二人目の男子はIS学園No.1(最強とは言ってない) 作:塩ようかん
「不思議だけど……とっても素敵な人だったね……マリさん……」
マリが立ち去った後、少しだけ落ち着きを取り戻したシャルロットは気付けば心の声をそのままにマリに対して感じていた事を口に出していた
「確かに……あの方は何一つ、治すべき所が無いほどに素晴らしいレディでしたわね」
「大和撫子……と、言う言葉に相応しい女性だな」
「……ま、否定はしないわよ。目の前であんな空気を自然と作り出されちゃね」
その意見にはセシリアも完全に同意しているらしく
、マリを素直に誉め称え、その後に箒と鈴も続いた。
「だが嫁よ、油断してはならんぞ。……確かにあの女医は思わず気を許して無防備に頭を撫でたてられたくなってしまいそうな暖かさを持っているが……あれは危険だ。魔と聖の両方を合わせ持つ危険な属性、『母性』を持っているのだ。油断すれば自分じゃ何もしないダメ人間にされてしまう。……以前、そうクラリッサも言っていた」
と、そこでラウラが忠告するように一夏の服の裾を引っ張りながら、至極真面目な表情でそう一夏に警告した
「ぷっ……ははは……」
冗談では無く真剣にそう思って言っているのであろうラウラの行動が妙におかしく感じ、気付けば一夏は思わず笑ってしまう
「じゃ……病室に入るか」
マリとの偶然の出会い、そして予想もせぬ形ながらも笑った事もあって一夏の胸からはもう病院到着時に感じていたような不用な緊張や焦りは大部分が消え失せてすっかり軽くなっており、一夏は落ち着いた気持ちでそう言うと慎吾の病室のドアをノックした
『……一夏……それに皆もいるようだな。大丈夫だ、入ってくれ』
ノックの後、病室入り口に取り付けられたインターフォンからスピーカー越しにでも分かるほどに、いつもより力が隠っていない慎吾の声が聞こえたかと思うと、病室のドアの鍵が開く音が聞こえた
「失礼しま……」
慎吾から入室の許可も出たこともあって、一夏が代表して病室のドアを開き
「すっ……!?」
直後、そこに広がっていた予想だにしない光景にドアを半開きにした状態のまま、一夏は硬直した
そう、そこにいたのは
「織斑君に箒……そして皆、よく来てくれたな。唐突の呼び出しに良く応じてくれてありがとう」
「やぁ……こんな姿のままで悪いが……まだ起き上がらないように私はマリさ……担当の先生から強く言われているんだ」
右腕と腹部、そして特徴的な青髪が目立つ頭に包帯を巻きどこから持ち込んだのかホワイトボードを背に一夏、そして箒達五人が全員揃っている事を確認すると、病院服姿でそう告げる光。そしてその後には光と同じく体のあちこちに包帯を巻いた状態でベッドに寝かされ、点滴を受けたままの状態の慎吾がいつものり少し血色の悪い顔で笑いながらそう言う。包帯の量や、顔色からして慎吾の方が光よりも怪我が重いように見えていた
そう、病室にいるのがこの二人だけなら一夏は何も驚愕して固まる事は無かっただろう。一夏を真に驚かせたのは
「あら、思ってたより遅かったわね皆」
「うむ、確かにこれで全員が集まったようだな」
病室で椅子に腰掛けて、こちらを見てそれぞそう呟く二人、楯無と千冬の姿を見つけた時であった
◇
「……以上が、俺達が抗戦する事で採集したタイラントの戦闘時の行動に関する詳細なデータだ。まぁ……このデータを得る為に俺も慎吾も手酷くやられてしまった訳だが」
自嘲するような光のその言葉と共に流れていたゾフィー、そしてヒカリの二機のISに記録していたタイラントとの戦闘を映した映像は、頭部を破損しながらもフラフラとした動きで海上から飛翔するタイラントを捉えている所で終わり、映像を写し出していたディスプレイは再び暗闇を写し出した
「なっ……そんな……そんな嘘だろ!? なんなんだよあのパワー!?」
「タイラントが以前の福音……いや、それをも越える驚異……と、言うのが目に見えて理解出来ましたわ」
「まさか、おにーちゃんの格闘技の直撃すら怯まない程の耐久性を持っているとは……」
映像と言う形で改めてはっきりと理解させられたタイラントの驚異を前にして一夏は愕然としたようにそう叫び、セシリアやラウラ、代表候補生達はいつも以上に真剣な表情でタイラントへの対策を練り初めていた
「それで……だ、ここからが君達6人。そして織斑先生や楯無会長を呼び出した本当の理由の説明なんだが……」
そんな全員の様子を一人一人ゆっくりと見ながら、光が重い口を開いた
「映像には録られて無かったが……交戦の際、偶然、私達は奴のプログラミングされてる行動目的……タイラントが破壊対象としてる物を知ったんだ……」
そこで一夏達が病室に入ってきてから、体の療養の為に問われない限り。殆ど口を開かなかった慎吾が呼吸を整えがら一言、一言を噛み締めるように呟き、やがて、それを見ながら光が迷うような表情をしながらも、ゆっくりと言葉を続けた
「結論から言おう……奴の破壊対象は合わせて7つ、即ちここに揃ったメンバーの所持する専用機の完全破壊だ」
『!?』
「「………………」」
突如として、光の口から発せられたあまりにも衝撃的な言葉に今度こそ一夏や箒、そして代表候補生四人は絶句し、楯無と千冬は落ち着いた様子で黙って考え込んでいた
「一体誰が、何の目的で、こんな馬鹿げたプログラムをタイラントに仕込んだのかは現時点では分からない……実際、研究施設に幾度かコンタクトを取ってみたが『現在、事実の確認中』と言うような返事しか帰って来なかったからな……そう簡単に答えが帰ってくるとは思っては無かったが……全く」
同じ研究者としてタイラントの開発チームの不手際に思うところがあるのか、珍しく、苛ついている様子で光は最後になるに伴って早口でそう言った
「ともかく……俺は君達がタイラントの標的にされていると言う危機を伝えるため……そしてタイラント迎え撃ち、撃破する為の策を打ち出すべく、学園に連絡の後に君達をここに呼び出したんだ」
そう咳払いと共に静かに語る光の言葉は病室内に静かに、重く響き渡って行った
今回は色々と苦戦してしまいましたが……特に苦戦したのは、ラウラがマリにどれくらいデレるかのバランス調整は悩まされました