲が剥がれて内部機械が見える箇所に向けて飛んで行くM87を見て、光は半ば勝利を確信していた。

 

 

 まさに、その瞬間だった

 

 

 バキリ

 

「なっ……?」

 

 音にすればそれほど短く、そんな鈍い音と共にヒカリのボディの横っ腹から強烈な一撃が炸裂し、起こった信じられないような光の声と共にヒカリは強制的にタイラントの拘束を解除されて突き飛ばされた

 

「っ……光ぃぃっ!!」

 

 タイラントから吹き飛ばされたヒカリがM87の進む軌道上に入ってしまった事に気付いた慎吾は、咄嗟にM87を発射している右腕を上へと持ち上げ光を助け、M87は本来の軌道からずれる事になって

 

 そうして出来た光と慎吾、一秒にも満たないこの僅かな隙は

 

「GIYAaaaaaaaaaaaaッッ!! 」

 

 タイラントが人間で言えば臀部に値する部分から新たに見せた太い『尾』をなびかせ、咆哮と共に反撃に移るには十分な時間だった




 決着……とは、なりまさんでした。

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